2007けんざい
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建材情報交流会ニュース
  第6回「建材情報交流会」”高齢化社会 −高齢対応建材 PART-I ”

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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「高齢者住宅リフォームの取組み─介護保険住宅改修事業とNPO活動─」
 関西大学工学部建築学科専任講師・特定非営利活動法人福祉医療建築の連携による住居改善研究会
 理事 馬場昌子氏
資料はこちら(PDFデータ)
医療と建築が連携
 研究会の活動を初めたのは、病院のリハビリテーション課のスタッフを対象に、障害者の在宅生活支援に専門家がどのように関わっているかについてヒアリングをしたのがきっかけです。当時セラピストがボランティアで住宅改造の指導をしていたのですが、建築の目で見るとあまりにも生活空間とかけ離れた視点で指導をしていたのです。もっと住宅の中全体を考えてその人のためにどうすべきかを議論する必要があると思いました。こうして医療領域と建築領域がつながった研究会が生まれました。
 福医建研究会(「特定非営利活動法人福祉医療建築の連携による住居改善研究会」の略称)「快居の会」住居改善実践事業部では高齢者・障害者のための住居改善相談事業を設けており、1級建築士を含め多くの分野の専門家がいろいろな質問に回答しています。高齢者・障害者のための住環境整備には、広い領域の知恵が必要なのです。
 「快居の会」は高齢者・障害者のための住環境整備について建築士として診断します。困っている人にどう対応するのがベストなのか?その考え方の基本をいろいろな領域の人たちと連携して提案します。
 「福祉医療建築の連携による高齢者・障害者のための住居改築」(学芸出版)を出版しています。ここで建築や医療の専門用語を使わないようにしようと提唱しています。対象としているのはごく普通の人です。建築の世界では図面を介して三次元空間を読むのは当たり前ですが、普通の人には難しいのだということを認識する必要があります。
 最近、自治体や外郭団体から住宅の改造相談事業を受託しています。介護保険に関わる住宅改修の仕事もです。介護保険には、少ないですが20万円の住宅改修も含まれています。今、問題はその20万円を執行する担当窓口の人が建築を全く解っていないことです。見積もりが出て、それを福祉職の方がチェックする形をとっていますが、できるわけがありません。
診断業務の欠如が「悪徳業者」を生む
 介護保険に診断業務がないことが「悪徳業者」の跋扈する要因だと私は考えます。大阪市がシルバー人材センターを使って住宅改修事業の調査を行なっていますが、「悪徳業者」が出てくるしくみを作っている行政のほうがよっぽど悪い。「悪徳業者」がスケープゴートにされています。「手すりをつけましょう」と言うと、それで介護保険が執行されてしまうしくみで、「どういう手すりが必要か」という診断業務が全く入っていません。そんななかで善意の施工業者が手すりをつけて「悪徳業者」になっているかも知れないのが現状です。
 年5、6回、統一テーマを決めて研究例会を持っています。今年のテーマは「これでいいのか住宅改修」。 
 通常、立位バランスを取るのが難しい人にスロープは勧めませんが、ケースバイケースです。大事なのはその人を見て対応することです。段差解消のための三角板は福祉機器業者が販売しており、段差のあるところに次々と設置しています。その結果かえって移動に時間がかかり、不便になった例も出てきました。福祉機器業者は善意です。三角板が有効なのはどんな場合なのか、という知識がなかったのです。ここに情報の不足という問題があるのです。
 国全体で一気に介護保険を実施したため専門の知識を持った人が育っていません。知識不足のため起こったトラブルが多くあります。
 89歳の女性の例で、四つんばいでしか移動できない人が自分の排泄物を外に捨てに行くという環境をケアマネージャーが不思議と思わない、不思議なことがありました。障害を持った人にとってはベッドからトイレが近いことが重要です。生活動線が単純で短いというのは大切なことで、建築の視点では当たり前のことです。
 立派な商品を開発してもエンドユーザーに伝わっていません。現場では思い至らないことが多くあります。せっかく手すりをつけて改修しても役に立っていないため、新聞などで「悪徳業者」と言われているわけです。福祉機器業者攻撃でこの問題がなくなるわけではない。どうしたら使えるのかという知識が届くしくみがないからです。その人が「何に困っているのか」を掘り起こさないとだめなのです。
 このような診断業務が、社会的に欠如していることに注目しつつ、研修例会や各種プロジェクト、「快居の会」の活動を続けているうちに私どもに賛同して下さる機関が出てきました。大阪住宅センターでは「高齢者・障害者のための住宅改造相談」を開設し、われわれがその相談を受託しています。
現場に情報を伝えることが最重要
日常で実際困っている現場の視点で見ると、2つの点で情報提供が欠けています。
1. モノそのものの情報不足。誰にとって何が良いのか、その人には何がベストなのかという情報。たくさんあるモノの情報が直接携わる現場の人たちに届いていません。深刻な問題です。加えて機能、適用の情報も入っていません。
2. 開発したモノを住宅に適用するときの、「モノ」と「住宅」を結ぶインターフェイス部分の技術開発不足。つまり機器の取り付け方についての情報です。せっかく手すりがあっても取り付けの最終段階での情報が足りないのです。
 現場に足を踏み入れる姿勢をメーカーの人に持ってほしいと思います。現場を知らずに商品開発されるととても困ります。現場を見ていないがための誤りは多いのです。
 そのことを理解しているから改造相談は出前型なのです。机上ではだめです。商品開発でもエンドユーザーにつながらないと意味がありません。

「介護保険対象の住宅改修用建材の開発」
 マツ六株式会社 リフォーム事業部 執行役員事業部長 佐久間省三氏
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政府施策は自立支援が基本
 日本は超高齢社会にまさに突入しようとしています。昨年の発表では、65歳以上の方が2,358万人いて、全人口の18.5%だということでした。介護保険で要介護・要支援に認定されているのは329万人(13.95%)になります。
 介護保険はわれわれ建築業界にも影響をもたらしました。介護保険における政府のねらいは、寝たきりにせず、能力に応じて自立した生活を営めるようにすること、そして施策を施設介護から居宅介護を中心にするというものです。日本には寝たきりの高齢者が実にアメリカの5倍。これは、狭い、暑い、寒い、段差が多いという日本の住宅環境に一因があります。そこで介護保険から住宅改修費(20万円)が給付され、ほかに介護福祉用具の購入やレンタルの費用なども支給されています。
 一方、厚生労働省では5、6年前からリフォームヘルパー制度を提唱しています。ただリフォームするのではなく、高齢者が自立して生活できる住空間をつくるため、医療、保健、福祉、建築の知識を持った専門家が対応し、相談しながら行なうというものです。
美しさから機能重視のリフォームへ
 これまでのリフォームの商品コンセプトは、「美しく快適で夢がなければならない」というものでした。これからの商品開発コンセプトは高齢者に優しい、優れた施工性、介護の視点での機能性、さまざまな家に適した品揃え、後付けが容易なこと、などです。
 今までの商品は、金具などができるだけ「見えないように隠す」ことに重点を置いていましたが、そういう金具では施工が困難などの問題がでてきました。年を重ねると体の機能が変化するので後で手を加えることを視野に入れなければなりません。
 改修によって、高齢者だけでなく一緒に住む人にとっても安全で快適なものであるということが、これからのリフォームには必要になってきます。
手すりも自立支援に対応して変化
 今までの考え方では、手すりはとにかく強度が大事で直径45mmなどの太いものが中心でしたが、自立支援を考えると上下移動補助には直径28〜32mmが最も握りやすく、手を滑らせながらの移動補助には直径32〜36mmぐらいがベストです。手すりの高さを調整することも必要になってきます。
 屋外の手すりはステンレスが主流でしたが、長野の豪雪地域で玄関に手すりをつけるサービスをしたところ、「冷たくて持てない」と不評でした。それ以降、屋外の手すりにも樹脂か木を使用するようになりました。
 1日か2日という短期間で工事を完了せねばならないニーズに対して、アンカー止めをする、高さの調整がすぐにできる、現場で部品を拾い出して施工できるなどの商品が必要になります。
また脳血管障害やパーキンソン病の方のために、今は手すりの連続性が要求されています。
 介護保険がスタートしたころは、みすぼらしい手すりがつけられていることがありました。現在3年目ですが、設置する前に商品を見せて欲しいという要求が非常に多くなりました。介護保険はタダではなく、積み立てて得る権利です。そうすると自分の家にあった手すりが欲しいという要求がでてきます。これからデザイン性も大切になると思います。
市の助成金を組み合わせて幅広く改修
 介護保険の住宅改修費に加え、大阪市では高齢者住宅改修費助成という枠があります。これを組み合わせると、改修可能な範囲が広がります。このような形で高齢者の生活を支えるための商品開発がますます必要になってくるでしょう。
 今後マーケットにはいろいろな商品が出てくるでしょう。高齢者の自立支援のためにどんな機能をもりこんだ商品を作れるかがわれわれの仕事だと考えます。

「高齢化社会に対応する床材としてのコルク」
 東亜コルク株式会社 専務取締役 中尾吉宏氏
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コルクは人に優しいエコ建材
 コルクの原料であるコルク樫の表皮は、9〜10年周期で自然再生します。親木を伐採せずに何度も採取することのできるコルクは、まさにエコロジカルな建材といえます。
 床材としてのコルクタイルは、まずワインコルクを抜いた後の廃材から生まれます。
 コルクには、人・住まい・暮らしに優しいさまざまな魅力があります。防音・防水・防災に優れているのはもちろん、有毒ガスが発生しにくくとても安全な建材です。木と比較しますと、木の床材は塗装するので硬く、滑りやすいのですが、コルクは弾力性があり、滑りにくい。木の床よりもコルクは温かい。表面温度が4〜5℃違うのです。また、湿気を抑え、結露を防ぐうえ、傷がつきにくく、ついたとしても直しやすくなっています。
 当社は、高温多湿の日本の気候に合ったコルクタイルの開発に日々取り組んでおり、製品は改正建築基準法におけるホルムアルデヒド発散等級でF☆☆☆☆大臣認定を取得しています。
 また、コルクだけでなく、ホルムアルデヒドを含まずシックハウスの心配のない接着剤・メンテナンス用ワックスまで安全・快適な住環境をトータルに考えています。

「高齢化社会に向けたタイル業界の対応」
 株式会社INAX  タイル建材事業部 商品開発室 原 健一氏
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高齢化社会に向けてタイルからわれわれが提案できる3つのポイントについて話します。1.「すべり」の問題、2.温熱環境、3.空間提案です。
すべりの基準値でタイルも「適材適所」
 高齢者にとってすべりは重要な安全ポイントです。
 靴歩行、素足歩行におけるすべりの評価尺度は靴底や素足に近い材質の「すべり片」を用いて計ります(靴歩行すべり抵抗係数=C.S.R、素足歩行すべり抵抗係数=C.S.R.B)。その結果、靴で歩いた時にはすべりの最適値が存在すること、素足の場合には逆に抵抗が高いほうが良いことなどが判明しました。当社では床タイルの使用可能部位をこれらのすべり抵抗の数値で規定してそれぞれの部位に最適な床タイルを提案しています。ただあくまでこれは参考値で業界統一基準ではないというところに問題が残されています。
 スロープ用のタイルには凹凸がついていますが、これがベビーカーや車いすの通行時にガタツキを起こします。凹凸の大きさが必ずしも滑りやすさに比例しないことがわかり、現在ではガタツキもなくすべりにくいスロープタイルを商品化しています。また浴室などの素足歩行では細かなミクロレベルの凹凸の方が滑りにくいことも研究でわかってきており、大浴場用床タイルなどに応用して滑りにくく肌にも痛くない製品を発売しています。
タイルは床暖房仕上げに最適な素材
 床暖房の仕上材としてタイルを用いると、熱効率が良い、温度ムラが少ない、熱による「あばれ」(伸縮により板が波打つこと)が少ないなどのメリットがあります。熱伝導が良いのでフローリングと比較すれば温度が上がるまでの時間が短縮できます。
 また掃除がしやすい、色あせしないなどの点で主婦に喜ばれるなど、タイルは極めて顧客満足度の高い仕上材といえます。
タイル仕上げでバリアフリー空間を実現
 高齢者向け住宅には寝室隣接型のトイレを提案しています。ベッドとトイレ・洗面所を一続きにすれば生活の動線を短くでき、寝室にも床タイルを使ってトイレ・洗面と床レベルを合わせれば移動しやすく安全で清掃しやすい空間となります。タイルに床暖房をセットすればヒートショックの問題も軽減できます。
 このようにバリアフリーなスペースとタイル建材を合わせることによって高齢者に優しい住空間を提供できるのではないかと考えています。

「色彩の医療効果を取り入れた医療・福祉用カーテン」
 アスワン株式会社 第一商品部MD 湯浅肇 氏
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カーテンはインテリアの「キーカラー」
 色は人間に大きな影響を与えます。グリーンを見て穏やかな気分になったりするのは、色を心で感じているのです。肌が感じる色彩のパワーを、インテリアにどう生かすかがポイントです。
 インテリアカラーは、「70・25・5の色彩面積配分」が基本になっています。70%が「ベーシックカラー」で天井・壁・床、25%が「キーカラー」でカーテン、5%が「アクセントカラー」で花や置物です。大切なのは、25%の「キーカラー」。ここに何色を使うか、この部分で高齢者にいかに満足してもらうかが、われわれにとって最も重要なところなのです。
 色彩にはそれぞれ違った“力”があり、それをキーカラーに活用することができます。
色彩の医療効果を施設に活用
 色彩の持つ医療効果とはどのようなものか。例えばピンクは“若返りの色”であり、ピンクをイメージしながら深呼吸を2回、これを1日3回やると実際に若返りの効果があるといいます。
 当社で今扱っているカーテン「タフネス」は、「癒しの環境づくり」をコンセプトにしています。各施設にふさわしいイメージコンセプトとカラーによって、快適な空間をつくることができます。
 福祉施設のデイルームならイメージコンセプトは「新鮮」(グリーン)、福祉施設の食堂なら「悠々」(明るいブラウン)、病院の個室なら「温和」(ベージュ)、病院の食堂なら「快活」(オレンジ)といった具合です。
 みなさんも、色彩の持つパワーをもっと重要視して、インテリアにどんどん役立てて下さい。
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