2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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建材情報交流会ニュース

 第57回
「建築材料と建築設計の相関性」、「優良製品・技術表彰 受賞製品紹介」

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基調講演
「建築材料と建築設計の相関性」

松尾和生 氏 ㈱日本設計 建築設計部 チーフ・アーキテクト
  

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■イメージ先行型で新しい材料をつくり出す
 「最初はどうやって設計するのですか」とよく聞かれます。私はイメージ先行型で、コンセプトとイメージが同時に出てきます。図面を描く前に、できるかどうかも分からないうちにスケッチができてきている状態なので、後で苦労します。絵はあるのにどうやってつくればよいのか分からない状態になってしまう。だからイメージに合致した特性の材料を探すのにいつも大変な時間がかかります。
 建築の設計は、見たものをもう一度つくるのではなく、本来は「こういうものが必要だから、こういう建築材料が必要だ」というプロセスであるべきです。しかしほとんどの設計は、誰かがやったことをもう一度なぞっているだけです。従って、一から創造して物をつくり始める設計は、前例のある設計と比べて10~20倍近い作業が発生します。一つの建築材料を見つけるのに、私は日本全国に連絡をとり、つくってくれる人を探します。それくらいしないと見つからないのです。
 イメージ先行型のほうが新しい商品をつくりやすいと私は思います。技術研究所や商品開発の方々は、頭の中で一つの建築材料をつくり出すと思うのですが、われわれの場合つくり方は関係なく、いきなり形のスケッチができ上がる。そして、それが可能な材料を日本中、世界中を探し回ります。

■「時間・質・利益」と「天・地・人」が絡み合う
 高知城の横にある「高知城歴史博物館」(高知市)、宗教団体の施設である「岡田茂吉記念館」(京都市)、「NHK大阪放送会館(大阪ホールとアトリウム)」(大阪市)、「NHK神戸放送会館」(神戸市)、「高浜町新庁舎・公民館」(福井県高浜市)、「同志社女子大学」(京都市)、「宇治電ビル」(大阪市)、「淳心学院」(姫路市)、「子羊の群れキリスト教会」(芦屋市)などが、これまで設計した代表的なものの一部です。
 宗教団体の施設が多いのですが、このためより一層イメージ先行型になってきたと思います。宗教団体の施設づくりは、宗教思想を形にする作業なので、こちらで勝手にデザインするのではなく、まずは思想を理解し、そこから生み出される形を実現するのでこうしたプロセスになるのです。
 何をつくるときも、時間と質と利益が必ず絡んできます。建築ではこれらが絡み合って一つの形ができ上がります。そのときに必要なのが天と地。「天」は運命や巡り合い、「地」は敷地を意味します。敷地の持つ材料特性があるのです。例えば山の近くなら森林から木材が使えるし、石山がそばにあれば石が使えます。もう一つが「人」です。どんな人が集まるかによって建築素材の可能性は変わります。従って、建築は「天・地・人」が作用し合ってできていくと私は考えています。

■社会が変わるとき、建材も建築設計も変わる
 建築材料と建築設計は卵とニワトリの関係にあり、材料が進化すると設計も進化します。設計が変わると求められる材料も変わるし、同じ材料を使っていても利益は得られなくなります。時代が進めば企業も事務所も変わっていかねばならないわけです。社会が変わるとき、必ず建材も建築設計も変わります。
 「材料」と「素材」は基本的に異なると考えています。材料は人工的で機能的、素材は原始的で創造的なものなので、素材をつくることは非常に難しいと思います。新しい素材は、よほどの頭脳と幸運がないとなかなかできません。材料として商品化を図るには、機能性と創造性の両立が大事です。市場で見る商品は、どちらかが欠けていると感じられるものが多いものです。
 NHKの大阪ホールを設計したのは28歳頃ですが、私は当時から商品開発担当の方々の心を揺さぶるようなアイデアをいろいろと発言し、一緒になってキャッチボールを繰り返すことによって、これまでになかったものをつくり出してきました。

■建築材料の開発が建築デザインの未来を切り開く
 設計者は建築材料に関し、物性、意匠性、法規制、安全性などを考慮し、優劣をつけながら最もイメージに合致するものを選んでいます。素材には建築の個性を決める力があるので、建築材料の開発が、建築デザインの未来を切り開くと言っても過言ではないでしょう。材料を開発すれば新しい建築の設計ができるということです。
 建築家と素材の相関性は、使い方と創造力によって素材を劇的に変化させることにあると考えています。これは京都のアルミキャストの工房と共に開発したアルミの天井で、水面のような、あるいは雲のような模様をしています(図1)。最初、私が描いたスケッチを見せたとき技術者の方々から「できない」と言われました。通常アルミキャストには目地がありますが、目地のないデザインが必要だったので、技術者の方々に徹夜で取り組んでもらいましたが、できなかったと。「できない」理由は、能力、創造力、勇気の欠如にもありますが、さらに決定的な理由は、今までの自分たちのルールを基準に考えるからです。そこで、ルールを無視した結果、実現できました。
 このときは私が模造紙に原寸でデザインを描き、木にそのデザインを削って砂形に落としてアルミを流し込んでつくりました。4パターンのデザインを左右天地ひっくり返しながら連続的につなげることによって、目地が分からなくなりました。
 現代社会の常識も、一つの建材の発明や新たな使い方によって激変します。「ばかとはさみは使いよう」と言いますが、これは能力のなさをばかにしているのではなく、使う側の力量が問われていることを意味する言葉だと思います。一つの素材を生かすも殺すも使い手次第なのです。その際、知性と感性の両方が必要で、このバランスがとれて初めて素材開発がうまくいきます。
 「高知城歴史博物館正面」の、菱形の鉄板によるカーテン部です。菱形の対角250cm・奥行き50cm、鉄板の厚みは3cmで、長さ70m・高さ10mにわたる「屏風」が、柱と梁につながらずに地面から自立しています。これは「菱形の強烈な屏風をつくろう」と最初に決めていました。菱形は高知城の上段の間にある欄間のデザインで、高貴な形です(図2)。
 菱形の屏風をつくるために日本全国の製作所を探しました。ほとんどの鉄骨メーカーが、われわれの予算の3倍かかると言うのです。あきらめずに探し続け、ようやく見つけ出してつくることができました。菱形の枠に入れるガラスは、たまたまあるメーカーに見せてもらって採用したもので、カーテンウォールに入っているLEDによって導光板を光らせることができます。夜間はこのガラスが歩道を照らしています。

■相反するものを組み合わせて新しいものに
 材料や素材の特性を生かすためには、特性をよく理解して相対的な表現法を攻めていきます。光があれば影ができるように、例えば白い素材があれば黒いものを合わせ、凸凹があればつるっとしたものを周りに持ってきます。こうして相対的に表現すると必ず、新しいものが生まれます。
 「NHK神戸放送会館」では石を用いましたが、ジョイントのない大きな1枚の壁に見せたかったので、ジョイントと同じ寸法で石に溝を掘りました。溝によってできた凹凸のおかげで、下から見るとジョイントの黒い目地が隠れて1枚の石になりました。こんな少しのことで全然違うものになるのです(図3 )。
 庭でもそんな例があります。水樋と白い砂利だけですが、それだけで終わらないよう、植栽を配置しました。植栽によって影が映るわけです。影は第3の素材といえるでしょう。光を描くときに影をイメージして初めてこの造形が生まれます。

■情と知はお互いに補完し合って力を発揮する
 「天才と変人は紙一重」といった言葉も聞かれますが、今までと違う可能性を問うとき、常識ある人や技術力の高い人ほど目を丸くして「そんなことできません」と言います。私のプロジェクトにそのような人は必要ないのですぐ帰ってもらいます。「おもろいなあ」と言う人しか寄ってこないので、私の周りは変な人ばかりです(笑)。私は変な人とか、宇宙人とか、よく言われます。
 3.2mmの鉄板だけで約7mの屋根を「岡田茂吉記念館」につくりました。「合掌」とそこに差し込む光をイメージした屋根です。この鉄板を縦方向に曲げる技術を持った工場を探すのに大変な時間をかけました。折り紙と同じで、折り曲げることによって軽く強靭な材料になります。しかも非常に安価でした(図4)。
 素材特性をイメージから生み出すか、研究から生み出すかは、創造と計算、情と知、宗教と物理のような関係でありながら、相互に補完し合います。心と頭は互いに補完し合ってこそ力を発揮するものです。
 「井の中の蛙大海を知らず、されど空の深さを知る」。
 これは材料開発者にとりわけ留意してほしいことわざです。素材開発者たちが狭い世界で試行錯誤している場合、その深さを研究はするが、世の中の広さは分かりません。いくら研究しても報われない。だから、全く違う人間が入ってくると一気に目覚めます。例えば一社でできないことも、三社ならできます。
 宗教は人間の目で見える世界と見えない世界を表現します。鏡や水面は、虚像を生かして心を映すものです。松の木があって、今いる場所からその実体は見えないけれど、水面には映っているといった具合に。心の鏡をイメージした事例で、こうしたところに宗教性を出しています(図5)。実像と虚像の相対性は非常に重要だと言えます。

■ちょっとした発想の転換で問題がうまく解決する
 今、新今宮の「星野リゾートOMO7」の現場が進んでいます。膜材を使っていますが、膜が風圧を受けるため大きな応力が生じ、現場は頭を悩ませていました。しかし私が「膜に穴を開けたら風が抜けるのでは」と言うと、一気に解決しました。みんな穴が開いてはいけないと思って必死で考えていました。風を受けるから部材が大きくなってしまうのなら、逆に風を流せばいいのです。
 逆のことを考えるとうまくいく場合が多く、全体的に安くなります。少しのことで可能性が出てきます。
 日本初であろう菱形の格(ごう)天井をつくった事例があります。通常正方形のところを菱形に桟を組んで面を取りました。座ると天井が丸みを持って見えます。菱形のますには土佐和紙と落水紙を貼っていますが、柿渋を含んだ土佐和紙は最初のオレンジ色から経年変化で黒になります。すると落水紙の白が浮き上がってくるわけです。ヒノキの経年変化と相まって、10年、20年と時を経るごとに渋味のある天井ができ上がっていきます(図6)。
■弱点を補い、特性を引き伸ばして強靭にする
 よい素材にも弱点はあります。アルミには“冷たい”という弱点がありますが、木材を合わせて優しくすることができます。弱点は補強できるのです。脆弱なものを強靭にするためには、その弱さを受け入れて強さにあぐらをかかないことです。大抵は自分の強いところを看板に持ってきますが、そうではなく自分の弱さを受け入れるほうがより強く見えます。
 素材の特性を引き伸ばす工夫をすることも大事です。そのためには相対的な部分を攻めることを意識するのがよかろうと思います。
 また「高知城歴史博物館」の例ですが、壁が0.5mmの板(チタン亜鉛合金)で、折り紙のように縦に曲げることによって強靭なものにしています。この壁によって止水性が上がり、塩害への耐久性に優れ、断熱性能も上がります。土地柄、台風が多く強い雨を受けますが、合金板が雨を防いでくれます。

■「人のため」という動機からのみ良品と利が生じる
 孔子の言葉「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る」は、素材の扱い方に大きな意味を持ちます。つまり、真に人のことを考えて素材を扱わないと、その拡がりは起こらないと。利益も大切ですが、それは結果であり、動機にはなりません。利益のために何かを開発しようとすると失敗しますが、人のために必要だと考えてつくったものは必ず利につながります。
 素材開発の良し悪しは、孔子の言葉のような深意を含んでおり、一筋縄ではいかないことが容易に想像できます。「小人」(普通の人)のように楽して利することを考えるのは駄目で、「君子」の自由で清らかな思考からしか新しい素材は生まれません。
 建築家が変人というわけではありませんが、突拍子もないばかげたことが、社会に対して考え抜いた後の言葉であるとするなら、それは君子の言葉です。そして実現したときの社会への拡がりは、大きな可能性を秘めています。
 「岡田茂吉記念館」の庭には大きな紅葉の古木がありますが、これはずっとこの場所に生えていたものです。古木をそのまま生かして建築をつくりました(図7)。「高知城歴史博物館」のヒノキの壁は、波の躍動感と浮遊感を出すために、桂浜の水面を見て穴の開け方を考えました(図8)。
■創造のために、挑み、攻めることをあきらめない
 われわれが創造することをあきらめれば、あるいは力量に陰りが見え始めれば、国の文化は衰退の一途をたどるでしょう。今、文化として残っているのは、ほとんどが棟梁がつくってきたものです。それは創造をあきらめず果敢に木造で攻めてきた結果です。しかし現代のように、自らの保身でコンプライアンスやマスコミのことばかり考える人たちからは創造性が欠如します。創造性による素材開発は、挑み、攻めることからしか生まれません。建築材料と建築設計の相関性は、実はここにあります。コンプライアンス、PL法などでみんながんじがらめになっています。しかし安全性を確保した上で攻めて攻めて、創造力を駆使して攻めまくると、新しいものができるのだと私は確信しています。
 

「優良製品・技術表彰 受賞製品紹介」
『経済産業省 製造産業局長賞』
  「オムツっ子 たっち BR-TC」(据置型おきがえ台)
 ㈱水上 特販部特需課 課長代理 楠井 浩司 氏
 
 
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 今回、ご紹介させていただきます「オムツっ子たっち BR-TC」は約1年前に弊社のオモイオ事業部から発売した製品となります。
 製品紹介の前に少し、オモイオというブランドに触れておきますと、元々、株式会社水上は建築金物・資材の卸商社でございますが、オモイオ製品に関しましては、3つのジャンルからなるメーカーブランドとなります。
 まず1つ目がトイレ内に設置している、オムツ交換台や子供を待機させるためのベビーチェアなどの樹脂製品。2つ目がベビールーム・授乳室にあるオムツ交換ベッドや、授乳専用チェアなどの木製品。3つ目が子供達が靴を脱いで遊んだり、本を読んだりするカラフルなキッズサークル。これら施設向け育児機器を生産、販売しておる部門でございます。
 今回、KENTEN2019にて経済産業省 製造産業局長賞をいただきましたオムツっ子たっちは、2つ目の製品群の「ベビールーム用の木製品」になります。立たせた状態でオムツの交換や着替えができる「オムツっ子たっち」 公共施設や店舗のベビールームなどに設置し、つかまり立ち~約36ヶ月の乳幼児を対象に、立たせた状態でオムツの交換や着替えを行う際に使用する据置型立ち着替え台です。
 材質は、木合板とメラミン化粧板で組立て、全体をウレタンフォーム・ウレタンクッション材で包み込み、その上からビニールレザーを巻いております。
 寸法は、巾が620㎜ 奥行が850㎜ 高さが930㎜となり、重さは約28kgあります。
 設置方法は、梱包した箱から取り出して据置くだけですの、組立・施工は必要ありません。右ページの写真は、一番左がお母さんがお子さんを立たせたまま、オムツをこれから変えようという使用写真になります。真ん中は製品を正面から見た写真で、一番奥にお子さんがつかまる手摺、兼 小物置き棚を設置しています。
製品開発の着眼点
 パンツ式のオムツの普及により、立ったままオムツを交換することが理にかなっているにもかかわらず、公共の授乳室では乳幼児が立って着替えをする専用台がまだまだ普及しておらず、寝かせてオムツ交換をするベッドだけが設置されているケースが多いのが現状です。
 そのため、オムツ交換台の上やチェアの上、またはトイレの便座の上でお子さんを立たせて着替えをさせる事があり、落下事故の要因になりかねません。
 2014年度日本建築学会関東支部優秀研究報告書による【商業施設におけるベビー休憩室の利用実態調査】によりますと一般の寝かせてオムツ替えをするベッドで立たせて利用する例も2割近くみられています。
 そして、弊社がリサーチして得た声(右ページ)も加味し、右ページに挙げた5つの特長を持った製品として開発を進めました。
見込まれる成果
 設置していただいて見込まれる成果としては、オムツ交換台やチェアの上に乳幼児を立たせて着替えさせる危険性を減少させる事ができると考えております。
 また、『立たせて』と『寝かせて』のオムツ交換をする乳幼児の動線を分けることで、授乳室の混雑緩和にも役立つのではないか、とも考えております。
 その結果、保護者がつかまり立ち~36ヶ月の乳幼児を外出先で安心・安全に着替えを行う事ができるということが期待できます。
 サービスで授乳スペースを提供する施設側も、安全性とメンテナンスの容易さで安心して設置する事ができるのではないかと考えております。
 最後になりますが、これから関西でも大阪万博を控え、周辺施設ではベビールームの新築や改修が増えてくると考えております。
 立ち着替え台の認知度はまだまだ低いですが、この機会に皆様のお力をお借りして、ぜひ導入のきっかけとなればと思っております。
 

『国土交通省 住宅局長賞』
  「Airly ハイウォール」(ユニットパネル連続塀)
 旭コンステック㈱ 新規事業推進室 ジオテクユニットリーダー 前田 久夫 氏
 

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パネルを並べて簡単に高強度の塀をつくる
 「Airly ハイウォール」は、最大900mm、最小500mmの幅の狭いユニットパネルを並べて、最高3mまでのユニット塀を簡単に建てられるというコンセプトの材料です。従来のRC塀は、施工が煩雑なため専門工が必要で、重くて時間もコストもかかります。同じような塀を、専門職ではない外構業者が3人程度で建てられたら素晴らしいのではないかと考えました。
 この開発を進めたのは、ちょうど2011年3月11日の東日本大震災が終わった直後くらいでした。ある住宅メーカーが塀に関して非常に困っておられたのです。「コンクリートブロックのように地震に比較的弱い材料ではなく、高さがあって強さも優れた目隠し塀がつくれないだろうか」と。
 専門工でなくとも一定の強度、施工性、施工品質を保ってつくれる塀でなければならず、構造的にもエビデンスが必要です。それを実現させるため、非常に軽いパネルをつくってそれを建て込み、最終的に強度を持った構造に仕上げればよいのではと考えました。
 そこで、中心の角柱鋼材、それを囲むXPS(押出発泡ポリスチレンフォーム)、表皮のRCB(炭酸カルシウム発泡材)という全く性質の違う3種類の材料を複合的にプレスして一体化させました。支柱の鉄は錆びるという問題点がありますが、周りに非常に透水性の小さいXPSを貼って完全密閉しました。一方XPSには紫外線劣化が激しいという問題点があり、RCBで覆うことで保護したわけです。こうして、軽くて剛性が高いパネルが完成しました。1枚のパネルが埋まっているので折れない・倒れない 一体成型軽量ユニットパネルであれば、倒れることはあっても途中で崩壊することがないので、地震被害を最小限に抑えられます。コンクリートブロック塀と比較して10分の1という軽さなので地震力も10分の1になりますし、施工も楽です。デザイン対応力に関しては、われわれが想定している競合案件でできる仕上げは全て可能にしています。
 昨年の大阪府北部地震で塀の倒壊被害がありましたが、被害状況を見ると、基礎から倒れているケースは非常に少ない。大抵コンクリートブロックとRC基礎の連結部で崩壊しています。これは施工に問題があるためです。鉄筋が基礎から継ぎ目なく先端の天板まで届いていなければならず、専門工の技術が必要なのです。
 しかし「Airly ハイウォール」でつくった塀は、T字あるいはL字型の基礎で持たせるのではなく、一体化された1枚のパネルを一定の深さまで地中に埋めるものです。剛性が高いので途中で折れることがなく、風圧力あるいは地震力などの水平方向の力に対しては、受動土圧によって基礎が抵抗して健全性を保つという構造です。地中には根巻きコンクリートを入れていますが、敷地の高低差による段差が生じる場合に、埋めただけでは健全性が保ちにくいからです。
 地上2.3mが標準の高さで、根入れは550mmでコンクリートの高さが500mmです。2mを下回れば根入れは100mm浅くなります。この程度の基礎で2~2.3mの塀が実現可能となります。
鉄筋工事不要、専門工いらずの簡単施工
 施工は簡単で、根切りをしてパネルを建て込み、パネル同士はボルトで結合。建ったら根巻きコンクリートを打ち込みます。鉄筋工事は一切不要です。
 形状はさまざまで、千鳥、列柱、あるいはパネルとパネルの間にスリットを入れ、他工法の材料を入れることもできます。
 最後に建築基準法上の取り扱いについて。塀も建築物ですが、当製品の構造上、確認申請の提出義務はありません。ただし要求されれば安全性を確かめたエビデンスを提出することになるので、構造計算書を必ず付けるようにしています。防火壁には使えませんが、防火指定区域には使うことができます。
 

  『優秀賞』
  「VENTO san(ヴェントサン)」(デセントラル熱交換換気システム)
 エディフィス省エネテック㈱ 改正 卓也 氏
 
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高断熱で極寒でも暖かいドイツの家
 当社は「VENTO san(ヴェントサン)」という熱交換型換気システムをドイツから輸入販売しています。製品についての詳細は次のページで紹介していますので、ここでは当社が同製品を販売している背景、当社が行う取り組み、このビジネスを通じて伝えたいことなどについて説明いたします。
 ドイツは環境先進国と言われています。私は入社後すぐドイツへ行き、ドイツの住宅事情について学びました。滞在先は1月のミュンヘン。非常に寒く、寒波が来ると-20℃近くまでに気温が下がる地域です。
 私はドイツで、ホテルではなくAirbnbのウェブサイトで適当にチョイスした民泊に泊まりました。ドイツではごく一般的な住宅です。そのときに、素人目で見ても日本と全然違うと感じたことがたくさんありました。家の周囲には雪が積もって非常に寒かったのですが、玄関を入るとものすごく暖かくて驚きました。入室時は無暖房でしたが室内は約18℃。エアコンが見当たらないのになぜそんなに暖かいのだろうと思いました。窓はドレーキップ式(内開き・内倒し)で、宿のオーナーがDIYで厚い断熱材をしっかり施しているようでした。室内では皆、半袖です。
 全ての建物で外断熱が施工されているわけではありません。しかし、しっかり外断熱を施している家は、日本では見られないような厚さの壁を持っています。これほど高断熱なら暖かいのもうなずける、と感じました。
 建築現場も見学しました。内部の構造体の断面を見ると、空気層の大きさにも驚きました。こんな幅の空気層に囲まれていれば家中暖かいのは当然だと思いました。ホームセンターには樹脂サッシや各種断熱材が豊富に取り揃えられていました。
 住宅展示場にも行きました。全てがZEHで、しかも日本のZEH基準よりはるかに厳しく性能の高いものが標準です。どのモデルルームも内部は暖かく、快適な環境が整えられていることが一目瞭然でした。
 日本の平均壁厚が150mm程度であるのに対し、ドイツは400mm程度です。サッシの断面も複雑に入り組んだ構造をしており、性能の高さがうかがい知れます。
 現状のドイツ国内では、木造は木質系断熱材、ブロック造は鉱物系断熱材、コンクリート住宅は化学系断熱材と、工務店ごとに差別化が図られています。
換気、気密、日射対策、外皮断熱がそろって性能が得られる
 高性能だからといってドイツの家が完璧だというわけでもありません。住宅は先進国であるはずのドイツでも、健康被害や建物の損害についての報道は増加しており、特にカビのトピックは日常茶飯事です。カビ被害の1/3は換気が原因と言われています。ドイツ国内でのカビ被害額は、1996年で約12億ユーロ(約1,500億円)だったものが、現在は約50億ユーロ(約6,000億円)と、4倍に上昇しています。
 竣工後のカビ発生は訴訟要因にもなります。高断熱・高気密が進んで性能が上がってきている日本の住宅でこのような部分をおろそかにすると、新たな社会問題になることが容易に考えられます。当社としては現在、換気に重きを置いてはいますが、換気、気密、日射対策、外皮断熱などの要素がそろってこそ、住宅の性能は得られるものだと考えています。
 当社では今回受賞した「VENTO san(ヴェントサン)」という換気システムを提供していますが、換気自体まだまだ一般の施主に重要視されているポイントではないという印象があります。インテリアや意匠などの見た目が気になって、換気にはお金をまわせないのが現状です。しかし優れた住宅性能を得るためには、高断熱・高気密、そして適切な換気が必要不可欠だと考えています。
 当社はただドイツの換気システムを販売するだけでなく、日本国内の住環境をよりよくしていくために、今後も住宅性能の向上を図って製品開発に努めてまいります。
 

 『優秀賞』
  「UFO‐E」(摩擦減震パッキン)
 ㈱共ショウ 
住宅資材部 部長 山田 純嗣 氏
 
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昔の日本住宅の「力を逃がす」構造が原点に
 「UFO-E」は、基礎パッキンと同じように基礎と土台の間に設置するものです。下の部分がスライドするようになっており、これによって地震の力を建物に入る前に逃がします。地震エネルギーの入力損失を起こさせて、応答加速度を減少させるという仕組みです。同製品を取り付けた住宅は2016年4月の熊本地震での被害がゼロでした。
 熊本地震の被害状況を改めて振り返ります。住宅の被害は15万5,902棟、うち全壊が8,697棟でした。2000年以降の新耐震基準は40%です。当時、熊本地震の発生地域ですでに「UFO-E」仕様の住宅が約30棟施工されており、被害を免れたわけです。「UFO-E」の施工中の現場もありましたが、震災後何事もなく作業が再開されていました。脚立すら倒れていなかったそうで、入力損失の効果があったということです。
 熊本地震に遭遇した伝統的な石場建て(いしばだて)建築について、京都大学の中川准教授が分析した資料があります。昔の日本住宅は「力を逃がす」構造になっており、これが「UFO-E」開発の原点でした。
共振すると加速度が2倍に増幅する→倒壊
 熊本地震の地震動を応答解析しました。大きな被害を受けた益城町では1.4くらいの加速度がきたのですが、実際には2倍以上に増幅していました。
 昨年12月、展示場にて公開で「UFO-Eあり」「UFO-Eなし」の建物の模型を使って、あえて共振させる比較実験を行いました。共振すると、10~30cmくらいの揺れが起きていたのではないかと考えられます。だから8,697棟もの家が全壊してしまったのでしょう。
 「UFO-Eあり」の模型では加速度がほぼ半分になりました。依然として400galくらいの応答はあるのですが、「UFO-Eなし」では共振するとその倍は揺れるということです。400galというと、タンスが倒れるか倒れないかの微妙な揺れです。
地震力と摩擦抵抗は相殺する
 「UFO-E」の減震原理は、地震加速度と摩擦力が同じ質量で作動するためお互いに相殺するというものです。つまりそこで入力損失が起こっていることになります。理論的には1tの壁でも2tの壁でも同じ摩擦係数でいいわけですが、実際に壁を設計する場合には、2tの方の強度を2倍に上げなければなりません。
 益城町でほとんど家が倒壊してしまったのは、おそらく壁の重さと強度のバランスが崩れていたからではないでしょうか。「UFO-E」は、そういったことを考えなくても付けられるのが特長の一つです。
 過去の地震被害を見ると、適切な地震対策が見えてきます。近年の木造住宅は剛性が高いぶん、いったん変形すると、倒壊の危険が高くなります。対策としては、許容応力度計算で強度バランスのよい建物で倒壊強度を向上させること、さらに絶縁工法(土台下に「UFO-E」を挟む)でエネルギーをカットすることが有効でしょう。
歪・静止摩擦のWブレーキで減震
 「UFO-E」の減震原理にはもう一つ、「Wブレーキ」という仕掛けがあります。平坦部は静止摩擦なので滑ってしまいます。そこにいつまでもブレーキがかかるような摩擦をさらに生じさせるのです。地震の揺れで上下の凸部が乗り上げると、集中荷重により大きな応力が発生して歪摩擦が生じます。この歪摩擦と平坦部の静止摩擦がダブルのブレーキとなって減震効果が高まるわけです。
 東洋大学工業技術研究所で、「UFO-E」仕様の小屋による振動実験を行いました。この実験では、地震発生装置で阪神淡路大震災の揺れを再現しました(加速度800gal程度)。この実験でも「Wブレーキ」の安定した摩擦力が確認されました。
 

  『優秀賞』
  「Hexidek(ヘクシデッキ)」(木材デッキ材)
 Ecquality Timber Products Co., Ltd  Director テリー・ニューマン 氏
 
 
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豪州で起業、中国を生産拠点に日本へ木材を輸出
 当社は1997年、オーストラリアのキャンベラ市で創業しました。私は1995年まで約4年間東京に住んでいましたが、オーストラリアに帰ってコンサル会社を起業。日本のある材木業者との取引をきっかけに、日本へサイプレス(豪州ヒノキ)などの木材の輸出を始めることになりました。2008年には中国に独資のEcquality Timber Products Co., Ltdを設立、以来私は12年近く中国に住んでいます。
 会社として、環境維持・健康・安全・高品質を方針としており、社名も「エコ」と「品質」からきています。木材の無駄を最小限にし、つくり手にもお客様にも安全で健康な商品をつくり、こだわりの品質を保持することに努めております。
 製品は、フローリング、デッキ、壁材、パネル、ドア、階段、家具など多岐にわたっています。
優れた特性を持つオーストラリア原産のサイプレス
 最初に日本へ輸出したサイプレスは、特別な木材です。防蟻性に優れ、耐水性が高く乾燥してから膨張も収縮もしないのでとても安定しています。圧縮強度、耐久性、防カビ性も高いのです。
 ある日本企業の方がサイプレスについて研究を行ったところ、この木材の優れた性質にとても関心を持ち、私のところへ連絡を入れてこられました。そしてさらなる研究開発を進め、サイプレスの良さを日本にも伝えようと、一緒に協力して日本へ輸出することになったのです。
 オーストラリアでも製造業は厳しく難しいです。近年ますます厳しくなってきている感があります。私は十何年前からマレーシアや中国を訪れ、木材商品の製造拠点を探した結果、中国での製造を決めました。
 中国に行ってからサイプレスの商品に加えて他の木材も扱い始めました。2009年にはヨーロッパからヨーロピアンオークを輸入し始めました。
 取り扱っているヨーロピアンオークは耳付きの板で、幅も長さも乱尺、厚みは27mmと54mmです。お客様の要望に応じて、伝統的な厚い無垢オークドア、階段などいろいろな商品を製造しています。
廃材を利用してデザイン性の高いデッキを開発
 高品質の木材でも、床や建具にならない小さな切り端や廃材がたくさん出てきます。先ほども述べたように、環境維持の観点で無駄を出さないのが当社の方針です。切り端を最大限に有効利用するため、小さな商品を多数つくっています。
 その一種がヘクシデッキです。小さな板を使って何か面白いものができないだろうかと考えて開発した商品です。普通のデッキタイルなら多くの木材工場でつくっています。しかし四角のタイルはあまりデザイン性がなく、面白くないと思いました。せっかくならもっとデザイン性の高いものをつくりたいと思い、六角形(ヘキサゴン)をベースとしたデッキを考案しました。
 基本的な部品は2種類のみ。六角形の形をしたPP(ポリプロピレン)のベースと木片です。PPは紫外線に強く、ほとんど劣化しません。硬化しにくく耐久性があり、長期間使用可能です。PPのベースにはピンがついており、並べた木片が落ちないようになっています。組み合わせによっていろいろなパターンが描けるので、ベランダなど室外のフローリングにさまざまな模様がつくれます。一般の方々がDIYで使うことも可能です。
 普通の四角いタイルと違い、木片をピクセルと考え、PPのベースを画面と考えれば、自由自在なデザインの可能性が広がると思います。端の処理をして半分に切れば四角形のデッキも簡単につくれます。
 ヘクシデッキに限らず、木材の商品なら何でもつくりますので、興味を持たれた方はぜひお問い合わせいただければと思います。
  

『特別賞』
  「スマートセンサ型枠システム」
 
児玉㈱ エンジニアリング事業部 事業部長 西島 茂行 氏
 
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生コンは小さなテストピースで試験するのが現状
 「スマートセンサ型枠システム」の機能については前回情報交流会(けんざい264号に掲載)で話したので、本日はコンクリート工事における現場施工管理の重要性と信頼性というテーマで、施工管理・情報管理の透明化やトレーサビリティの重要性について述べます。
 生コンはJIS工場で製造され、出荷時間や骨材や水の温度に至るまで非常に厳格に管理されています。生コン車から現場に引き渡されるとすぐに生コンを一部採取して供試体(テストピース)をつくり、一定の環境で養生管理の上、潰し試験(圧縮試験)で強度を判断します。
 テストピースが実構造物と同じ時のものだから、強度も同じであろうというアナログな考え方です。100年間ずっとそうして代替品で強度を保証してきました。テストピースのような小さなものと大きな実構造物では環境は異なるはずです。コンクリートは水和反応という化学反応を行い、発熱量も違います。
 テストピースの管理は次のようなものです。一般的な「標準養生」は、20℃に保たれた水の中で養生するもの。水和反応に不可欠な水分量の中、良好な条件で養生するのですから、当然完璧なものができます。もう一つの「現場封緘養生」は、現場でビニールなどで囲って水分が逃げないようにして養生するもの。これも絶対条件である水が十分に確保されています。ここで問題なのは、テストピースという代替品に頼り切った強度判断がまかり通っていることです。
代替品に頼った強度判断と施工管理に一石を投じる
 現実のコンクリートの品質は、生コン車から降ろされる現場の裁量になります。春と秋は安定した温度ですが、夏と冬の温度変化の激しいときは上手に養生しないとよいコンクリートはできません。初期養生で建物の安全性や寿命が大きく変わってきます。
 果たしてテストピースを養生して、潰し試験を行った結果が、現場の躯体の実強度だとみなしていいのでしょうか。
一部抜いただけのテストピースが本当に現場のコンクリート
構造物の強度なのでしょうか。そういうことをすると構造物に断面欠損が生じる恐れが出てこないでしょうか。
 この単純な疑問点から生まれたのが本製品というわけです。生コン車から降ろされた後の生コンをスマートセンサがウォッチングします。まさに現場のトレーサビリティの実現です。これも近年の技術の進歩があったからこそです。もうテストピースに頼っている時代ではありません。
 実際にJASS5にある評価の項目なのですが、例えば「試験方法」が「目視」。これが完成時に資料として出されるわけです。生コンの打ち込み前後の状態管理には厳格な基準があるのですが、現場施工では空洞化しています。その部分は施工業者にお任せしているのが現実です。これでは発注者、施主の信頼を確保できないとわれわれは考えました。
センサで温度、強度、型枠の状態を記録・管理
 「スマートセンサ型枠システム」は、コンクリートの型枠の外側に高性能センサを付け、コンクリートの状態を管理するものです。表面の温度センサは型枠に穴を開けて直接情報をとっています。
 このセンサを使えば、生コンの状態、コンクリート打設から、水和反応の温度変化、型枠の状況、強度の発現などが全て情報として得られます。
 実際の東北の寒中コンクリートの例では、打設して2週間後には最低でも25.4N/m㎡に達していることが分かります(右ページ下)。こうした状況が最初から時々刻々と全て履歴で分かります。
 現在は橋梁工事、トンネル工事、ダム工事、海洋土木、建築ならRCマンション、戸建ての布基礎・ベタ基礎などに今まさに使われ始めているところです。
  

『特別賞』
  「RUCAD(ラクアド)」(ドア開閉装置)
 リョービ㈱ 取締役 執行役員/建築用品本部 本部長 鈴木 隆 氏
 
 
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アルミダイカスト製のドアクローザ製造に成功 
 当社の主力事業はアルミダイカストで、自動車部品の分野を得意としています。アルミダイカスト技術を使って、ドアクローザなどの建築用品あるいは印刷機器などの製造販売を行っています。アルミダイカストは自動車部品によく使われています。
 ドアクローザをつくり始めたのは創業から20年経った1963年。それまでドアクローザは鉄鋳物でつくられていましたが、これを初めてアルミダイカストでつくることに成功しました。
 約50年間の製品の変遷を見ると、最初は丸型が多かったことが分かります。ドアのデザインの変化に合わせて、スタイリッシュな四角の製品を当社が最初に出しました。現在日本のドアクローザはほぼ四角いタイプに統一されています。
「もっと軽く楽に開けたい」ニーズを追求
 ドアクローザの構造は単純です。ドアを開く力でピストンを押し込み、中に入っているスプリングを圧縮します。スプリングは反発で戻ろうとしますが、そこを油圧で制御しながらゆっくり静かに閉める。
 ドアは、気密性が向上したり、電気錠が普及したり、あるいは断熱性向上によって重量が増加するなど進化しています。「しっかり静かに閉める」というニーズに対応するため、ドアクローザの機能も充実しつつあります。こまめなスピード調整や、開き方向に強風が吹いたときに向こう側にいる人にドアが当たらないようにするためブレーキをかけるバックチェック機能。あるいは車いすが安全に通行できるよう、開いたドアがしばらく停止してから閉まるディレードアクションなど、さまざまな機能を付加してきました。
 しかし「ドアをもっと軽く開きたい」という市場ニーズがあろうことは、メーカーとして常に課題としてとらえています。
そこで着手したのが「RUCAD」の開発です。設計コンセプトは「スリム」「静音」「安全」という3点です。
○開発ポイント1「スリム化」…実は10年ほど前、すでにこの製品の開発に着手していました。このときは、開く方向は電動で、閉まる方向は従来のドアクローザを使うという方法でした。残念ながら非常に大きなボディになってしまい、商品化は断念せざるを得ませんでした。海外では電動で開くドアをときどき見る機会がありますが、それらはほとんどがこのタイプです。
 当社は10年を経て今回、開閉動作どちらも電動で制御することによってスリム化に成功しました。
○開発ポイント2「静音」…ドアクローザは、ドアが静かにゆっくり閉まるようになっているので、開閉するたびにモーターがうるさいものに商品価値はありません。そこでモーター選びや動力を伝えるギアの工夫に時間をかけました。
○開発ポイント3「安全」…本体内部に角度センサーと圧力センサーを内蔵。人や障害物を感知して動作を停止するような構造にしました。
多くの付加機能を持ち、それを簡単調整できる
 「RUCAD」はさまざまな機能を備えています。少し開けるだけでドアが自動開閉する、「ストップ機能」でドアを開いたままの状態にできる、センサーによって衝突を感知して停止する、などです。開閉速度、自動停止角度、自動停止時間などは、使用する状況に合わせて設定・調整することができます。本体の側面にあるツマミで設定・調整可能です。
 ドアおよびドア枠周辺の状態や既存の取付穴の位置などが取り替え対応範囲内であれば、メーカー・機種を問わずDIY感覚でドアクローザを「RUCAD」に取り替えることができます。さらにその他のデバイスとの連携によって、より利便性を追求することも可能です。当社はデバイスを使って「未来の当たり前」に引き続き挑戦していきたいと考えております。
  

『特別賞』
  「Tosk Remake Cover」(ステンレス製透水化粧ふた)
 ダイドレ㈱
  開発部 Tosk販売チーム リーダー 山西 啓介 氏
 
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美しく清潔で安全な側溝を広めたいという思い
 当社のメイン商材は建築設備用の排水継手、金物、マンホール、ボックス類です。今回の「Tosk RemakeCover」は今年3月に発売した新商品です。
 従来のオープン構造の側溝・集水桝用の金属グレーチングで発生する問題点(以下の1~3)を解決しようと考えたのが製品開発の背景です。1.表面の格子目のすき間でハイヒール、ベビーカー、車いすの車輪などが引っ掛かりケガをする恐れがある、2.タバコや落ち葉などのゴミが溜まり、水が流れない、3.表面のすき間から害虫などが侵入・繁殖して衛生上よくない (病原菌発生)。
 ユーザーから「排水性はそのままで開口部にふたをできないか」との要望があったため、開口部に天然石を敷き詰め、表面はフラットな形状でも排水機能に優れ、さらに従来のグレーチングでのデメリットまで解消した、新しいタイプの透水化粧ふたを実現しました。 「Tosk Remake Cover」には、透水性、景観性、安全性と衛生面という3大ポイントがあります。
○ポイント1「透水性」…優れた透水性で水は流し、ゴミは防ぎます。繊維化合成樹脂バインダーを採用することにより強固な接着性を持ち、空積率が大きく排水性に優れ骨材も剥がれにくい構造です。
 繊維化合成樹脂バインダーとは、エポキシ系樹脂とセラミック樹脂の合成繊維で、業界初の採用です。この合成樹脂によって接着された2層構造(特許出願中)により透水性がアップしました。
○ポイント2「景観性」…開口部の天然石は25種類から
選べるのでバリエーションが豊富。さまざまな場所や周りの景観に合わせて使用できます。
○ポイント3「安全性と衛生面」…バリアフリー化に優れ、安全に通行できることに加え、害虫などの侵入を防ぎます。
 ふたのフレームはステンレス(SUS304)を使用しているので強度が抜群です。耐荷重においても歩行用~T25(大型ダンプ横断可能)まで4タイプを用意しています。
 また透水化粧ふたは工場で天然石を詰めた状態で出荷するため、現場で据え付つけるだけとなり工期を短縮できます。
特殊な繊維化合成樹脂で排水性と透水性を実現
 2層構造を利用した舗装についてご紹介します。この構造は排水性・透水性に優れた舗装を実現するものです。
25種類の天然石からセレクト可能、多様な場所で利用できて周りの景観を引き立てる、優れた外構景観舗装です。特殊な繊維化合成樹脂バインダーの採用により、石剥がれがなく、24時間で硬化するため、翌日開放が可能です。これも工期短縮につながるポイントです。
 「排水性舗装」は天然石1層だけを使った舗装。また「透水性舗装」は下地に6号砕石、上の仕上げに天然石を使った舗装です。
 繊維化合成樹脂は引っ張り試験を行っています。上が天然石、下がコンクリート・モルタル層になっている試験体を同時に引っ張るものです。天然石にコンクリート層の基礎が追随するため、「石剥がれのないバインド」を実現しています。
今後の社会のために「Tosk」を役立てたい
 Toskの透水性を利用した他の製品に、ハイドロパネル(トイレ用汚垂れパネル)、ストーンデッキ、ツリーサークル、雨水ますのふたなどがあります。
 当社は、社会問題解決の一助として、今後の高齢化社会に向け、安全性・バリアフリー化に優れ、衛生面、景観性にも配慮した商材によって「Toskで始まる暮らしと人にやさしいECOな街並み」を構築することをビジョンとしています。
 また、大阪のまちからタバコの吸殻だらけの側溝をなくすことをコンセプトに、地域活性化への貢献も掲げております。
 



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