2007けんざい
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建材情報交流会ニュース

 第50回
「これから求められる建材とは」

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基調講演
「ハウスメーカーが求める次世代のマテリアル」

 宮田 昌信氏 大和ハウス工業梶@本社技術本部総合技術研究所
 工業化建築技術センター 建築系技術開発2グループ長

 


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■本題の背景としての社会動向
 まず社会動向についての説明です。日本の人口は、2008年の1億2808万人をピークに横ばいになっている状況です。少子高齢化といわれているので、0歳から14歳および、15歳から64歳の働き盛りの人は今後減ってくると予想されています。反対に65歳以上の人口は今後非常に多くなり、何十年後かには40%くらいになるのではないかという統計が出ています。新築住宅着工戸数は気になる数字です。1980年代は160万、166万、167万戸あたりを推移して非常によかったのですが、ここでバブルがはじけます。そのときに130万戸代まで落ち、以降少しずつ回復はしていますが1995年に阪神淡路大震災、1997年消費税増税前の駆け込みがあったため、震災の復興と駆け込み需要が重なって160万戸代に戻りました。戻ってそのままの調子でいけばよかったのですが、若干落ちてそのまま平行線をたどったというのが現実です。2005年頃に耐震偽造事件が発生し、そのとき建築基準法の改正等がありました。2008年はリーマンショックが起こりました。私はその頃中部にいて仕事が減って苦労した経験があります。
 2013年に消費税増税前の駆け込み需要で100万戸代になるかと予想されましたが、99万戸までいって現在にいたっています。今後は、統計上では右肩下がりが予想されています(図1)。
 空家数は、1978年は7.6%でした。できるだけ空家は少ないほうがいいのですが、現状は14%から15%です。統計的に現状ある建物は空家率が高くなっていくのではないかと予想されています。このあたりも、われわれがどのように展開していくかがポイントです。
 次に住宅の割合を調べてみました。戸建て住宅・プレハブ住宅のシェアを見ると、住宅は一戸建てが最も多く2,860万棟で54.9%です。共同住宅が2,209万棟で42.4%、長屋建てが129万棟で2.5%。気になる構造の部分ですが、日本の建物は木造が3,011万棟で57.8%と比率が非常に高い。次に鉄筋コンクリート造が1,766万棟で33.9%、鉄骨造が419万棟で8%しかないというのが現状です。戸建てとプレハブのシェアを見ると、今のところプレハブはわずか16%程度で、6棟に1棟の割合です。
 リフォーム市場はどうでしょうか。リフォームは、狭義では住宅着工統計上「新設住宅」に計上される増築・改築工事、設備等の修繕維持費を指します。広義では、狭義のリフォーム市場規模に、エアコンや家具等のリフォームに関連する耐久消費財、インテリア商品等の購入費を含めた金額を入れたものを指します。両方ともほぼ平行線をたどっていますが、狭義の市場でも大体6兆円の規模、広義の市場では7兆5千億円くらいの規模を持っており、相当の額になっています。
 こうした社会動向を踏まえた上で、大和ハウスグループの取り組みを紹介させてもらいます。

■大和ハウスグループの取り組みについて
 当社は、戸建住宅事業 、賃貸住宅事業、マンション事業、住宅ストック事業といった住宅系事業と、商業施設事業、事業施設事業を行っています。その他海外事業展開や、大和八ウスグループでの取り組みがあります(図2)。グループ会社としては連結で142社です。売上は大和ハウス単体で1兆6千億円、グループで今回3兆1千億円を達成しました。建築の工業化を理念に創業、プレハブ住宅メーカーとして成長ニ一ズに対応した多角化で、「人・街・暮らしの価値共創グループ」としてさらなる成長を目指しています。
 今回のテーマである、材料に関する考察にあたり、総合技術研究所の取り組みを説明します。総合技術研究所では、産・官・学・医と広く連携をとって研究活動を進めています。7つのキーワード「あ・す・ふ・か・け・つ・の」(あ:安全・安心、す:はスピード・ストック、ふ:福祉、か:環境、け:健康、の:農業)を常に考え、いかなる技術で応えていくかを研究開発テーマとしています。
 まず「あ」の「安全・安心」。徹底した検証に基づく安全・安心の研究です。耐震住宅や制震住宅、Σデバイス等、その他の建築系では座屈拘束ブレース「D-TECBRACE」、鋼管杭工法「D-TEC PILE」などを研究所発信で行っています。世に出す前に必ずE-Defenseで安全・安心を検証します(図3)。
 「す」のスピード・ストック。工業化技術が生み出す高資産価値のストックです。例えば工業化住宅の「トリプルコンバインドシステム」は、三つの鋼材を一つの柱と見立てた技術で、集合住宅は全部これを使っています。他に外張り断熱通気外壁、ecoナビゲーター、DSQフレームシステム、狭小空間点検ロボッ卜「moogle (モーグル)」などの技術ストックもあります(図4)。
 「ふ」の福祉では、利用する人の全てに優しく、細やかな提案を心がけています。当社オリジナルコンセプのユニバーサルデザインを「フレンドリーデザイン」としています。「か」の環境」。新エネルギーの風を利用した「風流鯨 (かぜながすくじら)」、そのほかに「エコジャイ口」、リチウムイオン蓄電池、壁面緑化技術なども当研究所からの発信で世に出しています(図5)。
 「け」の「健康」は、心と体の健康のための住まいの技術。在宅健康チェックシステム「インテリジェンストイレ」と「健康かんりくん」は自宅でも健康管理をしようというところがキーポイントです。家全体の空気を浄化しようというイメージでつくったオリジナル空気清浄機「空気浄化ef」、ピアノ演奏をしたり大音量で音楽や映画を鑑賞したりといったニーズからの防音技術による心の健康「奏でる家」などもあります。
 「つ」の通信。ホームネットワーク、防犯配慮「留守宅モニタリングシステム」、「スマートハウス」実証実験、エネルギーマネジメントシステムと「D-HEMSV」などがあります。「電気がどうなっているか」という単なる見える化に終わるのではなく、今後はA(I 人工知能:Artificial Intelligence)やIOT(Internet of Things)を使いながらそこをコントロールしていきたいと考えています。
 「の」の「農業」は、食料自給率向上を目指すための「農業の工業化」です。植物工場ユニット「agri-cube (アグリキューブ)」は、光、温度、水質などを管理したユニットで野菜を育てるものです。今は小さな建物ですが、今後はもっと大きい建物、例えば工場の跡地などに大きなユニットボックスができそうなので、そちらに展開を検討しているところです。

■課題(1)人財不足
 建設業界には、(1)人財不足、(2)環境問題、(3)技術改革の三つの課題があります。
 まず人財不足。1997年には約685万人いた建設関連の労働者は2014年には約505万人になり、180万人ほど減りました。中でも建設作業者数が顕著に下がっています。建設業就業者の年齢構成の推移を見ると、1997年当時は55歳以上と29歳以下労働人口の比率がほぼ同じでしたが、全部門の29歳以下が一気に減り、当然ながら建設に関わる労働人口も減って、2014年には16.4%になってしまいました。55歳以上は34%で高い比率です。抜本的な手を打たないと今後建設業は生き残っていけないでしょう(図6)。
 建設関係でも、現場は人の手によります。当社には工場があり、一部ロボット化してはいますが、まだまだ人が介在してパネルをつくったり、鉄骨をつくったりしています。ロボット化による省人化を進め、設計そのものを簡素化する必要があると思っています。
 当社の企業理念は「事業を通じて人を育てること」が一番はじめに来ます。事業を行う上で一番重要なのは人材育成であるという考えです。「人財」と、「材」ではなく財産の「財」を必ず使います。人財育成センターでは、社員のみならず施工現場で働いている人たちの研修も行っています。

■課題(2)環境問題
 企業側もCO2の削減を行わなければなりません。日本の排出量は世界の3.7%です。日本の部門別CO2排出量の割合を見ると、産業部門は34%と一番多いのです。この34%をどう落としていくかが大事です。
 世界の森林面積の変化についてのグラフがありますが、世界的に森林の面積が減ってきていることが分かります。特にアフリカ、南米で顕著に落ちています。ヨーロッパが上げているのはなかなか素晴らしく、特筆すべきことです。廃棄物排出量の業種別排出量と割合のグラフからは、製造業からの廃棄物が最も多く28%、電気・ガス・水道業が25%、そして意外にも次が農林業で21.6%、建設業は20.9%。建設業の廃棄物排出量をいかに減らすかも課題です。環境問題を解決するには、太陽光発電や自然エネルギーをどう使っていくかが重要な課題です。廃棄物を減らす努力も必要ですが、どのように管理していくかが重要なテーマになってくるのではと思います。
 当社では、「Challenge ZERO 2055」と名付け、2055年までに環境負荷ゼロに挑戦する活動を進めています。その一環が施工現場のゼロミッションです。購入した材料は工場で加工して施工現場に出しますが、現場で生じた廃材は細かく分別してもらい、一度工場へ戻します。工場では2次分別を行ってリサイクル工場へ出し、リサイクル工場でつくられたリサイクル材を再び新築現場に納入するというサイクルになっています。現状は新築住宅だけですが、今後リフォームなどにも展開しようと考えています(図7)。
 廃棄物を出さないためにはどうしたらいいのか。建物そのものをReuse(リユース)できないかを考えます。例えばコンビニがあったとして、今は売上が大きいが数年後には客が入らなくなることが予想されるとき、オーナーは壊すのかどうかの判断をします。そこで、これをそのまま解体して再利用・再構築しながら、再生(リストア)してもう一回営業できるしくみがあります。今、システム建築という建築商品だけを持っているので、建物をリストア&リビルドする形で建物をReuseするやり方です。
 建物の外壁に使われる面材は、端材部分が廃材になります。今まではメーカーに返したり捨てたりしていたのですが、もったいないのでリサイクルすることにしました。廃材を微粒子レベルまで粉砕し、プラスチックと混ぜて高い強度を持つリサイクルプラスチック製品をつくりました。これは基礎鉄筋を適正に配置する「基礎スペーサー」に適用されています。

■課題(3)技術改革
 建材を長寿命化していかなければいけないと感じています。途中で壊れたり、錆びたり、朽ち落ちたりするのが現状です。今は、何年持つかという議論ばかりです。もの自体を長寿命化することも大事ですが、長寿命化させるための金物や、アシストするような部材も必要ではないかと考えます。建材の軽量化・高強度化が求められていますが、壊れてしまうケースが出ると思うので、新素材や新建材が今後必要ではないでしょうか。目線を変えて、石油系由来から植物由来植物へのシフトによって持続可能な素材をつくっていきたいと考えます。

■次世代の建築に対応するマテリアルの開発を期待
 今後求められるマテリアルとして、自社でも素材の活用を検討しています。長寿命化に関しては、高耐久・高強度メンテナンスフリーなどがキーワードです。その中で軽量素材や複合材料をつくっていきたいと考えています。森林資源やその有効活用の問題ですが、木材そのものをいろいろなものと組み合わせたハイブリッド工法も検討に入っており、今試作している最中です。今後、施工性や環境負荷低減、軽量化などについては、やはり新素材、新構法を持っていきたいという考えです。
 現在、金沢工業大学など28機関と一緒にCOIの活動を行っています。現状は革新材料による次世代インフラシステム構築を目指し、安全・安心で地球と共存できる数世紀社会の実現のため「革新材料」および「革新製造プロセス・製造装置」の開発にあたっています。われわれが求められているアプリケーション・サービスが三つあります。社会インフラ、海洋インフラ、住宅・都市インフラです(図8)。
 社会インフラでは、トンネル、道路、橋などに関し、長寿命化、軽量・高強度構造、新たな施工方法や維持管理技術によって社会コストを大幅に低減するのが目的です。海洋インフラでは、鉄などの従来材料ではできないような非常に長いものを1枚ものでつくれないか、といったことに取り組んでいます。
 われわれが携わるのは住宅・都市インフラです。環境性能に優れた素材、高機能材料によって新たな住宅環境をつくり、都市を再生・構築するというもの。こうした形でCOIの活動も一緒になって行っています。
 ハウスメーカーが求めるマテリアルとは、使用者と供給者が問題点や課題を共有し解決する手段だと思います。2020年の東京オリンピック・パラリンピック以降の仕事量は、当社ではまだまだ予測できませんが、少子高齢化・人口減少による人財不足、職人不足は避けて通れない現実です。そのため、次世代の建築物への対応として安全で環境に優しく、低コストで高品質なマテリアルの開発に期待します。
  


「新築・改修に適した薄型・軽量・省力化シート建材」
 岡本 隆司氏 エスケー化研梶@事業本部
 マーケティング営業部 営業技術チーム

 

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■シート建材好調の背景―建築市場の動向
 本日は当社で製品化している、塗料をシート化したシート建材を紹介します。シート建材は最近売り上げを伸ばし、倍増しています。その背景となる建築市場の動向、建築仕上げ材の動向について述べさせていただきます。
 建設と土木を足した建設投資額推移のグラフからは、1992年に84兆円あった投資額が2010年に41.9兆円と約半分に減っていることが分かります。その後震災の復興予算、アベノミクスなどがあり、2016年には51.8兆円と回復の兆しが見られます。
 投資額の新築と改修では、新築がかなり減っている代わりに、維持修繕工事はおおむね12兆円から15兆円で推移して非常に安定しています(図1)。 住宅戸数と世帯数、空き家状況の推移を見ると、総住宅数は年々増えています。しかし2020年をめどに世帯数が減っていくと予測されているため、ますます空き家は増えていく見通しです。政府も中古住宅の流通を後押ししていることから、われわれメーカーとしては今後住宅の改修需要が伸びていくと考えています。
 維持修繕工事比率をヨーロッパ各国と比較すると、ヨーロッパの約50%に対して、日本の27.9%という数字は低く、まだまだ維持修繕工事の需要の中に伸び代があります。新築工事のみならず改修に適した材料の開発が一つのテーマではないでしょうか。
 建設業者数は今どんどん減っており、2015年はピークのときと比べて77.8%まで減少しています。また、建設就業者の高齢化が進行しています。10年、20年経つとさらに問題は深刻化するため、これはわれわれ業界が抱える問題として取り組んでいかなければなりません。そういう中で現場からは、工程や工期を短縮し、労務を軽減できるような省力化建材、省力化工法が求められているのではないかと考えています。

■外壁仕上げ材の動向とニーズ
 外壁のタイルが落下する事故が全国的に多発していて問題視されています。その中で外壁にタイルのような重量物を使うことを極力避けていこうという動きがあります。タイル離れが進んでいる理由として、@定期報告制度の厳格化(平成20年4月に改正された特殊建築物の外壁調査)A法的責任(落下で責任を追及される)、B経済負担(かさむタイル補修費用)です(図2)などが考えられます。
 今後の外壁仕上げ材に求められるキーワードは四つ。一つ目は省力化、工期短縮(簡易施工)。二つ目は安全性(軽量、密着性)。三つ目は資産価値の向上(意匠性、高級感)。四つ目は改修工事に適した材料(低臭、低騒音)。このような材料が求められることになるでしょう。

■塗料をシート状に成形した石材調のシート建材
 では当社シート建材の紹介に入ります。現場に吹き付ける石材調塗材がありますが、これを工場で乾燥させて2〜5mmくらいのシート状に成形した仕上げ材を当社ではシート建材と呼んでいます。シート建材のメリットは次のようになります。圧着張りで簡易施工できるため工期が短縮できる。薄くて軽く、密着性が高いため安全性が高い。施工者によって仕上がりむらが発生する現場塗装品とは違い、工場で成形しているので仕上がりの品質が非常に安定している。低臭、低騒音、低粉塵である。
 シート建材のこれらの特長は、先述の「市場の求めるニーズ」に合致しており、それがこの数年引き合いが増えている理由です。 商品名は、石調、木目調シート建材「グラニピエーレ」。シートは、水性ボンドを使って圧着貼りするだけで施工可能です。またカッターナイフ1本あれば現場でカット、切り欠きができます。樹脂製なので非常にフレキシブルでφ600mmまでの曲面施工ができます(図3)。薄型・軽量設計で、レギュラータイプの御影石調であれば平米当たりの重量が約4kg、厚みが2〜3mmで磁器タイルや天然石と比べて非常に薄型軽量設計で躯体に負担をかけません。タイル貼りでも石貼りでもないので当然先述の定期報告制度の対象外です(図4)。
 シート材料は、ベース層、メッシュ層、主材層、トップコートの4層構造で、最表面には防汚や耐久性に優れた超低汚染型フッ素樹脂クリヤーが施されています。「グラニピエーレ」のテクスチャーは、御影石調、砂岩調、木目調の3種類。本物の天然石や天然木をマスターにしてパターンを転写しているのでリアルな仕上がりが得られ、本物と見分けがつかないほどのクオリティです。
 石材調の御影や砂岩タイプは最大サイズが895×595mm、木目調は少しサイズが異なり、幅が300mmで長さが2,950mmです。現場にはロール状で搬入され、現場で伸ばして施工します。 付着強さ、耐久性、塗膜性能、耐侯性を測る物性試験を行っています。結果、付着強さでは、いずれの乾燥養生条件下でも、JISの規定する0.7N/mm2、0.5N/mm2、を大きく上回る付着性が確認されています。耐候性は促進試験によって、20年相当の照射強度に対しても色の変化が少ないという結果が得られました。
 屋外環境で10年以上経過した状況を見ても、外観等に目立った汚染、剥がれなどは全くありません。「グラニピエーレ」はメンテナンスフリーの材料ではありませんが、10年程度の屋外環境であれば問題ないことが伺えます。
 「グラニピエーレ」の施工について簡単に説明します。シートの貼り出し基準線をつけ、下地に適したシーラーまたはプライマーを塗装して専用の水性接着剤を全面に塗布します。その後基準線に合わせてシートを圧着すると、最後に小口の部分を筆で処理して完成です。非常に簡単な施工です。

■グラニピエーレの採用事例――改修
 「グラニピエーレ」は薄型軽量で改修に適した材料です。東京・田町の駅近くにあるオフィスビルの改修事例です。既存はタイル仕上げですが一度ピンネット工法で下地を補強した後に、最終仕上げで「グラニピエーレ」の御影石調タイプを施工しました(図5)。
 大阪のあるマンションエントランスの例。マンションエントランスといえば、出隅、入隅があって、スイッチなどいろいろなものとの取り合いがあるのですが、「グラニピエーレ」は加工性に優れ、難なく施工できます。また丸柱などの曲面でも平面と同じような感覚でシートを貼り付けることができます。
 熊本のマンションで、妻壁のタイルの改修で採用された事例。施工直後に例の熊本地震が直撃しました。そのマンションは一部倒壊した熊本城から約1kmのところにあり、周辺のマンションは一部倒壊したり、クラックが入ったりしていたのですが、その物件にはクラックもシートの剥がれもなく、住民や改修事業者から非常に高い評価をもらいました。
 札幌市が管理する温水プールの外壁改修で採用された事例があります。もともとのタイルをしごいてシートを上から重ね貼りしました。冬は1mくらい雪が積もることもありますが、そんな状況でも「グラニピエーレ」に不具合などは起こっていません。寒冷地でシート状のものを提案すると、凍害が心配だと必ず言われるのですが、「グラニピエーレ」は北海道エリアはもとより東北、信越エリアでもかなりの実績があり、今まで凍害などの問題もなく、寒冷地でも十分に対応できる材料と言えます。

■グラニピエーレの採用事例――新築
 新築のパチンコ店の外壁です。下地が金属パネルだったので、錆止めのプライマーを施したのちにシートを貼っています。改修下地はもちろんですが、新築のALC、押出成形板、RC、コンクリートモルタル、さらに金属パネルにもプライマー等の適正な処理を施せば簡単に施工できます。
 神奈川のオフィスビルの吹き抜けの内装に採用された事例です。建物が中間免震の構造をとる特殊な事例です。免震層がある切替え目地の下の方は天然石を貼っていますが、中間免震から上の層は天然石に色合わせをした「グラニピエーレ」を施工しています。もともと全て天然石を貼る予定でしたが、揺れたら危ないため、「グラニピエーレ」の安全性を評価いただいて採用されました。
 一昨年にオープンした沖縄の大型商業施設。共用の吹き抜け3階までの柱に全面採用されました。この物件はもともと琉球石灰岩を貼り付ける予定でしたが、高所に石を貼る危険性を考慮して「グラニピエーレ」が採用されました。本体工事、テナント工事、いろいろな業者の方が入り乱れての突貫工事でしたが、中でも際立って「グラニピエーレ」の施工スピードが速く、大手ゼネコンからも高い評価をいただきました。

■木目調グラニピエーレの魅力
 木目調の事例です。埼玉県の集会所の丸柱。木目調も柔らかい材料で丸柱に簡単に施工できます。天然木ならそういった施工は難しいと思いますが、平面同様に簡単に丸柱を木目調のデザインにできるのが、木目調シートの魅力の一つだと思います。
 最後は和歌山の公共案件の新築で採用された事例です。新築で下地は縦張りのALCです。すでに築7年経過しており、和歌山方面へ仕事で行ったときに、どうなっているか見に行きました。通常、天然木なら色が焼けたり反りが出たりするのですが、フッ素コートされた材料なので、新築のときに近いクオリティで色も変わっていない、反りもない、非常にいい状態でした(図6)。このように「グラニピエーレ」の木目調は、天然木にないデザイン性もさることながら、耐久性、反りに対する抵抗性があります。
 このようにこれらシート建材は、安全性、施工性、自然感に富む装飾性が評価されて、実績を広げています。今後、特に意匠を加えバリエーションを増やしたいと考えています。
 


「直貼り省施工天井材・低湿度環境下に対応した不燃化粧板について」
 久保 剛氏 潟Gーアンドエーマテリアル
 建材事業本部 建材営業部 技術グループ

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■フレキソ印刷で加工した簡易な直貼り天井材
 昨年の10月、「ハイラック天飾」という、けい酸カルシウム板(けいカル板)に斜碁目柄(はすごもくがら)を付けた直貼り天井材を発売しました。けいカル板は天井材に幅広く使われているのですが、今回はコストを意識して、単なる塗装ではなくフレキソ印刷機を使って加工するという手法でこの加飾柄を付けています。フレキソ印刷は簡単にいうと、ゴム印のような手軽な柄付けです。これは、現場施工の省力化、工期短縮を図りコストを意識してとった手法です。
 材料規格はほとんどけいカル板ですが、表面の柄は斜碁目柄です。これは和風をイメージしており、色はシンプルなライトグレーです。基材はけいカル板の6mm、場合によれば5mmでも8mmでもできます。一般的な天井材としては6mmを標準としています。幅・長さは天井材に特化しているので、常備在庫しているのは910×910mm。面取り加工は受注生産になりますが、現場でも簡単にできます。基材標準物性は一般のけいカル板と同じです。

■ニッチなニーズ、非住宅の駐車場などの天井に
 加飾天井材というと化粧材をイメージしますが、これは簡易的なものでかなり用途が限られます。少しニッチなところがありますが、当社で意識しているのは店舗や共同住宅などの駐車場、駐輪場の天井。工場、倉庫、物流施設などの駐車場、駐輪場の天井(図1)です。
 いろいろな用途によって違いますが、バックヤードなら天井材など素板でもよいがもう少し何とかしたい、しかしかなり面積が大きい、といった場合に、コストを考えて現場塗装せず、こういう材料を使ってもらえれば、という提案で商品化したものです。昨年10月の発売以来、皆さまに商品PRをしてきましたが、いくつか実績が出ています。
 高松の某事務所ビルの駐車場天井です。現場塗装せずに当社のハイラック天飾を使って改修したものです。写真右上は拡大した柄です。事務所や病院のビルの簡易的な駐車場で、このくらいの柄が付いていれば十分では、というようなところに、このような目透かしで貼っています(図2)。
 取り付け下地間隔と止め付け金具間隔は、通常のけい酸カルシウム板と同じように300ピッチで下地を付けて貼っていきます。白のカラービスが比較的見えにくく、当社は推奨しています(図3)。規則的な柄ですが、施工方法が目透かし張りや面取り突き付けなので、完全な突き付けはしないまでも、職人さん側はどうしても柄をきっちり合わせたいと思ってしまいます。パンフレットにも注意事項として書いてあるのですが、完全には合わせられないのでご理解をいただききたく思います。今後不規則柄も検討しています。

■低湿度環境下に対応した不燃化粧板
 次は化粧繊維混入石膏板「ステンド#800ドライ」です。除湿が必要な製造ラインやストックルームの条件に対応するために開発しました。低湿度環境下、一般的にドライルームといいますが、それ以外の低湿度環境でも乾燥収縮が極めて小さい基材なので、ドライルーム用不燃化化粧板として発売しています。
 基材のFGボードを曲げる場合、水打ちして、柔らかくし施工しますが、のちに乾燥します。普通なら収縮が起きるのですが、それでも問題がないのは寸法変化が極めて小さいということです。化粧板にすれば表面平滑性や耐薬品性は化粧けいカル系同様に持っていますし、基材は当然比重が高くなりますが、強度も高くなります。不燃認定も取得している材料です。
 規格は、通常の化粧けいカル板は6mmくらいですが、これは十分強度がありますので、重量等を含めて厚さ5mmのものが標準の規格です。幅・長さについては910×1820mm、910×2420mmを用意しています。化粧面は四周糸面取り加工で、裏面は全面シーラー処理しています。当社の化粧けいカル板はステンドといいますが、それと同じ化粧断面で、シーラー処理して目どめ処理を施し、アクリルウレタンの塗装をかけています。
 比較的低湿度環境が求められるのは、代表的にはリチウムイオン電池、精密電子、医薬品関係などの製造現場、ストックルームなどです。 化粧板の物件でリチウムイオン電池工場での施工実績があります。柱が20〜30本あるある大きな部屋で、基本的に周りが金属パネルでした。まさにドライルームで、湿度0.2%かほぼ0%の部屋です。
 実際の不具合事象を湿度との関係でいろいろ調べて最近分かってきたこともあります。ある医療機器工場の事例で、ドライルームまではいかないですが、最高でも湿度24%以下の室内。40%設定の部屋と30%設定の部屋があります。30%設定の部屋で、それ以下を守るために湿度を下げるのですが、20%が常になると、全部ではないのですが部分的に、特に換気や照明がある天井材の切り欠きからクラックが入りました。
 壁はほとんど切り欠きのない割り付けをしているのですが、天井のその部分だけ切り欠きしており、そこにのみクラックが生じたものです。別の医薬品工場でも、常に20%の設定の部屋で、設備機器や間仕切りの切り欠きのところからクラックが入りました。
 非常に低湿度で、常に湿度20%以下の設定になっていた某研究棟で、コンセント部分の切り欠きにクラックが入った事例があります。極端な温湿度はやむを得ないと思うのですが、これまでの事例から見ると、25%になったからすぐクラックが入るというわけではないですが、常時25%以下の設定にしていると、切り欠き部分からクラックが発生する頻度が高くなってきます。当然けいカル板だけではなく、あらゆる材料は収縮するのですが、特に低温度環境下で乾燥収縮によるクラックが割合的には大きいので、ステンド#800ドライという商品をつくったわけです。

■ドライルームなど厳しい条件の部屋に適した材料
 開発過程では低湿度環境暴露試験を行いました。一番厳しいドライルームの環境(20〜25℃の室温に露点温度−30〜40℃、湿度換算約1%)に設定した部屋で、せっこうボード下地に#800のFGボード基材の化粧板とけいカル板基材の化粧板を接着貼りして真ん中に切り欠きを入れ、6カ月暴露する実験です(図3、4)。
 #800は最大でも600με(マイクロひずみ)、長さ変化率で0.05%、1000mmに対して0.5〜0.6mmの収縮量です。化粧けいカル板は1300〜1400μεで、1000mmに対し1.4〜1.5mmくらいひずみが出ました。
 弾性接着剤を使っているものの拘束力はあるので、ひずみと引っ張り強度を考えると、1000μεくらいまでいくような収縮が起きるとクラックが発生する可能性が高くなります。それに対してステンド#800ドライは600μεあたりで収まって、ドライルームでも心配ありません。このあたりは天井材も含めて使い分けてほしいと思います。
 乾燥収縮以外の要因で割れることもあります。切り欠きの隅角部(L字になる部分は)、通常では目に見えなくてもやはり「切断勝ち負け」ができます。施工するときに、隅角部のφ10程度の下孔を電動ドリルで開けるよう注意書きをしていますが、それが完全に網羅されているかとなると、なかなかそういうわけにもいかないのです。
 また、通常の環境であればその施工の仕方でも問題ないと思うのですが、厳しい環境、特にクリーンルーム系で低湿度の環境のところではが不具合が出てきます。中には「ここに裏打ち鉄板を入れてください」と注意書きしているメーカーもありますが、コンセントのような場所に裏打ち鉄板をあらかじめ入れるのは非常に難しいものです。それを全部入れるとなると、コストも非常にかかってしまいます。
 当社の提案としては全部の部屋でなくてもいいので、そういった厳しい条件の部屋だけステンド#800ドライを使ってもらえればいいと思います。

■化粧けいカル板と変わらない強度、耐性
 化粧面の性能は化粧けいカル板と変わりません。基材が強度になった分、通常化粧けいカル板が表面硬度2H程度のところ、ステンド#800ドライでは3Hと少し向上します。実際は3Hから4Hあるのですが、安全のため余裕を持って3Hと記載しております。
 耐薬品性も化粧けいカル板と遜色ありません。同じ塗料を使っているので、化粧けいカル板と同じように無機酸、アルカリ、有機溶剤、消毒液関係に対して問題ない耐性を持っています。壁によく使われている通常の化粧けいカル板と大差は全くありません。
 色については、基本的な化粧けいカル板の標準色を含め、最近つくった白系のフレッシュミルクも合わせて基礎の8色を受注生産品としてつくるようにしています。FGボードという素材は通常在庫して、一般的に使われているので、それを研磨してすぐ塗装ラインの工場へ持っていくことができ、さほど納期もかからないので、基本は受注生産としています。

■施設内の特殊な部分にのみ貼るなどの使い分けを
 施工例です。クリーンルームではありませんが、海産物関係の工場で、乾燥室と書いてあるように、海産物を乾燥させる部屋です。こういう場合、奥の部屋だけ#800ドライを使って、その周りは全部化粧けいカル板というように使い分けています(図6)。
 最後にステンド#800ドライは比較的特殊用途向けではありますが、化粧板用途の中でもドライルーム、あるいは低湿度設定のあるクリーンルーム室、特に薬品の工場や研究施設に適しています。通常の施工で後からクラックが入ると、メンテナンスなどいろいろと問題が出てきます。わざわざ裏打ち鉄板を入れるなどで対応するのではなく、特殊な部屋はこのような商品を使い、ほかのところは少しコスト的に安いステンド#400、#500の化粧けいカル板と、要求性能に合わせて使っていただければ非常によいと思います。 
 



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