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2026年4月15日高槻城公園芸術文化劇場
木製の縦ルーバーは町家の縦格子をイメージ JR高槻駅、阪急高槻市駅から城北通を南に歩くと、大小のキューブが組み合わさった建物が姿を現します。2023年3月にオープンした高槻城公園芸術文化劇場です。高山右近が城主を務めた高槻城二の丸跡に位置する高槻城公園の中央エリアに、市民交流の場、文化芸術の創造発信拠点として誕生。外観からは、低層部を覆う縦の木ルーバーが目を引きますが、実は内部にもふんだんに木材が使われています。静かな周辺環境からイメージされたコンセプト「高槻の杜」
高槻城公園芸術文化劇場は、高槻城公園の中に建つ劇場として、公園と一体的に機能するよう計画・設計されました。外部だけでなく内部にも随所に木が使われ、来場者に温かみをもたらしています。
公募型プロポーザルによって採用されたのは、「高槻の杜」をコンセプトに、地元大阪府産の木材を活用する設計案でした。高槻市がどのような思いで劇場の計画にあたったのか、高槻市 市民生活環境部 文化スポーツ振興課の藤巻俊亮さんがご説明くださいました。
「本劇場はその名前にある通り、高槻城公園という公園内に立地しています。新劇場の整備にあたっては、公園をはじめとした周辺環境と調和し、公園と同じように気軽にお越しいただける劇場にしたいという思いがありました。木材を活用し、周囲の木立と調和を図った案はこのイメージに合致していました。」目指すのは市民に開かれた「日常づかいできる劇場」
同劇場は、公園と一体化し、広く開かれた公共空間となっています。大きなガラスが張られ、明るく広い1階のエントランスロビーは周囲を取り囲む公園エリアとの連続性を感じさせ、人々はベンチで休憩したり、併設のカフェでお茶や軽食を楽しんだりと思い思いに過ごしていました。
「回遊性は特に重視しました。高槻は市民による文化活動が活発な市なので、市民の方々が使いやすい施設であることを大切にしています。エントランスロビーは自由に通り抜けでき、劇場の休館日でも開放しています。散歩中の人がお手洗いに立ち寄ったり、幼稚園の散歩コースになっていたり、近くの高校の生徒さんが勉強している姿も見られますよ。このような『日常づかいできる劇場』が私たち運営者側のコンセプトです。」
劇場の外構部分には、かつての高槻城を思わせる堀や塀を再現するなど、歴史的な遺構を現代的にデザインしています。劇場内外に多用されている木ルーバーは城下町の町家の格子戸を思わせます。よく注視しながら散策していると、「これも高槻城のイメージかな?」というデザインに出会えます。
開放感あふれるエントランスロビー
外部と内部で木の存在感が印象的なホワイエ
ベンチやテーブル、什器のほか、案内板の細かな部分にも木が使われている 大ホール内を覆い尽くす木キューブは圧巻
木の活用にあたっては、丸太の部位によって特性が異なることを考慮した上で、各部位を外部や内部、ホールなどに割り当てて施工。例えば同じ木ルーバーにしても、内部には白太と呼ばれる部位を使いますが、屋外には耐候性が高く腐りにくい赤太を使っています。
「屋外の木ルーバーは液体ガラスに浸して防水・防腐処理を施しており、内部の木ルーバーは防火塗材で仕上げています。自然素材である木を使うからこそ、必要な工夫やメンテナンスは計画的に取り組む必要があります。」と藤巻さんは言います。
木材活用の計画は、地元の木材にこだわりながらも、森林に負荷を与えない量を調整して進められました。もっと多くの木を使おうとすれば、多く伐採することになり、かえって森への負担が大きくなります。これまでの木造建築とは一味違う木材利用の在り方を考え、コンクリートなど木材以外の素材とバランスよく組み合わせた空間デザインに取り組みました。
合計約1万本の木ルーバーは実に壮観でしたが、1,505席を有する北摂最大級の大ホールはそれ以上に驚きがありました。壁と天井を木のキューブがびっしりと覆い尽くしているのです。その数2万7,000個。木キューブの密度や高さ(どれだけ出っ張っているか)は均一ではなく、音響シミュレーションによる検証を重ねて最適な配置が実現されています。
「この空間に入ると不思議な感覚に包まれるのですが、それが非日常感を醸し出して、これから始まる公演へのわくわくとした高揚感につながっていきます。演者サイドからも好評で、『音の響きがとてもよい』とお褒めいただくことが多いです。」と藤巻さんは語ります。
想像に難くありませんが、この数のキューブを設計通り正確に、安全性が保証できる状態にまで施工するのは、やはり大変だったとのことです。
木の香り漂う小ホール。左右に窓が設けられ、緑の公園との一体化を表現
2万7,000個の木キューブで覆われた大ホール
木キューブの厚み、密度、出っ張りは音響シミュレーションによって不均一に配置されている 公園北エリアとの一体化にも期待
現在、高槻城公園の北エリアで公園整備が進んでいます。北エリアでは、土塁や土塀、櫓や門、堀などが再現され、新設される大手地区では、火の見櫓も建てられる計画です。
「北エリアではかつての高槻城三の丸の景観を再現しております。劇場のある中央エリアとつながる園路も整備され、園地が今よりも格段に広くなるので、より公園としての色合いが強くなって、例えば公園でのイベントに劇場がコラボするといったことも可能になるでしょう。」と藤巻さん。
2027年春に1次開園が予定されていますが、同劇場が「公園と一体化した施設」としての機能を一層発揮できるようになるでしょう。来年の春が楽しみです。高槻城公園芸術文化劇場 【所在地】 大阪府高槻市野見町6番8号
【TEL】 072-671-1061
【URL】 https://www.takatsuki-bsj.jp/

