2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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建材情報交流会ニュース

 第47回
「埋立地盤における建築構造と木造建築用接合金物について」

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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基調講演
「埋立地盤における建築構造(土と基礎に心をよせて50 年)」

 福井 實氏 元大手前大学教授 (一社)地盤診断センタ−顧問

 

「ホームページでは講演資料を一部公開しています。講演会タイトルと資料タイトルが違いますがご了承ください。」
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■基礎と杭の分類、地盤沈下について
 私は元々構造設計をしており、次第に基礎の大事さに目覚めて現在の研究をするようになりました。今日の話には失敗例がたくさん出てきます。
 建築基礎とは、直接基礎と杭基礎の2種類に大別されます。地盤が弱いと杭を打つ必要があります。杭にはさまざまな種類があり、径も長さもみな違います。固い地盤に設置する杭を支持杭、中間層にとどめる杭を摩擦杭といいます。杭を地盤に入れるための工法には、打ち込み工法、埋込み工法、現場築造工法の3つがあります。今は現場築造工法(無音無振動工法)が主流になりました。
 地盤にも種類があり、平地、内陸埋立地、臨海埋立地に分類されます。最も大きな問題は地盤の沈下です。なぜ沈下するのかは、よく分かっていませんでした。建築関係者は地盤に詳しくないため、敷地に建ててから初めて沈下し始める、そんな状況から私は勉強を始めたわけです。結論から言うと、先端を拡大した杭を開発しました。なぜこのような杭をつくったかをこれから説明します。
 載荷試験で杭の支持力を確認します。建築基準法では、長期の支持力の大きさは極限支持力の1/3に設定されています。どんなに支持力が大きくても、設計荷重は荷重伝達曲線のこの場所にくるので、杭の支持力は摩擦力でもっていることになります。勘違いされることが多いのですが、杭は先端だけでもっているのではありません。ほとんどが摩擦力でもっていることが一つのポイントです。
 鋼管杭でも、入るからと打っていくと、挫屈を起こします。場所打ち杭の場合は、先端の処理がまずいと、スライムが生じて写真のような状態になります(図1)。
■粘土層が地盤沈下を引き起こす
 旧大阪市役所は木杭で設計されました(大正7年)。昭和57年に引き抜いたとき、木杭はまったく腐食していませんでした。神戸の摩耶埠頭に倉庫を6棟つくったとき、同じ敷地に同じ設計図なのに、ある棟だけ沈下が始まりました。不思議に思って測定したところ、12年間で55cm下がりました。調べた結果、埠頭の真ん中に粘土があったことが分かりました。わずかな粘土で沈下が起こることに驚きました。これはネガティブフリクション(負の摩擦力)によるもので、関西における大きな沈下の代表例になりました(図2)。
 大阪湾の主な海上埋立地の一つ、大阪南港の支持杭の代表はWTCビルです。関西国際空港は直接基礎の代表例です。柱脚にジャッキを設置し、建物側で調整しています。
 建物の種類によって重量は異なります。石造りの建物はたいてい重い。建物の重さを面積で割ったのが荷重度です。荷重度は、地盤に与える影響を考える上で重要です。
 柱の荷重は摩擦力と先端でもってくれます。ところが粘土層が沈下する場合ネガティブフリクションが生じ、下の方の粘土は上の方向に作用します。沈下の方向が変わる点を中立点といいます。上の荷重は下向きの力(ネガティブな力)と支持力と上向きの力、この両方で検討して設計すると教科書では説明しています。
 埋立地で恐ろしいのは、支持層と埋め立て層の間に海底粘土がかんでいることです。粘土が下がると摩擦力がすべて下向きになります。長い杭ほど摩擦力が大きくなるので、先端だけではもたなくなって不同沈下を起こすのです。今まではそれについてよく分からなかったのですが、オランダの石油会社が杭にアスファルトを塗ることを考案。それが数十年前から発表されだしました。杭にアスファルトを塗ることで摩擦力が小さくなるのです。私たちは、これらの力をどのようにして実際の現場で測ろうかと研究を続けました(図3)。
■埋立地盤における建築基礎構造
 大阪湾は深度15〜20mのところに、10〜15m厚の海底粘土があります。沖積粘土は1万年以内にできた若い粘土なので沈下が激しくなります。そもそもこんなところに十数mも土を盛ると、自重で下がっていきます。15mの粘土なら、1割で1.5m、2割なら3m下がります。そんな地盤はありません。しかし大阪湾ではそういうところしかないので立地してきました。
 大阪湾は何千年という単位で変化してきました。大阪の地盤で特徴的なのは、大和川が付け替えられたことです。付け替えによって氾濫地が肥沃な畑になりました。 摩耶埠頭の倉庫の話が出ましたが、支持杭によって地盤だけが下がると、段差が生じます。倉庫の床が下がり、ブレースのプレートが挫屈し、ボルトが破断しました。これを12年間計測して、地盤の怖さを知りました。後学のために論文発表もしました(図4)。
 東大阪にも池や田んぼの埋立地があり、そこに杭を打って立てた建物は地盤が沈下し、杭の頭が露出してきました。地盤だけが下がるので、屋外の非常階段が浮き上がってしまいました。地盤のことはあまり知らなかったので、設計時にはまさかこんなことになるとは予想していませんでした。しかしこうなると、やはりもっと地盤の勉強が必要なのだと実感しました。
 地盤沈下は、かなりひどい状況になります。おそらく下がるだろうという想定で基礎の周辺をブロックでカバーした事例がありますが、1mも下がるとそのブロックも意味を成しません。最も恐ろしいのは、この状態で地震がきたときです。杭頭がせん断力で壊れるので注意が必要です。
 別の事例では、元の地盤から1〜1.5m下がったため、階段を継ぎ足しました。樋が抜けてしまった例もあります。配水管は下がると切れるので注意が必要です。切れないようにフレキシブルなチューブをつないで点検しながら使います。建物は悪くないので、そのつどふさわしい解決法をとり、修理しながら使い続けるケースも多いのです(図5)。
■ポートアイランドでの実験・測定
 神戸のポートアイランドの仕事を初めて受けたのは昭和46年頃でした。神戸市が学校、倉庫、住宅、マンションをここにつくり始める時期です。どう設計していくべきかを考えるにあたり、本格的な実験を行うことになりました。市は神戸大学の尭天教授に依頼し、地盤対策委員会をつくって有識者を集め、対策を練り始めました。私はたまたまこのような研究をしていたので、実験企画を担当させてもらいました。
 実験は大変なものでした。杭の設計をどうするか、地盤はどれだけ下がるのか。それらを調べるために、あちこちに沈下計を入れ、実際の杭の先端の支持力がどれくらいのものなのかを測定し、載荷試験も行う必要がありました。そうしたいろいろな実験を昭和51年頃から始めました。
 アスファルトの効果を確認するために、アスファルトを塗った杭と塗らない杭を打って調べました。まず杭を打っていくわけですが、実は真っ直ぐに入る杭というのは少なく、図1の写真のように歪んでしまいます。先端も壊れてしまいます。これは大変なことだと、岩砕棒という鉄の塊をまずつくり、それを打ち込んで貫通させた後に鋼管杭を打つことにしました。これをやりながら、試験杭その他も打ち込んでいきました。
 埋立地にはどんな土が入っているか分かりません。がれきもたくさんあります。アスファルトの実験では、杭にアスファルトを塗ってどれだけ付いているかを調べます。普通、プロテクターは12mmくらいの鉄板を巻いただけで打ち込みます。結果、ほとんどアスファルトがめくれていました。これでは効果がありません。そこで何とか考え出した案は、杭の先端部を膨らませることでした。
 そこで先端を10cm膨らませた杭をつくり、それを打ち込んで引き抜きました。すると、アスファルトはきれいに残った状態だったのです。今度はこれで行こうと製作に入るのですが、そのような鋼管杭の仕口をつくるのは大変でしたが、そうしないともたないことも初めて分かったわけです。
 1カ所では分からないので、4カ所で2年間測定しました。当時、一時的にはやったグリーンパイルという、アスファルトの上にグリーンのコーティングをした杭も調べました。しかしながら、埋立地の地中にはさまざまながれきがあるので、思ったように杭をきちんと設置することができません。最終的には、先端が非常に頑丈な杭をつくって打ち込むことになりましたが、それでもプレートは壊れました。先端を膨らませると、杭と地盤にすき間ができますが、水平力が加わったときに建物が変形するので、すき間に砂を詰めました。
 もう一つ大きな問題は、3000〜5000回ほども杭を打つので、従来のゲージではもたないことでした。ゲージはつぶれ、コードも切れる。そこでいろいろな事前実験をして、鋼管の中にコードをつなぐための鉄筋を付けました。
■先端面積を大きくした杭で見られた効果
 結果的に、先端を拡大した杭は大変有益であることが分かりました。国際会議の論文を調べると、ノルウェーのオスロでは、岩盤用に先端を膨らませた鋼管杭が実際にありました。オランダにも先端部だけ少し膨らませた杭があることが文献で確認できました。
 実験の結果、摩擦力がプラスに働く部分とマイナスに働く部分があり、支持層ではプラスに働くので、支持層の部分は先端を太くしてプラスの摩擦力を加味しようという考え方に到達しました。ポートアイランドの埋立地は、埋立層の下に必ず10mくらいの粘土があるので、打ち込むことによってネガティブな部分を小さくすることができます。そして支持層の部分を太くして先端面積を大きくします。このような杭がその後主流になりました。もし私が貢献できたとすれば、この杭をこの実験で採用できたことだと思います。
 ここで実際の測定に入りました。上から埋立層、粘土層、支持層となっており、ここに杭を打ち込みます。この粘土層は未圧密、つまりそれまで荷重を受けたことがないので、粘土層中の水は、上と下に脱水が進んでいます。この圧密応力度がここにくるまで(土質が変わるまで)沈下を続けます。それが2m、3mという大きさになるのです。埋立地の杭は非常に大きなネガティブフリクションを受けます。荷重がかかっていない状態で、直径80cmの杭の先端が800tまで測定できました。従って、ポートアイランドの初期の建物の杭はほとんど不同沈下しました。
 測定結果について。ピークは粘土層の中央に出ていますが、500t以上の力が作用し、測定不能になった事例もありました。一方でアスファルトを塗った杭は非常にスムーズに測れ、効果が見てとれました(図6)。
■埋立地における耐震は地盤改良がポイント
 神戸中央市民病院をつくるときも、いろいろな勉強をしました。埋立地で最も大事なことは、建物の重さに相当する土をまず排除することです。そうすると深い地層に対してあまり荷重がかからないからです。病院の設計では、10mの載荷盛土を2年間行い、圧密沈下を促進したと思って実験を進めたのですが、驚いたことに、沖積粘土が縮まずに洪積粘土が沈下しました。沖積粘土は単に盛土だけではだめで、サンドドレーンしなければならないことが分かりました。このことが、洪積層の沈下も無視できないという関西国際空港のケースにもつながっていきました。
 図7は当時つくられた公団住宅の写真です。粘土層の沈下を促進するには直径40cmの砂杭を打ち込みます。水が砂杭に集まるので沈下が促進されます。さらに載荷盛土をすることによって粘土が急速に下がります。論文などに出ているこのような情報を参考に実際の地盤改良工事を行いました。住宅公団では、人が住む建物なので何らかの対策が必要だとして、日本にあるほとんどのサンドドレーンの機械を持ち込んで工事し、沈下管理をしながら設計していきました。このおかげで兵庫県南部地震ではほとんど問題が起こりませんでした。
 旧大阪市庁舎、中之島公会堂、図書館など、昔のビルは全部木杭です。地層によって杭の形や長さが変わってくるので、過去の資料を見ながら設計、工事をしています。
 大阪のもう一つのポイントはOBP地区です。OBP地区は梅田と比べて洪積粘土が何倍も強いので、沈下もしないし、建物にもまったく問題が生じません。梅田では下の方に強い層があるので、ボーリングをきっちりやっておく必要があります。
 阪神淡路大震災について。ポートアイランドは水びたしになりました。地盤改良を行ったところは問題がなく、していなかったところはいろいろな問題がおこりました。住宅公団などの住宅団地は、きちんと地盤改良をしていたので、地震後もほとんど段差がありませんでした。地震の結果、地表面は動きましたが、洪積、支持層はほぼ動いていないことが分かりました。底の地盤は地震に関係なく、大丈夫でした。地盤改良の効果は素晴らしいものです。問題はやるかやらないかの違いです。どんな建物でも、それに見合った地盤改良をしておけばいいのです。埋立地の地盤は動きます。動く地盤にはそれなりの柔軟な対応が必要だということです。

 


「住宅市場から視る木造建築用接合金物の変遷と今後の展開」
 野口茂一氏 潟mグチ 代表取締役社長
 

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■市場の動向、木造新設着工戸数の工法推移
 まず住宅市場の動向について、住宅着工数の推移をご覧ください。全体的には人口減があるので、減少傾向にあります。戸建市場の大半は中小工務店が支えており、年間約1000棟以上建てる大手のハウスメーカーのシェアが34%程度であるのに対し、年間100棟未満の中小工務店は40%と、半分近くを占めています。 
 戸建住宅の利用形態は注文、貸家、分譲住宅、給与住宅の四つで、構造は木造、鉄骨造、RC造があります。特に木造住宅は、木造軸組工法と2×4の2種類に分かれます。
 木造新設着工戸数の工法別推移を見ると、約70%が木造軸組工法および在来工法が占め、2×4は11.2%でプレハブを大きく上回っているのが特徴です。日本の大工の就業者数の推移ですが、国勢調査によると1995年に76万1千人いた大工の数が、2010年には39万7千人に減少。2020年には21万1千人まで落ち込むと推定されています。職人の高齢化も進んで技術の継承も危ぶまれ、このままでは私たちが家を建てようとしても、任せられる大工職人がいなくなってしまいます。住宅着工の戸数は2020年までに年間5%近く落ちていきますが、大工の減少はそれより早い。住宅の需要も下がりますが、それ以上に建てる職人が減少することが戸建住宅市場の大きな問題点です(図1)。
 新設住宅着工戸数の減少、大工の減少に加え、建築物の省エネ基準の適合義務化も2020年に迫っています。早急に取り組んでいかなければならないのが、長期優良住宅の標準化、省エネ基準への早期対応、職人不足への対応、安心・安全、戸建住宅減少への対応です(図2)。
■接合金物の歴史
 最近では構造用合板を使って耐震性能を確保する方法が多用されていますが、10年以上前の建物は、ほとんどが筋交いによって耐震性を確保しています。建築基準法では筋かいの耐震性の確保に注力してきました。
 昭和54年、地震係数を高めた改正を行ったのですが、阪神淡路大震災で、昭和50〜60年の建物、つまり建築基準法でハードルを上げられた建物の多くが倒壊しました。筋交いだけでは耐震性は確保できなかったことが阪神淡路大震災で証明されたわけです。
 昭和40年に「JIS A 5531木造建築用金物」が公的な規格として制定されました。これは大規模な建造物に対しての基準であり、木造住宅用としては普及しませんでした。そんな時代の中で粗悪な金物品が出回ったため、住宅木造センターの前身である日本木質構造材料協会が昭和49年10月に設立され、昭和51年10月に枠組壁工法用接合金物(Cマーク)が制定されました。その後、昭和57年1月に同等認定規格(Dマーク)制定。昭和62年11月建築基準法改正で準防火地域に木造3階建てがオープン化され、昭和63年4月に3階木造住宅金物の規格が制定されました。
 平成7年阪神淡路大震災後、平成12年6月に建築基準施行令が改正され、性能の規定化、平成13年4月にSマークが制定されました。最近は平成24年10月に金物への接合に使用する、釘からタッピングねじ、いわゆるビスの仕様が追加されました。
■木造建築金物の接合金物について
 公益財団法人日本住宅・木材技術センターによる「Zマーク表示金物」、同センターにてZマーク表示金物と同等の品質・性能を有する金物、公的評価機関によって品質・性能を確認した金物。この3点いずれかの基準を満たすものを接合金物と呼びます。筋交いによって耐震性を確保していたところ、阪神淡路大震災によって接合金物は大きな転機をみました。震災以前はホールダウン金物があったのですが、それが不足していた木造軸組工法の建築物で、新しいにもかかわらず柱が抜けて倒壊したケースが多く見られました。
 木造軸組工法の建築物では、耐力壁が地震に対して抵抗することから、耐力壁が破壊するより前に柱が抜けるなどして耐震強度を失ってはなりません。言い換えれば、耐力壁の性能を完全に発揮させることによって、強度指向の設計であっても、終局的な粘り強さを確保し、建物の倒壊を防ぐものです。告示第1460号で、ある地震力に対し、柱に実際に生じる力によって補強金物を決めるのではなく、その柱に付く耐力壁の仕様によって補強金物を決めなければならないという、大きな方向の転換が出されました。
 Z金物に関しては、住木センターのZマーク表示、Zマーク同等認定表示、それだけではなく告示分を満たす諸金物すべてを含めて、接合金物1460号に要求している金物という形で定義されました。
 品質性能評価について、住木センターの場合はZマーク、Dマーク、Cマーク、Sマークの4種類あります。Zマークは在来工法用で、DマークはZマークに追加された同等認定です。例えばこれらの筋交いプレートではZの規格が寸法・厚みですべて決まっています。各メーカーが違う形の商品をつくっていますが、Zと同精度、同等以上の品質を備えたものが、同等認定のDマークです(図3、図4)。
 その中で住宅業界がどのように成長・発展をしていけばいいのか。職人不足への対応として、熟練性を問わない住宅工法(金物工法)の開発、プレカットのシェア拡大が現状の課題です。金物工法とは、柱と梁や梁と梁などの接合に、1から2スリットの金物を用いてドリフトピンを打ち込む工法です。従来の仕口や継手の工法に比べて、断面欠損が小さく、精度が高いのが特長。現在は軸組工法の20〜30%程度ですが、今後こうしたシステム工法が増加すると予想されています。プレカット工場で材木を切り、そこに金物を先に入れ、金物付きのものをつくってしまう。それを現場に運び、プラモデルのように組み立てます(図5)。
■安心安全への対応
 阪神淡路大震災以降、耐震はかなり強化されてきましたが、最近は免震、制震の技術も戸建住宅に採用されています。耐震のみの場合は、倒壊しなくても揺れによって接合部が損傷し、繰り返される余震で接合部の損傷が拡大してしまいます。耐震・制震の技術を入れることで、制震装置が地震のエネルギーを吸収するため、耐震構造のみと比べて揺れが小さくなり、建物の倒壊を防ぐだけでなく、壁などの損傷も抑えられます。建物の復元力が高いため繰り返す余震に効果的なので、制震による横の吸収と、耐震の技術を組み合わせたものが最近は主流になっています。
 制震装置は大きく三つに分類できます。ゴム等を使ったもの、オイルなど油圧を使ったもの、塑性の力を使ったものです。ほかに摩擦を使ったもの、磁力を使ったものが今幅広く浸透しています。
 具体的な商品の説明をします。元々筋交いがあったところに制震の金物を入れ、横の揺れを吸収するような金物を付けるものが今普及しています。すべてに制震の金物を付けるということではなく、Z関係の筋交いに金物を付けるものに加えて、制震を部分的に入れていくものが主流です(図6)。
■中規模木造構造・非住宅への進出
 戸建住宅および木造住宅向けの着工件数が確実に減少すると予想されているので、各メーカーとも中大規模木造建築に進出することを検討しています。2010年10月、公共建築物等木材利用促進法が施行されました。最近は国際教養大学(秋田県)の図書館、糸魚小学校(北海道)等で活用されており、直近は東京オリンピックの競技場でも一部木材が使われるということです。木造建築は非住宅分野にも拡大しつつあります。近年では木材の特性を活かした新しい構造が試みられ、住宅には金物工法が広まるなど、新たな段階に入ろうとしています。
 国も公共建築物等木材利用促進法の施行を受け、3階建て以下の比較的小規模な公共建築物は原則的にすべて木造とする、という方針を発表し、現在進めています。また2015年、JIS A 3301の改正で木造校舎の構造設計標準が改正されました。改正点は7つで、大規模木造建築物の設計経験のない技術者でも、比較的容易に木造校舎の計画・設計が進められるように制定されました。国は中大規模木造構造物を促進しているのですが、今問題になっているのが、大規模あるいは中規模木造建築物の設計経験を持つ経営者が不足していることです。法律のハードル基準を下げたところで、今後中大規模木造構造物の建築物が増えてくるのではないかと思います。
 住宅金物を製造している各社は今、いろいろな試みをしています。中・大断面集成材の接合に使用する「梁受金物」、木造在来軸組工法の要である柱と梁と土台の接合部を高い強度と精度でつなぎ、耐震性や耐久性を高める設計の自由度を高めた「プレセッターSUシステム」、アンカーボルトと柱脚金物を接合する「親子フィラー・W」を組み合わせたTS金物システムなど。これらがZ金物認定金物と大きく違うのは、規格が難しいことです。現場ですべてカスタマイズしなければいけない点で非常にハードルが高くなります。
■新建材CLT(直交集成板)について
 CLTは1995年頃に発展した新しい木質の建材で、オーストリアを中心に構造用材料として利用されてきました。近年は国内でも普及を急いでいるところです。高い断熱・遮音・耐火性、環境性能が評価されています。木材は非常に燃えやすいという見方が多かったのですが、CLTの登場で耐火性が強化されました。日本では2013年12月にCLTのJAS(日本農林規格)が制定されました。また阪神淡路大震災を再現した大きな実験では高い耐震性が証明されています。今後は金物による耐震性強化に加え、建材、耐力壁による耐震性強化も、このような新しい建材の普及によって工法が変わってくるのではないかと思われます。
 




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