2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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建材情報交流会ニュース

 第45回
「これからの建物に求められる建材とは、今後の課題」

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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「住宅メーカーが求める建材」
 積水ハウス梶@開発部 シャーメゾン商品開発室 室長 上木 宏平 氏

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■住まいから社会を変える
 いろいろな社会課題の中心に住宅があります。例えば隣近所が関わりのあるまちなみをつくるコミュニティの再生。このためには住宅が大きな役割を持ちます(図1)。安心・安全の問題。災害に備えるシェルター機能が高い住宅も進めています。待機児童の解消を目指して開発したサテライト保育所には、「自然と触れ合う子育て」という提案の中には当社がずっと戸建て住宅で提案し続けている「5本の樹」や「里山」の要素が生かされ、環境共生、生態系保全といった社会課題解決への提案もなされています。ほかにも戸建て住宅同等の高い断熱性能とすることで、地球温暖化防止の課題、あるいはエアキス仕様という空気環境配慮仕様を採用してもらい安心・安全の提案を行っています。住宅でいろいろ提案をして開発してきた先進技術が保育所でも解決に役立つようになってきているという事例です。

■最新住宅メーカー情報
 当社の主力商品「IS ROY+E(イズ・ロイエ)」です。天然石が使えるアクセント外壁、視線を制御する木調ルーバー、ピロティ空間。構造の進化によってここまで自由にできます。外部と内部の中間領域、スローリビングの提案。バルコニーでも内部と外部の連続性・一体感を追求し、大開口サッシも気持ちよさに貢献しています。
 積水ハウスオリジナル外壁の塗装技術も格段に進歩しています。中でもフッ素塗装は非常に優秀で、明石海峡大橋や東京スカイツリーでも使われています。構造は、ここ数年は制震システムがメインです。省エネは進歩が早い分野で、住宅メーカー各社が競い合って性能向上を進めています。安心・安全も大きな社会問題ですが、住宅ができることは室外空気環境、室内空気環境の向上です。
 重量鉄骨賃貸マンションと呼ばれる賃貸住宅の「ベレオ」です。すべて敷地、地域特性、周辺環境などを考慮してプランニングしています。高い設計力が必要です。商品としてわれわれ開発部が標準設定する建材と、支店の設計者が自由に選べる建材がありますが、特に賃貸住宅は戸建てよりも流行を追う必要があるので、共用部には新しいデザイン提案、素材提案が求められます(図2)。
 共同住宅は3階建て以上になると厳しい防耐火性能が求められます。耐火被覆材など、もっとスリムな材料で施工性がよくてローコストのものを願っているところです。耐火塗料というよい材料もあるのですがコストが高くて、まだ工業化住宅では使いきれないのが実情です。防火サッシは個別に試験を受けるため開発のスピードが遅いのも懸案です。小さな子どもが多い賃貸住宅では空気環境、音の問題、交通振動対策にも取り組んでいます。
 戸建て住宅の着工棟数は、年間で約40万棟前後。大手住宅メーカー9社の合計シェアは約17%、当社は3.7%です。賃貸住宅は棟数でいくと戸建ての1/10ですが、大手住宅メーカー6社のシェアが55%もあります。戸建て住宅市場以上に賃貸住宅における住宅メーカーの影響力が大きい。当社の賃貸住宅は12.7%で10棟に1棟以上です。

■外壁の変遷と開発の方向性
 1980年代、初期のプレハブ住宅は外壁のパネル、ジョイント部に幅広の目地をはめており、おとなしいテクスチャーでした。2000年頃はサイディングの外壁が主流に。プレキャストコンクリートの外壁を使うようになったのは1984年(図3)。プレキャストコンクリートは1枚1枚型枠にコンクリートを流し、養生して脱型するという手間と時間がかかる製法ですが、ハンドメイド感が出て愛着の持てる外壁素材です。温かみのあるタイル外壁も人気があります。日本の空間に合う、愛着のもてる素材感を大事にして開発を進めています。
 賃貸住宅の3、4階建ての延床面積はここ4、5年で大きくなっており、今は平均600uぐらいになって1,000u、2,000uの賃貸住宅もざらにあります。今までは戸建てとシャーメゾンの外壁柄が共通でしたが、戸建て住宅に合わせた柄ではなく、大きな建物に合わせた柄が必要だと考え、今まで常識だった250mmピッチをはずして大柄のデザインを検討するようになりました。

■バルコニー、集合住宅共用部の変遷と開発の方向性
 1980年代初期のアパートでは縦格子や装飾切り抜き格子など、80年代後半から胴差し、矢切飾りなどの外部付帯の飾り物、90年代は外装部材にアクセントカラーが採用され始めます。不景気だった1998年は落ち着いた雰囲気の商品が多く、外壁と同柄・同色の面材のバルコニーで重厚感を演出していますが全体的に地味です。 2003年あたりから他社競合が激しくなり、派手なカラーリングで若々しさや目新しさをアピールするなど、少し過剰ともいえるデザインが多く開発されました。最近は透明感、高級感があってモダンなガラス面材のバルコニーが主流ですが、通風をしっかりとるのが課題です。
 これからのバルコニー面材開発の方向性のキーワードはルーバー、通風、異素材のコラージュなどです。存在を感じさせない方向と自由な表現のアイテムとしての方向の二つの方向性があります。
 今はマンションクオリティーが追求されており、素材やディテールのレベルアップが必要となっています。共用階段、共用廊下でも、1カ所をよくするとほかの部分が見劣りしてしまうことに関し、妥協しないことが次の開発のステップになると思います。

■賃貸住宅スタイルの変遷と開発の方向性
 1969年から順番に、外廊下スタイル、内階段スタイル、テラスハウス、重層テラスハウスという形でいろいろな賃貸スタイルを開発してきています。現在の比率は円グラフの通りで、当社の場合重層テラスが半分です。2000年のはじめにテラスハウスを1、2階に積み上げた重層テラスハウスが登場。内階段スタイルの2015年バージョンとして今年リニューアルして発売したものは、オートロックの共用玄関を標準採用として防犯性を高め、共同階段が見えないようにして高級感を出しています。100年先、住まいの形は変わり、進化多様化するため、次のスタイルを予想しながら開発しています(図4)。

■スローリビングの変遷と開発の方向性
 1987年、“内部と外部の中間領域”「C・ZONE」を提案しました。一番の特徴はルーフライトウェル。下屋をくりぬいて木を植え、木もれ陽がリビングにさし込む設計です。2000年に発表したのが「セントレージ・ギャラリー」です。ロッジアという壁で少し囲われた外部空間に、日よけのオーニング、風通しのいいルーバー引き戸などを採用しました。2010年、中間領域のスローリビング「ビー・サイエ」を発表。構造システムが大きく進化し、今まで以上の大開口が可能になりました。耐力壁を強化したり、間仕切りに移動したりできるシステムによって外壁の耐力壁が減少したためです。
 これによって中間領域の魅力が進化したわけですが、床と天井の連続性が大事なので、フルフラットサッシも重要になってきます。バルコニーにはかつて、室内との間に20cmくらいの段差があったのですが、2010年にようやくフルフラットバルコニーができました。こうなると、座って楽しめるバルコニーの床材の質感も求められますし、外部なので紫外線を含め耐退色性なども厳しくなると思います。2014年、3 ・4階建ての都市型住宅「ビエナ」でもスローリビングを提案しています。都会で緑豊かに暮らすためにバルコニーでの緑化計画が今後重要になります。スローリビングはまだまだ戸建て住宅向けの部材が多いのですが、賃貸住宅はまだ手をつけていないので、これから建材を開発していきたいと考えています(図5)。

■健康で長生きできる家
 住宅ができることはまず、居室・廊下・トイレ・洗面などの温度差を少なくすること。昔の家は温度差が激しく、冬のサーマルショックによる心筋梗塞や脳梗塞の危険性が非常に高かった。これは断熱性の高い家にすることで解決します。またユニバーサルデザイン、介護ロボットの活用、空気環境配慮も住宅でできます。
 2003年、シックハウス対策のために建築基準法が改正されたとき、ホルムアルデヒドに関する建材、あるいは換気設備に対して規制が行われました。いきなりハードルを高くできなかったので、当時最低限の規制だったとのこと。しかし中には、F☆☆☆☆さえ使えば大丈夫だろうととらえる住宅メーカーもありました。F☆☆☆☆といっても、24時間換気しないと基準を容易に超えるのです。われわれは「F☆☆☆☆を使っていれば大丈夫だというのではない」と啓蒙しています。大人にとっての基準だから、子どもならもっと厳しくしないといけませんよ、と。
 そこで当社では「エアキス」という仕様を決めています。国の基準の半分以下に。ホルムアルデヒドだけではなくてトルエン、キシレン他5物質も規制。建材側だけはなく竣工現場で測定して確認しています。建材は当社の研究所で検査しており、時間と労力がかかりますが、建材メーカーにも協力いただき、当社の検査に合格するように努力をしています。世の中に出すときはF☆☆☆☆という基準しかないのが残念なくらい、レベルの高い建材を実現しています。
 空気環境は内装建材だけではなく、外装建材、構造躯体にも関係があります。外壁や構造用合板などに使われる接着剤が室内に漏れてシックハウスの原因になることもあります。住宅メーカーは、空気環境をトータルな観点から見ています。

■高齢者の住まい
 トイレ手摺りは1990年くらいから標準的になりました。手摺りの角度に注目してください。手摺りは垂直よりも15°傾いているほうが握りやすいという実験結果から部材をつくりました。最近はサービス付き高齢者向け住宅が増え、トイレ手摺りに要求される機能も多様化しています。高齢社会では予防医学が重要であるように、建築にも傷害予防の観点が重要になってきます。転びにくい家を実現するために、床の段差をなくすのは当たり前の設計で「転んでもケガしにくい家」レベルの開発を目指しています(図6)。

■賃貸住宅インテリアの変遷と開発の方向性
 賃貸住宅のインテリアスタイルをアピールするようになったのが1987年頃。以来変遷を重ね、2007年からは、当社が採用している、建具が4色で床材が3色というカラーコーディネートシステムで展開しています。当初はナチュラルモダン系のミディアムあたりが多かったのですが、ここ2、3年はシンプルモダンダーク=濃いめの建具で、これに明るい色を組み合わせるものが約50%です。グレード感があって重厚感があるというような感じのインテリアが今の旬です。基本建材以外にも「キッズでざいん&ベビーでざいん」と称して細かい配慮部材をつくっています。ベビーカーを置くためのバギーピット、ベビークローゼット、チャイルドロック、ソフトクローズの建具などです。入居者ファーストの立場で暮らしの提案を進めています。

■ストックビジネス
 2008年、優良ストック住宅推進協議会、通称「スムストック」が優良ストック住宅の普及推進を目的に住宅メーカー9社でスタート。築20年で一律に価値がゼロになってしまうという不動産業界の常識を覆そうとしています。住宅メーカーの家は築20年でもスケルトンに全く問題がありません。きちんと評価をする物差しをつくって、適正価格で中古住宅を流通させようというのが趣旨です。スクラップ&ビルドの社会から優良ストック社会に転換させたいわけです。アメリカではずっとメンテナンスをするので、住宅に投資をした分が今の住宅資産として残りますが、日本は投資をしたにもかかわらず、国の資産として住宅がストックされていません(図7)。
 しかし住宅メーカーの築20年の家は、新省エネ基準を大きくクリアしており、非常にスペックが高い。ひと昔前の築20年と今の築20年は違うのです。外壁にもプレキャスコンクリートを採用して古さを感じさせない外観なのに、これが価値ゼロというのはおかしいと思います。住宅メーカーはスケルトンとインフィルにわけて考えています。インフィルはリフォームでしっかりとメンテナンスしていく。当社でもこれまで以上にリフォーム、ストックビジネスに力を入れていきます。小規模リフォームはネットで、大規模のものはコンサルティングで、新しいビジネスをつくろうと考えています。ネットリフォームに乗ってくるような新しい建材もあるでしょう。皆さまと一緒に開発できればと思っています。スクラップ&ビルドと決別し、住宅投資をきちんと資産として残していくことが必要です。
  


「公共・施設向け耐震天井の状況と製品展開について」
  大建工業梶@エコ営業部 市場開発担当 橋本 稔 氏

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■東日本大震災をきっかけに建築基準法改正
 昨年建築基準法が改正されて1年が経過した現在の動向です。今回の改正のきっかけは東日本大震災です。天井の落下被害が多数出ました。住居用、非居住用の建築物とも、大半の天井の下地は在来天井というものです。そこで被害が出たのですが、被害の要因はクリップやハンガーの外れ、損傷でした。野縁受けと野縁を連結するクリップに地震の力が加わると、つめが開いたり滑ったりして天井が脱落するのです。
 従来の建築基準法では、第39条に「内装材は、風圧並びに地震その他の振動及び衝撃によって脱落しないようにしなければならない」とありましたが、詳細な基準は示されていませんでした。過去にも大きな地震は発生しており、そのつど被害が出ていたので、国交省からも技術的助言はあったのですが、法規制まではされていませんでした。そこに東日本大震災でかつてない甚大な被害が出て、ようやく国が腰を上げました。パブリックコメントの募集などを経て、「建築物における天井脱落対策に係る技術基準の解説」が提示され、具体的な耐震天井の基準が示されました。昨年4月に施行されたわけです。

■改正後の動向などについて
 告示771号で初めて登場した特定天井とは、天井高が6m超、面積200u超、質量2kg/u以上の吊り天井であり、人が日常利用する場所に設けられている天井のことです。これらの条件を設定した一番のポイントは人命保護です。検証方法として、仕様ルート・計算ルート・大臣認定ルートなどがあるのですが、設計者はいずれかのルートを選んできちんと検証し、責任を持って天井の耐震化を進めなさい、という状況です。特定天井の条件を満たす天井は少ないのですが、例えば天井高が5.5mだからといって何もしなくてもいいというわけではなく、特定天井に入らないものも、極力設計者の判断によって安全確保するようにとうたわれています(図1、2)。
 昨今、設計図書の特記仕様の中に耐震仕様が具体的にうたわれている現場が増えてきています。耐震天井への関心が高くなっていると思います。しかし法に縛られる特定天井の該当は少なく、この1年を振り返っても特定天井として施工された案件はまだまだ少ないでしょう。 国交省の基準を受けて文部科学省が別の指針を出しました。耐震化をより進めるために、屋内運動場等の吊り天井で条件が6mかつ200uではなく、6mまたは200u、どちらか一つなら対策を取りなさい、という指導をしています。従って学校施設はかなり耐震化の動きが早まっています。文科省のデータでは、昨年4月から1年間で1,400棟弱くらいが耐震化されています。それだけやったとしても全国に約4,850棟弱残っています。文科省は来年の3月までの耐震化をすることに限っては補助金を出す制度も導入しています。

■業界の傾向ではっきりしているのは天井の軽量化
 このような動きを受けて各業界でそれぞれ耐震天井への取り組みが進んでいます。在来天井の軽量鉄骨下地をつくるメーカーは多々あります。各社各様で、弱点のクリップ部分のところで耐震用クリップを開発したりなど、皆さんいろいろと策を講じています。はっきりしているのは、天井の軽量化が非常に大事だということです。軽ければ仮に落下しても重大な災害になりません。軽ければ軽いほど天井に加わる力も軽減され耐震ブレース設置数が減り工期短縮・ コスト削減につながります。
 しかし問題点もあります。在来天井の耐震化でクリップ部分を強化する際、多くのビス留めが発生し、施工の手間が3〜4倍程度かかるそうです。そして作業員不足の慢性化。さらに、天井を撤去してしまうことによる吸音性や断熱性能低下の問題など。そこで当社は「軽量化」と「省施工」に着目し、長年にわたるシステム天井のノウハウを活用して新しい耐震天井を開発しました。コンセプトは「快適な室内環境を提供し、『省施工』かつ『高い耐震性能』を有する天井工法」です。

■耐震天井製品「ダイケンハイブリッド天井」
 新しい耐震天井を紹介します。下地材はオリジナル形状の専用Tバー(T型のバー材)で、格子状に組み上げます。
 ビス留めはいらず、パチンとはめて終わり、ビス留めなしで非常に省施工です。格子に組むことでX方向、Y方向の剛性が高まり、高い耐震性能を発揮します。仕上げは在来天井方式でバー材のフランジ面にロックウール化粧吸音板を直張り。そういう形で組み上げた天井が「ダイケンハイブリッド天井」です。在来天井とシステム天井のいいところを利用して複合化させているわけです。高い耐震性、省施工で万が一に備えられ、快適な音環境も実現します(図3)。
 当社は天井材「ダイロートン」というロックウール化粧吸音板を約半世紀製造しています。岡山の工場では、一定の大きさの試験体を組んで正・負方向に引っ張る静的加力試験(ユニット試験)を実施し、耐力の検証に努めています。天井許容耐力4,000Nの確認が取れていますので、これを目標値にして緒条件で日々データ取りをしています。一般的に在来天井(C38チャンネル使用)の許容耐力は2,000Nくらいなので、当社のハイブリッド天井はほぼ倍の許容耐力があるのです(図4)。

■衝撃力の低減化と優れた吸音性能
 万が一、天井が落ちて人の頭に当たったとき、頭蓋骨を損傷するかしないかで人命が左右されます。衝撃を測定するダミーヘッド試験では、落ちたときの衝撃が2,000Nを超えると頭蓋骨に損傷をきたすというのが、一般的なデッドラインになっています。「ダイロートン」は軽いので、750〜800Nくらいに留まります。
 また、「ダイロートン」は吸音性能に優れた材料です。学校の一般教室だと0.6秒くらいの残響時間が適正。0.6秒で人間が一般的に聞こえる周波数は500〜1000Hzであり、グラフ上でその周波数の範囲で残響時間0.6秒あたりに該当する材料が天井に張られていれば、快適な室内音環境が得られます。例えばコンクリートの打ち放し、天井も何もないコンクリートの状態だと1.2秒か1.3秒で、残響過多です。化粧石膏ボードなどでも1秒ちょっと超えます。ロックウール化粧吸音板「ダイロートン」は教室に求められる0.6秒にちょうどマッチしています。

■従来とあまり変わらない簡単施工
 使用材料は、最小限の部材を組み合わせて施工します。実際に組み上げた形は、仕上げ材により格子組寸法は変わりますが、すべて長方形です。長方形の格子組みをつくって、そこに天井板をビスで直張りしていく。吊りボルトから専用ハンガーでメインのバーを流し、直交方向に赤と緑の格子のバーを差し込んでいくと、格子状の下地が構成されます。
 天井軸組み図・伏図をご覧ください。仕上げ材の「ダイロートン」のサイズによって変わるのですが、この例は600mm角の仕上げ材を張る場合の軸組です。こちらは450×900mmという長方形の仕上げ材を張る場合の軸組です。仕上げ材のサイズにより軸組みのピッチが変わってきますが、格子の考え方はどの軸組についても共通です。施工は従来の天井の施工とあまり大きく変わりません。システム天井ということになるのですが、それとほぼ同様の手順になっています。簡単にいうと、吊りボルトからハンガーを用いてメインバーを取り付け、クロスバーを差込み格子組を形成、それに対してレベル・通りの調整をして仕上げます。

■耐震検討書についての考え方
 耐震検討なので、当然水平方向と鉛直方向の両方についてコメントしなければいけません。まず水平方向の考え方です。一般的に各現場の設計図書から、水平震度1や1.3 などがよく出てきます。そういうものを読み取り、それをベースにして、設計図書から天井面構成部材等の単位面積質量をきっちり押さえて、天井面水平方向の地震力を算定、水平方向の許容耐力(ユニット試験にてデータ取り)から負担面積を求め、ブレース材の配置計画を立ててクリアランスの算定・計画をするという流れです。
 鉛直方向も同様に設計図書から天井設計条件(水平震度・質量など)を読み取り、それから鉛直方向の地震力を出して、それをもとに各部材に働く鉛直方向の地震力を算定。そして引っ張りやせん断やいろいろありますが、各部材に働く鉛直方向の許容耐力を算定・評価します。
 水平方向に関しては、国交省の基準の中の検証方法として、仕様ルート・計算ルート・大臣認定ルートの3つがあります。どれを選んでも構いません。結論からいうと、当社のハイブリッド天井は仕様ルートには乗っからないので計算ルートで進みます。
 計算ルートのフローチャートを示しています(図5)。国交省の技術基準に掲載されていますが、左側の接合部の試験・評価は手間がかかり、しかも天井はいろいろな部材が複合化しているため、評価するのは難しくなります。そのため、右側の天井ユニット試験をもって天井全体の許容耐力を出し、最終的に水平震度法で評価することで考えています。
 図6は天井ユニット試験の写真です。これは岡山工場に設置している試験機ですが、試験体を組んで所定のブレースを入れ、水平方向に引っ張って実験します。国交省の技術基準の指針に基づいて、一方向に引っ張ったときのデータ取りを行い、グラフから損傷耐力・許容耐力を読み取ります。次に、今度は同じ試験体で左右に往復の繰り返し試験を行います。それが一方向試験とほぼ同等の性能であれば合格といった評価方法が指針で出ています。こうした実験を繰り返して日々データを取り、許容耐力4,000Nの確認作業を行っています。
 耐震仕様は各社各様に長所・特徴がいろいろあるので、お互い切磋琢磨しながら天井耐震化に少しでも寄与していきたいと思っています。
  


「結露しにくい木造住宅の造り方」
  一般社団法人 住まいの屋根換気壁通気研究会 理事長
  潟nウゼコ 代表取締役社長 神戸 睦史 氏

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■実棟実験や高性能の実験機械で徹底的に試験
 当社は換気部材のメーカーで、私自身は、「(一社)住まいの屋根換気壁通気研究会」の理事長を仰せつかっております。本研究会が開催するセミナーには、ゼネコンの方や木造住宅に関心のなかった方も多数お越しいただいています。今、CLT(板の層を各層で互いに直交するように積層接着した厚型パネル)などを使っていこうという流れがあり、そういう部分もしっかり押さえておく必要があるということで、さまざまな立場の方々が参加くださっているようです。
 木造住宅を建てるときに最も大事なのは雨仕舞と換
気と通気です。この研究会を立ち上げたのも、その部分に関する知見を蓄積し、広く周知していくためです。2014年11月、本研究会は国立研究開発法人建築研究所理事長、外皮の分野でトップの大学教授、設計事務所の先生、建築学の大学教授、パッシブ住宅の第一人者といった方々を中心に立ち上げ、セミナーを継続的に開催しています。
 当社では「ハウゼコ住まいの換気研究所」を設け、研究・実験を行っています。実棟実験では140か所に温湿度センサーを入れて定点観測しています。小屋裏換気性状、気密測定、鉛筆硬度試験、通気性能試験、腐朽菌採取の試験などで、毎年実験値を出しているのですが、今年はバルコニー差圧測定、つまり通気層と透湿シートの裏と外壁の表に圧力計を入れ、自然風でどれくらい差圧が出るかという実験をしています(図1)。
 通気工法は元々結露や漏水を防止するためにつくられたものですが、圧力の面からも妥当な工法であることがわかりました。今年9月の建築学会で「バルコニーまわり外壁通気層内の雨水流れと漏水リスク」の論文を発表する予定です。
 JISで規定されていないため、漏水試験をせずに上市しているメーカーもありますが、当社では100%圧力箱方式と送風散水試験の漏水試験をやっています。当社には送風散水試験機がありますが、こういった実験機械を持っているところは非常に少ないようです。

■モルタル劣化は直張りと通風・日射不足が原因
 こちらは腐食促進試験です。最近多いのがモルタルの劣化事例。モルタル外壁は今、ハウスメーカーを除くと約50%が直張りといわれており、水を媒介として1年くらいで腐食するケースが増えています。サイディングの施工は透湿シート、胴縁、水切り、サイディングを1職種で施工します。モルタルの場合は3職種くらいに分かれるので、2職種が理解していても1職種が理解していなければ結局は不適切施工になってしまうというケースもあります。
 あるハウスメーカーの物件で、通気不良のため当社の水切りが錆びたケースがありました。南側は通風も日射もよくとれていたので錆びていませんでした。つまり通風と日射がある程度とれていれば問題ないということです。15年くらい前に木サイディングがはやったとき、防腐剤に含まれている銅が電食を起こして水切りが腐食することがありました。通風も日射もとりにくいところだけがよく錆びるということが多かったようです。
 初期の含水率が高い状況のところで腐食の事例があがってきています。なぜこの様になるのか。防腐剤メーカーからは工務店が計画発注しないからだという理由を聞きました。きちっと納期を守ってくれれば大丈夫ですが、なかなかそういうわけにもいかず、結局乾かす時間がなくなるというのです。

■笠木の部分から住宅が劣化しやすい
 セミナーで、ある工務店から相談を受けた案件ですが、建てて1年目で、胴縁のところに何度も筋やシミが出るということです。前日と当日晴れた日に朝の6時から8時まで、筋が入る。結局、放射冷却現象によるものではと結論づけています。この住宅は劣化が起こりやすい部位が非常に多いのですが、まず一つは直張りということ。二つめは、ジョイント部分からの漏水、結露。三つめが笠木です。大体2間くらいまではサッシメーカーによるレディーメードでよく考えられた笠木で施工されるのですが、それを越えると板金笠木になる場合が多くなります。ここの納まりが非常に難しいのです。アルミ笠木は標準施工があるのですが、板金笠木にはないのでバラつきが大きくなる。直張りモルタルの場合、本来なら捨て板金を入れてからモルタルを施工し、笠木で覆ったほうがよいのですが、多数の物件を扱っている工務店では、モルタルやサイディングなどいろいろ混じると管理しきれない場合もあります。
 そのようなときにシール頼みで、脳天くい打ちをすると、ここから雨水が浸入するケースがあります。浸入した雨水は、直張りのため排出されないので屋内にとどまって凍ります。すると凍結融解を月5回、4カ月として、年間20回。瑕疵担保保証の10年では200回となります。この様な住宅が増えています。
 10年前くらいから、従来工務店から設計事務所に図面を外注するという受注形態だったのが、設計事務所が一次請けし、二次請けで工務店が入札するという形が多くなっています。設計士は意匠系の方が多いので、面材の内側は非常に緻密に計算されますが、面材の外側は無関心な場合が多くて工務店へ丸投げしてしまう、不具合の原因はこのような背景があります。

■大阪でも地域によって湿度が全然違う
 2000年前、大阪城のある谷町以外は海でした。私は、昔東大阪市の水走(みずはい)で一人暮らしをしており、今は和泉に住んでいますが、どちらとも比較的湿気の多いところです。海から湿気が入ってきて山の手前で落ち、下からも上がってくるので環境としてはあまりよくない。だから湿気も積雪と同じように50、100、150というような形で地域区分するべきだと思います。
 昔、夜8時くらいから舞洲でよくテニスをしていましたが、夜7時頃に和泉を出るときは雨が降っているので「今日はないね?」と電話をすると、「いや晴れているよ」ということがよくありました。
 気を付けなければいけないのは、山の手前です。先ほどの事例の物件はちょうどその辺りです。下と上の両方から結露のリスクがある場合と、上からだけの場合があります。

■換気は場所によって変える必要がある
 ある大学の先生がシミュレーションされていたのですが、1600分の1や250分の1など吸排気方法の違いによって小屋裏の換気面積が決められているものの、あの基準が決められた経緯はよく分からない、ということをご存知でしたか?きちんと実験して確かめられたものではないのです。シミュレーションでは、北陸辺りではその3倍以上ないと足りないというデータが出ています。日本海側に比べ福岡は条件がいいようです。
 このように、法規制を守っていればいいというわけではありません。場所によって換気量は変わってくる。当社には業界唯一のモルタル用通気水切りがあります。オーバーハング用通気部材では、モルタル壁の場合オーバーハングの部分を塗り込んでいるケースを多く見かけます。前から見えないのでこの通気部材を使えば意匠的にも良い上に通気もとれる。このようなモルタル用の部材もいろいろ出しています。

■「アンタレスミニ」と笠木の漏水実験
 関東の木造2階建てのサイディング胴縁の物件ですが、施主から雨漏りではないか、と相談がありました。バルコニー飾り開口部とサイディングが白く変色していました。笠木天端に穴を開けると熱気と異臭があったとのこと。おおよそ住宅の7割くらいで手摺り壁の笠木のところは通気が考えられていませんでした。温かい空気は下に降りないこと、わずかの寸法のすき間で通気しようとすることがそもそもの問題です。しかし問題が起こっても、第三者機関では結露なのか漏水なのか、原因を究明していない実態がありました。
 3階建てのバルコニーになると2.5層分の熱気が上がり、下に降りずに上部に滞留します。開放型の納まりになると通気はすごくいいのですが、雨水が浸入してサッシ上のサッシフィンと防水シートとテープの取り合いから漏水する可能性があります。
 笠木の外壁との間は10mmと規定されている場合が多いのですが、10mmにすることが至難の業です。サイディングも胴縁も合板も誤差があるからです。特にサイディングは最近非常に凹凸が激しい。凸のところならいいのですが、凹にあたるとすき間が大きくなる。また、最近のサイディングは、フッ素塗装品も増えており、シールもつきにくくなります。だから10年間もつかは非常に疑問です。こういった疑問から、笠木の模擬バルコニーをつくって、送風散水試験をするようになりました。
 以前6種類の納まりで送風散水実験をしました。1.住宅支援機構の納まりで、横胴縁に通気胴縁を使用。2.日本窯業外装材協会(NYG)の納まり。3.ハウスメーカーの納まりですが、開放型。4.木片を入れた開放型。5.開放型で養生サイディングを裏貼りしたパターン。6.アンタレスミニという当社の換気部材を使った納まり。アンタレスミニの試験体は漏水量わずか3ccで、ほとんど入りませんでしたが、ほかの試験体には漏水量が多いものもありました。
 アンタレスミニを使った納まりは、第3者機関をはじめいろいろなところへ提案して非常に高い評価を受けています。業界で唯一、横からの釘留めなので腰壁天端の鞍掛けシートを傷つけない。最もデリケートな天端を傷つけないというのは大きなポイントになっています。また特許を取っているので当社にしかできません。そして手摺壁天端に、サイディングや木など、余計なものが入らず、とてもきれいな天端にすることができます。業界ナンバーワンの換気量99㎠/ml、防水性能試験合格、軽い、特注対応可能といった数々の特徴があります。今ハウスメーカーなどで標準採用が決まっています。
 最近多いキューブ型住宅向けには「アンタレスベント」が最適です。パラペットの立ち上げと手摺り壁などにたまった湿気を安全に出します。「ベテルギウスT」は立平の屋根下にたまりやすい熱気を抜きます。また「インコーナベンチレーションハット」は、材料半分・手間半分で通気もできる、一石三鳥の商品。この4商品をまとめて「ハウゼコセット」として提案しています(図2)(図3)。



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