2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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建材情報交流会ニュース
 第25回
“環境保全”建材を活用した地球温暖化対策の最前線

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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「地球温暖化と期待される革新技術」
 (独)産業技術総合研究所 関西センター
  所長 神本 正行 氏

資料はこちら(PDFデータ)

 昨年公表されたIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change 気候変動に関する政府間パネル)の第4次報告書は、今後100年間で年平均気温が1〜6.3℃、海水面も19〜58cm上昇すると予測しています。過去100年間の上昇幅が1℃未満ですから、いかに温暖化が加速しているかが分かります。

 平均気温の上昇はどんな影響をもたらすでしょうか。3℃上昇すると、アジアで年間700万人以上が洪水の危機にさらされ、世界で1億人以上が新たに食糧難に陥ると言われています。4℃の上昇だと、世界人口の5人に1人が洪水の影響を受け、30億人の人々が水不足に直面するだろうとも予測されています。

 経済に与える影響も深刻です。ニコラス・スターンは、その『STERN REVIEW(気候変動の経済学)』の中で、対策を急げば2050年まで毎年GDPの1%の出費で済むが、遅れると巨額の費用が必要だと書いていますし、IEA(国際エネルギー機関)も、温室ガス半減に必要なコストを45兆ドルと試算しています。わが国の経済産業省や環境省などの試算も同様です。

 こうした予測の基になっている気象変動モデルには、まだ不確実な要素があり、精度も十分ではありませんが、人類の活動に伴って温暖化が進行していることはかなりの確率で確かと考えられています。絶対確実ではないからといって何の対策もしなければ、人類はいずれ、巨大な社会的・経済的損失を受けることになる。だからなるべく早く手を打っていこう、というのが世界の大方のコンセンサスだろうと思います。

■日本は1990年比6%の削減が必要
 1988年(平成1)に設立されたIPCCでは、世界中の科学者の最新研究に基づいてまとめた評価報告書を、ほぼ5年ごとに発表しています。各報告書は、気候変動枠組条約を採択した1992年(平成4)の地球サミット(リオデジャネイロ)から、1997年(平成9)のCOP3京都会議、さらに今夏の洞爺湖サミットに至る議論の出発点となっています。(図1)

 COP3で採択され、2005年(平成17)から正式発効した京都議定書には○CO2、メタンなどの温室効果ガスについて、各先進国に法的拘束力のある数値目標を設定(途上国は除外)○排出権取引ET、クリーン開発メカニズムCDM、共同実施JIなど、国際的協調による、目標達成のための京都メカニズムを導入、といった内容が盛り込まれました。その結果、日本は2012年までに、1990年比で6%の排出量削減達成という目標を受け入れ、2005年(平成17)には「京都議定書目標達成計画」を閣議決定しました。 ただ1、2年前から温室効果ガスの排出量が約8%増加しており、目標達成には合計14%もの削減が必要と、ハードルはきわめて高くなっています。

2.エネルギーの安定供給
■石油資源は、あと数十年はもつ
 CO2の最大の排出源はエネルギー部門ですが、これは現代文明を支えている背骨でもあります。つまり、地球温暖化対策を行うには、エネルギーの安定供給対策も同時に考える必要があるということです。

 現在、世界の一次エネルギー供給は、化石燃料(石油・石炭・天然ガス)がほぼ79%とトップです。そのうち石油は、現在稼動中の油田がほぼ生産のピークに達していることなどから、資源不足を懸念する声があります。しかし、技術進歩による新規生産や増産、新規油田発見の可能性などを考えると、あと数十年ほどは相当量の供給が可能でしょう。ただ、石炭などの化石燃料と同様、CO2の貯留が不可欠です。(図2)

 一方、OPEC諸国約76%に象徴される供給地の偏在、産出国と消費国の隔たり、輸出入量の膨大さなどは注意を要します。これに備えて、ヨーロッパでは多角的なエネルギー輸送政策をとりつつありますが、島国である日本はどうか。非常に大きな問題です。

■「資源量が豊富」だけでは足りない
 化石燃料以外の一次エネルギーの内訳は、核燃料5%、再生可能エネルギー(RE)15%です。ただ、後者の大半は大型の水力発電、および薪などの伝統的なバイオマスです。REの割合を増やすには風力や太陽光発電、新しいバイオマスエネルギーなどの開発と普及が不可欠です。その利点は発電量あたりの炭素排出量がごく少ないことです。資源量も豊富で、サハラ砂漠の半分を効率14%の太陽電池で覆えば、世界の年間一次エネルギー消費量400EJに近い380EJが供給可能と試算されています。問題はそれを電気や熱として、需要に応じて有効供給できるかどうかです。(図3)

 日本の場合、太陽光エネルギーの物理的限界潜在量は4000万kl以上、実際的潜在量は2000万klと、国内の年間エネルギー消費量の数%に過ぎません。ただ、他のREと合計すれば、数十%の数字も不可能ではありません。どれか一つではなく、多様な供給源を積み重ねることが大事です。また、技術開発により効率が向上すれば、さらに潜在量は増える可能性があります。

■パワーの安定供給も重要課題
 あらゆるエネルギーは、それを必要なパワーに変換し、安定供給できて初めて有用です。日本の場合、一日の電力負荷変動の幅が大きいため、昼間の安定供給を優先すると、夜間は大量の電気が余ってしまいます。そこで、発電設備容量を電力ピークよりやや少なく設定し、実際のピークとの差を蓄えた夜間電力で補えば、経済的にも効率面でもメリットが生まれます。

 かつては大型の集中型発電所で発電した電力を末端に送るだけだった電力ネットワークは、家庭や事業所の小規模分散型発電設備が加わり非常に複雑化しています。わが国の場合、沖縄を除く9地域がゆるやかに結合していますが、北海道と東北には風力発電が相当入り、大きな変動要因となっています。2003年の北米大停電のような事態を防ぐためにも、ネットワークの安定化の研究が欠かせません。将来は、ガスや熱を含む統合システムの制御も課題でしょう。(図4)

3.省エネルギーの現状
■産業部門の省エネルギー対策は頭打ち
 2004年(平成16)度の日本のエネルギー消費は、産業部門46.3%、民生部門27.5%、運輸部門がやや減少して24.7%という内訳です。これは、各部門のCO2排出量にもほぼ反映されています。

 産業部門におけるエネルギー消費の削減は、80年代半ばごろから足踏みしているのが現状です。今後の削減には、相当革新的な技術が必要でしょう。そのような技術として、化学部門におけるグリーンサスティナブルケミストリー(GSC)、鉄鋼部門におけるコンビナートエネルギー統合技術、窯業土石部門における高性能工業炉などが挙げられます。製造現場に省エネルギーと低廃棄物の発想を取り入れ、CO2も減らすミニマルマニファクチャリングへの移行は、今後ますます求められるでしょう。(図5)

 家庭分野でエネルギー消費が多いのは、暖房、給湯、照明や動力です。これらを制御する方法として、HEMS(Home Energy Management System)と呼ばれるシステムが期待されています。

 一方、運輸部門のエネルギー消費は、自家用乗用車(55%)、貨物自動車(29%)に集中しており、大半は走行時のものです。今後の省エネ技術として、交通システムの高度化、車両軽量化、動力の燃料電池化や電池化、ハイブリッド化などが有望視されています。

4.需給見通しと長期シナリオ
■長期的にはCO2の削減努力がカギ
 エネルギー起源のCO2排出量に関する政府見通しによれば、2030年のCO2量は、放置すれば2005年比で約11%増、現在の努力を続ければ同約5%減、最大限の努力で同約22%減と見込まれています。

 2005年に経済産業省が策定した、今後の超長期エネルギー技術ビジョンでは、環境制約の下に2100年のあるべき姿を描き、[ケースA]化石燃料のみの使用と炭素の分離・貯蔵技術(CCS)のセット、[ケースB]原子力エネルギーのみの使用と核燃料サイクルの確立のセット、[ケースC]REのみの使用と究極の省エネとのセット、という極端な3ケースを想定した場合にどのような技術が必要かを検討しました。

 一方、World Energy Outlookは、現在の化石燃料への依存は2030年時点でも続くと予測しています。また、German Advisory Council on Global Changeでは、2100年時点で全エネルギーの85%をREで賄うシナリオを発表し、そのためには2050年時点でのREの生産性を1990年の3倍、全体の約半分まで引き上げることが必要、としています。(図6)

 このような長期見通しは、CO2の削減状況によって大きく左右されます。たとえば、産総研第2期研究戦略平成18年度版のシナリオでは、2100年までにCO2濃度を550ppmまで削減した場合、化石燃料や再生可能エネルギー、CCSなどの貢献がどの程度かを見積もっています。今年7月に国が発表した「低炭素社会づくり行動計画(案)」では、2050年までに現在のCO2排出量の60〜80%を削減することを目標に掲げています。

5.技術開発の展望
■温暖化の緩和につながる技術革新

 地球温暖化を抑えるには、エネルギー利用の効率化やCO2の削減量抑制につながる技術革新が重要です。経済産業省では「重点的に取り組むべきエネルギー革新技術」を選んでいますが、住宅関係の技術だけでも、「省エネ住宅・ビル」「次世代高効率照明」「超高効率ヒートポンプ」「省エネ型情報機器・システム」「HEMS/BEMS/地域レベルEMS」などがあります。

 また、エネルギーの供給と需要にまたがる「部門横断」分野も、応用範囲が広いだけに、大きな波及効果が期待されています。機器単独で省エネ効果があり、エネルギーネットワークの安定度向上にも寄与するパワーエレクトロニクス(パワエレ:電力変換・制御技術)や高性能電力貯蔵技術などが、その代表例です。

 住宅・ビルは、今の技術でも30〜40%のCO2削減が可能で、森ビルや大成建設などがそうしたビルの建設を発表しています。国土技術政策総合研究所と建築研究所による「自立循環型住宅」の実証実験でも、居住時のCO2排出量35%削減に成功しており、50%削減も視野に入っています。木造住宅の耐久年数向上で、森林に匹敵するCO2削減効果が得られるという研究成果も、独立行政法人森林総合研究所が発表しています。

■産総研が手がける最新研究から
 こうした中、産総研でもエネルギー利用の効率化やCO2の削減量抑制につながる研究を進めています。

●省エネルギー住宅部材
【調光ガラス】
 電圧やガスでガラスの透過率を自由に制御し、夏は日光を反射し、冬は陽ざしを自動的に取り入れる大型調光ミラーガラスの試作に成功しました。さらに、温度に応じて自律的に反射率・透過率をスイッチングする、自律型調光ガラスについても研究中です。

【調湿材料】
 同じ不快指数なら、気温を1℃下げるよりも湿度を10%下げる方が、冷房(暖房)エネルギーを約10%節約でき、CO2削減にもつながります。そこで、高機能で自律的な調湿材料の壁材化を研究中です。

【保水性舗装材料】
 雨水を吸水・保持する保水性舗装材料は、その雨水が蒸発するときの気化熱で、気温を下げ、ヒートアイランド現象を緩和する効果があります。このような保水性舗装材料についても、研究を進めています。

●燃料電池(FC=Fuel Cell)
 小型で効率が高い燃料電池は、エネルギー利用の効率化やCO2削減を進める上で有望な技術です。すでに宇宙用電源には応用されていますが、家庭や自動車で使うには、一層の高効率化が欠かせませんし、電気自動車やハイブリッド車、バイオマス発電、ヒートポンプといった競合技術の壁を越えることも必要です。性能アップとコスト削減を可能にするために、燃料や電解質に関する革新的技術が待ち望まれます。(図7)

 現在、産総研では○FC-Cubic(固体高分子形燃料電池先端基盤研究センター)による燃料電池の中で起こっている現象の基礎研究○Hydrogenius(水素材料先端科学研究センター:九州大学構内に設置)による高圧の水素が容器材料にもたらす水素脆化などの研究○米国・ロスアラモス研究所とも提携し、水素貯蔵材料の構造や性能に関する基礎研究を行うHydro-Star(NEDO[独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構]の水素貯蔵材料先端基盤研究事業プロジェクト:産総研秋葉主幹研究員がプロジェクトリーダー)の3つの基礎研究プロジェクトを実施しています。

 一方、ポータブル機器用のマイクロ燃料電池が商業生産される時に備え、国際標準化や規格化などの研究も進めています。誰でも、どこでも、同規格の製品が使えるためには、これも欠かせない分野です。

●パワーエレクロトニクス・二次電池技術
 産総研では、パワエレの中核技術として、シリコンカーバイド(SiC)を用いたパワーデバイス(電力用半導体素子)を開発中です。非常に成型が難しい素材ですが、ベンチャー企業を設立し、ようやくウェハーを供給できる体制まで持ってきました。性能も良好で、電車、自動車、モーター、パソコンなど、多彩な分野で高性能が期待されています。(図8)

 一方、ポータブルPCや携帯電話、電気自動車に使われる二次電池(蓄電池)については最近、リン酸鉄リチウムの超微粒子の合成に成功しました。また、リチウム電池の充放電過程でリチウムイオンがどう動いているか、顕微鏡での観察にも初めて成功しています。

●実証実験
 産総研のつくばセンターでは、分散型エネルギー供給システムの実証実験中です。太陽光発電(PV)や大容量蓄電池、ヒートポンプを組み合わせたもので、従来の集中型システムより効率が向上しています。

 また、燃料電池を使った住宅のエネルギーネッワークについては、水素発生部分(改質器)を分離・共用して、その効率性、経済性、CO2削減効果を見る実証実験を、大阪ガスと共同で実施しています。

 札幌市立大学では、替熱蓄熱などの産総研の独自技術を適用した新しいコジェネレーション・システムの実証データを集めています。札幌市役所では、暖房用循環水に界面活性剤を注入する実証実験を行い、循環ポンプ動力の65%削減に成功しました。その他、実際の家庭において計測を行い、家庭でのエネルギー需要に関するデータベースを構築しました。

 ユーザーとの協力の下に行う実証実験は、現在の研究を進め、不明点を明らかにする上で欠かせません。これからも力を入れて行く予定です。

■おわりに:エコイノベーションへ向けて
 現在の産業構造は、開発が進むほど環境配慮が小さくなり、環境配慮を重視すると、開発が縮むという関係になっています。持続可能社会を実現するには、こういう産業構造の重心をシフトさせ、環境に配慮しつつ開発も高められるような構造変革が必要です。それは産総研のミッションの一つでもあります。(図9)

 重心移動を図る指標になるのが、ε(環境効率)=B(便益)/A(環境負荷)で表現される環境効率です。エネルギーシステムを含む今後の技術開発は、このεをいかに大きくするかがカギになると思います。

 グリーンITやサステナブル・マニファクチュアリングなど、経済産業省が提唱している「エコイノベーション」も、目指しているものは同じです。エネルギーを含むすべての技術革新について環境重視、人間重視を基本とすることが、「エコイノベーション」の概念であり、私たちの目指すところだろうと思います。

 


「太陽光発電技術の現状と将来展望」
 三洋電機 ソーラー事業部 事業企画部
  担当部長 脇坂 健一郎 氏

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■半世紀を重ねた太陽電池の歩み
 地球環境問題およびエネルギー資源枯渇の対策として、太陽電池が注目されています。その原理は1954年(昭和29)、米国のピアソンによって発見され、1958年(昭和33)には人工衛星用電池が誕生。その後、1973年(昭和48)と1979年(昭和54)の石油危機を契機に、代替エネルギー研究が盛んとなり、1976年(昭和51)には世界初のアモルファス太陽電池が誕生しました。

 三洋電機では、1975年(昭和50)からアモルファスタイプの研究を始め、1980年(昭和55)に量産化に初めて成功しました。1990年(平成2)からはHIT構造の研究も始め、1997年(平成9)から量産化を開始。今年度末は340MWの生産能力を目指しています。

■効率上昇を求めてアモルファスからHIT構造へ
 2006年(平成18)現在、太陽電池生産量の97%はシリコン系です。三洋電機が着目したのは、使用材料・製造エネルギーが少なく、大面積化が容易、低コスト化に有利なアモルファスタイプで、電力用として実用化されているものは約20年の耐用年数があります。太陽電池単体で2年、システムで3年以内に製造エネルギーを回収できる水準まで上昇しており、変換効率は理論的には約30%まで上げられるとされています。(図1)

 より高効率な製品として、三洋電機が開発したHIT構造太陽電池があります。これはアモルファスと単結晶をヘテロ結合させたもので、変換効率は量産レベル約20%、ラボレベルでは22.3%に達します。温度上昇による性能低下も少なく、発電効率は単結晶に比べ変換効率と温度係数の差で約43%増。裏面でも発電できる両面発電型モジュールでは、さらに20%の効率向上を実現しています。

■年々拡大する太陽電池生産量
 1992年(平成4)、電力会社の余剰電力買い取り制度が始まりました。当社でも、当時の研究リーダー(後に社長就任)が自宅で率先してモニターを始めましたが、10時〜15時ごろの電力ピーク帯に1日の約6割を発電するなど、その後の動向に影響を与えるデータが多数得られ、有用性を実証しました。また、設置後の家庭では節電意識が高まる傾向があり、アンケートでも約6割が「節電を意識している」と答えています。

 現在、太陽電池の設置家庭は、全国で約40万軒を超えています。世界の太陽電池市場でも生産量は急増しており、ここ数年の累積生産量は、原子力発電所10基以上に相当。昨年だけでも、原子力発電所3.7基分、3733MWの太陽電池が生産されました。(図2)

■民生用太陽電池開発の課題とは
 日本の太陽電池市場には課題もあります。たとえば、屋根専用の太陽電池は当社も手がけたことがありますが、太陽電池の上に火種を置いて燃え抜けないなど、建築基準法の耐火基準をクリアする必要があるといった付加的プロセスもあり、実用化は進んでいません。

 また、ピーク時で年間7万棟に設置された導入件数も、2005年(平成17)の補助金廃止以後は漸減しており、2007年(平成19)には5万件台となっています。

 現在、太陽電池の単年度の累積導入量で日本は3位です。1位のドイツでは、太陽電池による電力を長期間、電力料金の数倍の価格で買い取るフィード・イン・タリフ(FIT :固定買取制度)を導入し、積極的な誘導を図っています。同様の制度は欧州各国に広がっており、世界の市場を牽引する力となっています。

■太陽電池だけで暮らせる未来を目指して
 今後の太陽電池の開発動向ですが、NEDOのシナリオでは、現在約50円/kWhのコストを2030年には約7円/kWhまで下げることを目指しています。また、国内の個人住宅の8割に太陽電池を導入すれば最大ピーク電力の3割が、国土の8割で太陽光発電を設置すれば日本で必要なエネルギーの30〜40%が賄えるという試算もあります。

 さらに、三洋電機が提唱する「GENESIS計画」では、世界中の砂漠に設けた太陽光発電システムを電気抵抗ゼロの超伝導ケーブルで結び、全世界に送電することを考えております。これに対しては、中国を舞台とする「シルクロード・ジェネシス計画」の提案もいただきました。全人類が太陽電池だけで暮らせる日も夢ではない、と私たちは考えています。(図3)

 


「屋上・壁面緑化における空中緑化システム」
 四国化成工業梶@企画デザイン部
  グリーンシェード技術サービス 大塚 恭平 氏

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■屋上温度を下げ、CO2削減効果も
 空中緑化システムは、屋上緑化システムのひとつです。土を入れたプランターの上に2層メッシュを設置し、そこにつる性植物を茂らせる仕組みで、緑陰が日ざしを遮ると同時に、その下の空気層が断熱層として作用。風による冷却効果と併せて、ヒートアイランド現象を緩和し、省エネとCO2削減に貢献します。

 真夏の炎天下の屋上で遮熱効果を計測したところ、日なたの表面温度58℃に対し、緑陰は36℃。また、このシステムを20基ほど敷き詰めた屋上全景をサーモグラフィで観察した結果でも、屋上面約50℃に対し緑の表面温度は37℃と、20℃前後の低減効果があることが分かりました。さらに、CO2削減効果は緑化面積1uあたり年間2kg、システム1基(緑化面積4u)で年間8kgと試算されています。(図1)

■秘密は2層メッシュ+2層プランター
 当社の屋上緑化システムは、地上高45cmに設けた2m×2mの2層メッシュと、中央部のプランター、土、植物で構成されています。この2層メッシュは、2枚のスチールメッシュを線材で立体的に溶接。上下方向の強度を保ちつつ、つるを巻きつきやすくしています。

 また、プランターは上が化成肥料配合の人工軽量土壌、下が雨水層という2層構造。全体容量は、東京都の屋上緑化条例などを考慮し110Lです。(図2)

 植物の方は、日本の冬を考慮し、常緑のつる性植物数種類を育成・比較。結局、アメリカ原産のスイカズラを選びました。将来はさらに、何種類かの中から選べるようにしたいと考えています。

 なお、このシステムはインドネシア・バリ島のホテルで見かけたものを参考に、4年間の育成試験や屋上緑化条例の研究などを重ねて、今の内容に落ち着きました。現在は、特許出願中です。なお、自治体によっては条例対象外と見なされるケースもあり、今後も努力が必要だと考えています。

■屋上緑化をめぐる課題解決に貢献
 年々、注目されている屋上緑化ですが、実施は簡単ではありません。特に既存建物の場合、建築基準法による土壌重量の制限(平均床荷重60kg/u以下)、屋上防水層の保護対策などが課題です。また、強い日射と風、少ない土壌下で植物を育てるためには、耐乾・耐風対策や潅水・剪定を丁寧にやる必要があります。現在の主流は、セダム類(多肉植物)や日本芝を使った薄層工法ですが、セダム類は冬に枯れる上に、ヒートアイランドの緩和効果が小さい。芝の場合は、水やりや芝刈りの手間とコストが課題です。

 一方、当社の空中緑化システムは、2層メッシュとプランターを組み合わることで、平均床荷重を41kg/uに抑え、施工も容易。防水層も傷めません。また、酷暑・少雨の場合を除けば、潅水も原則として不要です。直接コストは1基120,000円(30,000円/u)となりますが、維持管理費を含む全体コストでは十分、対応できるのではないかと考えています。(図3)

 なお、お客さまによっては、花や実のなる一年生植物を選ばれる方もおられます。毎年植え替える必要はありますが、生育が早い上に、キュウリやニガウリなどは収穫もできるため、こちらも人気があります。

 このシステムは現在、首都圏・関西・中部地区のみで販売しています。来年からは全国展開の予定です。

■壁面緑化システム・外構用フェンスも商品化
 最後に、このシステムを応用した製品を紹介します。まず、壁面に固定した直付け柱にダブルメッシュを取り付け、その下にプランターを設置する壁面緑化システム。育成試験では、カロライナジャスミンのつるを高さ4mまで伸ばすことに成功しています。メッシュと壁面の間の通気層が、カビなどを防ぎ、遮熱効果も高めるのではないか、と期待しています。

 もうひとつは、ダブルフェンスの中に間伐材を入れ、つる性植物を付着しやすくした外構用フェンスです。隣地境界をはっきりさせたいが、通常の目隠しフェンスなどでは重過ぎる、といったお客さまの声に対応できるのではないか、と考えております。と同時に、当社自身も「緑を提供する企業」「地球温暖化防止に貢献する企業」へと発展したいと願っております。

 

 
 
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