講演会 講演録

  • 2022年6月10日
    金属サイディング外壁重ね張りリフォームのご提案
    (KENTEN2022特別講演)
    日本金属サイディング工業会
    代表幹事 嶋貫 孝 氏

    軽量、高断熱、高強度、豊富なデザイン演出

     金属サイディングとは、表面材と裏面材の間に芯材(断熱材)をサンドイッチした外壁材です。軽量で断熱性に優れ、ひび割れや凍害の心配がなく、豊富なデザインが選べるという特長があります。表面材は塗装ガルバリウム鋼板、塗装溶融亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合金塗装板、塗装ステンレス鋼板の4種類があり、多くは前者2種、特に現在は塗装ガルバリウム鋼板が主流です。
     複数の素材を貼り合わせてつくる金属サイディングの成形は、柄付け加工→さね成形加工→断熱材成形→加飾(塗装)という流れになっています。表面材の柄付け加工はエンボス成形や一部ロールフォーミングで行います。柄付け加工と加飾(塗装)で豊富なデザインを演出することができます。

    リフォーム需要への期待と西日本への拡大展開

     金属サイディングは1966年に石膏裏打ちの製品が登場して以来50年以上の歴史があります。2022年現在、日本金属サイディング工業会には8社の会員企業が加盟しています。金属サイディングの過去10年の市場動向を見ると、ここ4、5年で出荷量平均値が上がっているのが分かります。金属サイディングはリフォームに適し、新設住宅着工数の増減の影響を受けにくいので、今後新築が減少する中、リフォーム需要に期待がかかります(図1)。
     外壁材市場においては、戸建新築用では窯業サイディングのシェアが圧倒的(窯業78%、金属6%)ですが、戸建リフォーム用では、金属サイディングのシェアが1位(金属40%、窯業28%)となっています。
     エリア別では西日本での使用が少ないため、われわれ業界としても「GO WEST!」を掲げて西への展開に注力しています。こうしたPR活動の成果が表れて、徐々に西日本への出荷量は増加しています。
     柄の特徴は金属サイディングの持ち味の一つです。金属の持つシャープ感がモダンなデザインをつくり、住宅・非住宅を問わずシンプルなフォルムを生かすことができます。組み合わせによって窯業系サイディングにはない新しさを出すことも可能です。近年はキューブ型の住宅が増え、直線的でシャープな外壁・外観デザインが求められています。金属サイディングはこうしたニーズに最適な外壁材といえます。

    高性能で経済的な金属サイディング重ね張り工法

     外壁リフォームの方法は「塗り替え」と「重ね張り」の二つに大別されます。リフォームでより強みを発揮する金属サイディングでは、重ね張り工法(カバー工法)を推奨しています。
     金属サイディングは、施工性・耐震性、断熱性・経済性、美観性など、多くの優位性を有します。[施工性×耐震性] 重量が窯業サイディングの約1/4と軽いため、住宅構造が同等の場合、躯体にかかる負担が小さく、施工も容易です。
    [耐震性] モルタル既存壁を金属サイディングで重ね張りすると、外壁の強度はリフォーム前より約2.6倍アップします。また、かん合部の片側だけを固定する構造なので、地震時にはかん合部がスライドして揺れに追従することによって地震力を逃がし、壁の変型を吸収して破損や脱落を防止します。
    [断熱性×経済性] 断熱性能に優れた芯材を使用しているため、他の外壁材に比べて高断熱で省エネです。夏は涼しく冬は暖かい住環境を実現できます。
    [経済性] 通気構法を標準としており、壁の温度上昇を抑え、壁内の湿気を排出し、悪天候時には通気層から雨水を排出するなどの効果があります。重ね張り工法は塗り替えに比べて侵入熱抑制効果が約1.8倍も高く、夏場の冷房効率を格段に高めます(図2)。
     また、塗り替えは初期費用の安さが魅力ではありますが、初期費用とメンテナンス費用を合わせたトータル費用で考えると、塗り替え、張り替えを抑え、重ね張りが最もリーズナブルです。
    [美観性] 石積み調、木目調、塗り壁調、レンガ・タイル調、金属らしさを際立たせたメタル調など、柄が多彩でデザインも豊富です(約200柄800品種)。長尺設定が可能なので、中間水切りのない美しい納まりが実現でき、片流れ物件や非住宅にも最適です。
     このほか、耐久性、防水性、防火性にも優れています。

    金属サイディングの好事例をフォトコンテストで

     当会では毎年「金属サイディング施工例フォトコンテスト」を開催しており、昨年度は第20回を迎えました。リフォーム部門では、金属サイディングによってシャープに、あるいは温かく仕上がったり、まるで新築のように生まれ変わった住宅のBEFORE・AFTERを見ることができます。 
     新築部門では、近年増えているキューブ型や斜め型などさまざまな形状・デザインの住宅が目立ちますが、このような住宅でも製品の柄や持ち味を生かして金属サイディングが活躍しています(図3)。今年度も6月から9月末まで応募していますので、機会があればぜひ一度ご参加いただければと思います。

TEKTON - 日本建築材料協会デザイン委員 -TEKTON - 日本建築材料協会デザイン委員 -