講演会 講演録

  • 2019年6月7日
    “金属サイディング外壁重ね張り”リフォームのご提案
    (KENTEN2019特別講演)
    日本金属サイディング工業会  代表幹事 藪野 聡司 氏 

    軽量・多彩で高性能な金属サイディング

     金属サイディングは、塗装ガルバリウム鋼板などの金属性表面材とアルミ紙などの裏面材との間にウレタンなどの断熱材をサンドイッチした、3層構造の外壁用素材です。標準品は長さ3~4m・厚さ12~25mm前後で、優れた軽量性と断熱性、デザインが豊富などの特徴があります。また、窯業系サイディングに比べると、ひび割れ・凍害の心配がないため、東北・北陸などで急速に切り替えが進んでいます(図1)。
     工業会が推奨する設計・施工条件は、○適用建物高さは13m以下(≒3階建以下)○標準工法は通気構法○保証対象地域は概ね海岸線より5km以上離れた地域、などです。なお、塩害地域(海岸線5km以内)や特殊環境地域(温泉地等)については、各社で異なる基準を定めております。
     今回ご紹介する「金属サイディング外壁重ね張り」工法は、既存外壁の上に金属サイディングを重ねるリフォーム工法の一つです。モルタルなどの既存壁を撤去する必要がないため、住んだまま工事ができ、工事期間も短縮。さらに撤去にかかる費用負担が小さく、環境にも優しいなどのメリットがあります。
     金属サイディングはデザインも豊富です。工業会加盟8社によるデザインは、色違いも併せると約800種。金属の表面材にエンボス成形やロールフォーミングで柄付け加工をし、さらに加飾(塗装)を行うことで、多種多様なデザインを生み出しています。
     近年の住宅は箱型(キューブ型)のものが多く、外壁・外観デザインに直線的・シャープ感・整列的といった要素が求められています。スタイルでいえば、ナチュラルモダン・スタイリッシュモダン・シンプルモダンなどといわれるデザインですね。金属ならではのシャープ感を持つ金属サイディングは、こうしたシンプルなフォルムによく合います。また、多様なデザインの組み合わせによって、窯業系サイディングにはない新しさを生み出せるのも特長です。
     1966年に誕生した金属サイディングは、半世紀以上の歴史を持つ商材です。ほぼ同時期に誕生した窯業系サイディングが新築市場に強い(約79%)のに対し、金属サイディングはリフォーム市場でトップシェア(約38%)を占めています。少子高齢化や消費税増税の影響で、新築着工戸数の縮小とリフォーム需要の高まりが予想される中、金属サイディングはますます伸びていくことが期待されます。
     地域別シェアでは東日本地区(北海道・東北・関東甲信越・北陸)78%に対し、西日本地区(東海・近畿・中国・四国・九州)は22%となっており、東海・近畿以西での知名度・普及率向上に力を入れているところです。特に近畿エリアの出荷状況は全体に上昇傾向にあり、2018年は前年比107%を記録しました。同時期の近畿の戸建着工数がほぼ横ばいであったことを考えると、金属サイディングの認知度がようやく高まりつつあると感じています(図2)。

    外壁重ね張り工法のメリットとは

     住宅の外壁リフォーム工法には、メジャーな「塗り替え」と私たちが推奨する「重ね張り」工法があります。イニシャルコストが安く施工もしやすい「塗り替え」に対して、「重ね張り」はメンテナンス性・美観性・下地性能・断熱性などに優れています。その特長を簡単にご紹介します(図3)。
    ○強み01:工期短縮
     建物サイズ30~40坪/棟の住宅で作業シミュレーションを行ったところ、「塗り替え」約10日に対し「重ね張り」は約2週間と、大差ない結果となりました。
    ○強み02:軽量性
     金属サイディングの重量は、窯業系サイディングの約1/4(3~4kg/㎡:14~17kg/㎡ )です。同等の住宅構造なら、柱や梁などの躯体にかかる負担はより小さくなりますし、職人さんの作業負担も軽減されます。
    ○強み03:耐震性
     工業会が独自の強度試験を行った結果、「重ね張り」後の住宅は、外壁強度が約2.6倍にアップすることが分かりました。
     また、金属サイディングはかん合部の片側のみを固定する構造なので、地震時にはかん合部のみがスライドして揺れに追従し、壁の変形を吸収します。このため、破損・脱落の心配がありません。
    ○強み04:断熱性・省エネ性
     芯材に断熱材を使う金属サイディングは熱伝導率が非常に低く、窯業系サイディングの約1/6程度です。その結果、夏は快適で冬は暖かい断熱性能の高い住まいが実現できます。
    ○強み05:快適性
     金属サイディングの施工では通気構法が標準となっています。この構法は十分な通気層が確保されるため、夏は壁全体の温度上昇を抑え、冬は壁体内の湿気を排出し結露を防ぎます。万一、悪天候(台風・強風雨)で雨水が浸入した場合も、通気層から排出されるため、壁体内や躯体に悪影響を及ぼしにくくなっています。
    ○強み06:遮熱性
     工業会のシミュレーションによれば、「重ね張り」の侵入熱抑制効果は「塗り替え」の約1.8倍。侵入熱を効果的に抑えることで、夏場の冷房効率を向上させ、快適性を高めるとともに経済性にも貢献します。

    トータルコストに強みを持つ「重ね張り」

    ○強み07:経済性(コストパフォーマンス)
     延床面積30坪・外壁面積150m2の建物で、20年に2回のメンテナンスを想定した場合、コスト総額(イニシャル+メンテナンス)は「塗り替え」約300万円に対し、「重ね張り」は約275万円となりました。イニシャルコストは「塗り替え」が安いのですが、トータルでみると「重ね張り」に軍配が上がります。
    ○強み08:美観性
     既存の外観になじむ石積み調・木目調・塗り壁調・レンガ・タイル調から、シャープな印象を生みだすメタル調(スパン調・ライン調・キューブ調)まで、約200柄800種(工業会会員8社の試算)に上る豊富なデザインで、多様な住まい手の希望にお応えします。
     また最長8mに及ぶ長尺品もあり、片流れ物件や非住宅物件などの大きな外壁でも中間水切りのないすっきりとした納まりを実現できます。
    ○強み09:その他の安心性能
     耐食性の高い鋼材を使用する金属サイディングは、優れた耐久性を持っています。長期間美しく、サビに強い上、ひび割れ・凍害の心配もありません。
     また、金属なので吸水・浸透の心配がなく、高い水密性能を発揮します。(JIS規格 250Pa以上)
     もちろん、防火性の高さも大きな特徴。工業会各社の主要製品は、木造下地・鉄骨下地仕様ともに国土交通省の防火認定を取得しています。
     なお、金属サイディングの施工においては、各種役物が欠かせません。工業会各社では純正部材を設定し、正確な施工に努めております。
     日本金属サイディング工業会では毎年、「金属サイディング施工例フォトコンテスト」を実施し、認知度向上と製品普及に努めております。特に、西日本(東海含む)では「GOWEST!」を合言葉に、各地で周知活動を展開しております。工業会ホームページでは、各社のカタログ・マニュアルをダウンロードできるほか、過去の施行例を多数ご紹介しております。併せてご利用いただければ幸いです。

    ○日本金属サイディング工業会http://www.jmsia.jp/

TEKTON - 日本建築材料協会デザイン委員 -TEKTON - 日本建築材料協会デザイン委員 -