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2026年10月15日建築・建材展大阪2026セミナー(協力:大阪府建築士事務所協会)
「震災から命を守る~耐震診断の重要性と補強工事~」立野 弘憲 氏氏
(古木屋 代表取締役)
今は地震の活動期。いつ大地震が来てもおかしくない
私は木造住宅の耐震診断および耐震補強設計工事を専門にしています。また最近大型の地震が起こっているので、耐震化の重要性を皆さまに再度認識していただきたいと思っております。 地震は海溝型地震と内陸直下型地震に大別されます。海溝型地震は、大陸側のプレートと海側のプレートがずれて起こるもので、東日本大震災がこれに相当します。内陸直下型地震は直下にある活断層が動いて揺れを起こすもので、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、熊本地震がこれに当たります。 日本で起こる地震は、おおよそ100~150年周期で「活動期」と「静穏期」を繰り返しています。今は活動期に入っており、東海・東南海・南海地震はいつ来てもおかしくないと言われています。建築基準法の変遷を見ると、大規模地震後に改正というパターンが繰り返されていることが分かります。昭和56年に壁量を増やした「新耐震基準」が制定され、平成12年に木造住宅の接合部に関する規定「継手及び仕口の構造方法」が加わり、接合部には金物が必要となりました。
倒壊の原因は主に4つ。最重要なのは壁量
木造住宅の倒壊原因その1:壁の量が不足
特に昭和56年以前の建物は壁量が足りていないものが圧倒的に多く、揺れに耐えられません。「うちは太い柱があるから大丈夫だ」と、柱が太いか細いかを強度の基準と考える人が多いのですが、地震のような水平の力に抵抗するのは柱ではなく壁であり、よって耐震性は壁量で決まります。
木造住宅の倒壊原因その2:壁の配置バランスが悪い
地震が起こると、建物の重心に対して、剛心(壁の強さの中心)が支点となって壁にねじれを起こします。日本の木造住宅では、例えば広縁など壁の少ない箇所が弱く、ねじれやすいため、補強を行うときは弱い部分を最優先に考えます。
木造住宅の倒壊原因その3:接合部の緊結不足
かつて木造は、金物を使わずに釘、ホゾ組み、木組みで建てていた伝統があるので、地震ではどうしても抜けたり外れたりします。従って接合部の補強は不可欠です。法改正により接合部に金物が必要となったのは先述のとおりです。
木造住宅の倒壊原因その4:腐朽・劣化
経年劣化、雨漏れ、蟻害などに起因する木材の腐朽により建物が本来の耐力を失って倒れます。
熊本地震視察報告 建物被害からみる補強のヒント
熊本地震の翌月(平成18年5月)、現地に入り倒壊住宅の調査を行いました。震度7の地震を2回受けたため、かなり新しい住宅でも何棟か倒壊していました。2階建ての1階部分が完全につぶれていたり、壁のバランスが悪く大きなねじれが生じていたり、ホゾが抜け上がってしまったりなどです。例えばこちらの木造住宅は、1階の大きな開口部側に広縁や座敷があって壁が少なかったのではないかと想像できるつぶれ方をしています(図1)。雨漏れがあったのか、外壁モルタルの野地板が腐っている住宅もありました。
図1 1階の壁耐力の不足による変形で倒壊したと推察される木造住宅 筋交いを入れれば大丈夫だと考える方も多いのですが、それだけでは耐力が足りません。現地でも筋交いが完全に折れている家が見られました。筋交いを過信せず、金物と併せて強度を確保する必要があります。 在来浴室回りは、ブロックを積んだ高基礎になっていることが多く、家が揺れるとブロックだけが外れてしまいます。このケースは非常に多く見られました(図2)。
図2 在来浴室では高基礎のブロックが外れがち 屋根が重いとより躯体の耐力を要するため、軽い屋根のほうが被害は少なくなります。よって屋根の軽量化は耐震を考える上で優先順位が高いと思います。
耐震診断のポイント
倒壊原因や倒壊実例でご説明したとおり、壁量は非常に重要です。耐震診断でも、壁をしっかり診断できるかどうかが最も重要なポイントとなります。 居室調査では、まず間取りと壁の位置を確認します。古い住宅の場合は現地で図面を起こします。壁の材質も確認。石膏ボードなのか土壁なのか、コンセント開口部を外して隙間から目視あるいは打診で確認。雨漏れによる劣化の有無もチェックします。在来浴室の場合はブロックで高基礎になっていないかも確認。建物外周調査では、外壁のひびの有無や瓦の割れやずれ、基礎のひび割れ、戸袋裏などを確認。小屋裏調査、床下調査も実施し、蟻害がないか、筋交いや金物の有無も調べます。とにかく可能な限り得られる情報を取得します。 現場で得た情報から耐震診断書の作成を行います。診断書では壁量などのテータが測定されています。そして耐震診断の結果をもとに補強計画を立て、実際の改修やリフォームに生かしてもらいます。補強計画では、壁量をどこまで増やすか、どの程度補強するかといった目標点を決定します。私どもは、できるだけコストを抑えながらいかに補強できるかをしっかりプランニングしてお客さまに説明するようにしています。
能登半島地震2回目の視察を実施、復興状況を報告
昨年7月と今年6月、2度にわたり能登半島を訪問しました。震災から2年半、昨年視察から1年を経て、どこまで復興が進んでいるのかを報告いたします。 金沢から能登の奥まで続く「のと里山海道」は、昨年7月と比較して工事は進んでいるものの、道路はまだ波打った状態で復興とは言えない状況でした。輪島市内、朝市のあった場所では、昨年ブルーシートがかぶせられていた箇所が全く同じ状態であることが確認できました(図3)。沿道の状態もそのまま放置です。津波被害も受けたところなのですが、昨年うかがった際は年末には区画整理ができるだろうと聞きました。区画整理は終了したのかもしれませんが、建物の復興は一向に進んでいないようでした。公費解体はようやくほぼ終わったとのことでした。かつて朝市の建物が多数建っていた場所も、状態としては変わっていないと言わざるを得ません。現在、朝市は場別の場所で開催されているそうです。
図3 1年前から変わらず放置されたままの被害家屋 護岸を見るとよく分かるのですが、1mほど地面が隆起して、かつて海の中に隠れていた部分が地上に出てきています。もと海だった場所が陸地になるなど、地形にも大きな変化が生じています。仮設の道路を車で走っていると、ナビでは海を走っている画面が示されます。 有名どころの白米千米田では、もう稲作が行われ、毎年少しずつ復興の兆しが見えています。 半島先端部の珠洲市では、昨年は建物が崩れかかった状態で放置されていましたが、かなり解体が進んで更地になっています。しかし崩れてブルーシートがかかったままの家も散見されました。倒壊した須須神社の鳥居は今年も倒れたままで、狛犬だけが復活していました。 学校のグラウンドを使った避難所の撤去が2年延長されると先日報じられていましたが、その間児童は自分たちのグラウンドが使えません。こうした目に見えない影響も各所で及んでいると思われます。 遠方なのでなかなか訪問する機会がありませんが、旅行に行ったり、能登の産品を購入したり、何か復興の手助けになるようなことができればと思います。私も耐震事業に携わる身として、ぜひまた訪れて復興支援に努めたいと考えております。

