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2026年10月2日建築・建材展大阪2026セミナー
「あつまれ!けんちく女子 集まれば無限大・・・」
(協力:一般社団法人 大阪府建築士事務所協会)清吾 幸子 氏
(日本建築士事務所協会 理事 女性活躍推進WG主査
大阪府建築士事務所協会 理事 女性部会 相談役)
72名の女性が集まって自由に語り合う熱いイベント
本セミナーでは、令和8年3月14日に(一社)大阪府建築士事務所協会50周年記念事業の一環として大阪で開催された「あつまれ!けんちく女子」というイベントの実施報告および、そこで感じられた新しいひらめきや業界の未来のために必要な力についてお伝えします。 このイベントには、設計者、現場監督、インテリアデザイナー、学生など、日本の建築を支えるあらゆる立場の女性たちが総勢72名集まりました。実行委員長の「この場を『小さな実験場』として、世代や立場を軽やかに超え自由に語り合ってください」という言葉で開会、熱気あふれるイベントとなりました。本イベントの目的は、①職種を超えた横のつながりと相互理解、②世代を超えた縦のつながりによる思いの継承、③生き生きと働く姿を社会に発信し、業界全体のイメージを向上させること、の3点です。
パネルディスカッションで見えない壁が浮き彫りに
プログラムは、まず世代別のパネルディスカッションを行い、次に世代や職種を混合させた「共創のワークショップ」を行うというものです。パネルディスカッションには、第一線で活躍する5名のパネリストが登壇し、彼女たちが直面してきたリアルな体験を話しました(図1)。ベテラン世代のI氏は、「父に『女に教育はいらん』、現場では『女が入ると火事になる』と拒否された」と語りました。しかし父親の反対を受けながらも大学卒業後、実力で設計を勝ち取り、海外出張も経験して今では会社で大活躍しています。 中堅のT氏はハウスメーカー勤務で子どももいましたが、両親の介護が必要になった上に夫の協力も得られず、仕事の時間がとれませんでした。そのため独立して事務所を設立、今は存分に実力を発揮しています。若手のN氏は会社で図面を引いていますが、新築と改修の描き分けに悩む日々。そんな中、今後は伝統建築に進みたいと勉強に励んでいると話します。
図1 リアルな本音が語られた世代別のパネルディスカッション ファシリテーターとして参加した私もエールを送らせていただきました。工学部建築学科を卒業した私は建築系企業で勤務していましたが、バブル崩壊で会社が厳しい経営状況に陥ります。若くて知識も資格もない、しかも女性だった私はなんと解雇されてしまいました。しかしその状態の私が他企業に転職できたとしても、同じことの繰り返しになったでしょう。 仕事を奪われたことがあまりにも悔しかったので、私はそこから丸1年かけて必死で勉強し、25歳で一級建築士の資格を取得しました。そして資格を引っさげて次の企業に就職し、以降ずっと設計の仕事と勉強を続けてまいりました。おかげさまで現在では設計事務所を運営しています。悔しさがもたらした転機だったわけですが、悔しさがこんなに自分に力を与えるのだということを、あの時初めて知りました。 さて、世代ごとで「3つの見えない壁」が明確になりました。若手では、経験不足への不安やAIなど新しい技術への戸惑い。中堅では、ライフイベントによるキャリアの中断・葛藤。ベテランでは、厳しい環境を生き抜いて培った技術や思いを、次の世代にどう引き継いでいったらいいのかという孤立感。これらは個人の努力不足ではなく、業界全体で向き合うべき構造的な課題でしょう。しかし私たち女性は、これらの課題をプラスに変えていく、しなやかな力を持っています。
ワークショップで見いだした「しなやかな力」
続くワークショップでは、前半でパネリストたちが話したことについて、今度は参加者が話し合って共有する作業を行いました。数人ずつ各テーブルに分かれ、全員が自分の経験を付箋に書き出して語り合います(図2)。そして職種は違えども建築業界で働く他の女性の生き方を参考にするわけです。この対話プロセスを通じて、一人ひとりの悩みが、実は共通の強みなのではないかと気付き始めました。そこで見いだされたのが、3つの「しなやかな力」というコンセプトです。
図2 世代と職種を超えてグループ討議を行った 1つ目は、クライアントの言葉にならない願いをくみ取る「対話力」。関係者の間に立ち、現場のピリピリした空気を和ませて円滑なコミュニケーションを生み出す能力が、最終的に質の高い建物づくりに直結します。ワークショップ後の写真を見ると分かるのですが、皆さんファッションや髪色が鮮やかで、男性の多い集会とは全く違った雰囲気になっています。このような出で立ちの女性建築士が現れると、現場の空気が本当に一変するのです。 2つ目は、仕事と家庭の両立で鍛えられた、予期せぬトラブルにも動じない「臨機応変な課題解決力」。 3つ目は、他業界の経験などいろいろな視点を持ち込む「掛け合わせの力」。キャビンアテンダントやパティシエなど全く別の業界から、家業の設計事務所や造園業を継がねばならなくなったという女性もいました。そういった違う世界から飛び込んでくる人たちの新鮮な視点や、新しい技術への高い学習意欲が古い常識を打ち破って業界に新しい風を吹き込み、これまでにない価値を創造しているのではないかと思います。 この一日のイベントがもたらしたインパクトは予想を超えるもので、アンケートでは「満足度100%」という数字が出ました。次回の参加への意向も全員が肯定的で、この声こそが、本イベントが一過性ではなく参加者の心に深く響いたことの揺るぎない証拠です。
次なる展開と未来への提言「4つの柱」
この熱量を次につなげていくために、今後の展開として3ステップを考えています。ステップ1は、より深い対話を生むための運営の改善。ステップ2は、他地域で開催したり、定期開催したりすることによる、活動の全体的な拡大。ステップ3は、男性経営層も巻き込んで業界全体へ発信するという意識改革です。 自分たちの強みを発見したら、次に必要なのはその力を未来につなげるための具体的なアクションプラン、言うなれば、業界の未来を描く設計図をつくることです。そこで、建築業界の未来を支える「4つの柱」を提言しました(図3)。
図3 未来への提言:建築業界の未来を支える「4つの柱」 まず、「教え合い」。これは世代を超えた知識とデジタル感覚の交換です。次の「つながり」は、職種を超えた横のネットワーク構築。そして「働き方」は、ライフスタイルに合わせた柔軟な支援。最後に「意識改革」。これは男性層を巻き込んだ業界全体の風土づくりです。 女性の特性を業界の競争力へと変えていくために、集まった一人ひとりが、未来を面白くする大切な仲間になっていくのではないかと思っております。 私はこの業界に入って30年になりますが、自身が若い頃から常に意識していたことがあります。男性の社会で生き抜いていくためには、まず自分が女性であることを決して忘れてはいけない。そして女性であることに決して甘えない。女性特有の優しさ、しなやかさ、強さをしっかり持ちながら、きちんとした仕事をすること。この心構えで業界を生きていけば、人は必ず見てくれているので、心を強く持って進んでいってほしいと思います。今は、誰もが社会に発信できる時代。一人では無理なことも、みんなで声を上げれば実現できます。イベントから生まれた熱意とつながりが団体の枠を超えて広がり、誰もが生き生きと働き続けられる建築業界の未来をつくり出すことを確信しております。

