建材情報交流会

  • 第67回建材情報交流会「アフター万博にみる建築の未来」(2025年12月11日開催)講演録
    2026年2月17日
    基調講演
    「万博の教訓とレガシー効果が築く未来」
    徳岡 浩二 氏
    (公社)大阪府建築士会副会長、万博に関わる情報交換会座長
    ㈱徳岡設計 代表取締役社長

    万博への思い――何のために行うのか?

     私は先般閉幕した大阪・関西万博で、建築家として3館の海外パビリオンの設計監理を担当しました。本日は、今回の万博で難しかったこと・今後気を付けるべきことなども含めて総括的にお話しいたします。
     私は大阪での万博に特段の思い入れがあり、ぜひ成功させたいと思って一生懸命自分なりに取り組んできました。「何のために万博を行うのか」――これが自身の取り組んできた大きな命題です。一つが「次世代の子どもたちに夢を持ち、将来を担う人材になってもらうこと」、もう一つが「ホストに徹し、各国がやりたいことを期待以上に実現できるよう、日本の技術力でサポートすること」です。
     私が携わった具体的な内容や、立場上知り得たことについては、これまで表では話してきませんでしたし取材も断っていましたが、万博が終了した今、将来のために役立てばと思って発信を始めています。自身の業務では、かなり以前から木造建築のプロジェクトに取り組んでおり、それらの経験で培った技術を万博でも生かした形になります(図1)。

    万博との縁、そして実現しなかったプロジェクト

     万博との初めての出会いは1966年、6歳のときに訪れたモントリオール万博でした。大手ゼネコンに勤めていた父が1970年大阪万博の海外パビリオンの設計協力に携わっていた関係で、視察目的で行った父に連れて行ってもらったのです。また、大阪で工務店を経営していた祖父は、某社から依頼を受けて太陽の塔の特殊型枠工事を担当していました。当時は父や祖父が何をしているのかよく分かっていませんでしたが、こんなに幼い頃から万博と縁があったわけです。
     さて今回の大阪・関西万博ですが、私は各所の友人・知人などから声掛けがあって、かなり初期の頃から複数のプロジェクトに関わっていました。しかし、いろいろな事情が絡み合って多くが実現しませんでした。現地の建築家と進めていたある海外パビリオンは、コストが全く合わず辞退を余儀なくされ、別の海外パビリオンは戦争勃発で中断後、計画が消えてしまいました。他にも、スケジュールがずるずると延期されたり、先方とのやり取りがスムーズにいかなかったりして諦めたプロジェクトがあります。

    構造設計を全面改変したクウェートパビリオン

     初期の頃から関わっていた数々のプロジェクトが実現に至らず残念に思っていたところ、海外サプライヤーからクウェートパビリオンの相談を受け、16社の設計事務所が断った設計監理を引き受けることになったのです。もし私が断れば出展は辞退する、という崖っぷちでした。非常に面白い建物だったので、辞退は惜しいと考え「頑張って何とかしてみます」と応じたのですが、果たして大変な思いをすることになりました(図2)。

     クウェートパビリオンの象徴的な外観である6~7mもの翼部分は、大きすぎて日本の構造技術では施工できないものでした。もとはドイツの最も著名なsbpという構造設計会社が企画設計したもので、翼部分がメッシュ構造になっていたのですが、その原案では構造部材がもたずに台風や地震ではひとたまりもないだろうと思われました。そもそも確認申請が通りません。そこで日本大学名誉教授の斎藤公男先生に協力をお願いし、構造設計を全面的に見直すことになりました。斎藤先生からは、一度は無理だと言われ目の前が真っ暗になりましたが、それでも引き受けていただけました。
     しかし建設工事を受けてくれる施工会社が見つかりません。当時万博はマスコミをはじめ各方面からの厳しい批判の渦中にあったからです。そこで一計を案じ、CMのように全てをワンパッケージにして施工会社に持ち込み、協力を取り付けました。

    万博出展のエキスパートと一流アーキテクトたち

     その頃、「海外パビリオン建設申請ゼロ」という見出しが新聞を賑わせていましたが、これには理由がありました。ドバイのExpo2020のスタートが1年半ずれたため、準備期間が2年半しかなかったのです。万博を開催するとなると、多数の工程を順番にこなしていかねばならず、本来ならば4年必要です。大手ゼネコンでもその点を分かっていたので受けられなかったのでしょう。
     もう一つあまり知られていないのは、海外には博覧会出展のエキスパート的なサプライヤーが存在するということ。私が今回協働したスイスのNUSSLIは膨大な件数のパビリオンや展示を手掛ける凄腕のサプライヤーで、こんなところに勝てる日本のサプライヤーはまずいません。
     発信力が弱いことも日本の弱点の一つです。本来万博とは、「わが国ではこんなことをしていますよ」と世界に広報するために行うものなので、世界メディアへの発信力が問われます。日本には大きな広告代理店が多数ありますが、テレビ局を有しているわけではないので独自で番組をつくったり放送したりなどができません。そこが海外との差です。NUSSLIの方々からいろいろと教えてもらう中で、彼らのようなエキスパートの助けがなければこれは無理だなと感じました。
     さらには、海外の有能なアーキテクトの存在も注目すべき点です。クウェートパビリオンはドイツの大手建築設計事務所・LAVAのアーキテクトと組んで進めましたが、素晴らしい才能の持ち主だったと思います。

    クウェートパビリオン、建設工事の苦労

     先述のように構造の全面見直しを行い、メッシュ構造ではなくトラス構造にすることで構造問題を打開して、やっとのことで建設がスタートしたのですが、これがまた一苦労でした。間口20数m、奥行き約100mという細長い敷地で、すぐ隣に中国のパビリオンの工事が進行中であるため、動きがかなり制約されました。職人が足りなくて、日本館の施工を終えた方々に助っ人に来てもらったり、現場合わせで全部こなしてしまう中国人ワーカーに助けられたりしながら、時間ギリギリの綱渡りでやっと完成させることができました(図3)。

     クウェートは個人的にはパビリオン工事のデザインで一番よかったと思っています。来館者からの評価も上々でした。LAVAのアーキテクトは次回のリヤド万博(サウジアラビア)でマスタープランナーに選ばれており、こちらも楽しみです。

    286本の国産丸太を使ったウズベキスタンパビリオン

     ウズベキスタンパビリオンは、2025ドイツデザインアワードの「卓越した建築―見本市と展示」部門で金賞に選出されたデザインで、ご覧の通り非常にユニークです(図4)。しかしスケジュールが遅れに遅れたため、やはり苦労を強いられました。実現の可能性が5割程度、というところまで追い込まれましたが、今となってはよい経験でした。

     

     一番の難関が確認申請です。同館は286本の丸太を使った特徴的な構造で、建築本体(展示場)、内部のムービングプラットフォーム(遊戯施設)、上部にパーゴラ(装飾塔)が載るという構造でした。丸太を柱という構造材とみなした場合、構造計算だけで数カ月はかかってしまうので、下の建築本体だけを建築物で、ムービングプラットフォームとパーゴラは工作物で、三つ同時に2カ所の検査機関で申請を進めることになりました。
     ムービングプラットフォームは来場者を「知識の庭」へと誘う仕組みで、安全性の検証が厳しく求められました。どこから入ってどう出るか、トラブル時にどう停止させるか、中で転倒などは起こらないか、そういったことを全部書類にして提出しました。286本の丸太の調達は9自治体に協力いただきました。やや多めに320本を先行発注し、山々から切り出し、ラウンド加工して使用。
     ギリギリの設計スケジュールの中、苦労して申請を行い、やっと確認が下りたのに、何と予算が全然足りません。急きょ設計をやり直すことになり、3階建てだったものを平屋に変更してコストを何とか下げました。これをごく短期間でやらねばならなかったことが大変でした(図5、6)。
     このようにバタバタ続きのウズベキスタンパビリオンでしたが、評価は非常に高く、最終的にはBIE(博覧会国際事務局)から、「テーマ解釈部門」でまた金賞を受賞しました。

       

    タイパビリオンは日本でミラーの修復を行った

     三つ目はタイパビリオンです。タイでナンバーワン人気の建築設計事務所・A49との協働で、とても素晴らしいアーキテクトたちが対応してくれました。主任アーキテクトは日本に留学して東京大学を出た人で、日本語・英語・タイ語3カ国語を操って皆の調整まで買って出てくれました。人柄も申し分なく、皆に慕われる有能な人で、タイは比較的進めやすかったと思います。
     しかしながら、こちらも例にもれず大幅に遅れていました。また、コスト面に関しマスコミからいろいろと批判的なことを言われていました。それに対しては、ご覧の通り建物の半分をミラーに映して節約を図っているんですよ、と申し上げていました。
     実際に完成したパビリオンを見ると、きれいなミラーになっていますが、実はこれ、全部日本でつくり直しました。というのも、輸送中にどうしても壊れたりゆがんだり反ったりしてしまったため、滑らかできれいな鏡面にならないのです。そのままでは到底使えなかったため、パッキンなどの裏地を全てつくり直した上で短期間施工しました(図7)。

     

     タイパビリオンでは象のオブジェがずいぶん人気で、閉幕後はあちらこちらから「欲しい」という依頼があったため、レプリカを作成して提供するといったことを、つい最近までやっておりました。

    その他の魅力的なパビリオンいろいろ

     螺旋状のオブジェが印象的なオーストリアパビリオンは、「こんなデザイン、どうつくればいいのか?」と担当者に頼まれ、日本側のバックアップで施工できるようにしました。実はウズベキスタンパビリオンを施工した会社に依頼したのですが、螺旋形が特殊過ぎて「このぐにゃぐにゃはどうすれば?」と苦労されたようです。各パビリオンがほぼそのような状況で、施工会社の方々もさぞ大変だったことだと思います。
     とはいえ、魅力的なパビリオンは、私が直接設計監理に携わったもの以外にもたくさんありました。例えば日本を代表するロボット工学者・石黒浩先生が手掛けたシグネチャーパビリオン「いのちの未来」石黒館は本当に感動しました。チェコ、ハンガリー、ポーランド、バーレーン、イタリアなども素晴らしい出来栄えでした。バーレーンパビリオンを手掛けたリナ・ゴットメ氏は直接お会いしましたが、大変人気のあるデザイナーで、感性も卓越していると感じました。イタリアパビリオンは特に人気があって、4~5時間待ちでなかなか入場できなかったかと思います。
     日本館は、ほぼ1年程ずれ込んだため建設時期が海外パビリオンと重なってしまい、これも海外パビリオンが施工業者探しに苦労する一因となっていました。

    万博後のパビリオンの解体再利用

     今回の万博建築物は、3R(Reduce・Reuse・Recycle)を基本としており、現在各パビリオンが解体に入っている状況です。ウズベキスタンパビリオンはウズベキスタンに移築して図書館と情報センターの一部として利用される計画です。同館で丸太を使ったのは、できるだけ解体再利用を容易にするためであり、製造工程も軟弱地盤対策などで使われるカーボンストックという工法を用い、再利用可能性を担保できるものとしました。
     同館の設計施工計画でもう一つ大事なのはトレーサビリティです。丸太がどこから来てどこへ行くのかを見える化するのです。協力いただいた9自治体の山の風景や特徴、その土地の林業の歴史、原料となるスギの品種や特徴、伐採・流通の様子などのプロセスを記録し、スマホで閲覧できるよう試みました(図8)。また、森林環境税が導入され、国をあげて木材利用が推進されているので、「わが県の木材はどこで使われているか」という話になったときに知事や市長の方々に「万博に行っていますよ」と説明しやすかったので、大変喜ばれました。

     

    IR、グラングリーン…未来の大阪の風景が変わる

     舞台裏では、胃が痛み眠れない日々が続き、本当に大変な思いをしておりましたが、最終的には大成功だったのではないかと感じています。万博で体験した海外勢との「共創」はとてもよい勉強になり、多くを学びました。例えばドイツの方々のオン・オフのメリハリある働き方には感心させられるばかりでした。打合せ内容も濃く、ものすごい集中力を発揮するかと思えば、オフに切り替え後は完全に休み、連絡も一切断つのです。ここは見習って、日本で働き方改革を考える際の参考にしなければならないと思いました。
     今後は、次なる未来に目を向けていくことになります。現在、IRに向けた施工がどんどん進められて、大阪の杭打機を全部かき集めてきたのではないかと思うほどの勢いです。77万㎡という広大な敷地なので、きっとまた大阪の風景が大きく変わるでしょう。
     IRにはさまざまな企画が散りばめられており、ホテル、アクティビティ施設、6,000人以上を収容する巨大会議場、エンターテインメント施設も多数入ります。カジノへの批判がよく聞かれますが、実際は全体の3%(床面積)なのでそこまで取り立てて言うほどではないと思います。
     同時にうめきた2期のグラングリーン大阪も順調に進捗しており、大阪の北の顔も変わってくるでしょう。これらの魅力的な施設や取り組みを通じて大阪・関西および日本の魅力を発信し、国内外の多くの方々に体感してもらえる未来を皆さまと共創していくことができればと考えています。

    「地球環境に優しくサステナブル エシカル建材としての『コルク』」
    東亜コルク(株) 販売促進部 部長 仲野 譲氏

    コルクは自然保護と素材供給を両立できるエコロジー素材

     当社は1905(明治38)年に創業した国内唯一のコルク専業事業者であり、大阪府大東市に本社を置いてコルクの床材や壁材を主として取り扱っています。2025年6月に新社長が就任し、新体制を軌道に乗せるべく事業を進めているところです。
     当社の建材ブランドである「topacork(トッパーコルク)」は、持続可能な地球環境保全を目指して、自然を守りながら生産を続けています。トッパーコルクの製品は、生産量およびコルク樫の森の面積共に世界一のポルトガルでつくられています。 コルクの原料になるコルク樫の樹皮は、親木を切ることなく、数度にわたって採取することができるため、自然保護と素材供給を両立できるエコロジー素材として注目されています(図1)。

     

     樹皮を採取されたコルク樫は、樹皮再生のために通常の3倍から5倍ものCO2を吸収します。ポルトガルのコルク樫の森は、コルク樫の植林木で砂漠化を防ぐとともに、あらゆる動物や植物の生物多様性を保っています。
     コルク樫の樹齢は150年から200年と言われています。樹皮を剥がした後、約9年から10年の周期で再生し、親木を伐採することなく、1本の木から15回 ~20回、樹皮の採取が可能です。この特性を生かして、植林・採取・伐採を計画的に繰り返すことで、持続可能な資源の供給と安定した製品製造サイクルを実現しています。
     ゴルフ樫の樹皮を平らな板状にし、ワインの栓となる部分を打ち抜いた後の残材のことをコルクウエストと言います。トッパーコルクの製品は、このコルクウエストを粉砕し、チップ状にしたものをバインダーで固めてブロックを形成した後、コルクタイルやロールコルクなどの建材として製造されています(図2)。

     

     このような製造工程や取り組みが評価され、トッパーコルクはエコマーク認定商品になっています。コルクという素材はサステナブルなだけでなく、滑りにくく歩きやすい、衝撃を和らげる、適温・適質を保つ、水に強い、など建材として優秀な性能を多く持っています。
     そのような性能を生かしたトッパーコルクの製品は、住宅の床材、壁材などとしてはもちろん、幼稚園、旅館、福祉施設などさまざまな場所で活躍しています。当社はこれからもコルクという持続可能な資源を通して、かけがえのない財産である地球環境を次の世代へつなげていくことを目指しております。

    樹皮を剥ぐことで生き続け、CO2の吸収量も増える

     コルクの原料となるコルク樫は樹皮に厚みがあって日本では育ちにくく、スペインやポルトガルなど南欧や地中海に面した地域に生育しています。
     他の木材との大きな違いは、剥いだ樹皮を使うことです。これを定期的なサイクルで採取してワインのコルク栓を製造するもので、決して木を伐採するわけではない点が大きな特徴でしょう。
     樹皮を剥ぐことで生き続け、CO2の吸収量も増えるので、非常にエシカルであることがコルク建材の魅力です。ポルトガルではコルク樫の森は国有林として生産や需要・供給のバランスが管理されています。

    コルク内の無数の気泡が生み出す優れた性能

     コルクには1㎤当たり約4,200万個という微細な気泡が含まれています。軽くて弾力性があり、湿気を通しにくく、断熱性があり、燃えにくいといった性質は、この気泡の存在によるものです。
     最初に採取された樹皮はバージンコルクと呼ばれ、ゴツゴツとして不揃いなため、炭化させて「炭化コルク」として断熱材などに利用されます。最近は炭化コルクへの関心も高まっています。
     ヨーロッパではワインのコルク栓(ワインストッパー)が欠かせません。先述の通り、コルク建材はコルクウエストからワインストッパーを抜いた後の残材を使って製造しています。実際にコルクウエストを見ると分かるのですが、これほどの厚みの皮は日本の木ではなかなか見られません。
     軽くて高性能、残材を余すところなく利用するサステナブルな材料ということで、昨今のキーワードにもぴったりはまるかと思います(図3)。

     

    衝撃緩和、音環境、保温、断熱、延焼抑制などに効果

     先ほど述べた通り、コルクには多くの優れた点があります。まずは弾力性。気泡を含んでいることでしなやかな弾力性が生まれ、万一転倒しても身体に伝わる衝撃をやさしく和らげます。足音や物の落下音も出にくいので音楽ホールや図書館などでもよく利用されています。この弾力性は同時に滑りにくいという特性も付与します。
     コルクは保温性が高いので、素足が触れても温かみを感じ、表面がベタつかないため夏場でも快適です。また毛布と同等の熱伝導率で断熱効果が高いため、室内の適温・適湿を維持することができます。
     さらには火災発生時に炭化膨張することで、延焼を抑える効果ももたらします。あまり知られていない意外なところでは、NASAの宇宙開発でロケットの先端部分にコルクが使われています。

    コルクの楽しい使い方いろいろ

     万博のポルトガル館で採用されたのは「トッパーアートコルク」です。デザイン性が高く最近非常に伸びている製品で、幼稚園や保育園、フィットネスルーム、旅館やホテルなどによく使われています(図4)。

     

     壁に使うのが「トッパーウォールコルク」。ポピュラーなのが学校の掲示板ですが、それ以外にも、ビジネスオフィスや店舗の壁面によく利用されます。
     コルクはいろいろな面白い活用法があります。店舗のインテリアやディスプレイとして素材を生かしてそのまま貼ったり、樹皮の部分を園芸用に使ったりするケースがよく見られます。
     植物を着生させてインテリアにしたり、テラリウムをつくったりするのも最近流行っています。またコロナ禍以降、室内で飼育できる爬虫類のファンが増えたことで、爬虫類のケースにインテリアのアクセントとしてコルクが使われることも多くなっています。
     植物のインテリアに関しては、私自身も個人的な森林活動の一環としてイベントスペースでワークショップを行っています。ご興味のある方は参加いただければと思います(図5)。

       

    ポルトガル館で東亜コルクが展示会を実施

     ここからは「アフター万博」として万博を振り返ってみたいと思います。コルクの輸入元であるポルトガルのCorksRibas社がポルトガル大使館に働きかけたことで、当社はポルトガル館で展示を行う機会を得ました。ポルトガル館長との面会では、同館にコルクタイルを使用したいというオファーを受け、実際にVIPルームなどで「トッパーアートコルク」が敷かれました。
     苦労も多々ありました。1年ほど前からプロジェクトチームを立ち上げて入念に準備を進めていたのですが、万博開幕の翌日から当社の展示会がスタートしたためなかなか要領よくいかず、何度も確認を繰り返す必要がありました。
     準備段階では、ポルトガル側との打ち合わせの際に慣れないオンライン会議に対応するのが大変でした。ポルトガル館の設計は建築家の隈研吾さんが担当されたのですが、元請けはイタリアの事業者であったり、工事は島根の施工業者であったりなど、意思の疎通が非常に困難でした。工期もギリギリのスケジュールで、いろいろなことがスムーズに進みませんでした。

    1日3,000人の来場者、インスタもうまく運用

     しかし始まってみると、ポルトガル館の立地のよさもあって1日当たり約3,000人の方々が当社の展示に来場くださいました。
     展示は同館の多目的ホールを使用させてもらったのですが、同館の正面に多目的ホールがあったため、ここをポルトガル館本体と思って入場する人が続出しました。修学旅行生もたくさん入って来られ、そのような状況のおかげで3,000人もの来場者に恵まれたのだと思います。
     この活況にポルトガル館長も大使館館長も大変喜び、私のところに何度も来て「Big Success!」と言ってくださいました。
     われわれはBtoB企業ではありますが、万博は大半が一般の方々なので、これをBtoCの絶好の機会ととらえ、万博をきっかけにSNS(Instagram)をスタートさせました。今年(2025年)3月から運用し、現在約1,000人にまでフォロワーが増えました(図6)。

           

     ポルトガル大使館は、当社の展示会の様子をSNSで見てオファーを下さり、閉幕後には大使館でのコルク展示が実現しました。
     来場者アンケートでは、「コルクが床材や壁材として使用されていることを知らなかったが、展示でコルクのストーリーを知ってぜひ使ってみたいと思った」という意見が約8割を占めました。この結果から潜在需要の高さが見て取れました。

    東亜コルクのマーケティング戦略

     私は販売促進部の所属なので、万博でもマーケティング戦略を立てておりました。営業サイドを支援するためにマーケティングオートメーション(MA)を導入したり、Material Bank Japan(MBJ)の建材プラットフォームに参入したりなど、製品のサーキュラー建材としてのアップサイクルを図りました。おかげさまでかなりの注目をいただけたと思っています。
     Instagramももちろんその戦略の一環であり、BtoCをただ代理店の方々にお願いするだけでなく、われわれからも発信を行い提案していくことでより多くのユーザーを獲得したいと考えています。
     当社は国内唯一のコルクの専業事業者ではありますが、まだ認知度の低迷感が否めません。このマーケティング戦略を軌道に乗せることが大切であり、何年か後に振り返ったときに、「われわれの変革は万博から始まった」と言えるような社内イノベーションもアフター万博の重要なポイントだと思っております。

    「万博での主要実績と最新の耐火被覆材のご紹介および木耐火構造への適用」
    エスケー化研(株) 事業本部 耐火断熱営業部 次長 藤原 武士 氏

    万博での採用実績について

     当社は今期70周年を迎え、建築仕上塗材ではナンバーワンのシェアをいただいております。万博での使用実績に関しては、当初非常に多くで指定いただいたものの、コストの関係で一般塗料に変更となり、特殊塗料の実績が少ない結果となりました。本日はその点を含めご紹介したいと考えています。
     私の所属する部署は耐火被覆材を専門とする部署で、耐火被覆材の開発と工事を担っています。万博の大屋根リングが木でつくられたように、国も木の構造を増やそうと動いており、多くのゼネコンやメーカーが耐火構造の認定を取得するようになっています。そのような中にも当社の耐火被覆材の応用事例があるので、その辺りもご紹介いたします。
     まず万博での主要実績です。「EXPOホール シャインハット」の外装部分に施された塗材が当社の「ベルアート」という汎用製品で、一般的にも販売されており、よく住宅の外壁などに使用される意匠性のある塗材です。日本館にも汎用的な「ベルアートSi」が採用されました。インドネシア館には、当社がメーカー施工を行った「ファインFRテックス工法」という特殊塗料が採用されました。後述しますが、2色の塗料を特殊なローラーで仕上げる工法です。
     採用実績としては、海外パビリオン15館、国内・シグネチャーパビリオン10館だったのですが、インドネシア館のようなユニークな柄が表現できる特殊塗料は、先に触れた通り多くが汎用塗料に代替されました。

    耐火被覆の種類、施工方法、特長、コスト

     ここからは耐火被覆材のお話です。塗料の場合は多くの塗料メーカーがあり種類も多いですが、S造の耐火被覆材の種類は少なく5点ほどで(図1)、シェアの約70%が吹付けロックウールです。大型ビルの壁内にある柱や梁もほとんどで吹付けロックウールが使用されます。
     次に多いのが巻付け耐火被覆材で、今シェアを伸ばしており15%程度となっています。布団状のロックウールのマットをピンで留めて施工します。続いて、昔からあるけい酸カルシウム板。仕上がりが美しく、工場や倉庫によく使われています。

       

     次に湿式のセラミック系、当社では「セラタイカ2号」として工事を行っており、最近採用が増えています。一例が電算センターで、常時空調が稼働しているため吹付けロックウールだと繊維が飛散するおそれがあり、セラミック系が選ばれるというわけです。
     今回ご紹介したいのは表の下段に示した2点、耐火塗料(SKタイカコート)と耐火シート(SKタイカシート)です。

    耐火塗料は1液タイプと2液タイプの2本立て

     耐火塗料は2001年から工事を行っていますが、2018年、従来型の1液タイプ以外に、2液タイプの反応硬化型耐火塗料が市場に出てきたことを受け、1液タイプと2液タイプの2本立てで施工しています。
     耐火塗料は、火災時に熱を受けると250℃前後で発泡を開始し、20~30倍に膨張発泡し炭化層を形成するという機構です。柱と梁で載荷加熱試験も行い、耐火構造認定を取得。1時間耐火および2時間耐火、加えて建築基準法施行令第70条(柱の防火被覆)の30分耐火認定を取っております。雨などの水分による影響を考慮し、使用環境は内部(屋内)、準外部(準屋外)、完全外部(屋外防水)に区分されており、仕様や塗り方、仕上がりの見た目もそれぞれ違っています。

    2液タイプの性能と優位性を試験で実証

     2018年から工事を始めた2液タイプの「SKタイカコートHS」は、2023年4月の建築基準法改正によって導入された1.5時間耐火設定があるのがポイント。1.5時間耐火を取得した背景には大型倉庫案件の増加があり、これにより5層から9層まで1.5時間耐火で対応可能となって大きなコストメリットが生まれています。速乾性に優れた2液タイプは、養生期間なしで施工が可能となるため工期も大幅に短縮できます(図2)。
     もう一つの大きなメリットは屋外仕様における仕上がりの美しさです。屋外は防水塗装を必要とするため従来の1液タイプでは凹凸の目立つ仕上がりでしたが、2液タイプはそれが不要なので滑らかに仕上がります(図3)。

           

     1液タイプとの最大の違いは、反応硬化型で高耐水性であること。これも実証実験を行ってエビデンスを得ました。同じ原材料なのになぜ2液タイプで耐水性が上がるかというと、水が浸入しにくい上、もし水が入ったとしても樹脂の架橋結合力があるため分解しにくいからです。
     促進耐候性試験では、①1液タイプの準屋外仕様、②1液タイプの屋外仕様(防水)、③2液タイプの屋外仕様の3主材について10年相当の性能を検証しました。試験体(UVテスター)に意図的にキズを入れ、キズのない試験体との比較も行います。キズなし試験体ではどの仕様も合格しますが、キズありでは①②の1液タイプに劣化が見られ、③の2液タイプのみが劣化なしでした。また、当社の研究所で2018年から実施している屋外暴露試験でも同様に2液タイプの優位性が確認できました。
     施行令70条(柱の防火被覆)に関してですが、これは準耐火建築物の2かつ3階以上のS造の柱に30分の防火を施しなさいという法令です。当社は「SKタイカコートHS」「「SKタイカコート」の両方で認定を取得しました。大型工場への使用が多く、最近は半導体工場が増えてきたこともあって、30分の防火被覆も増えております。

    耐火塗料を応用した耐火シート、フラットな仕上がり

     「SKタイカシート」は耐火塗料の技術を応用した製品で、耐火塗料の成分をシート化しています(1.5㎜、1.7㎜、3㎜)。それぞれで1時間耐火と2時間耐火の認定を取得しました。
     当製品は、専用のボンドを塗布し、乾燥させた後に端部を突き合わせながら貼っていきます。耐火塗料では、人の手で塗るものなので、どうしても塗料のパターンや仕上がりに納得のいかないケースも出てきます。しかしシートなら誰が施工してもフラットに仕上げることができるため、見栄えがよくなると好評です。

    メーカー施工で行う意匠仕上材

     耐火シートは通常上塗りを施して仕上げるのですが、ここで活躍するのが当社の最新の意匠仕上材です。万博で指定が入っていたものの、わずかしか使われなかったくだんの材料です。この仕上材は、当社のメーカー施工で行っている商品群であり、シート建材タイプと装飾仕上塗材タイプの2種類があります(図4)。

       

     シート建材タイプでは、やはり木(もく)の質感が好まれるので、木目調のシートとしました。建物内部とは違い、外部にはあまり木を使えないので、木に見えるイミテーションの外壁が今流行っています。木の型を取り、塗料を流し込んでシート化しているため、見た目は本物の木です。この事例では、耐火シートの上に内装用の「ウッディスマイル」という木目調シートを貼っているのですが、外壁に貼ると非常にリアルで美しい木仕上げに見えます(図5)。

       

     装飾仕上塗材タイプは、2色の塗料で仕上げます。「ファインFR工法シリーズ」として、こちらも今流行りのレザー調、錆び調、モルタル調、メタリック調などを揃えています。メタリック調は3色の塗料を使い、大変美しい仕上がりとなります。耐火シートの上に塗るだけで金属パネルのようなスマートな見せ方ができるわけです。役所やホテルはじめ、さまざまな施設で採用されています(図6)。

       

     もう1点、非常に人気のシリーズが「サンドエレガンテシリーズ」というサンドセラミック調装飾仕上塗材。天然の土、砂、石の持つ素材感を融合し、天然マイカ(雲母石)、ホタテの貝殻、着色骨材を配合しています。高意匠、高耐候、超低汚染で防火認定も取っている材料です。独特の風合いで、日本の風土に合った色調をメインに取り揃えております。いろいろなパターンが可能であることが魅力の一つで、戸建て住宅でも多く採用されています。
     これらの意匠仕上材は、耐火シートとのコラボレーションで仕上げます。現場では、耐火塗料や耐火シートの仕上を先行で行い、その後意匠仕上材を施工。この一連を当社で実施するという工法システムが構築されています。

    耐火シートとせっこうボードを積層したパネルを開発

     当社でも、木耐火構造へいかに対応していくべきかを考え、木への知見を深めてまいりました。その取り組みの中で、2×4向けの材料「エスケーOPパネル」を共同開発しました。
     これは、開口部やサッシ回りの被覆の厚みを抑えられるよう、12.5㎜の耐水強化せっこうボードと当社の3㎜の耐火シートを積層させ、裏に遮熱のためのアルミテープを貼った製品です。サッシ枠の告示仕様では、21㎜のせっこうボード2枚と38㎜の木材で計80㎜の厚みが生じるのですが、それがわずか15.5㎜ですみます。被覆厚が低減すれば、それだけ開口部を大きくすることが可能となるわけです。
     木造の超高層ビルは、やはり耐火の点で難しい技術になると思います。そんな中、Sの構造に木を貼って耐火として仕上げるケースが最近よく認定試験を受けています。そのような認定構造の中にこの耐火シートを応用した事例が増えているのです。今後、S+木や、木+木の耐火構造が増えてくるのではないかと思います。
     最後に、資料として日本建築仕上材工業会で作成した「鉄骨柱・はり接合部(パネルゾーン)における異種耐火被覆材の納まり」という資料をご紹介します。ここでは、グレーゾーンとされてきた「柱と梁のパネルゾーンはどちらの耐火被覆で施工するのか」問題に対し、各種耐火被覆の納まりを構築しております。現在、柱に続き梁バージョンを作成中で、2026年7月頃に刊行されると思いますので、ぜひそちらも参考にしていただければと思います。

    「大阪万博にてご利用いただいた製品のご紹介と、今後の普及が期待される製品について」
    吉野石膏(株) 大阪支店 (株)吉野石膏DDセンター 大阪分室 室長 廣瀬 俊氏

    石膏とはどのような材料か?

     石膏は、硫酸カルシウムの分子を水で結合させて結晶化したものです。石膏の約2割は水分で、この水分が「なぜせっこうボードの耐火性能が高いのか?」のヒントになっています。原料の調達方法は大きく二つあり、鉱脈から石膏の原石を採掘して使う方法、火力発電所で石炭を燃やしたときに生成される亜硫酸ガスをカルシウムと結合させる方法です。こうして得られた原料を加工してせっこうボードを製造しています。
     石膏はリサイクルのシステムが非常に明快です。石膏の原石はまず加熱(焼成)して水分を飛ばすのですが、それが脱水した状態の半水石膏になります。半水石膏の粉末に今度は水を加えて練り、水和反応で硬化するとまた結晶化された石膏になります。これは半永久的に循環する仕組みになっており、リサイクルに非常に適しているのが石膏の大きな特徴です。

    せっこうボード内の水分が温度上昇を抑える

     せっこうボードは、石膏だけでつくった板ではなく、周りに紙が巻かれています。表面の原紙は100%古紙を利用。石膏のコア部分は、石膏本来の比重が大きく重いため、多くの空隙をつくって軽くしています。このように、せっこうボードは石膏と紙でできた単純な組成です。石膏部分は耐火性能と形状保持、紙は強度を保つ役割があります。表面に仕上げを施せるのも紙のよいところです(図1)。

       

     石膏は2割の水分を含有していると申し上げましたが、いざ火災が起こったらどうなるのでしょうか。せっこうボードを火であぶると煙状のものが上がりますが、これは水蒸気です。加熱されることで水蒸気が発生し、自動消火スプリンクラーのような作用が生まれるのです。その気化熱で100℃以上にならないよう、部屋の温度調整を行うのがせっこうボードの役割です。非常にありがたいことに、建物になくてはならない建材としてご利用いただいております。大阪・関西万博でも9割方のパビリオンから引き合いがあり、最終的に30万㎡のせっこうボードが出荷されました。
     せっこうボードは米国で初めて発明され、それを日本で最初に「タイガーボード」として1922年に製品化したのが吉野石膏でした。2022年にはタイガーボード100周年を社内で祝いました。長い歴史の中で「ジプトーン」や「GL工法」などいろいろな製品を皆さまにご愛用いただいております。

     

    万博では海外パビリオンに「タイガーR50」が採用される

     万博ではどんな建材を使ったのかと言うと、通常の「タイガーボード」は大抵のパビリオンで採用されました。少し特殊な材料もあったのですが、それがどんな製品なのかをご紹介いたします。それは、オーストラリア館、イギリス館、カナダ館で使われた「タイガーR50」です。R50は、リサイクル比率が50%であることを意味します。当社の「タイガーボード」は常にリサイクルを行っているのですが、全国の工場で平均すると約10%の配合率でリサイクル石膏を循環させています。
     海外の施主はサーキュラーエコノミーの意識が強く、特にヨーロッパの方々は循環可能な製品を好む傾向にあるようです。そこでエコマークの入った「タイガーR50」を提供しています。100%リサイクルの「タイガーR100」もございます。
     現在の製造原料と材料の調達について説明いたします。せっこうボードの原料は紙と石膏ですが、石膏は約90%が天然石膏の原石(約5割)と火力発電所の排煙脱硫(約4割)で調達。残りの10%は回収した端材から得られた廃せっこうボードというわけです(図2)。ゴミとして捨てるのではなく、リサイクルしようと今一生懸命回収しています。つまり、これまでの自然な循環でいくと4:5:1の割合で配合させて新しいせっこうボードを生産し続けていることになります。

       

     R50、R100となると、製造は可能ですがリサイクル原料に限りがあるので、製造数量も限界があり、10%の配合率にならざるを得ないといった状況です。もし当社が全てR100でせっこうボードをつくろうとすると、今出荷しているボードの10分の1しか製造できないことになります。「100%リサイクル」は聞こえのよい言葉ですが、循環のバランスを崩してまで行う意味は薄いという考え方もあります。

    「タイガーR50」「タイガーR100」の概要

     R50、R100共にリサイクルの比率が高いことが最も大きな特徴ですが、通常の石膏ボードと比較して、(製造時の)CO2の排出量が少ないのも特徴です。1㎡当たりの製造時の排出量は、R50で1.7KgCO2eq、R100で0.8~0.9kgCO2eqとなっています。通常のタイガーボードは4.3kgCO2eqなので、リサイクル配合率を上げれば上げるほどCO2削減につながることになります。よって、目指すのは施工後なるべく廃材を回収してリサイクル比率を高めることだと言えます(図3)。

       

     せっこうボードは、工場で製造後現場に運搬し、現場で施工した後、残った端材を当社が回収して再び石膏にして製品を製造しています。現在、解体現場の廃材の改修も進めているところです。この循環をさらに加速させて常に回し続けることができれば、ロスがなくなりリサイクル比率が高まり、資源を有効に活用しつつCO2排出量を削減することができます(図4)。

       

    解体系廃材の回収率アップでリサイクルを加速

     当社のせっこうボードリサイクルが始まったのは「タイガーボード」発売の70数年後です。1995年、東京都で建材関係では初めて吉野石膏が再生活用業の個別指定を取得し、その翌年には全国展開をスタート、これも初事例となりました。
     難しいのが解体系廃材によるによる廃せっこうボードのリサイクルです。古い建物の場合、鉄筋の組成に鉛などいろいろなものが含まれているので、それらをきっちり分別しないとせっこうボードとしてリサイクルできません。従ってそのための技術の確立が必要となります。ようやく中間処理事業者の方々が少しずつ分別できるようになり、解体系廃材も受け入れ可能になったのがごく最近の2023年辺りからです。
     当社では1995年にせっこうボードの回収を始めて以来、2023年時点で年間約38万tの回収を実現しています。これが今の出荷量の約10分の1ということになるのですが、まだその程度なのです。一方、全国で排出されている廃せっこうボードは同じ2023年で190万t。これを全て回収できればかなりの量をリサイクルできるのですが、分別が難しかったりセメント原料のほうに使われたりするなどさまざまな障壁があってなかなか全部は回収することができません。
     しかし今後、廃材の排出量はかなりふえる見込みで、2050年には今の倍ほどの量が排出されると予測されています。それらを回収してリサイクル比率を上げていこうと考えております(図5)。

       

    R100の使用実績と万博番外編

     R50は万博での使用実績がありますが、R100も大成建設(株)様の次世代技術研究所で採用いただいた実績があります。国内初となる「ゼロカーボンビル」実現を目指すにあたり、当製品をお選びいただきました。採用理由は、「原料調達、製品製造時のCO2排出量が極めて少ないこと」「循環型社会(再資源化)の実現に貢献できる製品であること」の2点でした。世の中にはこのような需要もあり、いろいろな方面から選ばれています。
     万博関連の番外編とも言うべきエピソードがあります。日本館のバックヤードでは、予算の都合で塗装せずせっこうボードを張りっぱなしにしました。その際、元請けの方から「普通に張っても工夫がないので裏返してみれば面白いのでは」という提案があったので、社名と製品名が大きく印字された裏面を表に向けて張りました。全く私たちの発想にない使い方で、しかも宣伝にまでなったということで、普通のせっこうボードでも使い方次第で面白くできるものだという学びを得ました。
     もう一つはクウェート館の外壁曲面の施工です。同館の設計監理を担当された徳岡先生(基調講演参照)にBIMで説明されたとき、「そんなきれいな曲面は出ないだろう」と個人的には感じたのですが、当社の12.5㎜のセメントボードを張った上から左官の材料で仕上げていただき、本当に美しい曲面になっているのを見て、感謝の気持ちでいっぱいでした。

    今後の普及が期待される商品は軽いせっこうボード

     せっこうボードは、軽量化に努めてはいますが基本的に非常に重い材料なので、もっと軽くしてほしいというご要望が多く寄せられます。そこで数年かけて開発したのが、不燃性能と強度はそのままで、25%軽量化した「ウルトラライト」です。建築業界で人手不足問題が浮き彫りになった今ようやく、軽いがゆえに評価していただける機会が増えてきました。
     「ウルトラライト」には9.5㎜と12.5㎜があります。従来のせっこうボードは平米当たり6.6㎏ですが、当製品は4.85㎏。さほど変わらないように思われるかもしれませんが、これを天井に施工するとなると施工効率がかなり変わってきますし、少ない人工(にんく)で同じ面積を施工することができます。施工のみならず運搬効率も向上し、CO2排出量削減にも貢献できてさまざまな負荷を低減できるのです。
     ある現場では、施工時間を10数%短縮できたという事例がありました。また高齢の職人の負担軽減のために導入される事例もありました。CO2排出量については、通常のせっこうボードと比べて、製造時で5~10%、運搬時で約23.5%の削減が可能です(図6)。

       

     当社は企業としてSDGsの目標達成とサステナブルな社会を実現するための取り組みを進めています。具体的にはCO2排出量の削減です。2025年度は、2013年度比で約34%の削減を達成しました。国が2030年までに達成すると掲げた目標である46%までもう少しというところですが、再生可能エネルギーなどを使用して更に削減を進めております。社内全員で削減方法を検討しながら、未来の地球環境のためにサステナブルな循環を目指してまいります。

TEKTON - 日本建築材料協会デザイン委員 -TEKTON - 日本建築材料協会デザイン委員 -