講演会 講演録

  • 2025年8月27日
    【建築・建材展大阪2025セミナー】
     協力:大阪府建築士事務所協会
    「4号特例廃⽌に伴うこれからのリフォームの変化」
    立野 弘憲 氏
    古木屋 代表取締役社長

    「4号特例」廃止で大規模リフォームはどう変わる

     私は普段、木造の耐震診断・耐震補強設計と改修工事、一般的なリフォームを専門に手掛けています。本日は、2025年4月施行の建築基準法改正に伴って大規模リフォームに確認申請が必要となったことを受け、いかに対応していけばよいかについてお話しします。
     リフォーム業界では「4号特例」の廃止が今後の課題になってくるだろうと考えられていたため、私もそのつもりで、各種事例や新情報が入ってくるだろうと想定していました。しかし7月現在、事業者側も行政側も様子見の状態で、前に進むことができていないのが事実です。
     4号特例廃止で大規模リフォームに確認申請が必要となったことは、大手リフォーム会社関連の方々はよくご存じだと思いますが、私の周囲の一人親方の大工さんや小さな工務店さんの間ではまだあまり周知されていないように感じています。

    屋根の改修や階段の架け替えに要注意

     2階建て以上の木造戸建てや200㎡以上の平屋で行われる大規模リフォームで、2025年4月以降に工事着手するものは建築確認の対象となります。建築基準法の「大規模修繕・模様替え」は、建築物の主要構造部(壁、柱、床、梁、屋根または階段)の1種類以上について過半の改修に該当するものと定義されています。
     一般的なリフォームで該当しやすいのは、屋根の改修(下地から取り替える場合)と階段の架け替えです。階段の架け替えはテレビのリフォーム番組でも当たり前のように行われていることが多いのですが、確認申請が必要な工事に該当することがあるのでご注意ください。一方で、従来のキッチン、トイレ、浴室などの水回りのみのリフォーム、クロスの張り替え、床の上張りのみの張り替えは今まで通り確認申請が不要です。
     役所からの告知文書などで必ず入るのが、「リフォーム後の建築物は建築基準法の規定に適合する必要があります」という一文。確認申請が必要になると、既存建物を現行の建築基準法に適合させる必要が出てくるため、当初触る予定のなかった部分も改修しなければならなくなる可能性があります。例えば、準防火地域に指定された地域で確認申請を取ろうとすると、建物全体を耐火構造にしなければならないケースもあるわけです。

    木造戸建てのリフォームにおける確認手続きの要否判断(フローチャート)

     フローチャートの「主要構造部を改修する」という箇所ですが、主要構造部には、構造上重要でない間仕切り壁、間柱、付け柱、小梁、庇、最下階の床、局部的な小階段、屋外階段は含まれません。また「過半」とは、壁であれば総面積の2分の1以上、柱や梁は総本数の2分の1以上、床や屋根は水平投影面積の2分の1以上を改修する場合を指します(図1)。
     先日行政の方が、階段の架け替えで「半分だけの改修」で済むようアドバイスした、と話されていました。確認検査を行う行政側も、事前相談などで助言するなど、柔軟な対応を模索しているようでした。

    確認申請が不要な事例、必要となる事例

     水回りの交換(キッチン入れ替え、トイレ、ユニットバスへの交換)、バリアフリー化のための手すりの設置、スロープの設置などは確認手続きが不要です。同様に構造上重要でない間仕切壁や最下階の床の改修も確認手続きは不要です。
     要否について検討が必要なのは屋根です。改修範囲が垂木にまで及び、その面積が過半となる場合は建築確認が必要となるでしょう。心配な場合は役所や検査機関に相談するほうがよいと思います。なお、カバー工法による改修では確認不要です。
     ただ、私は木造耐震を専門としている関係で、カバー工法でも元の躯体性能を確認せず上から化粧だけを施すと、重さだけが加わるため、住宅の性能向上という観点では疑問があると考えています。
     木造の耐震化などで全面改装を行う場合、壁を増やしたり構造耐力を上げたりする工事が多いため、過半を超えないように工事を設計するのは難しいでしょう。例えば古い木造建築で基礎がない建物を改修する場合、確認申請を取るために基礎を新設する必要が出てくる可能性がありますが、役所の方に聞いても明確な回答は得られませんでした(図2)。
     外壁のカバー工法も確認申請は不要です。先ほど触れた階段の架け替えでは、過半を架け替える場合は確認が必要となりますが、既存の階段の上に仕上げ材をかぶせる改修の場合は不要です。階段の架け替えに関しては大きく影響が出るところだと思います。架け替えなしには間取りを触れないこともあるので、私も今頭を悩ませています。
     間柱、付け柱を除く柱の改修では、間取りを変えないリフォームの場合は該当しませんが、柱の改修本数が過半となるようなリフォームでは検討が必要です。梁に関しては、梁まで替えるような大きなリフォームを私自身あまり経験したことがないので、該当するケースは少ないと考えます。ただ、こちらも柱と同じで、改修本数が過半となる場合に確認が必要で、補強にとどまったり過半に満たない場合は不要です。
     確認申請の要否が絡むリフォームで私が懸念するのは、悪意の有無にかかわらず、リフォーム業者がこの改正を無視して、あるいは知らずに工事を進めてしまうケース。現状では無資格者が違反したときに科される罰則がないため、違反事業者がどうなるのか、その際に施主はどうなるのかが分かりません。これらに関しては、今後の動向を見ていく必要があるでしょう。

    令和6年能登半島地震の被災地訪問報告

     ここからはもう一つの話題提供です。7月上旬に能登半島に行ってきました。震災から1年半経った今、能登がどのような状態になっているのかを知っていただきたく思い、写真と共に報告させていただきます。
     のと里山海道を輪島へ向かって走ったのですが、道路は通行可能になったものの、ひどく波打った状態でした。公費での解体進捗は80%程度で、残り2割はまだ崩れたままです。何もなくなった輪島市朝市通りでは、境界の測量が行われていましたが、土地の境界が確定していないため新築を建てることができない状況でした。海岸部では地盤の隆起により元々海だった場所が陸地になるなど、地形にも大きな変化が生じています。
     輪島から能登半島外周を車で一周してみましたが、多くの場所でまだ崩れた建物がそのまま放置されています。仮設の道路を走っていると、ナビ上では海の上を走っている画面が示され、元は海だったことが分かります。その仮設道路を通ると輪島から半島先端の珠洲まで回ることができました。須須神社の鳥居も倒れたままの状態で放置されています。特に半島先端の珠洲エリアで復興が停滞している様子が見て取れました(図3)。
     内陸や交通の便がある程度よい場所で起きた過去の震災と比較して、ここまで放置されている被災地はなかったと思います。今後被災した建物を修復する際も、先述の確認申請問題が付いて回るわけで、能登の方々の今後の生活が思いやられます。私も微力ながら、耐震やリフォームの専門家としてできる限り復興に寄与したいと考えております。

TEKTON - 日本建築材料協会デザイン委員 -TEKTON - 日本建築材料協会デザイン委員 -