私の建築探訪

  • 2020年6月10日
    京都府立京都スタジアム(サンガスタジアム by KYOCERA)(けんざい268号掲載)
    外観
    外観
    今年1月、令和初となる球技専用スタジアム、京都府立京都スタジアム(サンガスタジアム by KYOCERA)が竣工しました。京都サンガF.C.のホームスタジアムであり、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールの国際試合会場にもなります。保津川下り、湯の花温泉、嵯峨野ト ロッコ列車などで有名な亀岡に誕生した新たな注目スポット。「府内の球技の聖地」を目指すスタジアムは、スポーツを通して地域のにぎわ いを創出します。 「けんざい」編集部

    日本で一番駅近なスタジアムが亀岡に誕生

     延べ面積約3万3,000㎡で4階建てのスタジアムは、JR亀岡駅のすぐ前という最高のロケーションです。席数は一般客席、桟敷席、車いす席、VIPテラス席、スカイボックステラス席を合わせて約2万1,600席。スタンドは京都府旗の色であり京都サンガのチームカラーでもある紫で彩られ、「KYOTO」の文字が黄色で鮮やかに浮かび上がっています。2月9日にこけら落としで2020Jリーグプレシーズンマッチが開催されました。
     京都府文化スポーツ部スポーツ施設整備課主幹兼係長の橋本泰成さんと、同主任の須藤光俊さんにお話を聞くことができました。
     「亀岡駅の北側で進められている駅前広場整備と一体で建設に取り組んできました。大前提となるコンセプトは『府内の球技の聖地』と『駅近・まちなかスタジアム』です。子どもや青少年を中心とした府民の皆さんに聖地として目指して来てもらえるようなスタジアムにしたいと考えています」(橋本さん)。
     このコンセプトを実現するためにこだわったのは“品質”です。「大きくつくって持て余しては意味がないので、規模は重視しませんでした。距離の近さや臨場感を大切にし、多様な使い方ができて、京都らしさも味わえるような、高品質なスタジアム。そこが大きな特徴だと思います」(橋本さん)。

    座席の高さやピッチからの距離で臨場感を演出

     試合観戦に直接関わってくるのが臨場感です。サンガスタジアム by KYOCERAではスタンド最前列とピッチの高低差をわずか1.2mに抑えるとともに、観客席最前列からピッチまでの距離を最短7.5mにして臨場感を徹底重視しました。これは以前のホーム・西京極競技場の約4分の1の近さです。
     屋根もかなり特徴的です。高さが抑えられたシンプルな形状で、観客席最前列より2m前に張り出しています。全ての席が屋根に覆われているので観客は雨に濡れることがありません。南サイドスタンド以外は屋根に計約1MWの太陽電池を搭載、蓄電システムも備えます。
     南サイドスタンドは天然芝の維持管理のためガラス屋根になっています。芝の管理には、生育に欠かせない光・風・水をテーマに各種工夫が施されています。まずガラス屋根で日照量を確保。南北のサイドスタンドには1階上部からスタンド先端に通じる「風の道」を設置しました。そして一斉散水システムで十分な水を供給できるようになっています。水は噴水のように見た目にも楽しく、夏場のハーフタイムには涼感をもたらします。また、芝は既存の品種よりも日陰に強く耐寒性に優れた新種を採用しました。

    本格的なクライミング施設に全国から利用者

     オープンコンコースを採用しているので、ピッチを見ながら移動ができます。トイレは入口と出口を分けたワンウェイプランで人の流れをスムーズにして混雑解消。外部デッキにはケータリングカーが並び、内部コンコースと合わせて充実した飲食物・グッズなどを提供することができます。
     地元観光資源の活用や、「京都らしさ」の表現も重視しているそうです。「多目的用途で設置された1階の『にぎわい創出エリア』では現在、亀岡ゆかりの明智光秀が主人公の大河ドラマ『麒麟がくる 京都大河ドラマ館』がオープンしています。地元温泉のお湯を用いた足湯も憩いの場にしてほしいです」(須藤さん)。
     スタジアムという施設のイメージからは意外ですが、木が多用されています。「VIPラウンジは、壁を掻き落とし仕上げにしたり、木の格子天井にしたりなど、和のテイストを取り入れています。外周の軒天にぐるりと施したルーバーも全て無垢の木です。木は府内産のスギを使いました」(須藤さん)。  スポーツの拠点として地域活性化の一端を担うサンガスタジアム by KYOCERAには、球技以外にも大きな目玉があります。それはスポーツクライミング施設。東京オリンピックの正式競技になったスポーツクライミング(「リード」「ボルダリング」「スピード」の3種目)の国際基準を 満たす、日本で初めての屋内施設です。
     ニーズは非常に多く、レジャーとしてクライミングを楽しむ層はもちろん、本格的に競技として取り組む選手が全国から訪れ、当初予想の5倍ほどの利用があるといいます。
     「コンサートなど、スポーツ以外の文化イベントにもどんどん利用していきたい。少なくとも年間100日は稼働させることを目標にしています。せっかくつくったスタジアムなので、とことん使い尽くしたいと考えています」(橋本)。
     サンガスタジアム by KYOCERAがスポーツを通してにぎわいをもたらし、亀岡の新たな観光名所として地域を盛り上げることができれば、相乗効果で亀岡の観光地にも目が向けられるでしょう。期待されるのは、スポーツのコア施設としての波及効果が広域な観光促進につながっていくことだと言えましょう。

    京都府立京都スタジアム
    (サンガスタジアム by KYOCERA)
    【所在地】 京都府亀岡市追分町地内
    【TEL】 スタジアム 0771-25-3331
    【URL】 https://sangastadium-by-kyocera.jp/
TEKTON - 日本建築材料協会デザイン委員 -TEKTON - 日本建築材料協会デザイン委員 -