2007けんざい
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建材情報交流会ニュース

 第43回
「リフォーム・リニューアル市場と展望」

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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「住宅リフォーム市場の活性化に向けて」
 竃村総合研究所 社会システムコンサルティング部
  主任コンサルタント 水石 仁 氏

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■新設住宅着工数と住宅リフォーム市場の将来予測
 当社は新設住宅着工戸数の予測を5年に1回くらい見直していますが、だいたいこの数年間くらいは90万戸程度で推移しています。新設住宅着工戸数に影響を与えるのは、移動人口、名目GDP成長率、経済要因の三つです。この三つの変数から過去の実態値と再現性を確認し、将来を推計します。今後、この三要因は確実に新設住宅着工戸数にマイナスの影響を及ぼします。そういうわけで2013年度99万戸あったものが2020年には75万戸、2025年には60万戸になるという予測が導き出されています。 政府はフローからストック、量から質へと、ストック対策を重視するとしてさまざまな対策を行ってきました。リフォーム市場の規模はおおよそ6兆円でずっと横ばいです。拡大するといわれながら拡大していないのがリフォーム市場の実態です。当社で統計的な分析をした結果、将来も6兆円のままほぼ横ばいの見通しです。これは皆さまの期待に水を差してしまいそうですが、統計的にはそういう結果です。
 新築住宅着工戸数と全く同様に、リフォーム市場規模に影響を与える因子を統計解析で出しました。8年前の新設住宅着工戸数、名目GDP成長率、住宅ストックの平均築年数、この三つが因子となります。当然新設住宅着工戸数も名目GDPもマイナス要因ですが、平均築年数は住宅の長寿命化が進んでいるため、プラスの影響を与えます。これらのことから、おおよそ6兆円という数字になっています。今6.7兆円という数字が出ていますが、2020年、2025年も6兆円くらいで推移と当社では見立てています。あくまでも統計的に分析した結果ですが、これまでの予測はほぼ当たっています。
 図1のグラフの左側(2013年度)は、新築の市場規模でいうと約15兆円、リフォームが6.7兆円、計20兆円強くらいのマーケットがある状況でした。新築はどうあがいても確実に60万戸くらいまで減少します。一方でリフォームも約6兆円のままでいくとなると、2025年には22兆円の市場規模が16兆円になってしまいます。政府は2025年にはリフォーム中古住宅流通で20兆円のマーケットをつくるとうたっています。
 このまま何も手を打たないと、リフォームも含め住宅市場は大きくシュリンクしていきます。もし未来を変えられるとすれば、リフォーム・中古住宅流通の部分。ここをいかに増やすかが業界の今後の課題だと思います。ではどうすれば住宅リフォーム市場が活性化できるのか。

■空き家率と住宅の長寿命化
 現在空き家は800万戸あり、空き家率13.5%で過去最高水準、大きな問題になってきています。今後、世帯数は減るので当然空き家も増えていくわけですが、通常は空き家が増えれば除却も進むのですが、最近は固定資産税の関係で空き家の放置が増えています。このまま手を打たないでいくと、空き家率は20%くらいまでいくのではというのが当社の見立てです。一方で空き家の増加によって、中古住宅の流通活性化の量的なポテンシャルが大きくなると思います。(図2)
 住宅の長寿命化は明るい話題です。図3のグラフからは、建築時期が近年のものほど減衰速度が遅くなっていることが分かります。例えば新耐震の1982年から1988年くらいに建った住宅は、減衰率50%になるのが50年くらいです。日本の住宅寿命は30年といわれていましたが、長寿命の住宅が増えていることになります。今後新耐震以降に建った住宅が市場に出てきて、量と質の面で中古住宅流通を活性化させる基盤が整ってくるのではないかと考えます。

■住宅リフォーム関連施策の動向
 政府は2020年までにリフォーム・中古流通市場を20兆円規模に育成するとし、国交省を中心に、特に2012年に発表された「中古住宅リフォームトータルプラン」をきっかけにいろんな検討が進められて、各制度も構築されてきているという状況です。リフォーム関連の補助制度で記憶に新しいのは2009年度の補正から行われた住宅エコポイントで、今度の補正でまた行うという話が出ています。
 政策や制度はほぼ整備されつつあり、課題も明らかになり、解決に向けて検討が進んでいます。問題は、消費者のマインドやビジネスがまだリフォーム活性化に追いついていないのではないか、というのが当社の仮説です。これまで一億総中流といわれていた社会が変わり、経済的格差が生まれ、家族のありかたも変わってきました。もはやハコやモノをつくれば売れるという時代ではないのです。社会や個人の変化をもっと丁寧に観察し、適応していくことによって掘り起こせるニーズがあるのではないかと思っています。

■住宅・建材業界を取り巻く外部環境の変化
 人口は2008年に減少に転じており、世帯数も2019年にピークアウトします。さらに超高齢化が進み2030年には3人に1人が65才以上になります。高齢者の急激な増加は、これまでの10年とこれからの10年で大きく変化していきます。高齢化のマーケットに対応するのはあと10年が勝負で、それ以降はいくら頑張っても遅い。このタイミングの考え方は、事業戦略、経営戦略考える上で非常に大きなところです。
 高齢者向けに実際に事業を起こしていくには、ミクロの変化を見ていく必要があります。2005年から2010年にかけて核家族世帯より単独世帯が大きくなり、その割合はどんどん大きくなっています。非婚化、晩婚化の影響ですが、中高年の単独世帯が増えてきている。最近の傾向にインビジブル・ファミリー(自分の親の住まいに近居・隣居する家族形態)の増加があります。日本全体でいうと半数くらいが近居・隣居しているといわれています。そういうインビジブル・ファミリーのシニア世帯向けの提案もあってもよいのかなと思います。実際、息子(娘)家族と近居する祖父母は孫たちの生活支援にお金を出すケースが多いというデータもあります。(図4)
 共働きの子育て世帯も増加傾向にあり、働き方が多様化しています。それぞれ家族の形が変わり、ライフした。
 今、日本中で人材不足の問題が顕在化しています。日本の雇用環境は、昔は農業が中心だったものが、製造業になり、製造業が衰退・空洞化するなかで、サービス業に代わっています。建設業はずっと公共事業を含めて雇用の受け皿になってきましたが、最近どんどん低迷しています。1955(昭和30)年から1975(昭和50)年にかけては農業・林業が減って製造業が増えましたが、1975年、高度経済成長が終わった頃からサービス業が増加。1995年から2010年にかけ、製造業が大きく減少。増えているのは、フリーターはじめ分類不能の産業です。
 建設業では1995年から2010年の15年で、人材が半減しました。期待されるのは女性やシニアで、この人たちが今後どれだけ活躍できるかが大きな課題です。リフォームは、空間や環境の提供という提案力の求められる仕事です。そういう場所にきめ細やかな女性のアイデアや営業力、経験豊富なシニアの人たちが期待されます。一方で大工や建築技術者は高齢化と共に確実に減るので、その対応も大きな課題です。

■住宅リフォームに関する先進・萌芽事例
 先進・萌芽事例をいくつか紹介します。東急電鉄の「住まいと暮らしのコンシェルジュ」というサービス。東急沿線は非常に高齢化の進んでいる沿線です。そこで、住まいの相談にくる人たちに対して、この人にはこんな住宅を紹介したらどうか、こんなサービス、こんなリフォームを紹介したらどうか、そういうワンストップの窓口のサービスを始めました。若年層、単身層にはその沿線外から賃貸住宅に入ってもらう。ファミリー層になら中古住宅を買い取ってリフォームをし、住み替えを促進。沿線から人口を減らさず、かつ高齢者だけのまちになるのではなく、若者も入れて沿線地帯の価値を高めようというものです。(図5)
 リビタの「一棟まるごとリノベーション分譲マンション」も有名です。これはリフォームの工事だけではなく中古マンションを一棟まるごと買い取り、建物調査、診断をしてデザイン性を高め、専有部は自由設計、さらにコミュニティ形成の支援まで行い付加価値を高め分譲するものです。
 東京R不動産では、従来の家の基準に関する常識を覆し、独自の基準で、例えばレトロな味わいの住宅や倉庫風の住宅、自由に改装OKとか、屋上付き、水辺の景観があります……といったニッチだけど強い希望を持つユーザーを探し、物件を探してネットの中でマッチングさせてサービスを提供しています。
 これからは家族だけでなく、友人・知人や地域住民、企業などが、ゆるやかにつながっていく社会になっていくだろうと考えられます。これまではプライベートな空間とパブリックの空間に分かれていましたが、その中間の共空間・ソーシャルな空間がこれからは増えていくのではないでしょうか。

■公民連携の事例
 まちづくりとセットで進める公民連携の仕組みも出てきています。まちごと全部リノベーションして、いろんなリフォームを生み出そうという発想。北九州の「小倉家守構想」「リノベーションスクール」も有名です。さびれた商店街エリアを、行政と住民が協力してリノベーションした取り組みです。これによって、主婦や学生など120人が起業して店を出し、300人の雇用が生まれました。驚いたことに、そこで起業した主婦が年間6千万円売り上げているというのです。
 行政の役割でいちばん大きいのは、「PR」と「邪魔をしないこと」、そして建築基準法とか消防法などが関わってくる部分でのサポートです。古いものをリノベーションするわけですから当然法律に引っかかってくるケースが多々あります。そういうところを行政の人が迅速に対応している。こうした環境が、まちをまるごと巻き込むような取り組みを進めていく上では非常に重要だろうと感じました。
 徳島県の山奥にある神山町はサテライトオフィスで有名になりました。IT企業が会社ごと引越ししてきました。もともとはワークインレジデンスという発想ですが、まちおこしのために移住者を集めようとしても、仕事がないと定住してくれないので、仕事ごともってきてもらおうと、サテライトオフィスとして貸し出している事例です。人口6,000人くらいの過疎のまちだったところが、今は転入・転出で転入数が上回る状況になってきて注目されています。(図6)

■労働環境の変化
 働く環境も非常に大きく変わってくると思います。左側はアメリカ・サンフランシスコのオフィスビルです。(図7)アメリカのオフィスビルは1人当たりのスペースが約6m2です。右側が当社のオフィスです。今年の7月から完全フリーアドレスになり、50p角くらいの小さいロッカーが与えられて、好きなところで仕事をしていいのです。私1人当たりのスペースは1m×1mくらいです。日本人はよく、不満には強くて不安に弱いといわれます。われわれコンサルタントはその典型だと思うのですが、本当は1人当たりのスペースが狭くなれば生産性が落ちるはずです。しかし、翌朝ミーティングがあって、クライアントの前でプレゼンしなければならないとなると、一生懸命頑張る、その結果必死になると生産性は全然落ちない、というように当社では労働スペースのフリーアドレス化が非常にうまくいっています。今後数年くらいでこんな働き方も波及してくるでしょう。

■住宅リフォーム市場の活性化に向けて
 住み続けるためのリフォームと、価値を高めるためのリフォームがあります。リフォームのきっかけを聞いたアンケートでは、ほとんどが「老朽化した、壊れた」という理由でした。これはずっと変わらないと思います。これだけのリフォームだったら確かにマーケットは6兆円のままでしょう。全然夢がありません。「生活の質を上げたいから」という理由をもっと増やさねばならないのでしょう。今の若者は昔のような財形貯蓄などをしていないので、住宅を買うお金、リフォームのお金なんてない。趣味にお金を使うのかリフォームに使うのか、の勝負になるわけです。もはやリフォームは建設業ではなくサービス産業です。感動を与えるようなものが提供できないとリフォームは活性化しないでしょう。


「有機系弾性下地調整材を用いたタイル張り工法について」
 コニシ梶@大阪研究所 研究開発第5部 楠木孝次 氏

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■タイル張り外壁ははく離・はく落防止が重要
 今回の報告ではタイル張り工法のうち、湿式工法と呼ばれる、現場でモルタルや接着剤を使ってタイルを張る工法について説明します。タイル張りの外壁はデザイン性の高さ、耐久性の高さから多くの建物に採用されています。しかし一度はく離・はく落が生じると大きな事故につながる恐れがあるため、外装タイル張りははく離・はく落を防止する工法の採用や、定期的な保全が不可欠な外壁仕様です。
 タイルのはく離は、ディファレンシャルムーブメント(相対歪み)によるものが主たる原因の一つと考えられます。(図1)はく離が起こる部位としては、躯体のコンクリートと不陸調整用モルタルの界面で起こる事が最も多いと報告されています。そのため、不陸調整用モルタルのコンクリート下地への物理的かみ合わせ向上を目的としたコンクリート下地の目荒しや、コンクリート下地に多数の凹凸をつけるMCR工法等が考案されてきました。日本建築学会の陶磁器質タイル張り工事・JASS19 ・第4節「有機系接着剤によるタイル後張り工法」の中でも『コンクリート表面は、はく離防止のため清掃を実施する。不陸調整を行う箇所は、目荒しを実施すること』と記載されています。

■弾力性のある接着剤で応力低減、はく離を防止
 モルタルによるタイル張りは正しく施工されれば長期耐久性を有するが、施工材料の特性上様々なリスクを抱える工法でした。モルタルは硬化すると非常に硬く伸縮性に乏しい硬化物となるため、温湿度の変化等によって生じるディファレンシャルムーブメントによって疲労が蓄積することではく離が生じてしまうリスクがありました。そのため、これまでタイルのはく離・はく落防止としてさまざまな工法が考案されてきました。その一つに、今回紹介する有機系接着剤によるタイル後張り工法があります。同工法の利点は、弾力性のある有機系接着剤を用いてタイルを張ることによって、ディファレンシャルムーブメントに起因する動きを接着剤層が吸収・緩和し、接着界面に発生する応力を低減することでタイルのはく離・はく落に対するリスクを低減できることです。ひいては耐震安全性の向上にもつながると考えられます。そのため近年モルタル張りから接着剤張りへの移行が進んでいます。(図2)タイルをモルタルと接着剤を用いて張り、柔らかさがどの程度タイルのはく落防止に効果があるか確認した試験について紹介します。モルタルの場合はコンクリートが歪むにつれタイルにも歪みが伝播し、あるところでタイルがはがれ落ちてしまいました。しかし、接着剤の場合はコンクリートが歪んでも、その応力を接着剤が緩和するのでタイルは大きく歪むことなく下地コンクリートの歪みに追従することができました。(図3)
 耐震安全性については、2014年10月に全国タイル業協会が東日本大震災で建物に起きた被害について調査報告書をまとめています。その中で接着剤張り工法を使ったタイル張りはモルタルで施工したものに比べ被害が少なかったと報告されています。
 有機系接着剤張りのもう一つの利点は、近年の熟練工不足に起因する施工の品質のばらつきを抑えられるという点です。接着剤でタイルを張ることによってモルタルで施工した時と比べて、安定した施工品質が確保し易くなります。タイルを張り付ける条件を変えて歪み追従性や接着強さ試験を行った結果、接着剤にて施工した方がモルタルで施工したよりも安定した接着性を発現することが確認されました。弾性接着剤で施工することで、施工環境の影響を受けにくく施工品質がより安定することが確認されました。(図4)め、躯体の成りにしか施工できません。そのため、接着剤の塗り厚はモルタルにくらべて薄くなってしまい、下地の精度がタイルを張った後の仕上がり精度に影響してしまいます。そこで、RC造の場合コンクリートの型枠パネルの目違いや、水平打継ぎ部の目違いの段差といった不陸を調整してからタイルを張る必要があります。不陸調整方法についてご紹介いたします。
 一つは直張りと呼ばれる工法で、不陸のある部分のみ下地調整用のモルタルで補修して平らな下地をつくるのですが、どうしても端部が薄付けになり、ドライアウト(モルタルの硬化に必要な水が揮発、もしくは下地に吸われることで起こる硬化不良)の危険性が生じます。モルタルを部分的に塗った場合は、吸水調整材のはみ出しも問題になります。吸水調整材と弾性接着剤の接着の相性が悪いためです。そのため、モルタルを塗らない部分には吸水調整材を塗布しないようにする必要があります。
 もう一つの方法が、下地全面に下地調整用モルタルを一層、ドライアウトしない厚みで塗った後、接着剤でタイルを張る方法です。こうすることで、ドライアウトや吸水調整材のはみ出しの問題は生じません。しかし、ディファレンシャルムーブメントに起因する歪みが生じた際に、固い下地調整用モルタルが一層入っていることで、躯体と下地調整用モルタルの界面ではく離が生じる危険性がありました。せっかくの弾性接着剤の性能を十分に発揮できない層構造となっているためです。

■トータルフレックス工法とは
 そこで、下地調整材に柔らかい材料を用いれば良いのではないかと考え、新たに弾性下地調整材「ボンドレベルワン?」を(株)竹中工務店と共に開発しました。まず、不陸のある部分に「ボンド レベルワン?」を塗布し、硬化後にタイル張り用の接着剤である「ボンド エフレックスタイルワン?」でタイルを張ります。こうすることで、タイル張りの層すべてを弾性材料で構成することができ、弾性接着剤張りが有するはく離防止性能を最大限に発揮することができます。これが「トータルフレックス工法?」です。(図5)「トータルフレックス工法?」は株式会社竹中工務店と共同で開発した工法です。
 トータルフレックス工法には、図6のような効果が期待されます。今回開発した「ボンド レベルワン?」は、タイル張り用接着剤と同じ変成シリコーン・エポキシ樹脂系のもので、コンクリートと同色に調色しています。トータルフレックス工法の工程については図7に簡単に
示しています。
 注意すべき点は、一つには躯体精度を高める必要があることです。「ボンド レベルワン?」は、空気中の湿気と反応し硬化が進行する材料であるため、表面からしか硬化しません。そのため、内部硬化するのに時間がかかるため1回の塗布厚は5mm以下、重ね塗りは2回までの設定となっています。つまり、合計10mmまでの不陸にしか対応していません。ですから、コンクリートは直張りや打放しを想定した精度で作成する必要があります。
 二つめは、タイル裏面への接着剤の接着率を高くして施工品質を安定させるため、裏足の低い接着剤張り専用のタイルを使っていただきたいという点です。国交省の公共建築工事標準仕様書にも、裏足の低い接着剤張り専用のタイルを採用した場合、接着剤の塗布量2.5kg/m2と書かれていますが、裏足の高いタイルや反りの大きいタイルの場合は、3.5kg/m2と書かれていますので、裏足の低いタイルを使うことで接着剤の使用量を減らし材料価格を下げることもできます。
 シーリング材は、公共建築工事標準仕様書の中で接着剤との相性試験を行うよう明記されています。汚染性、表面性、界面状態等の確認です。当社はタイル張り用接着剤、シーリング材共に扱っており、両者の相性もすでに確認しています。

■タイル張りに関する世間情勢
 2008(平成20)年4月に建築基準法第12条に基づく定期報告制度が改訂された際、10年おきの外壁全面打診調査が義務化されました。2011(平成23)年の別府マンション事件に対して下った最高裁判決は「タイルの浮き・はく落というものは瑕疵である」という厳しいものでした。このような背景からこれからのタイル張りを考えると、有機系接着剤を使用するしか方法がないのではないかという記事を目にしたこともあります。それくらい、有機系接着剤に求められる役割は大きいと感じています。このような中、トータルフレックス工法は下地材の変位1mm に対してその応力をタイルのひび割れやはく離が発生しない程度にまで吸収・緩和することによって追従できることや、繰り返し変形に対して有利であるとして、日本建築センターが証明する建設技術審査証明を取得することができました。
 最期に施工事例について紹介します。円形の講堂としては国内最大級の面積を持つ九州大学の椎木講堂。外壁のタイルはトータルフレックス工法で施工しました。トータルフレックス工法の施工実績は、2013(平成25)年12月時点で5万m(2 30件)を突破し、現在もさらに増え続けています。

 


「介護保険を活用したバリアフリーリフォーム」
 マツ六梶@バウハウス営業推進部長  桑田 貴喜 氏

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■バリアフリーのための改修は介護保険でまかなえる
 2000(平成12)年に施行された介護保険制度。運営主体は各市町村であり、税金で50%ほどまかなわれており、あとの50%を保険者であるわれわれが保険料として収めています。同保険の加入者には、第1号被保険者(65才以上)と第2号被保険者(40才から64才まで)があります。65才以上の人口は2,978万人で、人口比率からいくと23.3%、4人に1人くらいです。利用するには介護認定を受ける必要があります。
 介護サービスが必要な場合、市区町村の窓口に相談して申請します。申請に基づき訪問調査などが行われ、認定という運びです。介護認定には、要支援1と2、そして要介護5段階の、計7段階があります。それぞれの段階にあわせて居宅サービスの費用や住宅改修の費用の一部や、用具の購入費用の一部を負担してもらう形で介護給付金が支給されます。金額には使える枠があり、ケアマネージャーなどの専門家が利用計画書を作成します。その中に住宅改修、福祉用具の貸与・購入が含まれます。(図1)定者数は218万人でした。その後どんどんと65歳以上の人口が増え、201(3平成25)年度では3,190万人高齢化率が25.1%になりました。介護保険費用は9.4兆円でしたが、高齢者数がピークを迎える2025年頃には20兆円を超え、認定者数も700万人を超えると予測されています。高齢者が増えると、当然それに対応した住宅環境を整えねばなりません。そこでバリアフリーリフォームのポイントを解説いたします。

■玄関
 玄関は生活の範囲を広げる重要なポイントなので、玄関のリフォーム工事も重要です。介護保険対象の工事と部位を図2に示しました。足元灯を設置したり、スイッチを明かり付の大型スイッチに取り替えたりなどは、介護保険の対象外ですが、こういったところもリフォームすれば生活が一層しやすくなります。玄関のもう一つのポイントは車いす利用のためのスペース確保です。土間の広さが有効で幅1,100mm以上、奥行1,200mm以上が目安です。上がりかまちに設ける簡易スロープは、狭い場所でも最大15°を目安にします。

■廊下
 廊下は居室内の各部屋を利用するための重要な移動スペース。自立するためには行きたい部屋に不自由なく行ける環境が必要です。介護保険対象の工事と部位を図3の通り。ポイントは安全に移動するための段差の解消、すべり止め、補助手すりの設置などです。介護保険の対象外にはなりますが、開閉が簡単な窓にするとか、十分に採光できる窓に替えることで住みやすい環境をつくれます。車いすを想定して、キックガード(壁の破損防止部材)の増設も必要でしょう。

■階段
 階段も、廊下同様に自宅内の移動に重要な場所。手すりと階段の滑り止めが一つのポイントです。手すりはできれば両側に付けることをおすすめします。階段の段鼻部へのノンスリップも効果的です。階段の上り下りができない場合は、保険の対象外ですが階段昇降機があります。これは階段の幅に制約があり、最低750mm以上ないと難しいです。階段が途中にあると手すりがつけられないので、使うときだけ上げ下ろしできる遮断機式の手すりが便利です。滑りにくい床材として有効なのが、コルク材や、柔らかい材質のもの。大きなケガを未然に防止する工夫の一つです。

■トイレ
 高齢になるにつれ使用頻度が高くなるトイレ。リフォームのポイントは、段差の解消、換気、暖房設備、補助手すり設置などです。介護保険対象の工事と部位は図4の通りです。介護保険対象外の工夫としては、ヒートショック対策に有効な照明付き暖房器の取り付け、臭い緩和のための換気扇の取り付け、暖房器ほか電気機器を付けるためのコンセントの取り付けなどがあります。片手でカットできるペーパーホルダーも、手が不自由になりがちな高齢者には便利です。
 トイレでは遮断機式の手すりをうまく利用すると、排泄の補助になります。また、トイレの中に介助スペースを設けることで介助もしやすくなります。前方や側面方向に500mm以上のスペースをとるのが目安です。便座から立ち上がるときに上体をフォローしてくれる立ち上がり補助具を便座に取り付けると楽に排泄できます。

■浴室・洗面所
 浴室・洗面所は、身体と精神をリフレッシュするために重要なスペース。一方で転倒やおぼれるなどの重大な事故が起こる場所でもあるので、やはり段差の解消、滑り止め、介護器具の選定・補助手すりの工夫が大事なポイントです。手すりの取り付け工事、滑りにくい床材への取り替え、引き戸への取り替えが介護保険対象になります。脱衣所は服を脱ぎ着するので手すりの取り付け工事が必要です。動作補助、座位・立位での状態保持ができるものを設置します。
 浴槽内の転倒防止をすのこなどで補う場合は、福祉用具の購入の範囲となります。浴槽の取り替えも有効な手段です。水栓金具の取り替えは、単純な金具交換だけでは保険対象にならないのですが、例えば床を上げたり下げたりした場合に、水栓の高さが変わるので、そういった場合の取り替えは介護保険の対象になります。入浴台・浴槽内いす・浴槽内すのこ・浴槽内手すり・入浴用いすなどは、改修工事ではなく福祉用具の購入でまかなえます。
 トイレ同様、保険の対象外ですが換気扇・暖房機器も重要になってきます。暖房などの設備機器は体温低下によるヒートショック対策としては重要なポイントになってきます。ヒートショックによる死亡者は年間1万人以上(2011(平成23)年の1年間で1万7,000人)。これは高齢者に限らないのですが、普段の温かい格好をした状態で衣服を脱いだり、冷たくて寒い場所に行ったりすると、血圧が急に上昇するため脳梗塞を起こしたり心臓に一気に負担かかったりして死亡事故につながるのです。このような事故を解消するためにも、温度差が少ない状態にすることが重要になってきます。
 浴槽を交換する際は、浴室スペースに介助可能な広さを設けます。短辺1,300mm以上かつ2.3m2以上で、背もたれが斜めになっていない垂直に近い形状の浴槽を選ぶことがポイントです。深さは500mm〜600mmぐらいで、浴槽のへりの高さは洗い場の床から400mm〜450mmくらいが適当とされています。
 洗面所の出入口ではつまずきの原因となる床の段差をなるべくなくします。上吊り戸または、フラットレールの引き戸が有効です。浴室出入ロの参考としてもう一つ。開口幅は650mm以上、段差は20mm以下とします。20mmを超える場合は、浴室内外の高低差を120mm以下、またぎ高さを180mm以下として手すりを設置します。

■寝室
 寝室は、住宅の中で大部分の時間を過ごす空間。安全に注意して採光や通風を十分に確保することで、快適に過ごせます。ここでも段差の解消、スペースの確保、家具の配置の考慮、補助手すりなどの工夫が必要です。介護保険対象の工事と部位は図5の通りです。保険対象外では、足元灯やスイッチ関係取り替え工事、脱着式手すりも押入れの前などで有効です。ヒートショックの対応として暖房設備も大事だと思います。ベッドなど家具は身体にあわせて配置を決定するのが、動作確保のためには重要です。
 出入口は、引き戸の開口幅を750mm以上とし、敷居の高さを3mm以下にするのがポイントです。また、丸い握り玉のドアノブをレバー状に替えるとか、錠前だけの交換も可能なので、このような工夫も有効です。窓は日当たりの調整のために電動式のカーテンを使う、徘徊防止のために補助錠を付けるといった点が大事。収納は戸を引き違いか折りたたみに替えたり、キャスター付きのワゴンなどに替えたりすることで便利になります。身体条件にあわせて押入れ、物入れを便利に改造することも有効です。

■屋外/福祉用具貸与
 屋外関係のバリアフリーリフォームは、玄関アプローチの工事が重要です。自立して安全に外出するには、段差の解消、滑り止め、補助手すり設置などによる工夫がポイント。介護保険対象の工事と部位は図6の通りです。保険対象外の工夫としては、風雨を避ける庇、夜間のことを考えた外灯、足元灯などの設置です。スロープ手すり、簡易スロープ、縁側の踏台も便利です。
 住宅の中には賃貸で下地などがないような場所で、壁に手すりを取り付けるのは難しい場合があります。こんなときは福祉用具の貸与でフォローできます。利用者の住宅環境や経過観察が必要な場合には、こういった仮設置が可能な福祉用具の利用をおすすめします。(図7)

■身体機能の支援・安全確保介助者の負担軽減のために
 バリアフリーリフォームが一般のリフォームと違うところは、身体機能の支援、安全確保、介助者の負担軽減を目的にしているという点です。だから基本としては、移動の障害となるものをなくす、広さにゆとりを持たせる、断熱性を高め住宅内の温度差をなくす、十分な換気を行う、といったことがポイントです。日本は長寿国になりましたが、長い人生を安心して楽しむには生活空間の充実が不可欠です。加齢にあわせて安全に快適な生活ができるようなバリアフリー化が求められています。当社では、高齢者が快適に自立した生活を送れる住環境をお手伝いするアイテムを多数取り扱っています。さまざまなアイテムのカタログもありますので、それらをご覧になっていただければ、バリアフリーリフォームがどういうものか、より一層お分かりいただけると思います。

 



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