2007けんざい
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 第20回 記念講演
“サスティナブル建築PART-V”CASBEEについて

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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CASBEEの基本的な考え方、評価方法」
 慶應義塾大学 教授
 JSBC総括幹事 伊香賀 俊治 氏

資料はこちら(PDFデータ)

建築物の環境効率を評価する
 CASBEEという言葉を初めて聞かれた方も多いと思います。これは、Comprehensive Assessment System for Building Environment Efficiencyというものの頭文字をとったもので、直訳すると「建築物の環境効率を測るための総合評価システム」という意味です。2001年度に国土交通省住宅局住宅生産課のプロジェクトの一環として検討がスタートし、「建築物の総合的環境評価研究委員会」、別名「日本サステナブル・ビルディング・コンソーシアム」が、産官学共同で開発したシステムです。
 CASBEEの基本は、「環境品質・性能÷環境負荷=環境効率」という分数式に集約されます。「環境品質・効率」とは、その建築物が内外の空間にもたらす環境的なメリット。「環境負荷」とは、その建物が建つことによって消費されるエネルギーや資源、排出される廃棄物や大気汚染物質など。これらを項目ごとに細かく数値化し、総合して先の分数式に当てはめるとBEE値、すなわち環境性能効率が得られます。当然、「環境品質・性能」が大きく「環境負荷」が小さい建物、環境的にすぐれた建物ほど、BEE値は高くなる。さまざまな建築物についてこの指標を算出し、ランク付けするシステムがCASBEEです。
「環境性能・品質」の3要素とは
 「環境品質・性能」には3つの大項目があります。これについて、少し説明を加えます。
 「Q-1 室内環境」には、4つの中項目があります。1番目の「音環境」では、上下階や隣の部屋との「遮音」、室内の仕上げによる「吸音」が、建材の選び方と関係が深い。また、「温熱環境」では断熱材や複層ガラスなどの断熱建材をうまく使うと評価が上がるようになっています。3つ目の「光・視環境」は、外光の取り入れ方や人工照明への対応がポイント。4番目の「空気質環境」はいわゆるシックハウス対応ですが、VOC(揮発性有機化合物)の少ない部材をいかに使うかという「発生源対策」が、建材と関係します。
 次の大項目「Q-2 サービス性能」は、3つの中項目があります。このうち「耐用性・信頼性」の項では、「部品・部材の耐用年数」の項目や、災害に対しても機能を発揮できる「信頼性」の項目が建材と関係してきます。また、「対応性・更新性」の中の「設備の更新性」は、設備や配管などを取り替える際、内装や躯体を壊さなくても取り替えられるシステムがあるかどうかを評価する項目です。
 大項目の3番目は「Q-3 敷地内室外環境」で、「生物環境の保全と創出」「まちなみ・景観への配慮」「地域性・アメニティへの配慮」の中項目があります。植栽や庭園に力を入れたり、地元の文化を継承する材料を外構や外壁に使うと点数が上がる仕掛けになっています。また「地域環境・アメニティへの配慮」の中にある「敷地内温熱環境の向上」の項目は、いわゆるヒートアイランド対策への評価です。
「環境負荷」の3要素とは
 次に、「環境負荷」についてご説明します。ただし、最初の評価段階では「環境負荷低減性能」、環境負荷の低減性能が高いほど、点数が上がる仕組みになっています。
 まず、「LR-1 エネルギー」では、省エネ性を見ます。たとえば、「建物の熱負荷抑制」という中項目では、断熱設計に伴う省エネ性を評価する。ですから、断熱建材をきちんと使っていれば、先に触れた「温熱環境」もよくなるし、この「建物の熱負荷抑制」も高くなるわけです。以下、パッシブソーラーや太陽電池の使用などを含む「自然エネルギー利用」、さらに「設備システムの高効率化」「効率的運用」と続きます。
 大項目の2番目は、資源循環への配慮を評価する「LR-2 資源・マテリアル」。「水資源の保護」と「低環境負荷材」の2本立てですが、「低環境負荷材」はすべて建材と関連します。たとえば、「資源の再利用効率」は、リサイクル系の建材をどのぐらい使っているか。また、5番目の「部材の再利用可能性」では、リフォームや建て替えの際に建材や部材をリユースできるか、あるいは再生利用できるかを評価している。7番目の「フロン・ハロンの回避」には、フロンを発泡剤とする発泡断熱材の有無も含まれています。
 3つめの大項目「LR-3 敷地外環境」には、「大気汚染防止」「騒音・振動・悪臭の防止」「風害・日照阻害の抑制」「光害の抑制」「温熱環境悪化の改善」「地域インフラへの負荷抑制」といった項目があります。周りに対してヒートアイランド状況を緩和するなど、先に挙げたヒートアイランド対策が、ここにも含まれています。
CASBEE評価は専用シートで行う
 各項目の評価は、専用シートを使って整理・集計されます。まず、「概要入力」で建物名称や所在地、面積などを記入。続いて、評価欄となっています。たとえば「暗騒音」のように数値化できる項目は、室内の騒音を何dbにできるかを5段階で評価します。この評価基準は、事務所ビルや病院、学校など、建物用途に応じて異なります。
 同じ採点シートでも、「生物環境の保全と創出」などは、騒音のような数値計測はできません。こういう項目については、どんな取り組みをしているかを具体的に明記して、その努力の具合を点数化する方法を採っています。
 また、既存の評価書などの数値を利用する場合もあります。たとえば、「LR-1 エネルギー」は省エネに関する評価項目ですが、省エネルギー法で提出を義務付けられている省エネルギー計画書の結果から点数がつけられるようになっています。
 以上、最もベーシックな「CASBEE-新築」で、80項目前後を5段階で評価します。その点数を全部入れると、「スコアシート」に結果が反映され、それが「環境性能評価結果」としてグラフされる仕組みになっています。
3つのグラフで評価を表す
 CASBEEの評価結果は、3つのグラフで表されます。まず、「環境性能評価結果(バーチャート)」は、中項目レベルの評価を棒グラフ(バーチャート)で示したもの。上が「環境品質・性能」、下が「環境負荷軽減性能」の各項目となっています。棒グラフは通知表と同じ5段階で示され、3が標準レベルです。どの項目がすぐれていて、どこが努力を要するか、一目で分かるようになっています。
 この評価を大項目レベルに集約したのが、次の「環境性能評価結果(レーダーチャート)」です。6本の軸は、上半分が「環境品質・性能」の3項目、下半分は「環境負荷低減性」の3項目に対応しています。1つの軸ごとに各項目の総合点(1〜5)を記入し、それを直線で結んで、もしオール5なら非常に整った6角形が現れる。しかし、どこか1か所だけが評価1なら、そこだけいびつな形になる。その建物の評価が視覚的に分かるわけです。
 最後に出てくるのが、いちばん大切な「環境性能評価結果(BEEチャート)」。縦軸に「環境品質・性能」を0から100までとり、オール1なら縦軸が0に、オール5なら100になるようにしてあります。横軸方向は、「環境負荷」で、こちらはオール5(負荷最高)だと0、オール1(負荷最低)だと100になります。
 このグラフは、最初に挙げた分数式に対応しています。たとえば、環境品質・性能が50、環境負荷も50という標準的な建物は、BEE値は1(50÷50=1)ですが、それは、このグラフの対角線の傾きにあたる。したがって、ある建物の評価結果がこの対角線上にプロットされていれば、それは一般的な建物のレベルを表すことになるわけです。
 BEEチャートではこの対角線を基準に、より傾きが大きくなる、つまりより品質性能が大きく環境負荷が小さくなるにつれ、B+、A、Sとランク設定をしました。逆に、対角線より傾きが小さなものは、B−ランク、Cランクとなります。レストランガイドの星のように、この建物はSランクだ、あるいはAランクだ、と一言でランキングできるわけです。ちなみに、最高のSランクは、5段階評価でオール4以上あれば取れます。
 なお、これらのチャートはA4版1枚の評価結果シートにすべてまとめられます。これ1枚で、1つの建物の環境性能が細かく分かるわけです。こういう評価を、建物一つひとつに行うことを通して、がんばった建物の関係者は誇りを持つ。がんばりの足りないものは、次からがんばろうと励むことで、全体の建物がよくなっていくことを狙っています。
建材だけでも評価ランクは上がる
 次に、すべての項目をレベル3.0と仮定し、建材だけを最高レベルにするとどうなるかをご紹介しましょう。たとえば「Q-1 室内環境」の「音環境」は4.2に、「温熱環境」は3.2に、「空気質環境」は、3.6まで上がります。さらに「Q-3 室外環境(敷地内)」については、3項目とも4.0までアップする。一方、環境負荷軽減性能でも、たとえば「LR-1 エネルギー」の「建物の熱負荷」「自然エネルギー」では、断熱サッシなどを採用することで、最高の5.0が取れる。「LR-2 資源・マテリアル」のところでも、「低環境負荷材料」が4.7。「LR-3 敷地外環境」では、「光害」「ヒートアイランド化」が各4.0までアップします。
 これらをBEEチャートに落とし込むと、本来BEE値1.0の建物が、2.5までアップしました。つまり、建材でがんばるだけでも、Aランクのかなり上のレベルまで評価を引き上げられるということです。ある空調メーカーでは、CASBEEのスコア向上をアピールして製品採用につなげているそうですが、同じことは建材についても当てはまる。CASBEEスコアの向上性が、デベロッパーや設計事務所などへの説得材料になる可能性があります。
CASBEEファミリー
 ここまで、主に「CASBEE-新築」をお話ししてきましたが、CASBEEには他にも、既存建築物を評価する「CASBEE-既存」、建物改修を想定した「CASBEE-改修」、ヒートアイランド対策を詳細評価する「CASBEE-HI」などがあり、全体で「CASBEEファミリー」を構成しています。まだ未公表ですが、敷地の選定や活用方法、用途や規模などを事前評価するための「CASBEE-企画」も作成中です。
 また、「CASBEE-新築」の中には、2005年の愛知万博でパビリオン評価に使われた「CASBEE-短期使用」、ウェブ上で一般公開されている「CASBEE-新築(簡易版)」があります。後者は名古屋・大阪・横浜などの自治体版CASBEEのベースになりました。
 以上は「建築系」ですが、「まちづくり系」としては、都市再生プロジェクトなど面的な開発を評価する「CASBEE-まちづくり」があります。これはもともと、愛知万博の全体評価用に作られた「CASBEE-地域(万博)」がベースです。また、「住宅系」として、戸建住宅を評価する「CASBEE-すまい(戸建)」があります。こちらは去年の7月に試行版を公表し、今年の7月には公表できる見込みです。
 さらに、CASBEEには海外版もあります。最初に出したのが、2003年7月発表の「CASBEE-新築」をベースとした「CASBEE-DfE」(2003年10月)。すでに、スペインやアメリカなどで利用されています。また、韓国語版もすでに完成しています。
 さらに、2005年7月には中国語版も出版されています。実は中国では、環境オリンピックともいわれる2008年北京オリンピック用に、GOBASという施設評価システムを作りました。このシステムはCASBEEを参考にして開発されたため、中国の技術者に広く知ってもらおうと、北京にある清華大学の先生方が手分けして中国語に翻訳してくれたものです。
海外の評価システムの動向
 ここで、世界各国の建築物の総合環境性能評価ツールをご紹介すると、最も早かったのがイギリスの建築研究所によるBREEAMで1990年。これが香港や英連邦の各国に広まり、続いて欧州各国の評価システムが次々と生まれました。一方、アメリカは1996年にLEEDという評価システムを発表して、これがいまや世界を席巻しつつあります。実は、北京オリンピックのための評価システムも、当初はこのLEEDをベースにしていました。
 こうした動きに比べると、日本のCASBEE開発は、2001年とかなり出だしが遅れました。しかし、今やCASBEEはLEEDと並ぶ2大評価システムと言われるまでに成長しています。その一つの表れが、ISO規格への採用の動きです。
 今、CASBEEはISO/TS21931、つまりISOのTechnical Specification(技術仕様)の仕様書として2006年3月から採用されています。さらに、正式なISO21931番規格に持ち上げる作業が、東京大学の野城智也教授をまとめ役として進められており、あと1年か2年のうちに発効される見込みです。
国・自治体でも導入が相次ぐ
 一方、日本国内でも、CASBEE関連の施策が相次いでいます。
 政府関係では2004年、「国土交通省環境行動計画」の中でCASBEEの開発・普及などが明記されました。同省官庁営繕部の「営繕グリーンプログラム」、内閣官房都市再生本部によるビル群(街区)の総合環境性能評価手法の開発決定、なども同じ動きです。さらに、「京都議定書目標達成計画」の中にも、CASBEEの開発・普及が位置づけられています。
 次に、自治体で初めて建築行政に活用された例が名古屋市の「建築物環境配慮制度」(2004年4月1日)。同市では、2003年3月に定めた名古屋市環境保全条例に基づいて、延床面積2000m2を超える建物を新築・増改築する建築主を対象に、CASBEE評価が入った事前計画書及び竣工時の完了届の提出を義務付けました。その際、届け出があった建物の情報をウェブ上で全面公開したほか、評価Sランク以上の建物に対する総合設計制度の容積率緩和というインセンティブも用意しています。
 ためしに、2004年4月1日から2006年1月までのデータ三百数十件をチェックしてみると、圧倒的多数がB+あるいはB−ランクですが、Aランクの建物も20数件あり、うち1件はほとんどSランクに近いスコアを出しています。一方で、5件の建物にはCランクの評価が出ている。このチャートには、1件1件の建築主や設計者、施工者、CASBEEスコアまで詳細に開示されていますから、がんばっている人は誇りを持ち、がんばりの足りない人は、次回に向けて発奮してくれるのではないか、と期待しています。
 続いて2004年10月1日には、大阪市が同様の指導要綱をスタートさせました。こちらは5000m2を超える建物を対象とし、B+ランク以上で総合設計制度の適用を許可しています。その後、横浜市、京都市、大阪府と続き、京都府、神戸市、川崎市、兵庫県が同様の制度を採用したほか、福岡市、北九州市、札幌市、仙台市、静岡県でも導入を検討中です。これから一気に全国の自治体で広まってくると思います。
 自治体の導入事例では、さまざまなインセンティブを設定しているところが少なくありません。たとえば、大阪市の優良環境住宅整備事業では、BEE値が高いほど補助金の採択順位が上がっていく。また、川崎市では、分譲マンションの広告にCASBEEの結果表示を義務付けていますが、この結果に連動して一部の民間金融機関が住宅ローン利率を優遇しています。環境効率の高いマンションはどうしても割高になりがちですが、ローン金利を優遇すれば、デベロッパーの励みにもなり、消費者も安心して購入できる。そういう効果を狙っています。
 民間企業にもCASBEEは浸透してきました。三菱地所は横浜市の超高層マンション(みなとみらい「MMタワー」)を分譲した際、民間では初めて第三者によるCASBEE認証を取りました。また、静岡銀行では、事業者向けの「エコサポート・ビジネスローン」で、第三者によるCASBEE認証建物に対する金利優遇を行っています。さらに、日産自動車の横浜新本社や、参議院の議員宿舎の設計コンペにもCASBEEが登場します。
 最後に戸建住宅のCASBEEですが、基本的なところは今までお話ししたものと同じです。ただ、戸建住宅の場合、既存の住宅性能表示、あるいは国交省の施策である環境共生住宅認定制度との対応関係が問題になってきます。これについては、住宅性能表示とCASBEEの評価項目の一部が整合性をもって重なっていること。CASBEEで一定以上のスコアをとり、かつ高度でユニークな提案があるものを環境共生住宅として認めていく方向になっていること、の2点を指摘するだけにとどめておきます。その他詳しいことは、CASBEEのウェブサイト(http://www.ibec.or.jp/CASBEE/)をご覧ください。
 以上、最後は駆け足になってしまいましたが、以上で私の講演を終わります。(拍手)

「大阪府 建築物の環境配慮制度および建築事例について」
 大阪府住宅まちづくり部 建築指導室 主査
 濱田 大洋氏

資料はこちら(PDFデータ)

平成18年から制度がスタート
 大阪府では平成18年4月から、「大阪府温暖化の防止等に関する条例」に基づいてCASBEEを活用した「大阪府 建築物の環境配慮制度」をスタートしました。
 取り組みの背景には、京都議定書の発効と、とりわけ大阪府域の温暖化の進行があります。たとえば、大阪府の平均気温はこの100年間で全国平均の約2倍、2.1度も上がりました。また、真夏日や熱帯夜も、東京や名古屋など他の大都市に比べて多くなっています。そこで、府域のCO2排出量の約40%、ヒートアイランドの原因となる熱負荷量の約45%から50%を占める建築物やその敷地を何とかしようというのが、制度の一つの狙いです。ただし、環境負荷の軽減だけが目的ではなく、良好な社会資本としての建築を促し、サスティナブルな社会構築を目指している点はご留意ください。
 制度のあらましですが、まず知事が定めた建築物環境配慮指針の中で、すべての建築主に対する環境配慮の努力義務を規定しています。これは、CASBEEで評価する6つの大項目に合致する事項です。その上で、延べ面積5000m2を越える新築・増改築については、工事着手21日前までに、規定の方法で環境配慮の評価を行い、それを添付して届出をしていただくことが義務付けられています。また、届出内容は府が公表公開することとしています。さらに、すぐれた取組を顕彰するために、「大阪サステナブル建築賞」という名前で、完成した建物を対象とする表彰制度を設ける予定です。
 評価方法については、「大阪府建築物環境配慮評価システム」によることになっています。このシステムでは、「CASBEE−新築(簡易版)」に加え、「大阪府の重点評価」を併用していますが、これは他の府県や市の評価方法と若干異なる点です。なお、制度の詳細や評価システム及び届出内容の公表は、大阪府建築指導室のウェブサイトに掲載しておりますので、ご覧ください。(http://www.pref.osaka.jp/kenshi/kakunin/setubi/casbee/)
6つの重点評価項目とは
 次に、大阪府の重点評価項目ですが、「1、省エネ対策」「2、緑化」「3、建築物表面及び敷地の高温化抑制」の3つについて、合計6つの中項目を評価します。条例が温暖化防止とヒートアイランド対策を重視していることもあり、CASBEEとはまた評価基準が違っています。
 まず、「1、省エネ対策」の中の「設備システムの効率化」は、省エネ法で計算するCECの値を総合化したERR値で見ます。ERR値が20%以上なら評価されます。「エネルギー消費の実態把握」では、運用時のエネルギー消費量の低減を重視する視点から、竣工後の3年間、エネルギー消費の実績報告をする建物を評価します。
 「2、緑化」ですが、まず「緑地の確保」。これは「自然環境保全条例」で規定している緑地面積を基準に、実際の緑地面積が120%以上あれば評価する。それから「ボリュームある緑化」では、芝や低木を除いた中高木による緑化が50%以上あるかを見ています。
 最後の「3、建築物表面及び敷地の高温化抑制」は、「CASBEE-HI」ツールの一部をそのまま引用しています。まず、「日射反射率、長波放射率の高い建物外皮材料の選定等」では、建物の外壁・屋根にこれらの材料が30%以上使われているか。また、「保水性や透水性、日射反射率、長波放射率の高い敷地被覆材の選定等」では、空地において高温化抑制に配慮した材料が50%以上使われているか、を評価します。
 これらの評価は☆で行いますが、地域と建物用途によって一律ではありません。具体的には、大阪府ヒートアイランド対策推進計画で定められた「ヒートアイランド対策優先対策地域」(大阪市を中心とする26市町)とそれ以外の地域を分け、それぞれ「住宅」「工場」「住宅工場以外」という建物用途を区別し、6種類の地域・用途区分を設けています。その結果、満点となる☆の数も6個から2個まで変わります。たとえば、優先対策地域の一般建築物なら6項目すべて、工場なら5項目、住宅なら4項目という具合です。
平成18年度の取り組み実例から
 ここで、昨年の4月から12月末までの状況をポイントだけご説明すると、まず、届出件数は現在、大阪府で58件、大阪市で72件の計130件。集合住宅が56%、事務所が15%ほどを占めています。
 CASBEEのランキングですが、Aランクが25%、B+ランクが大半の58%。Sランクも5%ほどあります。SランクやAランクの高いものはほとんどが事務所です。一方、B−ランクは、工場や物流倉庫などです。なお、Cランクは目下ありません。また、規模別で見ると、大きい建物ほどレベルの高いものが多い傾向があります。
 次に、大阪府への届出分58件について重点評価を見ると、「設備システムの効率化」で評価されたものは77%。これは省エネ法の関係もあるのでしょう。一方、「エネルギー消費の実態把握」で☆のあるものは約2割です。また、「緑化」については「緑地の確保」「ボリュームある緑化」とも、高い割合です。マンションでも緑化は販売につながりますし、「自然環境保全条例」なども効いているかもしれません。一方、「ヒートアイランド対策」では、「日射反射率、長波放射率の高い建物外皮材料の選定等」の☆が約60%に対して、「保水性や透水性、日射反射率、長波放射率の高い敷地被覆材の選定等」の☆はやや少ない。駐車場などの舗装に関する取り組みがまだ十分ではないようです。
建築実例──大阪府立大学新学舎
 次に、建築事例について「建築物の環境配慮技術手引き」からご紹介します。この手引きは技術的な参考に使えるものとして、「建築」「外構・緑化」「設備」「管理運用」の各分野で計48項目の技術要素を掲載しました。たとえば「自然換気・通風」については、どんな建物にこのシステムが使われているかという「用途」。各種の自然換気・通風方式について記した「概要」。機能性、環境性、経済性などの「効果」。CASBEEとの「対応項目」。「設計上のガイダンス」は、事項によって施工時や維持管理上の留意点も載せています。最後に、具体的な「事例」として、ここでは関電ビルディングを取り上げています。
 さらに、「手引き」には、実際に建っている建物をCASBEE評価した24事例も掲載しました。今日はその中から、大阪府立大学の物質系新学舎を紹介します。
 この建物は、延べ面積約3030m2、RCの地上6階建てです。設計環境配慮の特記事項としては、当初から「サスティナブルな学舎」を目指している点があります。将来の実験内容などの進歩にも十分対応できるように設計されているということです。
 環境配慮の工夫ですが、断面構成で見ると中央にライトコート(中庭)を取って、自然換気・通風・採光に配慮しています。さらに、通風効果を高める床下ピット。日射遮蔽と設備メンテナンスを考えたバルコニー。メンテナンス・更新時に建物躯体をまったく触らずにすむオープンシャフトなどがあります。ゾーニングも非常にシンプルです。
 さらに、東西外壁面の開口部抑制。南北面のバルコニー。最上階庇の太陽光電池。光触媒コーティング。中庭や階段室のドラフトによる自然換気。リサイクル材や自然系素材の使用などがあります。CEC値も基準値よりずっと低く、省エネ効果も高めています。
 こうした環境負荷の少ない建物になっている背景としては、基本構想の段階でしっかりしたコンセプトを決めておいたことがあると思われます。また、実施設計段階で周囲の既存樹木を調査し、保存活用している点も特色です。
CASBEEランクはAの中
 さて、この新学舎のCASBEEの評価結果ですが、BEE値が2.2。Aランクの中あたりです。バーチャートで見ると、平均レベルを特に超えているのがQ-1の「光・視環境」「空気質環境」、Q-3の「生物環境の保全と創出」。LR-1では「建物の熱負荷」「設備システムの効率化」が4.0で高いです。それから、LR-3では「光害」が5.0、「風害・日照阻害」「ヒートアイランド化」が4.0となっています。レーダーチャートもまずまずのバランスですが、「Q-3敷地内室外環境」はややレベルが高くなっています。
 次に大阪府の重点評価ですが、この建物は6つの重点項目すべてが評価対象です。各項目別に見ますと、「設備システムの効率化」だけがERR値19で☆なし。あとは、「エネルギー消費の実態把握」「緑地の確保」「ボリュームある緑化」「日射反射率、長波放射率の高い建物外皮材料の選定等」「保水性や透水性、日射反射率、長波放射率の高い敷地被覆材の選定等」もすべて☆の対象です。結果、満点6つのところ、5つの☆となりました。
 最後に2、3補足をしますと…まず、先ほど伊香賀先生からご報告のあったインセンティブです。大阪府の場合は共同住宅の届出が非常に多いのですが、事業主から見ると完成後に表彰されてもあまりメリットがない。川崎市のように、分譲時に環境レベルがPRできないかということで今、協議を続けています。それから、近畿では大阪府以外にも、京都府、京都市、大阪市、兵庫県、神戸市がCASBEEに取り組んでいます。住宅金融公庫を中心とした近畿の連絡会議ではウェブサイトの相互リンクなど、共同でCASBEEを知っていただく取り組みを検討しているところです。(拍手)
■関連ホームページなど■

●CASBEEについては…
CASBEE 公式ウェブサイト
http://www.ibec.or.jp/CASBEE/cas_brief.htm
最新ニュースの他、CASBEEの概要、コンセプト、評価結果などを掲載。「CASBEE-簡易版」「CASBEE-すまい(試行版)」のダウンロードも可。

●大阪府 建築物の環境配慮制度については…
1.大阪府建築指導室
http://www.pref.osaka.jp/kenshi/kakunin/setubi/casbee/index.html
制度の基本的考え方や概要、届出手続きなどを掲載。「大阪府建築物環境配慮評価システム」「大阪府建築物環境配慮評価システムマニュアル」のダウンロードも可。

2.大阪府建築都市部公共建築室
http://www.pref.osaka.jp/koken/keikaku/kankyo/index.html
「建築物の環境配慮技術手引き」のダウンロードが可能。

※実費頒布希望の場合は、大阪府府政情報センター(06-6944-3080)または社団法人大阪建築士事務所協会(大阪建築会館図書販売センター06-6942-0887)まで。

 

 

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