2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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建材情報交流会ニュース
  第15回「建材情報交流会」”安全・安心PART-W”−建築防災を考える−

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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「防災雑話」
 (財)大阪建築防災センター 評定委員
 荒井 清 氏
資料はこちら(PDFデータ)
防災は‘常に備えること’が重要
本日はこれまで防災に携わってきた私の経験を雑話として紹介し、その中で皆さんのお仕事へのヒントがあれば幸いに思います。
防災といっても、意味するものは多岐にわたります。
まず消防とは、火消しのことではありません。消防法の第一条には消防とは国民の生命と身体及び財産を火災から保護するものであると記されています。また、災害とは、異常な自然現象や人為的原因によって人間の社会生活や人命が受ける被害であると辞書に載っているように、地震や台風はもちろん、津波や土砂崩れ、事故や殺傷事件も災害の範疇に入るのではないかと思います。
防災とは煎じ詰めれば人間の社会生活や人命を守ることです。しかし敗戦後60年間、日本人は戦争を知らなかった。安定した平和な生活ができることはすばらしいことですが、いささか平和ボケしてはいないでしょうか。これは大きな問題です。外国で日本人旅行者を見ていてもいかに自己防衛観念が低いかがよく分かります。自分の身を守るのも防災です。
防災で最も大事なことは‘常に備えること’です。「ガキ大将有用論」なんていうことを言っていた友人がいました。昔は近所にガキ大将が必ずいて、多くの子はいじめられないよういつも気をつけて、帰り道などガキ大将がいそうなところは避けて歩くなどしていました。それが大事なんだと。危険を事前に察知して自分の身は自分で守るということなんですね。
以前住んでいたまちでボランティアをやっていたとき、近所の奥さんたちから「あそこのため池は子どもに危険だからネットフェンスを張るよう市役所に言ってくれないか」というようなことをよく言われました。私は「ため池にネットフェンスを張る前に、はまっても這い上がって来る方法を子どもに教えなさい」と奥さんたちに言いました。随分もめたものですが、私自身は物事の考え方としてそこがとても大事だと思っています。
地震で恐ろしいのは都市災害
皆さん自身の備えはいかがでしょうか。阪神・淡路大震災が起こってしばらくはいろんな備えをしたのではと思いますが、時間とともに防災意識は薄れているのではないでしょうか。地球そのものが活動期に入っていますから、東南海地震がいつ起こってもおかしくない状況といわれています。真剣に備えることが必要なのです。
防災で気になるのは都市災害です。東京や大阪で直下型地震が起こったらと思うと恐ろしい限りです。ビル街では割れた窓ガラスの雨が降ることがありますから、注意が必要です。地震の被害だけでなく、津波による浸水もあります。大阪の街に津波が来たら地下街なども完全に水没してしまうでしょう。
また地震の大きさは、震度だけではなく揺れの長さも重要です。断層が3kmずれると1秒揺れます。東南海や南海地震では断層部分が150?180kmになりますから、震度自体がそんなに大きくなくとも揺れる時間が長くなることによって家屋の倒壊が出ます。
大阪の中心部は構造的にしっかりした建物が多いですが、危険なのは中心部の周辺です。昭和56年以前、つまり旧耐震基準の住宅がまだたくさんあり、倒壊の恐れがあるうえに木造住宅も多いので火災で交通が遮断され、都心難民が出ることになります。約650万人の都心難民が出ると予想されている東京では、火災に弱い場所、倒壊しやすい場所などを地図上に細かく色分けした「危険度マップ」をつくって都心で災害が起こったときの安全な帰宅順路や避難場所が分かるようにして災害時に備えています。大阪でも100万〜150万人が取り残されるといわれていますから、こういうものが必要でしょう。
私は以前設備の仕事についていました。その経験からいうと、設備機器は屋上に設置することが多いですが、架台は単に機器が載ればよいものではありません。阪神・淡路大震災では屋上の設備機器の多くが揺れで倒れてしまいました。機器の架台の大きさ、位置は揺れたときのことを考えて慎重に決め、また地震の水平力に耐える固定が必要です。
阪神・淡路大震災のあと、私の所属している協会でつぶれた建物に関する被害調査を行ないました。施工された皆さんにしたらもちろん壊れた原因を調査するのが大事なのでしょうが、本当は、壊れた設備よりも壊れなかったものを見てその理由を調べるべきだという考えを私は持っています。
耐震を身近なものとして考えてみる
日本の災害は昔から火災を第一と考えてきたのではないかと思います。どんな建材に関しても火災には、消すというよりも火を出さない、火がついても燃え上がらないことが重要だと思います。木材は燃えて当然と思われがちですが、最近では木製でも防火認定を受けているものがあります。これからも皆さまの研究開発によって、さまざまな燃えない建材が出てくることを期待します。
国交省がさかんにいう割には木造住宅の耐震改修が進んでいないのは気になるところです。全住宅の約3分の1が耐震性能に問題があるといわれています。地震が来たら必ずつぶれるといった話ではありませんが、厳密にチェックせねばなりません。しかし耐震診断といってもそうそう簡単にできません。やはり素人の方でもわかりやすいようなチェックの方法、体制などを国交省あたりが整えるのが望ましいと考えます。
耐震チェックには対象とする地域の地盤について知るのが重要なので、内閣府作成の全国揺れマップや「ジオダス」が出している軟弱地盤マップ、(独)防災科学技術研究所の地形分類データ、明治18年の陸地測量部作成の近畿近傍図などが手に入ればかなり様子がわかると思います。
私の家をチェックしてみたところ、倒壊のおそれがあるということになりましたので、屋根瓦を全部軽いものに変えました。坪あたり約56枚、約160kgの荷重が屋根に載っていたわけですから相当なものでした。耐震対策として、手っ取り早く効果があるのは屋根を軽くすることです。続いて2階にある重い家具や本を下ろしました。紙はとても重いのです。そして家具や什器の転倒防止対策も考える。その後で、軸組の金物補強や壁の補強、追加を考えることにしました。
インターネット上で、自分の家のデータを入れていくと素人でも簡単に耐震チェックができる面白いソフトがありますので、ぜひ試してみることをおすすめします(ホームズ君「耐震診断Pro」 http://www.integral.co.jp)。

「鉄骨の意匠を生かす耐火塗料の可能性」
 エスケー化研(株)
 営業開発グループ アシンタントマネージャー 藤原 武士 氏
資料はこちら(PDFデータ)
耐火性能に優れ、意匠も生かす耐火塗料
鉄骨を覆うことによって火災時の建築物の温度上昇を防ぐ耐火被覆材には、吹付け系や成型系(巻付けやシート)などさまざまなタイプがあります。
平成12年の建築基準法により、耐火被覆材の厚みの減少や耐火塗料の認可、耐火被覆の軽減など耐火被覆材の動向も変わりました。また認定番号も変更になり、旧法のときよりも分かりやすくなっています。認定番号の末尾は製品の連番ですが、旧法で認定をとった材料の番号は新法で読み替えられて頭に9をつけた新しい番号になっていますので、新法の番号でも既存の材料か新しく認定をとった材料かわかるようになっています。
新しい耐火被覆材としては、最近、耐火塗料の実績が非常に増えてきました。本日は当社の「SKタイカコート」を紹介します。立体駐車場などでよくグレーの吹き付けロックウールが使われていますが、被覆材を施すと、材料の厚みのため見た目にあまり美しくないという問題がありました。SKタイカコートは発泡型の塗料で、火災時に熱を受けると発泡し、20〜30倍に膨張して断熱層をつくるもので、被覆厚が非常に薄いので施工しても鉄骨の意匠をそのまま活かすことができます。数mmの塗膜で1時間耐火性能を発揮(載荷加熱試験)し、火災での鉄骨倒壊を防ぎます。旧建築基準法の耐火試験の判定基準は平均鋼材温度が350℃以下であったため、250℃で発泡を開始する耐火塗料の認可は困難でしたが、現行法の載荷加熱試験は長期許容荷重をかけながら加熱し、鋼材が倒壊(500〜600℃程度)しないことというのが判定基準であるため、耐火塗料が認可されております。また最近、2時間耐火の認定も取得することができ、用途も広がっています。耐火塗料の被覆厚につきましては、鋼材サイズにより異なりますので、パンフレットをご覧下さい。
外から見える柱・梁の被覆に大活躍
施工実績は平成13、14年頃から爆発的に増えてきました。渡り廊下の梁、学校施設の丸柱、ショールームの柱…鉄骨がむき出しになるような部分では耐火塗料がよく使われます。ショッピングモールの丸柱のような外部のものには、通常被覆材は水に弱いので金属パネルで囲って表面処理をしていましたが、この耐火コートは耐久性の高い上塗り材の塗布によって外部への適用も可能です。
一方、耐火塗料をシート化した「SKタイカシート」も開発しております。このシートも薄い膜厚で済むため、見た目では被覆しているかどうか分からないので鉄骨の意匠を活かすことができます。また、鉄骨に貼り付けるだけの養生等が不要なタイプであるため、新築だけでなく、改修市場でも引合いが増えております。

「新しい耐力面材による耐震補強について」
 大建工業(株) FBダイライト事業部
 事業企画室 開発担当部長  中山 実 氏
昭和56年を境に強化された耐震基準
 今年度まで国の住宅政策は量を基軸とした目標設定による施策でしたが、来年度からは既存建物の質の向上がテーマです。国土交通省が来年度の重点施策として掲げている7項目のうちのひとつが災害対策です。国をあげて耐震に取り組もうという流れになっています。耐震への社会的関心も相当高まっています。
近年、地震が起こりにくいといわれていた地域での地震発生も目立ちます。4枚のプレートがひしめきあっている日本列島は地震が多く、この1年間で約2万5,000回の地震が確認されています。もはや日本ではいつ、どこで大地震がおこっても不思議でない状況ですから、それだけの備えをしなければならないわけです。
阪神・淡路大震災では、住宅の倒壊が人命を奪った最大の要因でした。特に昭和56年以前の在来工法住宅(旧耐震基準)の倒壊率が高かったのです。木造住宅は、建築基準法施行令が改正された昭和56年を境に耐震基準が大幅に強化されました。面材耐力壁の追加や壁量の増加が必要となり、新耐震基準の住宅はかなり厳しい基準で建てられるようになりました。
この時期から認められた耐力面材は、現在新築木造住宅の多くで採用され、需要は右肩上がりで推移しています。木ずりや筋かいに代わってこれからも需要増加すると予測されています。昨年着工の木造住宅では筋かいを使ったものが6割、耐力面材が4割でしたが、2010年には耐力面材市場が7割になると予測されています。
阪神・淡路大震災を経験して平成12年には建築基準法が改正され、耐震基準はさら強化されました。
昭和56年以前の旧耐震基準の住宅は平成15年現在で約1,047万戸、うち8割が耐震性に不安があるとされています。また新耐震基準で平成12年以前のものは約1,378万戸、これらは家の状況に応じて耐震改修か新築建て替え。12年以降の住宅は、新潟中越地震や福岡沖地震などでその耐震性が実証され、基準・ルールに則ってつくられた住宅ならば問題はないと考えられています。
12年以前の建物は大阪では約300万戸あり、75%が耐震上不安があるとされています。それだけの危険性がいわれながら、なかなか耐震化が進んでいないのが実情です。耐震改修にはコストがかかるし、自分の住む地域に地震は来ないだろうと思っていたり、改修のきっかけがなかったり、改修しても効果がないのではないかと思われたりなどの理由からです。
信頼できる業者が、安心・安全で公的に認められた性能で手頃な価格の耐震改修を提供することが必要です。
今回ご紹介するものは、既存住宅の天井と床の間の壁面(内壁下地材)に設置する耐震キットで、耐震診断をして補強が必要な箇所に配置します。壁倍率は国土交通省認定の2.3倍で、大規模な工事をすることなく住宅の耐震性を向上できます。壁面だけの工事ですからコスト、工期ともに大幅低減ができます。

「建築物における防火ドアの役割」
 ナブテスコ(株) ナブコカンパニー
 技術部 四國 康則 氏
資料はこちら(PDFデータ)
火災の延焼を食い止める防火扉
建築物には必ず人や物の通る開口部が必要であり、開口部の火災を防いで延焼を食い止め、避難経路を確保するのが防火ドアです。
防火ドアが必要な防火区画は、同一階での平面的な延焼を防ぐ面積区画、垂直方向の延焼を防止する竪穴区画、著しく用途が異なる??例えば事務所と劇場が隣り合っている、銭湯をやっていて自宅は隣にある、など??異種用途区画があります。外壁の開口部で延焼のおそれのある部分にも必要です。
防火ドアが機能しなかった火災事例として、死者44人の大惨事になった平成13年の歌舞伎町雑居ビル火災がみなさんの記憶にあると思います。防火扉があったにも拘わらず開きっぱなしになっており、炎と煙が階段から広がってしまったものです。
防火性能を備えた自動ドア
建築基準法の大きな分類に「防火設備」があり、そのなかで「特定防火設備」(1時間耐火)と「防火設備」(20分間耐火)に分類されています。前者はおもに防火区画で使われ、後者はおもに外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に使われます。また、それぞれの設備について仕様が規定されています。構造規定以外の材料は国土交通大臣の認定が必要です。
大臣認定までの流れは、「製品仕様の検討」→「耐火試験」→「性能評価」→「性能評価書」の発行→「国土交通大臣認定申請」→「国土交通大臣認定書取得」です。
製品仕様というのは、種類なら開き戸、引き戸、はめ殺し、形状なら框構造なのかフラッシュ構造なのか、などです。われわれメーカーとしては1回の試験でいろいろな種類の認定を取りたいので、ドアのバリエーションも含めて申請内容を検討します。耐火試験は試験体を加熱し、非加熱面への火炎の噴出や発炎がなく、亀裂や隙間が生じないことなどが判定基準になります。試験から性能評価書発行まではしかるべき試験機関で行ないます。ここで発行された性能評価書をもってはじめて申請することができ、大臣認定を取得して認定書や認定番号をもらい、晴れて商品を世に送り出すことができます。
防火戸に関する当社の取り組みを紹介します。耐熱ガラス入りの自動ドアは、防火性能を持ち合わせながら、防火扉の雰囲気を全く感じさせない自動ドアになっています。また、扉がスイングする開き戸機能がついている引き戸もあります。設置事例ではオフィスビル、店舗ビル、駅のコンビニ、病院など、様々な場所で当社の耐熱ガラス入り自動防火ドアが使われています。防火扉に見えないような洗練されたデザインも可能になり、これからも用途が広がると思います。
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