2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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建材情報交流会ニュース
  第13回「建材情報交流会」”省エネルギー PART-U”

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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「省エネルギー住宅の今後」
 積水ハウス(株) 開発部 内装開発室
 設備システム グループリーダー 課長 谷 俊男 氏
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エネルギーの“限り”が見えてきている
IEA(国際エネルギー機関)は今後も発展途上国を中心にエネルギー需要が大幅に伸びると予測しています。
化石燃料には限りがあります。なかなか無くならないじゃないかと思われるかも知れませんが、今いよいよ“限り”が見えて、それが意識されつつあります。
地球温暖化ガスは全地球的に増加し続けています。産業革命前と比較すると、CO2は2002年平均で33%、メタンに至っては155%の増加率です。日本の平均気温も100年で1℃ほど着実に上昇しており、特に90年代以降高温の年が頻出しました。このことから、温暖化が顕在化してきたと言われています。
日本は90年比でCO2を6%削減することが京都議定書で決まったにもかかわらず、01年の時点では減るどころか8.6%増でした。多く排出したぶんを権利として他国から買い取るなどしなければならず、財政に大きな影響を与えるので真剣に取り組まねばなりません。特に伸びの大きい家庭用エネルギーの削減が求められます。今の利便性は手放さず、さらに豊かさの向上を望めば将来環境破壊という痛い目にあうことは確実です。
最も良いのは環境に適合しつつ、豊かさも向上することです。それを実現する提案が今求められています。われわれも持続可能な社会のために住宅に何ができるかを考えています。
居住時は冷暖房、給湯、電気機器の省エネを
住宅を30年間のライフサイクルで見たとき、住宅エネルギーの消費構成は7割が居住時、3割が建築や解体時などですから、居住時の省エネを図るのが効果的です。そして居住時の省エネは住まい手とメーカーが一緒になって進めるべきです。居住時のエネルギー消費は、冷暖房、給湯、照明・電気機器がほぼ3分の1ずつです。従って建物の高断熱化と設備機器の高効率化という、コストメリットの高いバランスの良い省エネの仕方を考えます。
高断熱化は2度の省エネ法改正で、ある程度の進展を見せています。またエアコンをはじめとして冷暖房機器の高効率化が10年前から急速に進んでいます。今重要なのは、新築住宅での次世代省エネ+高効率冷暖房機器の推進、ストック住宅での断熱リフォームです。また、吹き抜けなど大開口・大空間の設計が増えているので、省エネにはさらなる高断熱化と上下温度差が出ない輻射暖房(ヒーターからの放射熱を床や壁に伝えて表面温度を上げ、室内をむらなく暖める暖房方法)の提案が必要です。
給湯エネルギー低減のための対策はあまり十分ではなかったうえに、浴室の多機能化によって給湯負荷は増大しています。国は高効率給湯器の普及に力をいれ、各種の補助事業を行なっています。最近注目されているのが潜熱回収型給湯器「エコジョーズ」という排ガスからも熱回収するもので、従来80%の熱効率を95%に向上させました。ガスエンジンで発電する「エコウィル」(ガスエンジン・コージェネレーションシステム)は単なる給湯器ではなく、給湯と発電を同時に行ないます。ヒートポンプ給湯器「エコキュート」は電気温水器の約3分の1の電気で高効率貯湯します。これらのシステムを使うことによって省エネに貢献できます。
照明・電気機器エネルギーは、各種の機器が高効率化するなかで、消費エネルギーが増えている機器も多いのが実情です。原因はテレビの大画面化、パソコンの高性能化、24時間換気システムの設置義務化、防犯機器の普及などが考えられます。これらの機器の省エネ化、また太陽光発電システムの普及推進がこれから急務になるでしょう。
居住時と建築時の省エネをバランスよく
住宅ライフサイクルで見たとき3割を占める建築時・解体時のエネルギーは、居住時の省エネが進めば進むほどその比重を増します。今後、グリーン設計・グリーン購入(省資源化・生産エネルギー低減・省施工・高耐久・3R[リデュース・リユース・リサイクル])が進み、建築時・解体時のエネルギーも低減化が進みます。また、一次エネルギーとしての石油供給抑制により将来的に石油関連製品の供給が困難となる可能性が出てくるため、再生可能材料への移行が進展していくことになります。
建築時、居住時、解体時の消費エネルギーをバランス良く低減するのがこれからの省エネ住宅と言えるでしょう。

「リサイクルエコ断熱」
 エスケー化研(株) 営業本部
 営業開発グループ アシンタントマネージャー 藤原 武士 氏
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オゾン層の保護と地球温暖化の抑制
建築仕上塗材をおもに扱っている弊社では、耐火被覆材を開発して約20年になります。4年前、湿式の耐火被覆材の技術を応用してリサイクルエコ断熱材を開発しました。
環境問題はさまざまですが、なかでもオゾン層破壊問題、地球温暖化問題は建築材料と深く関わりがあります。
オゾン層を破壊するフロンは1928年に開発されました。熱伝導率が小さく油を溶かし、不燃性で人体に無害であることから断熱材の発泡剤、エアコンの冷媒、洗浄剤に爆発的に使われるようになりました。しかし74年、フロンがオゾン層を破壊することが分かり、85年には実際にオゾンホールが南極で発見されました。もちろん今ではフロンは国際的に規制されています。日本でも88年に「オゾン層保護法」が制定されてフロンの生産・輸出入が制限され、代替フロンへの転換が始まっています。
一方、温室効果ガスの増加による地球温暖化は、このままいくと2100年には地球平均温度が1.4?5.8℃、海面が9?88cmも上昇するのではないかと言われています。
97年に採択された京都議定書に基づいて温室効果ガスの排出抑制をするためには、省エネルギーの推進が急務となり、住宅の高気密・高断熱が必要になります。これによって汎用的な断熱材の需要が増加すれば、断熱材の発泡剤であるHFC(代替フロン)の排出が増えることになります。しかしCO2とHFCの温室効果係数は1:950。つまりHFCにはCO2の950倍の温室効果があるのです。このままでは温暖化対策になりませんから、今後の建物に使用する断熱材の完全ノンフロン化が推進されることになります。
断熱材のノンフロン化でCO2削減に貢献
住宅の断熱水準を旧基準から次世代基準へと向上させることで、冷暖房によるCO2排出量を大きく削減することができます。しかし、断熱材の厚みを増やすことによって、断熱材から漏洩するHFCの総量も増加し、逆に温室効果ガスの排出量が増加する可能性が考えられます。そこで、断熱材は地球温暖化係数のより小さい発泡剤を用いたものへ転換することによって、温室効果ガスの排出が抑制できます。
また、01年に制定(05年4月改正)されたグリーン購入法は、官公庁が建てる建物、購入する資材、事務用品などあらゆるものに環境負荷の少ないものを使用するのが目的です。断熱材もその対象で、「オゾン層を破壊する物質が使用されていないこと」「代替フロンを使用していないこと」「再生資源を使用しているか又は使用後に再生資源として使用できること」という条件が求められています。
商品開発は環境と安全をキーワードに
断熱材の中で、約50%のシェアを占める材料はグラスウールですが、次に、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォームはそれぞれ約13%のシェアを占めます。両者の断熱材は発泡剤にフロンを使用していますので、これらをノンフロン化できれば大幅な温室効果ガスの削減が見込めます。
弊社が4年前に開発したノンフロン湿式断熱材「セラミライトエコシリーズ」は、環境と安全をキーワードに、燃えにくく(国交省防火認定取得)ノンフロン・ノンVOCでリサイクル材料(再生発泡スチロール)を用いた断熱材です。もちろんグリーン購入法の特定調達品目に適合しています。このため、04年の12月に第1回エコプロダクツ大賞で国土交通大臣賞を受賞しました。
セラミライトエコは準不燃材料(認定番号:QM-0306)でありながら、熱伝導率が0.035(W/(m・k))と断熱性能が高い製品です。また、硬化後は多孔質であるため、吸音性能も優れており、グラスウール(32K)と同等の性能を有しています。一方、セラミライトエコGは不燃材料(認定番号:NM-0916)であり、材料強度が比較的高いため、GLボンドによるせっこうボード直張り工法が可能な断熱材です。なお、本製品の熱伝導率は0.044(W/(m・k))です。
環境問題への意識がとても高い自治体などで本製品を指定して頂き、学校施設に採用されています。また、防火材料の認定を取得しているので、内装制限の係る部位への適用が増加し数多くの実績があると同時に、今後に期待が高まります。

「硬質ウレタン断熱材の高性能住宅への展開」
 東洋ゴム工業(株) 化工品技術部
 断熱ソリューショングループ 課長 世木 康裕 氏
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ウレタンは環境負荷の低いエコ建材
 硬質ウレタンとは、イソシアネートとポリオールという成分が反応してできる発泡体で、断熱性、防水性、耐熱性、耐薬品性に優れています。
硬質ウレタンフォームは、全生産量(年間10万トン)の4割弱が土木・建築の分野で使われます。また、硬質ウレタンの全生産量の約32%が弊社の製品です。
そもそも断熱性がとても高いということで環境に貢献しているエコロジー建材と言えます。硬質ウレタンの環境負荷について次のような質問・疑問をよく受けます。@VOCの問題、A可燃性、Bフロン問題、Cリサイクル。
硬質ウレタンフォームは、ホルムアルデヒド発散建築材料に該当しないので使用面積の制限を受けることなく、安心して使えます。実際、弊社の製品「ソフランボード」のVOC数値を第三者機関で測定したところ、十分にF☆☆☆☆を名乗れる結果でした。
Aの可燃性について。確かにウレタンは高分子材料なので可燃性の建材になり、燃えるのではとよく聞かれますが、つねに火災には配慮しています。世の中に出ているウレタンは全てJIS基準を満たしたもの(自己消火性を持つ)です。もちろんそれだけでは不十分なので、メーカー各社でしのぎを削って、より燃えにくいウレタンをつくろうと努力しており、難燃化技術はかなり進んでいます。住宅壁では構造として各種防火認定を取得しています。
フロンについても、わが国では2003年末をもってオゾン層破壊物質を含む製品は全廃しました。HFC(代替フロン)はオゾン層を破壊しませんが地球温暖化係数が高いので、完全ノンフロン化の動きが活発です。
Cのリサイクルについて、ウレタンのリサイクル技術には代表的なものが3つあります。樹脂の再利用をするマテリアルリサイクル、原料に戻すケミカルリサイクル、燃焼させて熱回収するサーマルリサイクルです。しかし、まだまだリサイクル率が低いのが現状ですから、今後業界では、まず工場で出てくるものを各社とも100%、そしてそのあと外に出ていったものをいかに回収してリサイクルするかが大きな課題になるでしょう。
硬質ウレタンボードで簡単に住宅断熱
一般に住宅の断熱にはいろいろな性能が要求されます。断熱性では低熱伝導率・低熱貫流率、防露性では室内側で非透湿性、屋外側で透湿防水性、また、施工信頼性、保守性、技能の非特殊性なども要求されます。しかし硬質ウレタンボードなら、文句なしの低熱伝導率、低い透湿性、外断熱工法に適したボード形状で、簡単に切れて自由自在に加工できます。ウレタンボードの表面材により断熱性能の劣化は小さく抑えられています。
ノンフロンで断熱性確保を実現
ウレタンの断熱性能の一般的考え方として、熱伝導率を決める4ファクターがあります。1つめはガス。気泡の中に閉じ込められたガスです。2つめは樹脂の部分、あとは気泡の輻射と対流による熱伝導率です。
これら4つの熱伝導ファクターの中でガスの部分の寄与率が約70%を占めます。まさにこのガスの部分に、オゾン層を破壊した張本人が元は居座って非常に優れた断熱性能を発揮していたものですから、発泡剤のノンフロン化が進むにつれてこの部分が最大の課題になりました。そこで気泡を細かくしたり、樹脂の部分でいかに高い断熱性を確保するかがポイントになりました。
このような考え方に基づいて、弊社では本来縦長の気泡を丸く小さくして断熱性を高めました。そして樹脂の透過性を抑えてガスを逃がさないような工夫をしました。JIS A 9511 2種3号に相当するソフランボード低熱伝導率品、同SP2(汎用品)から、要求断熱性能に応じて選択可能です。

「蓄電池併用太陽光発電システム」
 積水ハウス(株) 技術研究所 環境研究室
 エネルギー設備グループリーダー 主任 杉村 保人 氏
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省エネ・防災機能を兼ね備えた新しい住宅
弊社では、従来の太陽光発電システムに新しい魅力を与えるために、日常的にはエコロジーでエコノミー、かつ震災時には防災機能を発揮する「省エネ・防災住宅」を発売しました。「エコロジーでエコノミー」は建物の高断熱仕様と省エネ機器で実現し、防災機能は非常時だけでなく、日常でも省エネ性や利便性を発揮できることを考慮しました。
最近は建物自体が壊れることはほとんどなくなってきましたが、ライフラインの途絶などの理由で、震災後は避難所の生活を余儀なくされます。その避難所での生活が問題であり、高齢者や体の不自由な人に十分な配慮がなかったり、車で寝泊まりして体調を崩したりする例が多く見られました。そこで、震災後も自宅での生活が可能になることを考えたのが「省エネ・防災住宅」です。「省エネ・防災住宅」は、生活空間の確保、水・食料の確保、エネルギーの確保という3つの確保を重要なポイントとしています。生活空間の確保とは余震や火災に対する安全確保、家財管理、プライバシーの確保です。水・食料の確保とは飲料水や食品ストックのほか、トイレ洗浄水など生活用水の確保です。エネルギーの確保とは、照明の確保、携帯電話・パソコン・テレビ・ラジオの電源確保による情報源の確保です。このエネルギーの確保のために開発したのが本日のテーマである蓄電池併用太陽光発電システムです。
メンテナンスフリーの高性能蓄電池を採用
機器の構成を説明します。電力会社からの電気は通常の分電盤を経て、蓄電池につながったパワーコンディショナーへ入ります。ここから自立用分電盤という別の分電盤につながって、非常時使用可能な機器(照明や非常用コンセント)へと届きます。コンセントは、日常も非常時も使えるコンセントと、非常時は使えないコンセントに分けることによって非常時に使える機器を制限し、電力の消費を軽減しています。
蓄電池の総容量は8.96kWhです。通常は半分の4.48kWhで充放電し、残りの4.48kWhは非常時のために確保しています。日常と同じ生活はできませんが、非常時の最低限の電気は十分確保できる電力量です。蓄電池は現在最も普及している鉛式のものですが、電解液の補充などメンテナンスがほとんど不要の完全密閉型で耐久年数も約10年です。電力会社との契約上、太陽電池で発電した電力のみ逆潮流させ、蓄電した深夜電力は逆潮流しない制御機能をつけています。
非常時だけでなく日常生活でも付加価値
システムの概要を説明します。日常は安価な深夜電力を蓄電して昼間に使うことで電気代を軽減し、非常時は昼間に太陽光で発電した電力を蓄電して夜間に利用しようというものです。
日常時、家庭内の電力使用量より太陽光発電量のほうが多いときは、蓄電池を使わず太陽光発電で発電した電気を優先的に使い、余剰分を電力会社に売電します。逆に使用量より太陽光発電量が少ない場合は、太陽電池に加え、蓄電池の電気を使います。それでも足りないときは電力会社から買電します。  
夜間は安価な深夜電力を使いながら、蓄電池に充電します。日常の生活では日中に4.48kWhをほぼ使い切ってしまうため、年間2万から2万4,000円のコストメリットが生まれます。
非常時は、蓄電池総容量の8.96kWh全てを使って充放電を行います。日中、太陽光発電で発電した電気を蓄電し、夜間に放電することで1日中電気を使うことが可能です。
曇りや雨の日が続いても最低限の電力量は確保でき、非常時の継続的な生活は可能です。
従来の省エネルギー機器は、導入時のコストアップを何年で償却できるかという考え方が大きな影響力を持ち、普及が進みにくいという問題がありました。そこで、近年、住宅の要素としてニーズが高まっている防災という観点を加え、新しい魅力を付加すれば普及促進に寄与できると考えました。
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