2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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西宮神社(西宮えびす)

けんざい216号掲載


西宮造ともいわれる三連春日造の本殿

 

神戸や大阪の人には、「西宮のえべっさん」という方がおなじみでしょう。西宮神社は商売繁盛の福の神、えびす宮の総本社。毎年1月9〜11日の「十日えびす」では、福男選びの激烈な競争や大マグロの奉納、有馬温泉献湯式などが催され、100万人以上の人々が1年の福をいただきに参拝します。穏やかな冬陽が指す境内で、同神社の広報係 堀川利弘氏に、お話をうかがいました。

大関化学工業株式会社 太田かおる氏


えびす様・大黒様の大額の前で堀川(右)さんと

 

全国3500のえびす社の総本社

 神戸から国道43号を一路東へ。西宮市内に入って間もなく、こんもりした森を背にした鳥居が見えてきました。全国に約3500あるえびす宮の総本社、西宮神社に到着したのです。

 門をくぐると、中は想像以上の広さ。美しく掃き清められた敷地内に、立派な本殿や拝殿、社務所などが連なっています。広々とした池のある境内では、樹々のこずえが葉ずれの音を立てています。

 境内の一角に、鮮やかな朱塗りの門が見えました。毎年1月10日の朝6時、「開門神事福男選び」の起点となる表大門(赤門)です。福をいただけるのは、約2000人の参加者中、わずかに3人。この門前から約230mの曲がりくねった参道を疾走し、本殿で待ち構える神主さんに真っ先に抱きついた人だけです。あのデッドヒートの現場が、この美しい石畳の道なのだと思うと、不思議な気持ちがしました。

 澄んだ空気が満ちた境内は、国道沿いとは思えない静けさ。参拝の人々もゆったりとお祈りをしています。毎年1月の「十日えびす」の混雑と喧騒を見慣れた私には、思いがけない普段着の「えべっさん」でした。

室町時代から続く、「福の神」信仰
 お参りを済ませた後、社務所で堀川さんにインタビューです。最初に尋ねたのは、えびす様の意味でした。
 「『えびす』とは本来、異界の人やモノを指す言葉でした。中でも、海に暮らす人々は、漂着物やクジラを『えびす』と呼び、福神として崇めたといわれます」。
 実は、西宮神社の主祭神、蛭子(ひるこ)命も、葦の船に乗る漂着の神様だったとか。えびす信仰の背景には、そんな伝承や風習があるのかもしれません。
 「当神社の創建時期は不明ですが、平安時代にえびす社として信仰されていた記録が残っています。もとは航海・漁業の神でしたが、七福神信仰が全国に広まった室町時代以後、福の神として尊ばれるようになりました。今のように商売繁盛の神様として広く信仰されるようになったのは、江戸時代からだと言われます」。
 ちなみに、室町時代のえびす信仰を諸国に広めたのが、西宮神社を本拠とする人形操りの芸人、傀儡師(くぐつし)たち。その芸能は、後の人形浄瑠璃(文楽)につながるといわれます。境内にある百太夫神は、その始祖を祭ったもの。現在は、子供をお守りする神様として、多くの人がお参りされるそうです。


大マグロには参拝者の硬貨が(十日えびす)

400年以上の歳月を重ねた裏大門(重門)

 


室町時代の版築で築かれた大練習堀(重門)

三連春日造の本殿は、西宮神社だけ

 堀川さんのご説明で、境内を見せていただきました。
 まず目をひくのが境内正面の本殿。厳かな切妻の屋根が3つ連なり、その上には千木が天を指しています。
 「三連式春日造という当神社だけの形式です。第一殿は主祭神の西宮大神(蛭子命)、第二殿は天照大神と大国主神、第三殿は須佐之男命をお祭りしています」。
 国宝だった旧本殿は、徳川四代将軍家綱の造営でしたが、残念ながら戦災で焼失。現在の社殿は1961年(昭和36)、元のまま再建されたものだそうです。
 本殿と並んで西宮神社を代表する建物は、先ほどの表大門でしょう。1604年(慶長9)、豊臣秀頼が寄進した由緒ある門で、重要文化財に指定されています。
 「東大門の前は昔の西国街道。かつての西宮のメインストリートです」。
 天下分け目の関が原合戦から4年。戦乱がやんだ日本で、西宮神社には、福を求める参詣客や旅人が集まったことでしょう。そんな人々の目に、鮮やかな朱塗りの門はどう映ったでしょうか。400年前の門前のにぎわいに、しばし思いを馳せました。

現存最古の大練塀は、日本三大練塀の1つ
 西宮神社にはもうひとつ、重要文化財があります。それが、境内を取り巻く約250mの大練塀。現存最古の練塀で、築造されたのは室町時代だとか。
 「太平洋戦争末の空襲で、練塀の屋根が焼失した際、当時の古銭がいくつも出土しました。それで、室町時代に築かれたものと分かったのです」。
 土で築かれた練塀が、数百年も保たれてきたのは、版築という工法で築かれているため。2枚の板の間に土を入れ、上からつき固めることを繰り返すことで、頑丈な塀になるのだそうです。
 「京都・蓮華王院の太閤塀、名古屋・熱田神宮の信長塀とともに、日本三大練塀の1つとされています」。
 他にも、本殿をお守りする唐金の狛犬や豊臣秀頼の寄進と伝えられる梵鐘、楠正成像の馬や西郷隆盛像の犬で知られる彫刻家・後藤貞行作の馬・・・・境内には多数の宝物が伝えられています。そこから浮かび上がるのは、「福の神」「商売繁盛の神」西宮神社に寄せられた、人々の信仰心の篤さです。
 「最近では、阪神・淡路大震災で本殿や大練塀の一部が被害を受けましたが、多くの人々のおかげで無事再建することができました」。
 ちなみに、この大練塀の修復時には、室町時代の前例にならい、平成の硬貨を埋めたとのことです。
 「将来、練塀を修復するとき、この硬貨を見つけた人が、平成時代に思いを馳せてくれるといいですね」と、堀川さんはにこやかに語ってくださいました。
 その未来まで、えびす様がたくさんの福を授けてくださいますように。そして、仕事がますます繁盛しますように。今年の十日戎も、心を込めてお祈りするつもりです。

 


有馬温泉献湯式(十日えびす)


躍動感あふれる後藤貞行作の新馬像

えびす宮総本社 西宮神社

所在地:〒662-0974 兵庫県西宮市社家町1-17
TEL:
0798-33-0321
URL:http://www.decca-japan.com/nishinomiya_ebisu/
竣工:
本殿─1961年(昭和36)、表大門─1604年(慶長9)、
         大練塀─室町時代 他


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