2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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京都迎賓館 けんざい203号掲載
  今年4月、京都御苑内に東京・赤坂に次ぐ二つ目の迎賓館が誕生した。現代の建築・設計技術によって建てられた和風の迎賓館である。世界各国からの賓客を接遇するためのもので、数寄屋大工、左官、作庭、截金など数多くの伝統的技能を活用し、西陣織や蒔絵、漆などを使った最高の調度品を配置している。日本サイン株式会社クリエイティブ部の吉川友佳子さんが訪れた。

日本の宝・伝統の技 コンセプトは「現代和風」

 京都御苑の清和院御門を入ると右手に長い築地塀が見える。中は敷地面積約2万uの迎賓館である。
 京都に国の迎賓施設を建てたいという府・市民の願いは、約15万人の署名に後押しされて実現、平成6年(1994)10月の閣議で了解された。14年(2002)3月に着工、環境に細心の注意を払いながら工事を進め、費用約200億円、約3年をかけて完成した。
 設計のコンセプトは「現代和風」、なるほど数寄屋大工や左官などの伝統的工法、それに京都の誇る伝統的工芸が現代の感性や技術と見事に調和している。国公賓などをお迎えするためにつくられた空間には、世界に誇りうる日本の宝の技がつまっている。
 建築は御苑の歴史的景観と緑豊かな自然環境を調和させるため、入母屋屋根と数寄屋造を基本にしている。無駄を削ぎ落としたさりげないしつらえで賓客を迎えるところがいかにも京都らしい。
 内に伝統の技能と工芸の粋をふんだんに採り入れ、外観は古来の日本建築の迎賓館だが、大空間を支えるのは現代の構造設計である。また電気や空調などの設備設計には最新の技術が駆使されている。その意味では現代建築である。


玄関脇のロビー

回廊。右手の障子を開けると
庭園が眺められる

大会議室。使用目的によって
調度品が選ばれる。東西の壁
には比叡山と愛宕山を描いた
綴れ織(写真は東側・比叡山)

晩餐室。長さ約16メートルの
華麗な綴れ織「麗花」

 


大広間。漆塗りの卓
(下地材はヒノキの等圧合板)
と吉野スギの天井

大広間。上座に座った位置
から見た日本庭園


 迎賓館は、大会議室、晩餐室、和会食エリア、貴賓室と会談室、宿泊エリア、日本庭園で構成されている。
 賓客を出迎える玄関扉は樹齢700年のケヤキの一枚板。中に入ると広い回廊が真っ直ぐのびる。
 南に位置するのはマツをおもな造作材料とした大会議室。閣僚級の会議が行なわれる場だ。両側の壁は鮮やかな壁画装飾が施され、可動式で部屋を最大3つに区切ることができる。入口向かいの壁の上方に同時通訳ブースが隠されているという。空調設備も見えないようになっており、給気は敷居から出ている。
 晩餐室は約300uで最大120人が会食でき、奥に約100uの桧舞台がある。天井は一面が美濃和紙を張った複雑な格子状の照明で覆われており、そのひとつひとつの格子が昇降することによって15通りの模様をつくることができるという。
 日本庭園の廊橋を渡って会談室へ。おもな造作材としてセンが使用さてれいるので趣がまた異なる。天井は舟底天井。
 和会食エリアへは露地を通って行く。ひっそり静かで、もれてくる畳の香りとあいまってこの先の和の空間を感じさせる。
 ここまでの立式の部屋へはもちろん下足で入る。女性のピンヒールが床張りを傷つけないか気になったが、WPC加工が施されているので心配無用とのこと。賓客は和室玄関ではじめて靴を脱ぎ、座敷に招かれる。和会食エリアには最大24人が会食できる書院造の大広間がある。ここはスギをおもに使用、天井は長さ12mの板から成り、軒にはスギの丸太が使われている。
 池に架かる廊橋からは御苑の森を借景に庭園を囲む建物の全容が見渡せる。ニッケル・ステンレス複合材で仕上げられた淡い色調の屋根も庭と調和しており、日本の様式美を堪能できる。
 鯉が泳ぐ池の底には敷地内を掘削中に出てきた自然の石を敷いている。池の所々にも配置されているという。その昔鴨川に架かっていた橋の杭や、なんと2億5,000万年前に生成された石もあるらしい。

 


舟底天井の会談室。青海波の
段通にはランダムにかり込みが
入り、立体的な印象。
天井を飾るのは京指物

至高の伝統的技能が結集 庭園の景観と一体となった建築

 迎賓館の見どころは、建設や調度品の制作に活かされた京都の伝統的技能である。
 建設には左官、截金、作庭、錺金物はじめ11分野の技能が採り入れられた。
 館内のあらゆる壁には塗り壁の技能が活かされている。これほどの面積の塗り壁は公共工事でははじめての試みだったそうだ。主賓室座敷や和会食エリアの大広間などの座敷と露地、築地塀には京さび土壁が、回廊には漆喰が使われている。京さび土はこの建設現場から出たものを1年間かけて熟成させたという。「弟子たちに良い仕事を見せることができた」と迎賓館で腕をふるった左官さんが語ったと聞いたが、生涯の誇るべき仕事になるに違いない。
 晩餐室の桧舞台の板戸を飾っているのが人間国宝・江里佐代子氏による截金(きりかね)。金やプラチナの箔を貼り付けて紋様を描く技術で、見るからに貴重な工芸である。錺(かざり)金物は神社や寺などで装飾として使われることが多いが、ここでは長押、天井の格子の釘隠しなど、ひとつひとつに見ごたえがあった。
 迎賓館のレイアウトの中心が庭園だ。造園工事をリードしたのは桂離宮の整備はじめ欧米の庭園でも幅広く活躍する佐野藤右衛門氏。
 部屋は日本庭園を囲むように配され、それぞれの部屋から見える庭園は異なった表情をつくる。和室から外を眺めると、上座に座ったときの目線に合わせて日本庭園が造形されているのがわかる。大広間から見えるのは、ドウダンツツジを山に見立てた山地の風景なのだそうだ。

 
喜多川俵二氏(人間国宝)による
有職織。撫子の花の紋様が
織り込まれている(回廊)


丹精込めた和のしつらい 調度品は工芸の粋

 和のもてなしの仕上げともいえる調度品、工芸品にも“宝”がいっぱいだ。
 回廊と和室の寄付には目の覚めるような有職織(ゆうそくおり)の装束が飾られている。人間国宝・喜多川俵二氏によるもので、日本の伝統色と非常に細い糸で織る古代の複雑な織技がつややかな風合いを出している。
 西陣織も見ごたえがある。椅子は全て西陣織だが、部屋ごとに紋様や色彩など異なったあでやかさを表現している。
 西陣織の中でも特に高度な技術を要する綴れ織は3点の大作がある。特に、晩餐室の大壁画「麗花」は圧巻だった。藤を中心に四季の花々が天地約3m、長さ約16mにわたって咲きこぼれる。
 待合室として使う玄関脇のロビーにも選ばれた職人の技が結集している。竹工芸と螺鈿を使って漆塗りで仕上げた繊細な飾り台には接遇時、竹工芸の花篭が置かれる。
 釘を使わず板どうしを組む高度な木工技術、京指物。前庭や回廊、露地の随所に設置された照明は和のやすらぎを醸し出す。会談室の舟底天井装飾にも使われている。竣工は3月、まだ新築である。庭園をはじめとして、くすみひとつない屋根、柱、天井などの内装が時を経てさらに趣を増し、本当の意味での名建築になっていくのだろう。

 


南側から廊橋を望む。
池に生えるのは稲穂に見立てた
ネビキグサ

現代の技術と伝統の職人技 次世代への文化継承にも期待

 8月に一般公開されたとき約5,500人が見学に訪れた。今後も要望があれば一般公開の継続を検討されているとのことで、一般人としてはうれしい。特に、建築や設計、建材に携わる人々が目にする機会が増えれば、優れた伝統的技能を現代建築に採り入れる道も開いてくれるだろう。
 京都人の熱意によって生まれた京都迎賓館は、国賓などを対象とする東京・赤坂の迎賓館と基準が異なり、条件を満たせば地方自治体にも使用の道が開かれている。日本文化のふるさと京都にこれほどの構想、技術、費用を費やしてできたのだから、国際交流や日本文化の継承などで東京の迎賓館とはまた異なった役割を期待したい。この迎賓館が数々の伝統の職人技を現代に活かすことができた意義は大きいと思う。 (記:吉川友佳子)

京都迎賓館

/ 場所 京都市上京区京都御苑23(京都御苑内)
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