2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
ホーム お問合せ
会員団体出展者専用ページ 協会の概要 会員名簿 業種別名簿 品目・業種別分類表 統計資料 関連リンク
大阪天満宮 けんざい200号掲載
  天神様とも呼ばれる学問の神様・菅原道真公を祀る天満宮は日本に1万3,000社。なかでも大阪天満宮は道真公が太宰府左遷に際して安全を祈願した大将軍社の森に建つ。道真公の没50年後、その地に7本の松が生えて光り輝いたことを時の村上天皇が奇瑞として天満宮を造営したと伝えられる。夏祭りなどで浪速っ子に親しまれている“天満の天神さん”を、王建工業株式会社業務部の世登博子さんが訪れた。

大阪府下最大の木造建築 優美な屋根の重なり、格調高い書院造

 大阪天満宮の建築としての見どころはやはり本社と、そこから廊下でつながる参集殿、梅花殿である。権禰宜の柳野等さんに本社から案内してもらった。
 大門から真正面に見える本社は権現造といわれ、手前に構える拝殿と一番奥の本殿、この両殿をつなぐ幣殿で構成されている。本殿は最も古く、天保14年(1843)に建立された。
 近くで見ると描いていたイメージよりはるかに大きい。聞けばこの本社は大阪府下の木造建築では最大とのことだ。その屋根は入母屋造りで、両翼の部屋にも一段低い屋根が葺かれ、微妙に反ったそれぞれの屋根の複雑な重なり具合が優美である。
 今でこそ銅板葺だが、大正15年まではすべて檜皮葺だったと記録されている。檜皮のほうが見た目には趣きはあるが、これだけの広い屋根を葺くには膨大な費用がかかるうえに持ちが良くない。また材料の檜皮自体が少なくなっている現在では、檜皮葺屋根は難しいようだ。


厳格な書院造の参集殿大広間
(30畳)。中央の上段の間を
はさんで左が書院、右が脇床。
畳をとると能舞台になるため、
畳の厚さは通常の半分

権禰宜の柳野さんと
渡り廊下から拝殿を見る

現在、結婚式場として
使われている梅花殿

いたるところに施された
透かし彫り。表からは見えない
部分も彫られている


 拝殿側から入り、奥の本殿を見る。やや薄暗くなった内陣に金箔をまとった装飾がきらきらと輝き、さらに奥の中央には天神様を中央に御祭神が5柱祀られている。
 日ごろ神様をほとんど意識せずに生活している私だが、この空間にいると不思議と身がひきしまる。
 本殿東側の参集殿は明治42年(1909)の建立、大広間を備えた書院造だ。平成11年(1999)に国の登録文化財に指定された。一列に書院、上段の間、脇床が並び、様式や面積など書院造の約束事が厳格に守られている建築物は、この天満宮の参集院を除けば西本願寺の鴻の間と醍醐寺の三宝院寝殿だけという。大広間の畳をめくると能舞台が現れるのは大きな驚きだった。
 昭和2年に貴賓殿として建てられた梅花殿は、参集殿と同時に登録文化財になった。構造が寝殿造で内部が書院造になっており、現在は結婚式にだけ使われている。
 建築美を引き立てるのは襖絵・板絵、透かし彫りなどだ。大阪のそうそうたる画人・彫物師の手に成ったというので楽しみにしていた。が、襖絵と板絵はすべて取り外され、博物館で保存されているそうで、あるのは実物大の写真だけだった。残念!あるべきところにあって、人に使われてこそ価値があると思うが、値段のつけようがない“お宝”とあれば仕方がないのかも知れない。


右写真で上段の間の左に
位置する書院。上段よりさらに
一段高いので上々段という

書院造の右端、脇床。違
い棚が置かれ、座敷とは同じ
高さになっている

本殿の外陣

現在博物館にある拝殿の
板戸は津端道彦の筆(鳳凰)


氏子に守られ戦火を逃れる 伝統を守りつつ現代的要素取り入れ


西面の外観。入母屋造の屋根が美しい
 
 神社は一定の周期で建て替えが行なわれる。大阪天満宮では25年に1度の式年造替(しきねんぞうたい)がある(伊勢神宮でいうと20年毎の遷宮)。道真は6月25日誕生、政治上の争いで九州に左遷されたのが1月25日、命日は2月25日というように25の数字に関わりが深いので25年というわけだ。だからあの天神祭も7月25日である。直近の式年造替は没後1100年にあたる平成14年(2004)だった。
 大阪天満宮は江戸時代の記録に残っているだけでも7度の火災に遭っているが、第2次世界大戦では周りの家が全部焼けてしまったにもかかわらず無事残った。「自分の家が燃えても天神様を守ろうと、多くの氏子の人々が濡れむしろをかぶせたりして守ってくれたお陰です。運というよりも人的努力によるものでした」と柳野さん。
 メンテナンスには神社ゆえの苦労があるようだ。一般の建物とは違って神様がおられるのでおいそれと手を出せず、身を清めなければ屋根にも登れない。傷んだから即座に修理というわけにもいかないのだ。使う材料も、化学的な塗料や接着剤、金属などを使うと後々の建て替えに支障をきたすので非常に限られてくるという。神社は式年遷宮や造替を前提として設計・工事されているので建立当時の大工の意図を継承し、伝えていかねばならない。しかし、時代の変化に合わせることも求められ、現代ではエアコンなどの電化設備やバリアフリーを取り入れねばならない。「後世に伝えるべき古建築のルールとそれら現代的要素の接点がとても難しいです」とのこと。
 貴重な文化財であり、建築学的に優れ、古くから親しまれ、戦火からも守られてきた天神様。自分の職場のすぐ近くにこんな名建築があったなんて?この発見は大きな感動だった。 (記:世登博子)

大阪天満宮

/ 場所 大阪市北区天神橋2-1-8
    TEL 06-6353-0025
    交通 大阪市営地下鉄谷町線「南森町」下車徒歩5分、
JR東西線「大阪天満宮」下車すぐ
一覧に戻る


Copyright (C) 2007 JAPAN BUILDING MATERIALS ASSOCIATION. All rights reserved.