2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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国際日本文化研究センター

けんざい196号掲載

 

国際日本文化研究センター(日文研)は、日本文化の国際的・学際的な総合研究と世界の日本研究者に対する研究協力を目的として昭和62年(1987)に設置された大学共同利用機関である。その設計を担当した建築家内井昭蔵氏(1933〜2002)は、建物全体に日本文化の精髄を表現しようとしたようだ。今回はエスケー化研株式会社SKカラーデザインセンターの都田香さんが取材した。

 
ゆるやかなアプローチを登り切ると開ける
エントランス広場から正面玄関を見る

洛西の山裾に開ける雄大な展望 自然に恵まれた絶好の立地

 国際日本文化研究センターは京都の洛西、鬼が住むと言われた町の山並みを借景に、南側に大きく眺望が開けている。
 ここでは、国内外30人の研究者がさまざまな視点で日本や日本文化を研究する。研究者のための宿泊施設もある。静かで整った環境に澄んだ空気、一度なじんだらもう“下界”へは帰りたくない気分にさせる施設だ。職員も「ここにいると“日文研マジック”にかかる」と言う。このような不思議な感覚は、大枝山の自然と一体化した「日本文化の精髄」を感じるからだろう。
 同センターは、初代所長をつとめた梅原猛氏の提唱により創設された。敷地が決まったのち、建築設計は世田谷美術館や皇居の吹上新御所などで知られる内井氏に託された。構想から7年、完成したのは平成6年(1994)である。


南側から山門越しに見る。
日文研の象徴、円筒形の
図書館は施設の中央に位置する

「夢殿」の愛称をもつ八角形の
第1研究室は国際会議にも対応
できる同時通訳の設備もある

研究者の交流スペース、コモン
ルーム。閉鎖的にならない
ようにとの配慮から設けられた

国際交流棟、図書館、研究
交流棟を結ぶ廊下の窓には
障子が貼られている


寝殿造、書院造、数寄屋をイメージ

 同センターの大きな特徴は「分散配置」である。研究系・国際研究協力系・情報管理施設系・普及事業系の4つに大別される複合施設を回廊がつなぐ。そして、回廊がつくる中庭の空間が思索とやすらぎをもたらす。同センターの監理に携わった内井建築設計事務所の青井弘之氏が説明してくださった。「設計には、日本的な建築を、との条件がありました。そこで『日本的』を純和風建築にするのではなく、建物を個々の部分に分けてそれを廊下で結ぶという配置法で表現しました」。
 こうして配置は寝殿造、教員のコミュニケーションや研究のための空間は機能・利便性を重視して書院造の様式を採用し、自然を借景にして庭園も取り入れたところは、茶室などが持つ数寄屋造りの感覚で統一されている。
 外装はアースカラーの粗いタイル。レリーフを施した特注のせっ器質タイルが表現する微妙な陰影も日本的である。紅葉の季節にひときわ映えるようにと選んだ屋根は赤瓦で、赤・オレンジをメインにした5?8色が自然色のばらつきを表現している。
 山がすぐそこに迫っているので、自然の移り変わりが身近に感じられることだろう。実際、内井氏もこの約1万坪の敷地にいたく惚れ込んだという。


柱が印象的な回廊に囲まれた
庭はその名も「回廊の庭」。
手入れも行き届いている

講堂の客席(600席)は
観客同士の反応を互いに感じ
られるよう円形に並ぶ

内井建築設計事務所の青井
弘之氏(左)と。「図書館はこの
センターの最も中心的な存在です」

逆三角形をレリーフにした
粗い表面の外壁タイル。
三角形は内井建築に頻繁に
登場するモチーフ

 同センターの象徴、円筒形の図書館にはびっくりした。内部のものが全て同心円で統一されている。弧を描く書架もデスクも中心に位置するカウンターも特注品、その徹底ぶりに感心した。本に囲まれるとはまさにこのことだ。大英博物館図書館や、ストックホルム市立図書館などの円形図書館と共通のイメージを想起させる空間である。
 書架を背にして立つと視線はカウンターを覆う屋根の先端から一段高い天蓋へ、さらにステンドグラスの美しいブルーへと導かれる。天上へ登るイメージで設計されているそうだ。
 日文研は、森と山の持つ聖域性、日本人の美意識、日本建築の精神性が昇華した建築物だ。このように、理念が見事に形となったものは大学研究機関としては先駆的という。同センターが前例となってわが国にこういった例がどんどん増えれば、外国人にも胸をはって紹介できる日本の誇りとなるだろう。 (記:都田 香)

国際日本文化研究センター

/ 場所 京都市西京区御陵大枝山町3-2
    TEL 075-335-2222
    交通 阪急京都線桂駅から京都市バス(約30分)
JR向日町駅からヤサカバス(約35分)
JR京都駅から京都交通バス(約45分)
全て桂坂小学校前下車徒歩5分
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