2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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建材情報交流会ニュース
  第8回「建材情報交流会」”安全・安心 PART-T”(耐火・防火)

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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「 建築基準法改正(防耐火)と最近の建築材料 」
 (財)日本建築総合試験所 耐火防火試験室長 田坂 茂樹 氏
防火対策は火災の段階に応じて
性能評価機関として、評価する側から考えた建築基準法改正と新しい建築材料について話します。
 防火材料や防耐火構造の重要な目的は、火災が起こった場合に災害の広がりを抑え、人命を守ることにあります。
 火災には段階があり、<火災初期>→<火災成長期>→<火盛り期>→<区画の延焼>→<建物間の延焼>という過程で進行します。現在の基準法はこの5つを前提に作成されています。防火材料、防耐火構造などは性能ごとに、建物の用途、規模、構造、地域条件などに応じて使い分けます。
基本的な防火対策とは次のようなものです。
最初に材料レベルの対策です。
1. 出火防止、出火しても広げない。壁や天井を着火しにくい防火材料で仕上げることが必要。
2. 初期火災の拡大およびフラッシュオーバー(火災室の室温が急激に上昇し、窓ガラスが破れ火炎が吹き出す爆発的な燃焼)を遅らせて逃げる時間をかせぐため内装を防火材料で仕上げる。
3. フラッシュオーバーによる熱、有害な煙、ガスの大量発生を防ぐためこれらの発生が少ない内装材料を使う。ここまでは内装制限にかかる防火材料レベルで、不燃・準不燃、難燃材料のラインです。
次からは構造レベルで防ぐ対策です。
4. 区画延焼を妨げるため、区画を構成する壁・床などで耐火構造、準耐火構造で施工して開口部は防火設備を設置する。
5. 柱、はりの崩壊を防ぐため、これら荷重支持部材に耐火・準耐火構造で施工する。
6. 隣接建物からの延焼防止のため、外壁、屋根などに耐火・準耐火・防火・準防火構造、防火設備を施す。
ここで初めて防火・準防火構造が出てきます。「耐火」構造は自分の建物が火災に耐えるという意味で、「防火」構造というのは隣が燃えても自分は燃えない、ということなのです。
F 市街地火災、つまり建物間の延焼拡大を防ぐため、より性能の高い防耐火構造が必要である。
防火材料は内装の不燃、防耐火構造は区画延焼防止
 防火材料には、不燃、準不燃、難燃の3種類があります。
 不燃材料は基準法第2条第九号で規定されており、その性能と技術的基準は政令(建築基準法施行令)第108条の2に、“加熱開始後20分間燃焼しない、有害な変形・溶融・亀裂その他損傷を生じない、有害な煙・ガスを発生しないもの”と定められています。不燃材料には、国土交通大臣の定めるもの、つまり建設省告示1400号に定められたコンクリート、れんがなど18の材料(例示仕様)と、同大臣の認定を受けたもの(指定性能評価機関が定めたしかるべき試験を実施し、同大臣に申請、認定される)が該当します。
 準不燃材料、難燃材料は同様に、加熱後10分間、5分間は燃焼しないものと定められています。また、例示仕様と大臣認定の試験内容もそれぞれ規定されています。
 防耐火構造では、耐火、準耐火、防火、準防火構造が法律で定められています。
 耐火構造は建築基準法第2条第七号で示され、その基準は政令第107条に“壁、柱、床などの部分が、火災による熱で構造耐力上支障のある変形、溶融などをしないものであること”となっており、それぞれの部位で加熱の時間が定められています。壁と床では遮熱性、外壁と屋根では遮炎性が要求されています。耐火性能で大事なことは、火災が終了するまで建物が立ち続け、終了後も耐火性能を担保する必要があるということです。準耐火構造はそこまで必要ではなく、一定時間とにかく持てばよい、という違いがあります。
 防火構造は建築基準法第2条第八号で示され、その基準は政令第108条に“外壁では周囲の火災による加熱後30分間変形・溶融などしないこと、外壁および軒裏では30分間加熱面以外の面の温度が可燃物温度以上にならないもの”となっており、建築物の周囲の火災で延焼しないよう外壁や軒裏に必要とされる性能です。準防火構造は、旧法の時の土塗壁同等構造のことで、性能については防火構造と同じですが、20分性能と、10分短くなっています。
さまざまな構造、設備と新しい認定
 建築基準法にあるそのほかの構造、設備などを簡単に説明します。屋根は、飛び火の防火性能と言えます。つまり隣棟から火の粉が飛んできても燃えない性能が必要とされます。防火区画等を貫通する給水、排水その他の配管設備は、火災による火熱が加えられた場合に加熱されていない側が燃え出さないように亀裂や損傷を生じない構造が必要です。
 防火設備には、遮炎性能と遮煙性能または作動性能という項目があり、遮炎性が一般的な防火設備の条件となります。防火戸、ドレンチャーなどの火炎を遮る設備で、“加熱開始後20分間当該加熱面以外の面に火炎を出さないもの”とされています。縦穴区画などに用いる防火設備に要求されるのが遮煙性能で、防火戸等で火災のときに煙感知器などと連動して、自動的にすばやく閉鎖する構造とされています。
 その他、新たな認定に関してトピック的なものを紹介します。今回の基準法改正により要求性能を満たせば木質のものでも耐火性能の認定を受けられるようになりました。その例がツーバイ工法の木造枠組造壁や木被覆鉄骨柱(H型鋼を天然木で被覆した柱)です。免震装置についても大臣認定が受けられるようになる予定です。
 また、来年度中には試験方法がJIS化される予定になっていますのでここでお知らせいたします。

「 パネル単体および構造としての防・耐火性能向上 」
 日鉄鋼板(株) 開発本部 建材開発グループ長 松本 守弘 氏
資料はこちら(PDFデータ)
サンドイッチパネルの芯材は3種類
 今日は、外壁の防耐火ということで、当社の扱う商品の一つである両面金属外皮サンドイッチパネルについて話します。
 サンドイッチパネルの市場規模は650万m2、シェアトップのメーカーがその41%、270万m2、当社製品は2番目で21%を占め、うち85%が外壁です。この業界が比較的新しく、用途および芯材、ジョイント部など、各社で共通項が少ないため、今回の改正では個別に対応せざるを得ませんでした。
 当社のサンドイッチパネルは内装、外装ともに自社製品の塗装鋼板で、主として尼崎製造所で作っています。芯材はロックウール、ウレタンフォーム、ヌレートフォームの3種類、すべて平面、曲面それぞれに対応できるようになっています。
 建築基準法改正(防・耐火)でわれわれが影響を受けた点は次のようなものでした。まず耐火構造では、加熱レベルは改正前後で大きな変化はないものの、非加熱面、つまり裏側(火と反対側)の合格ポイントは最高温度が260℃以下だったものが、改正後は最高180℃+初期温度、平均140℃+初期温度と、随分厳しくなりました。
 防火構造では、改正後耐火構造同様裏側の合格ポイントが厳しくなったことに加えて、加熱レベルも厳しくなりました。
社内で予備試験後、認定試験にのぞむ
 わが社では、いろんな仕様の芯材で社内予備試験を行ないました。
 外皮材は鋼板、芯材を@イソシアヌレートフォーム(34mm)、A同+パーライト(34mm)、Bロックウールボード(34mm)の3通りで実施したところ、Aが何とか、Bは確実に合格するだろうという結果になりました。実際に日本建築総合試験所で受験した仕様は、@パネル単体で外皮鋼板、芯材がヌレートフォーム+パーライト(44mm)、Aパネル(外皮鋼板、芯材がヌレートフォーム34mm)+せっこうボード12.5mm直張、Bパネル(外皮鋼板、芯材がヌレートフォーム34mm)+せっこうボード9.5mm(木下地)というものでした。
 結果は単体では無理で、A、Bの複合タイプのみが合格しました。
 わが社の法改正への対応はまとめると次の通りです。防火構造では、パネル単体がイソシアヌレート系からロックウール系へ変化。また、ヌレート系をせっこうボードと合わせた複合構造にして新たに認定を取得。耐火構造では、ロックウールの密度を高めてパネル芯材の耐熱性を向上させました。
 防火材料では準不燃のイソシアヌレート系が不燃材料試験に合格、不燃のロックウール系では特に変更はありませんでした。
 昨年、わが社は中国で耐火構造認定?外壁の耐火1時間と間仕切の耐火1時間?をとりました。

「 石膏ボード業界の防耐火への対応と動向 」
 チヨダウーテ(株) 市場開発部 部長 根津 修美雄 氏
資料はこちら(PDFデータ)
厚手化が進むせっこうボード
 平成元年から14年までのせっこうボード製品の生産推移をみると、バブルがはじける前の平成9年がピークで、昨年は平成14年の5億2千万m2よりやや増加して5億4千6百万m2ほどでした。
 せっこうボードは、年々厚手化の傾向を示しています。せっこうボードは厚みによって7mm、9.5mm、12.5mm、15mm以上という区分があり、7mm、9.5mmタイプの需要は減少、12.5mm、15mm以上は増加しつづけています。
 せっこうボードの生産量が日本の約5倍にものぼるアメリカでは、厚手のボードで市場が安定しており、将来的に日本もアメリカのような状況に落ち着くものと思われます。
 せっこうボード製品の厚さと防火性能は、建築基準法改正後も従来と同様、不燃材料も準不燃材料もそのままの性能を引き継いでいます。
 せっこうボードの防火材料としての分類は、(社)石膏ボード工業会として国土交通省から受けた認定に基づいています。標準のせっこうボード(GB-R:Gypsum Board‐Regular Type)はじめいくつか種類があります。
 9.5mmのもので準不燃、12.5mm以上で不燃になっていますが、不燃積層せっこうボード(GB-NC)のように9.5mmで不燃性能を持つものもあります。
間仕切壁は重ね張りで耐火、遮音ともに強化
 耐火構造の最近の傾向について触れます。昨年あたりから特に伸びているのが耐火構造非耐力壁で、21mmの強化せっこうボード(GB-F)の上に高密度で強度の高い9.5mmの硬質せっこうボードを組み合わせたものです。耐火性能は今回の法改正により1時間でよいことになりましたが従来は耐火2時間の認定を受けていましたので実際には、2時間の耐火性能があります。遮音性能がTLd55となるRC造の壁(260mm、630Kg/m2)と比べると、厚さで約1/2、重量で約1/10となり、極めて軽量な耐火・高遮音間仕切壁として超高層マンションなどの界壁に使用されています。現在は、耐火性能はもちろん、遮音性能の要求が増えています。下地の柱(スタッド)を千鳥配置にすることで遮音性能がさらに向上できるので、千鳥配置の工法の認定取得が増えているようです。
 今回の法改正で新しく耐火認定されたものに、両面に強化せっこうボード12.5mmを2枚重ね張りした耐火1時間の間仕切壁があります。従来の15mm強化せっこうボード2枚重ね張りより重量で約10Kg/m2軽く、また同等の遮音性能のRC造界壁(120mm、290Kg/m2)に比べて、重量で約1/7と軽量化されています。
 次いで、非常に好評なのが片面施工タイプ(強化せっこうボード21mm重ね張り)で、エレベーターコア廻り、階段廻りなどの竪穴区画に片側から施工できるためです。また足場が簡略化でき、施工が楽なのでコストも低く抑えられます。某新聞によると昨年1年間で約60万m2を超える数量とのことですが、これからもっと売れると思われます。
 集合住宅の乾式耐火間仕切壁については、消防法で乾式間仕切壁(共住区画)として使用が認められたときの条件があります。当初からそのために仕様書、技術研修、施工検査等で管理していましたが、現在は集合住宅に限らず、一般の建築物においても耐火・遮音構造間仕切壁の施工手順、躯体との納まりや隙間等の処理方法を含めた技術研修会を受けた責任者が選任されているかを問われることが増えてきており、我々も耐火・遮音構造の施工技術についての研修会を行っています。
 今後のせっこうボード製品として、硬質せっこうボード(GB-H)、吸放湿性せっこうボード(GB-Hc)、ホルムアルデヒド吸収分解せっこうボード(GB-Fc)、構造用せっこうボード(GB-St)といったものが検討されています(略号は仮称)。構造用以外はすでに市販されており、今後これらをJIS化することを検討しています。

「 鉄骨耐火被覆の現状と今後 」
 ニチアス(株) 建材事業本部 部長 常谷 雅彦 氏
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市場を9割占有する吹付けの問題点
 現在、耐火被覆市場は吹付けロックウールが90%のシェアを占めますが、今日紹介する「巻付け工法」も徐々に脚光を浴びています。
 今、耐火被覆材でわれわれメーカーに求められているのは、まず環境対応。ゼロエミッション、リサイクル、粉塵を生じる作業環境への考慮などです。作業性では、品質管理が容易であり、相番工事ができるなど簡単・確実な施工方法が重要です。
 吹付けロックウール、いわゆる乾式吹付けは日本の耐火被覆の主流でしたが、これには品質確保や管理の点でいくつか問題点もあります。建築基準法改正に伴って個別認定となり、密度や厚みなどの品質管理をメーカーが行なうことになり、特に吹付けの場合は水を使うため、密度を確認できるのは2〜3日必要で施工時に品質が確認できません。さらに後工事の震動によって脱落しやすいという性質もあります。また、手間がかかり管理も難しいのです。作業環境面でも、吹付けをしている最中は現場に入れず、相番工事ができません。
環境・品質管理・トータルコストの3本柱
 巻付け耐火被覆材?当社では「巻兵衛」という商品?は環境対応、安定した品質・施工、トータルコストの優位性の3点が特徴です。
 施工中・後ともにホコリがほとんど出ません。粉塵のない環境で施工できるためマスクが不要で作業効率もアップします。
 環境面ではまずリデュース(Reduce)、これはプレカットして材料を最小限に抑え、現場で残材を減らすことです。次にリサイクル(Recycle)では、溶接ピンを撤去することによって鉄骨の再利用ができます。また、巻付け材自体が鉄鋼スラグのリサイクル素材を使用しています。もし、工事現場でもし廃材が出ても工場で広域再生利用し、「巻兵衛」の原料とします。
 トータルコストの優位性では、巻付け耐火被覆材が吹付けに迫りつつあります。鉄骨によっては、巻付けは吹付けに比べて施工面積が2割くらい削減でき、養生が不要、現場の品質管理でゼネコンにかかる負担も低減できます。
 最近の施工事例を紹介します。
 東京の六本木ヒルズでは全階に巻付け被覆を施しました。これは設計変更によるもので、当初設計の湿式吹付けからトータルコストを比較して採用されました。現在は東京大学の新館、大阪証券取引所などで施工中です。
 写真でおわかりのように養生シートが全く見られず、床が汚れていません。安定した柔らかい巻付け材を巻くだけで施工性は抜群です。大阪証券取引所では施工能率が吹付けの2割ほど上がりました。ルートCの採用により、ほとんどの部位が耐火1時間になっています。
 簡単ですが巻付け耐火被覆材の長所をおわかりいただけたと思います。
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