2007けんざい
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建材情報交流会ニュース
  第7回「建材情報交流会」”快適空間 −室内空気環境 PART-II ”

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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「改正建築基準法(シックハウス対策)について」
 国土交通省 近畿地方整備局 建政部 住宅整備課長 林 隆弘 氏
建築基準法とシックハウス症候群
 近年、新築・改築された住宅などで、居住者に、めまい、吐き気、頭痛などの様々な健康への影響が生じている事例が報告されています。これらは、一つの疾病ではなく、「シックハウス症候群」と呼ばれています。
 シックハウス症候群が顕在化した主な原因は、住宅等の気密性の向上や、冷房の使用等のライフスタイルの変化、そして、化学物質を発散する多様な建築材料や家庭用品の普及等が挙げられます。
 化学物質を発散する物質は、建材だけではなく家具やごく身のまわりの日用品にもあります。発散された化学物質は換気によってかなり排出されますが、最近の住宅は気密性が高いため室内に充満しがちです。そしてエアコンの普及により、昼間は仕事、夜に帰宅してもエアコンを入れるだけで一日中窓の開閉を行わない生活習慣の人が多くなってきています。
 シックハウス症候群を引き起こす物質は、建築材料等から発散するホルムアルデヒド、VOC(トルエン、キシレン等)などであり、これらの化学物質によって室内空気が汚染されることが健康への影響の原因とされていますが、症状は多様で未解明の部分も多くあります。
 このような状況の中で、厚生労働省において、室内空気汚染の原因となる化学物質について、ホルムアルデヒドを始めとする13物質の室内濃度に関する指針値が設定されたところです。
 シックハウス症候群については、官民においてさまざまな調査研究、技術開発等が実施されてきましたが、依然として、新築住宅等の中には厚生労働省の指針値を超えるものが多数存在しており、国民的関心も急速に高まってきていることから、昨年7月1日にシックハウス対策規制を導入した改正建築基準法を施行したところです。
 しかし、まだまだ建築士の人の中にも、「なぜ法律で規制しなければならないのか?」「なぜホルムアルデヒドが対象なのか?」という疑問を抱いている人や、「建築基準法を守っていればシックハウスにはならない」という誤解をしている人が多いようです。
規制の方式
 建築基準法では、国民の生命と健康を守るための建築物についての最低限の基準が定められています。シックハウス対策規制では、衛生上支障のある室内空気汚染の最低基準を設けることが必要です。この指標として、健康への有害な影響がないかどうかという観点から設定されている厚生労働省の指針値を採用しました。この指針値以下ならば、これらの物質の暴露を一生涯受け続けても健康に影響がないであろうとされています。
規制の根拠となる指標は厚労省の指針値
 化学物質の室内濃度は、建築物の構造上の条件のほか、温度、湿度、風速等の条件や、家具の設置などのさまざまな条件により変動します。室内濃度そのものを規制した場合には、平均的に指針値を超える建築物であっても、たまたま測定した時には基準をクリアする場合も想定されます。また、年間約80万件に及ぶ建築物の建築時ごとに、室内濃度を測定することは、莫大な社会的コストを要します。
 このため、室内空気汚染防止のための規制の基準としては、特異な気象条件を除外し、通常の使用状態を想定したうえで、化学物質の濃度を厚生労働省の指針値以下に抑えるために必要な各部位に用いる建築材料、換気設備等に関する客観的な構造上の基準を定めることにしました。
規制対象となる物質は科学的に判断
 厚生労働省において指針値が設定された13物質のうち、建築基準法の規制対象は、ホルムアルデヒドとクロルピリホスですが、なぜこの2つだけなのかという質問をよく受けます。
 建築基準法に基づく規制は必要最小限にとどめるべきであり、規制対象とすべき化学物質の選定の考え方は、次の要件の全てに該当するものとしました。1つめは、健康への有害な影響に関する科学的知見に基づき室内濃度の指針値が設定されていること。2つめは、実際の建築物で室内濃度が指針値を超過しうることが確認されていること。3つめは、化学物質の発生源と室内濃度との関係について科学的知見が得られていること。
 指針値が設定されている13物質のうち、各種の実態調査により、実際の建築物において濃度超過が報告されているのは、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、クロルピリホス、テトラデカンの6つですが、このうち、現時点で、発生源と室内濃度との科学的な関係、発生源のデータ、室内濃度を予測する理論について、調査研究が進展しているものが、ホルムアルデヒドとクロルピリホスであることから、この2つの物質を規制対象としたのです。
 このように、現在の建築基準法のシックハウス対策規制では、科学的知見の蓄積状況から、シックハウス症候群の原因と想定されるすべての化学物質を規制しているわけではありません。また、あくまで建築物の居室における規制ですから、いくらそれをきちんと守って家を建てても、その後の暮らしのなかで家具、日用品、換気などに気を配らなければ化学物質は発散し、健康に影響を及ぼす可能性は十分にあります。

「シックハウスと換気」
 フクビ化学工業(株) 開発本部 部長 武田 敏 氏
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家具からの発散に対処するため換気を義務化
 みなさんすでにご存じのように換気には、ホルムアルデヒド、VOC、臭い、粉塵などの排出、室内空気を良好に保つ効果があり、改正建築基準法では24時間換気設備が義務付けられました。
 基準に基づいて家を建てれば換気を義務化する必要はないのではと思ってしまうかも知れませんが、家具からの発散という問題があります。家具に対して規制を設けるのは建築物よりはるかに困難であるため換気による対処が必要とされ、今回の法改正に反映されました。
 現在定められている基本的な換気回数は0.5回/hです。家庭にある一般的なレンジフードの換気能力が250立方メートルの住宅で2.0回/hですから、非常に緩やかな換気でも十分基準値を満たすことができます。
 24時間換気といっても、局所用換気扇は水蒸気や臭いを短時間に排出するようになっておりそのような換気には適していません。24時間、緩やかに家全体を換気するにはダクト式換気かダクトレス換気が適しています。
 ダクト方式は1台のファンで計画換気を行ない、ファンは天井裏に隠蔽されます。基本的に排気用の経路が一つだけなので外壁に空く穴が少なく、すなわち断熱欠損が少ないといえます。ただ、ダクトスペースが必要で圧力損失の計算がやや面倒、天井の点検口を開けてメンテナンスしなければならないという点に注意が必要です。ダクトレス方式はダクトスペースが不要で施工が簡単です。一台の単価が安く、ファンが壁についていますのでメンテナンスしやすいという特長があります。一方で壁に穴が空くことから前者に比べて断熱欠損が多くなります。
 ファンの種類はシロッコファン・ターボファン・プロペラファンなどに大別されていますが、その能力はファンの名称で判断するのではなく、P−Q曲線(静圧風量曲線)で判断するのが望ましいと言えます。P−Q曲線は「静圧」P(ファンが空気を送る圧力)と「風量」Q(ファンが送る空気の量)の関係からファンの換気能力をみるものです。グラフの曲線で囲まれた面積が大きいほど換気能力が高いと考えます。例えば10パスカルのとき、1のファンは28立方m/hの風量ですが2のタイプだと5立方m/hしかありません。
 機械換気は給気・排気を機械(ファン)で行なうか自然で行なうかによって第1種から第3種に分類されます。第2種換気では給気の力が強く、室内の壁に圧力がかかるので天井裏などから室内の空気が侵入しにくく、ホルムアルデヒドが室内に発散するのを防ぐ一方で壁内部に室内の湿気が押し込まれてしまう可能性があります。第3種換気では室内が減圧されるのでその逆のことがいえます。
換気計画は空気の流れの確保から
 換気計画の流れは、まず換気経路の設定から始まります。24時間換気以外の局所換気の場所、全般換気対象のエリアを決め、対象面積を算定します。これによって必要換気量の算定を行ない、ファンの能力・台数を決めます。次にダクトの有無で流れが変わります。ダクトがある場合はダクトルートを設定します。ここで問題があればダクトなしを使わざるを得ないケースもあります。続いて圧力損失(圧損)計算をします。ダクトの長さ、曲がる数によって生じる圧力損失がどの程度になるか調べるのです。問題があればダクトルートを設定しなおします。OKならばファンの確定と給排気口の最終配置を決め、計画決定となります。換気経路は家の中の空気の流れを考えて設定します。1階の例で説明すると、居室から空気を取り入れて洗面所、トイレから排出するのが主流です。給気口と排気口の位置をよく考慮して、ドアにアンダーカットを施したり、換気ガラリを設置します。次に洗面所、トイレに排気管をつけ、自然給気口(第3種の場合)を取り付けて完了です。基本的にはダクト式もダクトレスも大きな違いはなく、換気の流れを設定し対象住宅の軌跡からしかるべき換気・排気能力のファンの台数を決定するという流れになります。換気設備は連続で運転し、換気経路に障害物は置かないなどの基本的事項を施主に説明することも必要です。
空気の流れを確保し、換気経路をきちんと設計するためには気密性が大事です。気密性が低いとショートカット(すき間から空気が侵入すること)が生じ、換気経路が機能しなくなります。換気と気密は切り離せない関係にあり、本来は同時並行して法制化が進められるべきなのですが、現状はシックハウスへの対応のため換気が先に出てしまっている感は否めません。基本は、できるだけ気密性を考えたうえでの24時間換気設備の確保といえます。

「シックハウス対策と木質内装建材」
 大建工業(株) 商品開発部 企画課 課長 大島 正之 氏
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改正基準法に対応するため仕事を見直す
 本日は、改正建築基準法における表示対応などを中心に解説します。
 今回施行されたシックハウス対策の改正建築基準法は、厚生労働省指針値や住宅性能表示制度などと違い、法律なので遵守義務があります。当然、違反者には罰則があり、設計者、現場監督者、施工者が対象とされています。
 この法律に対応するために確認申請段階においては、換気設備仕様や使用建築材料のホルムアルデヒド発散等級の確認、中間・完了検査段階においては、申請材料と施工材料の同一性確認などが必要とされています。従って、設計・施工監理関係者は、@従来仕様の見直しや建材・設計ルールの点検、A受け入れ検査の義務付けや写真撮影のルールづくり、Bシックハウスに係わる事項の事前説明や責任の範囲(免責事項)の説明を徹底するなど、今の仕事を見直す必要があります。
 一方、改正法施行にあたって我々建築材料メーカー、業界がとるべき対応は、設計・施工監理される方々に対して、@安心できる空気環境を創出するためのホルムアルデヒド対策、VOC対策を講じた材料を提供する、A改正法に対応した適正な材料が選択できるように正確な情報を提供することです。
 建材・設備メーカーの業界団体では、関係省庁に働きかけ、JIS、JASなどで規定されていない材料や部材について業界団体による表示登録制度によってホルムアルデヒド発散性能を等級付けし、性能担保できるようにしました。また、ホルムアルデヒド発散建築材料で構成された収納・建具類など組み立て品についても、住宅部品表示ガイドラインの表示ルールに則り、各社、ホルムアルデヒド発散性能を等級付けして対応しています(図)。
 当社でも製品のホルムアルデヒド性能が一覧できる早見表、仕様構成表などを準備し、ホームページなどの媒体を通じて公開対応しております。
VOC対策は低減・完全不使用などで各社対応
 VOC対策については、ホルムアルデヒド対策に続き数年後には法規制が予想されるなか、各社対策を進めています。カタログ上では表現に多少違いはありますが、厚生労働省が指定している13物質のうち、アルデヒド系・VOC系・フタル酸系は各社とも低減または不使用、農薬系に関しては不使用で対応しています(表)。
 最後に、当社のシックハウス対策への全体的な取り組みについてご説明しますと、@主要内装材のF☆☆☆☆化、A告示対象外商品の品揃え、Bノンダクト式換気扇の品揃えの3つの基本的な基準法改正対応にさらに、C低VOC、吸ホル、調湿製品など一歩先行くヘルシー製品の充実とD空気質測定・分析支援活動を加えた5本柱でもって、よりよい室内空気環境づくりのご提案ができるよう努めております。

「健康住宅建材としての内装塗材」
 四国化成工業(株) 壁材開発部 部長 西岡 宣隆 氏
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今は室内空気質を追求する時代
 われわれは快適な室内空気環境のための内装塗材としてけいそう土壁に注目し、研究開発をしています。
 塗り壁には調湿効果と室内空気質(IAQ=indoor air quality)の浄化効果があり、当社にはその効果を利用したけいそう壁シリーズと炭壁シリーズがあります。ただわれわれが「けいそう土壁はよい」といっているだけでは実証もないしなかなか認めてもらえません。そこで官民共同研究に参加したり大学との共同研究を行ない、けいそう土壁など自然素材を使った塗り壁はホルムアルデヒドなどの物質を出さないというデータを得ました。
 けいそう土壁は優れた調湿効果を持ち、1m2あたり140gの吸湿力があります。だからといって何にでもけいそう土を塗ればよいというのは問題です。そこで1m2あたり70g以上吸湿しないと調湿型とは謳えなくなりました。
 けいそう土にはホルムアルデヒドを吸着する作用もあります。家具など後から持ち込んだものが発散するホルムアルデヒドを吸ってくれるのです。吸着したものを分解してしまう吸着剤というものを配合するとより効果が高まります。ただ、吸いっぱなしというわけにはいかず、温度が上昇すると再放散するというのが自然の原理です。そこで、吸着剤を配合しておくと吸ったものは分解されてしまうので再び吐き出されることはないのです。
大チャンバー実験でけいそう土壁の効果を実証
 名古屋市立大学との共同研究について少し触れます。けいそう土壁室内のホルムアルデヒド濃度の測定実験を、日本でも数カ所しかない大チャンバーを用いて行なったものです。この大チャンバーの中に3.5畳の部屋を作り、ホルムアルデヒドを発散する合板を置き、25℃で湿度50%、換気回数0.4回で250立方m/hの外気を入れ、各仕上げ材ごとに部屋の空気を測定しました。その結果、ビニールクロス貼りとポリエチレンシート貼りでは濃度は高い値のままでしたが、けいそう土壁の場合は濃度に明らかな低下が見られ、吸着剤入りのものでは最も低い値を示し、けいそう土壁の効果が証明されました。
 また、炭の調湿・ホルムアルデヒドや臭いの吸着効果を利用した炭壁シリーズの実験でも効果を確認しています。室内環境の観点では、除湿したりホルムアルデヒドを吸着するだけでなく、吸音も必要です。炭のように多孔質の材質には吸音効果もあります。電磁波を吸収するというデータ(100%炭の場合)もあります。今後の課題として研究を続けるつもりです。
 今後も、産・官・学で一致団結して室内環境の向上に貢献したいと考えています。
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