2007けんざい
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建材情報交流会ニュース
  第16回 建材情報交流会 ”建物の保全”−メンテナンス−

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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「スケルトン(skeleton)インフィル(infill)」 〜高耐久住宅を目指して〜
 三和建設(株) 常務取締役 経営企画・設計企画担当
 手嶋 一郎 氏
資料はこちら(PDFデータ)
長期間の耐久性と中身の可変性
「スケルトン住宅(スケルトン・インフィル住宅)」は国交省の推進するプロジェクトテーマです。
年月を経てやがては朽ちるのが構造物ですが、家が時を経たいろんな段階でどのような使い方をするのかを考えるのがスケルトン・インフィルです。“外側はしっかり、内側はライフサイクルに合わせ変更できる”ものをつくろうというのがこの概念の基本です。
これは国交省の総合技術開発プロジェクトの一環として出されたもので、スクラップアンドビルドではなく耐久性のある家をつくることを目的としています。
ヨーロッパでは引っ越すときに家の中のものは住設品までそっくり運んで行きます。そして元の家にまた誰かが違う中身を持ち込んで住む。建物の耐久性が優れているから、そうやって住み継がれていってまちなみは変わらないのです。10年経つとまちなみの様相が変わってしまうのが日本です。
スケルトン住宅とは、「スケルトン部分」と「インフィル部分」を分けた、長期間の耐久性と間取り変更の容易さの両方を持つ集合住宅です。耐久性を重視したスケルトンはそのままでインフィル(内装、設備などの中身)を簡単に改造できるようにして長持ちする住宅をつくろう、というニーズが社会的に高まりました。これを実現することによって、入居者はお仕着せのプランから解放されて家庭の個性が追求できます。まちなみの観点からみてもスプロールといわれるようなむやみな拡張ではなく中心部にも住宅を持ってこられるような、持続可能なまちなみがつくれます。
建築に携わるわれわれとしても従来の一過性の工事ではなく、リフォームも含めた持続可能な工事をし、材料も継続的に提供していく方向です。
費用面でも、今までの建物は60年耐久と考えて1戸あたり約2,413万円かかっているのが、スケルトン・インフィル住宅は100年で約2,600万円、1年あたりで考えると費用も社会的負担も低減します。税制や工費の問題に関しても、国がすすめていることですから優遇もあります。
今までは、中身も含めて建物が完成した時点で完了検査を受け、登記し、分譲する手順でしたが、そうすると買い手ひとりひとりのニーズにあわせた打ち合わせや設計は完成まで時間がかかりすぎ、なかなか登記もできず不可能でした。そこで、未内装でも先に登記をしてもよいという方向に変わってきています。中身もできたら新たに住宅として登記し直す、つまり部分的にしか完成していなくても住めるようにしようということです。当然そのための法制度も変わりつつあります。
完成形としての建物、たとえば賃貸や分譲の場合も、スケルトン賃貸、スケルトン定借、スケルトン分譲などと新たな考え方が出てきます。
土地とスケルトンとインフィルをどう考えるか。賃貸なら今まではすべてがオーナーのものでしたが、これからは、土地・建物は地主やオーナーが持ち、インフィルを借りることになると言えます。定借、分譲でもいろんな考え方が出てきて、建物の持ち方も多種多様です。
スケルトンを購入したいろんなタイプの入居者が自分のスタイルに合ったインフィルをつくって住み、自分のライフスタイルをつくります。ここから派生して店舗と居住の組み合わせなどの考え方も生まれます。
スケルトン住宅はまちづくりに役立つ
スケルトンが長持ちするので、スケルトン住宅によってできるまちは、まちなみが大きく変わりません。また、スケルトンは多様なインフィルを受け入れることができるので、時代のニーズ、新たな世代にも十分対応できます。
インフィルというと、どうしても内装や設備のことを考えがちですが、グラディング(構造体以外の外装)??たとえば屋根の仕上げ材やファサード??の変化にも対応しましょうということになっています。
インフィルの材料も細かく規定
スケルトンをつくるための指針があります。所有と管理の区分を明確にすることによってこれまでにない新たな住宅の借り方・買い方ができるというものです。
まずは大きく分かれているスケルトンとインフィルをさらに、スケルトン部分に近いインフィル、インフィル部分に近いスケルトンに分けて4区分にし、それぞれに耐用年数の差や利用形態などがあって組み合わせもできます。当然時代によって生活のしかたは変化し、要求されるものも変わるので、どう組み合わせてもよいという考え方です。
耐震強度偽装問題があって、建物の強度への関心が高まりました。スケルトン住宅の考え方がもっと普及してくると、それぞれの仕上げ材の品質が非常に大事になります。特に住宅に関しても品確法以来、いろんな訴訟が起きたり保障期間の問題が出てきました。当社でも、分譲マンションや賃貸マンションを扱っていて瑕疵工事が増加傾向にあります。この問題が増えてくると、100年持つスケルトンに30年のインフィルでいいというわけにはいかないので、みなさんの扱うような建築材料ならゼネコンと、ゼネコンならお客さんとの契約内容を、きわめて細かく規定していかなければいろんな問題が起きるでしょう。
このスケルトン住宅は、考え方としては優れていますが一般にまだ広がっていません。
当然メリット・デメリットも併せ持ちます。メリットは、部位ごとの経年変化に合わせてメンテナンスしやすい、ライフスタイルに合わせた間取りの変更がしやすい、水回りの位置を変えやすいというところです。そして、建て替えの需要が減ることです。社会的にはハコ物行政という言葉に象徴されるような大工事がなくなって産業廃棄物が減少し、環境にやさしくなると言えます。
建物を長く使うわけですから、ライフサイクルコストはどんどん下がってきます。ゼネコンはじめ建材メーカーの考え方が、今までのスクラップアンドビルドのままでいくとどこかでつまずいてしまうと思います。
さらに、水回りをどこに持っていってもいいわけですが、今までは縦配管の部分に水回りが集中しているので上下の水回りの位置は大体同じなのです。これからは風呂の下が居間、トイレの下が寝室になることもあるので高い遮音性、防音性が求められるでしょう。
そうなるとイニシャルコストが高くなるというのもデメリットのひとつです。長い目で見たコストは下がるのですがイニシャルは国交省の試算によると1割上がります。
当社では、国交省のスケルトン住宅の考え方に賛同し、このプロジェクトに何か貢献できることはないかと考えて、インフィルにおいては、束を立てずに特殊根太をはわせて床下を自由に使えるようにできる「ルネス工法」の特許使用権を得て、PRに力を入れているところです。この床下空間は、配管だけでなくいろんな発想で用途が生まれてきます。また、スケルトンにおいては、高密度コンクリートを採用して躯体のコンクリート寿命の大幅アップ、防水性の向上を実現しました。
配布しているパンフレットの連絡先にご一報くだされば詳しく説明させていただきます。

「建物の保全における防水(塗膜防水)の役割」
 新東洋合成(株) 技術部
 課長 清水 道雄 氏
資料はこちら(PDFデータ)
塗膜防水で建物を長生きさせる
建物が老朽化してくると躯体に亀裂が生じます。老朽化の要因には地盤の変位(沈下、隆起)による構造亀裂、コンクリートの中性化による鉄筋の腐食膨張、塩害(塩化物イオンの浸入)による鉄筋の腐食膨張、凍害(コンクリートに含まれる水分が凍結・融解を繰り返す)による劣化があります。
コンクリートの中性化とは、二酸化炭素が雨水に溶けこみコンクリート内部に浸入してアルカリ分を中和することによって、通常強いアルカリ(pH12以上)に守られていた鉄筋が錆び、コンクリートの膨張破壊を引き起こすものです。
建物で防水が必要な箇所は屋上、外壁、ベランダ・庇などで、建物の劣化を防ぐためには前述のような外的要因(雨水、二酸化炭素、酸素、塩化物など)からコンクリートを保護する必要があります。
防水にはアスファルト防水、シート防水、塗膜防水などがあり、本日は塗膜防水について説明いたします。
塗膜防水のおもな材質にはウレタンゴム、FRP、ポリマーセメント、アクリルゴムなどがあり、露出防水と施工後コンクリートで保護する保護防水、またそれぞれの防水仕様に対し、塗膜を下地に強接着して水密・気密を確保する密着工法、下地と塗膜の間に緩衝シートを入れて亀裂などの動きを塗膜に伝えないようにする絶縁工法などがあります。新築、改修、下地の種類に適した防水や工法があり、建築物の状態によって選びます。
アスファルト防水やシート防水ではつなぎ目ができ、漏水事故はそのつなぎ目で起きます。比べて塗膜防水は一体化してつなぎ目がないのが大きな特徴です。シームレスな防水膜を形成し、重ね塗り可能で塗膜厚さを自由に設定でき複雑な下地形状でも施工しやすいのです。
近年コンクリート構造物の耐久年数は100年を目標としています。防水にもまた長期耐久仕様が求められています。長期耐久のための要素として、高耐久性材料の使用、材料の性能を引出す工法設計、設計どおりの確実な施工、定期的な点検と適正なメンテナンスがあげられます。
塗膜防水の高耐久性材料としては、疎水性が強い特殊合成ゴム系防水材は一般ウレタン防水材よりも耐加水分解性に優れた機能を発揮します。特殊合成ゴム系新素材を用いた当社の長期耐久性防水工法(TOREED工法)は、飛躍的な防水層の長寿命化を実現しました。有害物質を排除し、改修時に既存防水層を撤去せずに被せ塗りするオーバーレイ工法が可能なため廃棄物を出さないなど、材料面、工法面ともに環境に配慮しています。
水、二酸化炭素、酸素、塩化物といったミクロな外的要因からコンクリートを保護する塗膜防水は建物の劣化を防ぎ、長期耐久化に貢献します。大事なのは、建物のおかれる環境と塗膜防水の耐久性を考慮して適切なメンテナンスを、できれば設計段階で織り込んでもらうことです。また、メンテナンスを減らすには高耐久性材料を厚く塗ることと考えます。

「給排水設備の予防保全について」
 (株)長谷工コミュニティー 関西リフォーム営業部
 参事 山川 圭介 氏
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改修は配管の材質や位置を考慮して計画
 建物の給排水設備を人体にたとえると、給水が血管、排水が消化器官のようであるといえます。
給排水設備の劣化診断の例について説明します。築24年の建物の給水管をビデオスコープでのぞいたもの(ビデオスコープ調査)ですが、すごい状態であることがわかります。継手のところで錆こぶができて、人間でいうと動脈硬化寸前です。縦管から枝分かれして量水器の手前までの部分を抜管、縦に割って提示するサンプリングという診断法の例です。
判定基準がa?dまであり、どうすべきかの指標をある程度示すことになります。
写真の例の材質はVLP(硬質塩化ビニルライニング鋼管)で、当時これを実際に施工した段階では、継手部分に対処するものがなく防食シール材を塗ってねじ込んでいたためエルボ部分に錆こぶが突出してしまったものです。
次に改修例をあげます。使用材によって、たとえば塩ビ管(HIVP)なら改修不要ですが金属管(VLP、SGP)なら改修が必要です。改修となると、配管を丸ごと取り替える(更新)か、錆こぶを取り除いてライニングする(更正)の2通りを選びます。また改修する部位が床の上か下か、露出配管なのか隠蔽配管なのかでも変わります。そういう改修計画を立てながら費用対効果も考えていきます。
そして管理組合、つまり持ち主に2、3通りくらいの提案をして最終決定します。
集合住宅ではとくに、改修部分の配管が専有部内か共用部内かもポイントです。
改修工事は築20年が目処、40年耐久
築28年の西宮の物件の排水管改修例では洗面所の横にあった縦管の位置と横枝管を変えました。壁に450mm×1,500mmぐらいの開口をして改修、その開口部を点検口として残し復旧しました。壁の当該部分だけクロスを張り替える方法もありますが他の部分との色違い等を解消するやり方として当社の場合できるだけ元の材料を再利用するようにしています。
築26年目に改修した京都の物件は、専有部で給水管がVLP、給湯管が銅管、一部風呂の排水縦管(ガス管)の改修でした。給水、給湯ともにポリブテン管を使い、流しや洗面器の脱着なしで行ないました。
最近の改修使用材料は、VP(硬質塩化ビニル管)、耐衝撃性硬質塩化ビニル管、硬質塩化ビニルライニング鋼管、ステンレス鋼管、水道用ポリエチレン管、ポリブテン管、排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管、排水用耐火二層管などです。改修時期にきている家は20年以上経っており、寿命60年とされているなかでわれわれは、40年以上持つものとをいう考え方でやっています。
社会的背景としては、平成14年の水道法改正で、メーターやバルブに使用できる鉛が従来の5分の1にまで規制されました。
給水方式の流れは、高置水槽による重力給水方式が一般的でしたが、阪神・淡路大震災で高置水槽が破損した例が多くあったことから、高置水槽が無い下から送る加圧給水方式が主流になりました。また、行政上、水道本管の水圧、給水量が改善されたことから受水槽、高置水槽の無い直結増圧給水方式が採用されはじめています。

「結露を予防して気持ちよく暮らそう」
 日本健康住宅協会 防露研究部会長
 パナホーム(株) 居住環境研究室長 中川 浩 氏
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結露を甘く見てはいけない
冬になるとガラスに発生する結露は人や家にさまざまな弊害をもたらすこわいものです。気密性に優れた現代の住宅では特に部屋の中で水蒸気が発生しやすいのです。
結露はカビの原因になり、カビをエサにするダニが増えることによってアレルギー疾患を引き起こします。また、シロアリや腐朽菌が集まりやすくなり、家の寿命を縮めます。そこで結露を防ぐ住まい方を考える必要があります。
温度が下がると湿度が高くなり、100%になったときの温度が露点です。湿度100%での空気中の水蒸気量のことを飽和水蒸気量といい、露点より温度が低くなると空気が水分を含みきれなくなるので結露となるのです。従って結露現象は温度の低いところに集中して発生することになります。
結露の発生のしかたにはいくつか種類があります。
「押入れ型」:押入れは温度が低いので最も結露しやすい場所です(写真1)。物を入れすぎると被害にあいやすいので気をつけねばなりません。
「小屋裏型」:屋根の野地板裏は夜間に結露しやすい所です(写真2)。結露水が天井面に落ちて天井にしみをつくることもあります。小屋裏の換気と天井防湿層が有効です。
「床下型」:床下地面からの水蒸気で結露が発生し、カビ、ナミダダケなどの腐朽菌が生えて木材が腐朽します。床下換気と床下地面防湿層が有効です。
「暖房室型」:居間、食堂などの暖房室では炊事や開放型ストーブによる水蒸気が原因で表面温度の低いガラスや窓枠、家具の裏、畳下などに結露します。
「非暖房室型」:廊下、洗面所などの非暖房室に暖房室や浴室の水蒸気が流入して壁面に結露します。
「壁体内部型」:温度の低い外装材裏面も結露しやすい箇所です。室内側に防湿層を設置したり、壁体内通気が有効です。
よく、暖房温度が高いほど結露しやすく低温ほどしにくいと思われがちですが、間違いです。
建物での対策と住まい方での対策で結露防止
結露は、建物に換気や断熱などの防露設計をすることと、住まい方で工夫をすることの両方で考えないときちんと防止することはできません。たとえばいくら断熱をしっかりしていても、ストーブをつけてその上にやかんをかけ、さらに部屋に洗濯物を干したりするとまったく意味がないということなのです。
日常でできる対策は、第1に換気をして水蒸気を家から追い出すこと(換気対策)。そして水蒸気の発生自体を抑える(水蒸気抑制対策)。室内には知らず知らずのうちに水蒸気の発生源になっているものが結構あります。石油ストーブやガスストーブはかなり水蒸気が発生するし、観葉植物でも与えた水の量だけ水蒸気として放出されているのです。暖房器具としてはエアコン、床暖房など水蒸気を出さないものがよいでしょう。
除湿器を設置するのも有効です(乾燥除湿対策)。また、普段、暖房しない部屋も温度を高めに保つ全館暖房(表面昇温対策)や断熱性能を上げる(断熱対策)といった手もありますが、結露の症状によって適切な対策法は違いますから、まずは簡単な方法から試してみることをおすすめします。
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