2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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講演会の予定・講演録
「CS・ES(顧客・従業員満足)」-企業における人づくり・組織づくり

   ANAビジネスソリューション 営業本部 大阪副支店長 佐野川谷 有加子 氏

企業は人なり。よい組織とはどんな組織か?
 今「企業は人なり」という言葉が改めて見直されています。やる気に満ちている組織とはどんな組織でしょうか。よく「質問しやすい、コミュニケーションがよい組織」という答えが返ってきます。企業は人が集まっており、人は必ず組織の中に所属しています。その組織、人を支えて行くのは企業です。
 優秀な社員の方々が4月に入社されたと思います。チームワークモチベーションはかけ算です。せっかく入った能力の高い社員が、もしチームワークの悪い組織や、モチベーションが全然持てないような組織に配属されてしまったらどうなるでしょうか。ゼロをかけるとゼロなので、いかに優秀な方を迎えても、組織が悪ければその能力をつぶしてしまいます。 逆もあります。かけ算ですから、能力が高い人がチームワークのよいモチベーションの高い組織に配属されたら、その能力を何倍にもすることができます。
 今日は経営者の方がたくさんおられます。宝となり財産となる人を組織の中で育ててほしい。そのためにはマナーの教育が必要です。マナーは相手に対する思いやり、おもてなしの気持を表すことが基本精神。このような日本人のマナーも、オリンピックを迎えるにあたってまた見直されています。
 ただ、よくない場面も目につきます。女性が混雑した電車の中で化粧をする。飲食する。電車の中でマナーを守りましょうと書いてあっても、化粧をするなとは書いてありません。するとマナーは誰が判断するのか。相手です。周囲を不快にさせるとマナー違反なのです。「誰にも迷惑をかけてないからいい」のではなく、誰かが不快に思っているかもしれないと思って気をつけるのがマナーの精神です。
挨拶は、毎日、明るく、自分から、一言添えて
 マナーは挨拶からという言葉があります。「うちの社員は挨拶ができないので、挨拶だけでもできるようにしてもらえませんか」と真剣に悩む企業のトップも実はいます。「挨拶?そんなことはできている」と思ったかもしれません。ただ、知っていることと実際できていることは違います。
 明るく元気に挨拶をしましょう。そして万事いつも、どんな状態のときでも、体調が悪くても、仕事で失敗したときでも。今日は風邪をひいたから挨拶出来ませんでは困ります。
 そして先にすること。これも大切。「挨拶は部下や後輩からするもの」と今でも平気で言う方がいます。気が付いたほうが先にするものです。これを毎日続けることも大切。挨拶のあとにプラスアルファで声をかけてください。例えば「山田さん昨日は風邪だったけど、今日は大丈夫?」というふうに。
 挨拶にはポイントがあります。スマイルとアイコンタクト、目線や視線を合わせて笑顔で。特に朝、皆さま方トップの方々が社員に明るく声をかけると、社員も自然に雰囲気がよくなります。今日は3つの演習、ペアワークを準備してきました。まずスマイルとアイコンタクトの演習です。
 今皆さんにこのスマイルの交換・笑顔の交換をしてもらって、より会場の雰囲気が変わりました。ぱっとこの電気が明るくなったような感じがするくらいに変わりました。組織の中で笑顔が伝染するとこんなに雰囲気がよくなる、ということを体感してもらいました。
 先ほどの「おもてなし」について。「接遇」の「接」には「つなぐ」「近づく」「会う」、「遇」には「思いがけなく出会う」という意味があります。人と人が思いがけなく出会ったときに、相手に対しておもてなしの心を表現しましょうというのが接遇の考え方です。ANAグループでは、20年以上も前から「接客」を「接遇」という言葉に置き換え、お目にかかったすべての方々に対して気づかい・思いやりを伝えることを大切にしています。
当たり前のことほど真剣にする
 最初に伝えたいキーワードは「小さいことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」という言葉。ANAグループがとても大切にしている言葉です。航空業界は、小さいことを見過ごすと人命に関わる仕事をしています。例えば私が機内でいつもと違う音やにおいを感じとって、「大したことない」と思って仲間や機長にも伝えなかったとします。しかしそれが原因で大きな事故になってしまうかもしれません。いつも小さいことを見過ごさず、おかしいなと思ったら伝えることを大切にしています。初めて乗ったお客さまが機内化粧室を使い、たまたま汚れていたらどう思うでしょうか。「こんなこともできないような客室乗務員が乗務するANAは大したことない、飛行機の安全は大丈夫かな」と思われてしまうかもしれません。このキーワードは皆さま方の業界にもつながる言葉だと思います。
コミュニケーションはポジティブなストロークから
 次に「人財」です。マナーを身に付けた社員を育ててくださいと最初に伝えました。次に身に付けて欲しいことは、コミュニケーション力です。組織の仲間同士の心の感情が一致している、相手を尊敬できる、お互いに信用できる、そして素直に話ができる、こんな組織がよい組織だといえるのではないでしょうか。ただ、心が通い合っていない組織も多いです。そこでお伝えしているのが「ストローク」という言葉です。スポーツでよく使われますが、コミュニケーションでは「伝える」という意味があります。さまざまな刺激を伝えるということ。せっかく相手に伝えるのなら、ポジティブなストロークを伝えてください。
 例えばこんなことです。「称賛」おめでとう。「感謝」ありがとう。「激励」がんばってね。「笑顔」「誠実な関心」「握手」「ねぎらい」お疲れさま。「アイコンタクト」もストローク。言葉や態度や表情でポジティブなストロークを日々の中で表現してください。行って欲しくないストロークはネガティブなストロークです。組織の中で殴る人は今の世の中いないと思いますが、言葉の暴力という意味もあります。この言葉の暴力も相手が判断すること。相手が傷ついたらそれは言葉の暴力なのです。そして批判、陰口、悪口、無視。これも相手が無視されたと感じるか感じないか。
 ぜひポジティブなストロークを大切にしてください。生きていく中でストロークを伝え合うことは、人として大切な考え方です。2つ目の演習はストロークの体感です。
 演習で、ほめ合うことを体感してもらいましたが、ほめられてうれしくない人はいません。部下や後輩なら、上司や先輩からほめられたらとてもうれしい。やる気をおこすということにつながります。また一段と成長していくでしょう。皆さまも、組織の中で社員の方、部下や後輩の方に感じることがあったら、まずはほめてあげてください。
 そして話し方。目を見て話します。整理して順序立てて話をする、相手に合わせたスピードで話す。相手がお客さまの場合には専門用語は使わない。若い方も流行語は使わない。ボディーランゲージは適度に効果的に使ってください。

聴くときは、目で見て共感する
 皆さま方は聴き役になることが多いかと思います。聴く態度、これもやはり目を見て聴き、共感してください。うなずき、相づちを打ち、反応してください。相手の話を横取りしたり、話の腰を折ったりせずに、最後まで聴きます。ここで3つ目の演習です。聴いていない態度だとどう感じるかという体感をしてもらいます。ペアで、前半は聴き手は話し手を無視して聴いてみてください。後半では反応をしながら聴いてください。いかがでしょうか。相手がよく聴いてくれていると話が弾みますが、無視されると、途中でやめたくなると思います。皆さま方が部下や後輩の話を聴くときの一例として体感をしてもらいました。
サービスはハードとソフト、両面で固める
 マナーとコミュニケーション力を身に付けました。次に組織づくりの話に入ります。サービスの考え方についてまず紹介しますが、「人に役立つことを提供すること」がサービスです。サービスにはハードサービスとソフトサービスがあります。ハードサービスには物理的なサービスやシステム的なサービスがありますが、航空業界でいうと飛行機そのもの、飛行機の中の提供しているものすべてがハードサービスです。ソフトはキャビンアテンダントなどの、人に関わるサービス。ハードとソフトはどちらも大切で、両面で固めていくのが今の時代の考え方です。
「満足」は当然。お客様の「感動」を目指そう
 顧客満足(customer satisfaction)という考え方は、企業では当たり前になりました。人はあるサービスを受けたとき、サービスに対して「事前期待」を持つといわれています。「あそこに行ったらこれくらいのサービスは提供してくれるだろう」というのが事前期待。そしてサービスを利用した結果、必ず「使用実感」という評価が生まれます。
 顧客満足は当たり前で、次に目指したいのは感動レベルです。カスタマーディライト(customer delight)といいます。すごく大変なことと思いがちですが、「今日あなたの笑顔に救われました」「あなたがくれた一言がうれしかったです」など、当たり前のサービスを提供しただけでも、感動してくれるお客さまはたくさんいます。次に、長いおつきあいをできる信頼関係を築くこと。カスタマーリレーションシップ(CustomerRelationship)といいます。そして最後に目指したいのはカスタマーロイヤルティー(Customer Loyalty)、ファンになってもらうことです。1対1の関係づくり。ファンは裏切らないのです。関西ではごひいきさんといいますが、決してほかの会社を選ばなくなり、それどころかブログやツイッターやフェイスブック等いろいろな媒体で宣伝までしてくれます。「自分以外は皆お客さま」という内部顧客の考え方 いよいよ組織の話です。経営者がトップにいるピラミッド型の組織が通常の考え方ですが、顧客満足(CS)を推進するときに必要なのが内部顧客(社内顧客)という考え方です。逆さまのピラミッドの組織でCSを進めていくのです。経営者やトップが下で支えます。次に管理職、サポーティングカスタマー(SupportingCustomer)。彼らはアーニングカスタマー(EarningCustomer)、現場スタッフを支えます。先ほどの組織との考え方で一番違うのがペイイングカスタマー(Paying Customer)です。どのような組織も、お金を支払ってくれるお客さまがいるからこそ、成り立っています。自分以外はみなお客さま、という考え方です。
 羽田の客室部のCAがいる部署では、CAのスケジュール運行管理をしているバックヤードスタッフたちの理念がこういう考え方です。自分たちはお客さまと直接会わないが、CAが笑顔で仕事ができるように支え、向こうにお客さまがいると思って仕事をしようと考えています。こういう気持でお互いが組織で仕事をすると、仕事がしやすくなり、質の高いサービスにつながります。
 「ES(Employee Satisfaction :従業員満足)なくしてCSなし」という言葉があります。組織で仕事をするスタッフの満足がなければ、お客さまが喜ぶようなサービスを提供することができない、ESを充実させてこそCSは達成できるという考え方です。
ほめる風土を社内で醸成することが大切
 CSを推進していく中で一つの例として、どういうふうにほめる風土をつくるか、というのがあります。先ほど皆さんにも、ほめ合うことを体感してもらいました。「グッジョブカード」はいろいろな組織対策の中で取り入れているところは多いと思いますが、私どもでもこういった「グッジョブカード」を活用して、お互いの社員同士がこういった紙で渡して伝え合えるもの、あるいはウェブ上でできるようなものを10年以上続けています。
 「グッジョブカード」をたくさんもらった社員に対しては、年に1回表彰するなど、報奨制度を行っています。またお客さまからの礼状は、今ではメールからのおほめが非常に多いのですが、それらを年に1回こういった冊子にまとめて「エクセレントサービスアワード」として、すばらしいお客さまへのサービスをしたエピソードを紹介しています。3万人以上のグループ社員の中から特にエクセレントなサービスをした者を、毎年あらゆる部署の中で選んで、こういった冊子にして紹介する取り組みです。
 私が所属している客室部門では、「おもてなしの達人」として、年に1回グランプリを選びます。受賞者は認定バッジを乗務の際に付けています。2年前から始まったばかりで、6,500人のANAグループのCAの中で、まだ数名しか存在しないはずです。もし機内で見つけたら「佐野川谷さんに聞いたよ」と言って話しかけていただくと、そこから何かご縁が生まれるかもしれません。人間力豊かな社員を育てよう 最後にまとめますが、今日私がお伝えしたことは、ひとつめは接遇力で、ふたつめがマナーの大切さ。マナーを身に付けると、決して人に左右されない武器となり、その人ならではのものとして発揮できるのです。マナーの力、接遇力を身につけたら、次に身に付けるのはコミュニケーション力です。これは決して1人ではできません。組織の中でお互いに相乗効果で伸ばしていきます。
 接遇力とコミュニケーション力、私どもは人間力を身に付けるとお伝えしていますが、それを身に付けるとその人の財産になります。これらを身に付けた人財は決して揺るがない。信頼を与えてまたほかにも影響を与えるような人の宝として成長していけるのです。ぜひこの春に入られた新入社員の方々を、人間力豊かな社員として育ててください。
 最後にお伝えしたいキーワードは、「意識が変われば行動が変わる。行動が変われば成果が変わる」。今日は私がペアワークを交えながらお伝えしたことは、当たり前のことばかりだったと思います。皆さまがご存じのことばかりをお伝えしただけかと思いますが、何か一つでも感じてもらえましたら、今日からでも皆さま方の行動にしてみてください。皆さま方の行動が変われば、組織の成果が変わります。組織の成果が変われば皆さま方の人生が変わります。
 
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