2007けんざい
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講演会の予定・講演録
「2025年の超高齢社会にどう向き合うか」

   神戸大学学長補佐 佐伯 壽一氏

2025年、日本はハイパー高齢社会を迎える
 国連の定義では65歳以上を高齢者といい、次のように高齢化率も定義されています。高齢者が7%を超えると高齢化社会(aging society)、倍の14%になると高齢社会(aged society)、さらに7%増えて21%を超えると超高齢社会(super aged society)です。
 昨今取り上げられている問題として「2015年問題」という言葉があります。団塊の世代全員が高齢者である65歳に達する年が2015年です。「2015年問題」自体はさほど大きな問題ではなく、むしろ2025年がこれからの大きな問題「2025年問題」です。
 日本の高齢率は、2012年の10月で24%。すでに超高齢社会といわれる21%を3%も上回っています。2025年という年を取り上げたのは、30%、つまり3人に1人という、非常に多くの方が高齢者になる「ハイパー高齢社会」が来ると考えられる年だからです。
 2025年の高齢者のうち、75歳以上は18%です。75歳以上だけでも高齢社会の域を超えてしまう。その要因は、日本の今の人口の中で一番大きな割合を占める、「団塊の世代」です。私もその一人ですが。昭和22〜24年の3年間に生まれた団塊の世代全員が75歳に達してしまうのが2025年なのです。
 ではどうして2025年、75歳がこれほど増えることが問題なのか。75歳を超えると要介護状態になる確率が一気に増えます。今の人たちを見てもわかるように、65歳から74歳までは、高齢者といわれてもお元気な方が圧倒的に多い。ところが、人間の体の経年劣化は75歳を境にして起こります。従って団塊の世代が75歳に達する2025年以降、大量の75歳以上の方が存在し、要介護状態になる方も急増する。これが「2025年問題」がクローズアップされている理由です。
日本の介護保険は世界に誇れる優れた制度
 日本には介護保険制度があります。介護保険は1997年に制定され、2000年から施行されています。わが国は1995年には高齢化率14.5%で高齢社会に達していました。超高齢社会に対応するための制度をつくろうと、法律が制定されます。日本はドイツやオランダを参考にしながら、独自の介護保険制度をつくってきました。個人的には、日本の介護保険制度は世界に誇れるすばらしい制度だと思います。世界の先進国の中で最も高齢化のスピードが速い日本が、介護保険制度を活用して高齢社会を乗り切るんだと、世界に対して示したといえるでしょう。
 介護保険の理念は自立支援です。高齢者は当然介護が必要になりますが、だからといって助けてばかりの制度ではないのです。やれることはやってもらう、これを後押ししよう。こうした考え方の制度です。
 また制定後も3年刻みにマイナーチェンジされていて、現在は5期目の介護保険制度です。2006年の制度改正では、2015年に団塊の世代全員が65歳になることを前提に、まだまだ元気だから、介護の対象というよりは介護にならないように介護予防をしてもらおう、という考え方を織り込みました。予防というルールが入ったわけですが、これは失敗だったといわざるを得ません。なぜなら、「大きなお世話だほっといてくれ、自分たちはまだまだ元気なんだから制度的に介護予防をしろなどと、押しつけられたくない」といった反応を生んでしまったからです。しかし、その後も「予防」の考え方は介護保険制度の中に生き続けています。
 この2006年の制度改正は、(1)軽度介護、(2)特養待機急増、(3)認知症対応、(4)サービス従事者の質向上、という課題認識のもと行われました。2010年3月に2025年を意識して「地域包括ケア研究会」が報告書を発表しました。昔風にいうと向こう3軒両隣の長屋の考え方のように、地域の中でお互いに助け合っていってもらおうと訴えかけたんです。このとき自助、互助、共助、公助と4つの「助ける」概念が盛り込まれました。基本的には自助、互助、共助で社会は進んで、公助は最後の手段。こうした考え方が2012年からのマイナーチェンジに盛り込まれました。
介護保険と一般的な保険との違い
 介護保険とはまさしく保険ですが、医療保険とは異なるところも多くあります。身近な自動車保険と比較して、介護保険がいかに保険らしい制度かを説明します。まず保険というからには保険会社があります。自動車保険の場合は損害保険会社、介護保険の場合は市町村で、日本全国ほとんどの地域で市が介護保険の保険者、保険会社の役割を果たしています。
 保険制度設計。自動車保険なら対物、対人や車両保険、いろんな制度設計がありますが、介護保険は全国一律の制度設計に基づいています。にも関わらず市町村が保険者。これは非常にユニークなところです。
 保険料の支払い。被保険者が1号・2号に分かれています。1号が65歳以上、年金から天引きされます。2号は40歳〜64歳です。医療保険などの健康保険は20歳以上が加入しますが、介護保険は40歳以上からで、39歳以下は保険料を払わなくてよいのです。
 介護保険が利用できるのは、1号・65歳以上の要介護の方のみ。ここが健康保険・医療保険と違うところです。65歳を超えて要介護認定を得た人しか介護保険が使えない。保険金支払いは、自動車保険なら自動車事故が起こり、損害保険会社に保険の適用をお願いして保険が発動する。介護保険の場合は、事故に該当するのが要介護認定です。保険会社的な表現を使えば、“要介護認定イコール事故発生”です。もちろん普段こんなひんしゅくを買う言い方はしません。
 介護保険が発動するとどうなるか。自動車保険の場合は、修理代や慰謝料などが保険会社にみてもらえる。介護保険の場合は介護サービス提供です。現金給付のたぐいは一切ありません。
主な介護保険サービスは4種類
 介護サービスにはどんなものがあるでしょう。まず居宅介護支援。居宅介護支援専門員をケアマネジャーと呼びます。ケアマネジャーの仕事はケアプランの作成。そのケアプランにもとづいて介護サービスの提供がおこなわれます。要介護認定という、介護認定を受ける作業を行うのもケアマネジャーです。要介護認定を受けるためには、住んでいる地域の「地域包括支援センター」に連絡をして、そこのケアマネジャーに来てもらいます。そのケアマネジャーが市へ連絡し、要介護認定の調査員に来てもらい、要支援・要介護の認定作業が行われます。
 次に施設サービス。典型的なのは特別養護老人ホーム(特養)と老人保健施設(老健)です。ここに入っているとほかのサービスは受けられません。なお特養は今、待機者があまりに多いため、要介護度4以上の重度の方しか新規入居は不可能な状況です。
 軽い介護状態になったときには、居宅サービスといって自宅で受けられるサービスがあります。これはヘルパーに来てもらう訪問介護、そして週に1〜2度、通所して介護を受けるデイサービスなどです。
 そして地域密着型。訪問とデイサービスとショートステイを全部組み合わせた小規模のサービス、いわゆる小規模多機能型居宅介護の提供です。これらが、要介護認定が発動されて受けられるサービスです。
 実際に、もっとも多く利用されている介護サービスは、件数的には、@通所介護(デイサービス)、A訪問介護、B福祉用具貸与ですが、介護費用 で見ると@介護老人福祉施設(特養)、A介護老人保健施設、B通所介護、C訪問介護、Dグループホームとなります。現在の介護保険サービスが抱える課題とは 介護保険サービスにはいくつかの課題があります。要支援から要介護になったときにケアマネジャーが変わってしまうこと。最初は地元の地域包括支援センターのケアマネジャーが担当しますが、軽いときは要介護ではなく要支援となります。要支援から要介護に変わると、ケアマネジャーも変わるんです。「せっかく信頼関係が生まれて、悩みも聞いてもらえるようになったのに、なぜ変わるの?!」との声がかなり結構ありますが、これが今の介護保険制度なのです。
 また、同時間帯に複数サービスの提供は受けられません。例えば訪問介護でヘルパーさんが来ているときには、訪問看護師には来てもらえない。実は私の母親が要介護状態になったとき、ヘルパーさんがいる時間に看護師に来てもらえると圧倒的にいろんな面で便利だったんですが、ダメでした。デイサービスでは、時間の融通がほとんどききません。これらが現状の介護保険サービスの課題といえますね。
事業としての問題点――継続性、クレーム、品質など
 サービス提供をする介護事業というビジネスとしてみたとき、いろいろ問題があります。その問題の一つは、介護事業者の中で圧倒的に多いのが零細弱小事業者だということ。2000年からの介護保険制度スタートを踏まえて、1999年くらいから介護サービス事業への新規参入に踏み切った事業者がけっこうあります。地元だけで小規模にやる格好で参入したところが多く、今でもそうです。制度が新しいこともあり、居宅系の一部事業者に対する消費者団体からのクレームも少なくありません。消費者側の利益代表になるような団体も2000年のスタート時はありませんでした。2010年くらいになってようやく、一般的な消費者団体が要介護者の代弁者としていろいろとクレーム、というよりも意見を主張し始めました。10年遅れて消費者を守る動きが強まってきたのです。
 50〜60人ぐらいの入居定員で小規模の介護付有料老人ホーム。特別養護老人ホームとは違う民間の施設ですが、これらも新規参入が多く、まだまだ品質的に不安定なところが多いですね。
今後、認知症への対応がもう一つの課題となる
 今後の介護を取り巻く状況はいかなるものでしょう。2025年、75歳を超える人口が一気に増える。これはほぼ確実な状況です。すると認知症高齢者も増加します。最も多いのがアルツハイマーで、認知症と診断された方の6割から7割近くがアルツハイマー型症候群です。脳のどの箇所が影響を受けるかによって、症状が全然違います。物が盗まれたなど妄想が強く出る人もいれば、自分の娘や息子を見ても誰か分からなくなる人もいます。排泄物を口にする「異食」などの症状もあったりします。
 認知症の度合いと要介護度は、全く別の体系です。要介護度はもっぱら、体が動くかどうかで判断されるので、認知症があっても体が元気だと要介護度が低く出ます。こういう状況は周りが苦労します。もちろん認知症専用の世話をするグループホームという施設があります。しかしこれもほとんどが満室状態で、多くの家族が空きを待っているのが現状です。
 行政でグループホームを増やす動きはありますが、実は建てるのが大変なんです。認知症専用のため、地元の理解を得るのが難しいからです。認知症に対する偏見が一部にあって、グループホーム建設の話が出ると、反対意見が出てきます。みんなが反対するわけではないのですが、グループホーム政策がとん挫するようなケースもあります。今全国のグループホームの定員は、わずか16万4,000人です。
 今高齢者の人口は約3,000万人。2012年12月で要介護認定されたのは約560万人です。2012年は認知症高齢者の数字はありませんが、2015年と2005年の間で見ると約300万人ぐらいでしょう。つまり約560万人の要介護認定のうち、軽度も含めて半分強が認知症の高齢者ということになります。それに対してグループホームの定員は17万人に満たない。認知症対応はもう一つの課題になりつつあります。
 
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