2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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講演会の予定・講演録
関西経済の現状。その問題点と将来

大阪学院大学 企業情報学部 教授 國定 浩一 氏

小泉改革がもたらしたもの
 2007(平成19)年8月10日、日経平均18,000円台をつけていた東証株価が、7,000円台まで急落しました。引き金を引いたのはサブプライムローンです。
 しかし、今の不況のベースにあるのは、「痛みなくして改革なし」を唱えた小泉・竹中時代です。なるほど、景気拡大は57ヶ月続き、いざなぎ景気を超えました。しかし、あれは平均点で見たマクロの数字に過ぎません。よかったのは大手企業と東京だけで、中小零細企業と地方はまるでダメになっていた。大阪も同様です。
 小泉時代の遺産は何か、と聞かれたら、私は「格差」と答えます。これは、数字を見れば分かる。給与が200万円を切る人は1000万人超、生活保護世帯は100万超、未遂を含めた自殺も10万件もあった。負債1億円未満の小さな倒産も年々増えていった。日本経済の手足、末端にいる人が「痛み」を負担し、頭や胸にいる人だけが、「改革」の利益だけを受け取った。それが、「痛みなくして改革なし」の現実です。
 また、ミートホープから船場吉兆まで、もうけ目当ての経済事件が多発し、「カネ」への欲望が大っぴらになったのもこの時代です。テレビでは、ホリエモンと呼ばれた堀江貴文氏や村上ファンドを率いた村上世彰氏が、「カネで買えないものはない」「カネをもうけて何が悪い」とうそぶく。あのころ、「君らのヒーローは誰や」と学生に聞くと、大阪でも地方でもみんな2人を挙げる。「先生の大学に入ったら、うちの子もヒルズ族になれますか」と、お母さんまで聞くわけです(笑)。
 「欲望」がのさばる一方、消えたのが「恥」という言葉です。特に若い子の大半は、叱られないまま、恥を知らないまま育ってしまった。電車に乗ると、口紅、マスカラからカーラー、スプレーまで使う。握りずしやざるそばを平気で食べる。節分の日に、巻き寿司の恵方かぶりをする子も見ました。もう壮観です(笑)。
 思うに小泉さん、竹中さんは、日本をアメリカ型の社会、「カネ」や「欲望」がすべての社会にしたかったのでしょう。だから、総選挙ではホリエモンを刺客に指名した。れっきとした大人が、彼らを認知するわけですから、子供たちや学生たちが若い2人をスゴイと思っても、無理はありません。
 幸い、日本人は賢明です。「お金」や「欲望」に対するバランス感覚がちゃんとある。あの2人には実刑判決が出たし、彼らをヒーローと言う学生もいません。社会も経済もまた、健全な方向へ戻り始めたようです。
日本経済の回復見通し
 日経平均株価が7,000円台まで急落したとき、経済論壇は、株価3,000円時代がくる、ドルは50円になる、いや紙切れになる、などと大騒ぎでした。
 でも、私はそうは思わなかった。株価は8,000円台に戻る。5、6月には10,000円を突破すると公言していました。経済の回復は意外に早いと思っていたからです。昨日の日経平均も10,000円を超えましたね。
 理由の第1は、この株価急落がアメリカによる外傷性だったからです。日本経済という身体はそう悪くない。治療すればちゃんと治ると思っていました。
 第2に、麻生首相の景気対策が早かった。去年の1次補正から今年の本予算、1次補正まで、計90兆円の景気対策を打ち出しました。バラマキと批判されますがバラマキだから経済が回り、株価も上がるわけです。
 第3の好材料は、オバマ大統領です。まず就任演説で、「アメリカの貪欲でかつ無責任な一部の人々(greed and irresponsibility)」、つまり証券界や金融界の人間が、今回の問題を引き起こしたと明言した。また、ブッシュ前大統領と協力して、当時のレートで80兆円ぐらいを景気回復にも投入しました。今のままでは、アメリカが世界一の座から転落してしまうことを、オバマ大統領は知っています。当然、アメリカ人はそれを許しません。だから、必死にやるはずです。
 そのとき、重要な役割を果たすのが日本です。アメリカはもう、自力だけでは回復できない。そのとき頼れるパートナーは、強大化する中国ではなく、日本です。しかも、景気回復のために発行した大量の米国債も買ってもらう必要もある。結局、日本の経済をよくしないと、自分たちの経済もよくならないわけです。だから、アメリカは日本に手を貸す。日本の経済を好転させることが、アメリカの国益でもあるわけです。
企業の成功を導く4つのキーワード
 では、こういう時代に企業が生き残るには、どうすればいいか。成功したり生き返った企業への聞き取りから浮かび上がったのが、次の4つのキーワードです。
 第1は「IT力」。IT企業が作ったいろいろな技術を利用して、自社の経営に生かすわけです。他社に負けるはずがありません。
 第2は、「アイデア力」です。どんなに技術力があっても、とんでもないアイデアをつぎ込まないと、中国やアジア諸国の低コストにはかないません。
 第3と第4は「実行力」と「継続」。決心したら絶対にやる。少々苦しくても継続する。ただし、畑違いの仕事に手を出しても、うまく行きません。これだけは負けんという本業にこそ、成功の機会があります。
 実は、この4つで成功した、タイガースファンゆかりの会社があります。有名な「虎スーツ」を作った、ヤングブラッドというベンチャー企業です。たった2人の会社です。
 ここには、先の4つがすべて出てきます。まず、紳士服にこだわった「継続」。社長にアホらしいと言わせた「アイデア力」。自分たちで起業するという「実行力」。インターネットという「IT力」。店に行きますと、宅配便の箱が山積みです。東北から九州まで、受注して出来上がった服をどんどん発送しています。
 私がいま着ているのも、そのジャケットとネクタイです。一見、普通の上着ですが、裏地は全面タイガース。これを着ていると楽しいですよ。バーや飛行機で、チラッと裏地を見せると、女性が大喜びする。取引先が阪神ファンなら、商談も弾む。向こうが巨人ファンなら、裏地は隠しておけばいいわけです(笑)。
阪神タイガースファンの経済効果
 プロ野球12球団の中で、わが阪神ファンだけが他と違う。非常に経済効果が高いのです。
 第1に、行動力が違います。阪神の試合のあるところ、大阪から大挙やってきて、泊まる、食べる、飲む、買う、騒ぐ(笑)。お金もどんどん使いますから、相手チームの地元も大歓迎です。
 第2に、帰属意識が強い。家からユニフォームに着替えて、声を掛け合う。「がんばってや、勝ってきてや」「おう、任しとけ」(笑)。阪神ファンは、自分が試合をやるつもり、勝たせるつもりでいる。「観戦」ではなく、「参戦」しているわけです。「巨人ファンというのは趣味だけど、阪神ファンというのは生活の一部だな」という星野(仙一)元監督の言葉は的確です。
 作家の堺屋太一さんによれば、人間は帰属するものにお金を使うそうです。サラリーマンが会社の付き合いにお金を使うように、阪神ファンは阪神タイガースのためにお金を使う。日ごろは、1円の金も惜しむ人が、阪神グッズを見ると、つい買ってしまう。だから、優勝しなくても経済効果があるわけです。
甲子園こそすばらしい教育の場
 阪神タイガースは、人生にとっても有益です。たとえば、「2勝3敗の哲学」。長年、阪神を応援しておりますと、平均成績は2勝3敗ぐらいだと分かってきます。われわれの人生も同様でしょう。これを負け越しと考えずに、もうけものと考える。この状況で、われわれは2勝も上げた。これで人生が楽しくなります。
 負けたときは、池乃めだかさんのように「今日はこのぐらいにしといたろか」と唱えます。すると、負けたのではなく、勝ちをプレゼントしたという気持ちになる。「実力はこっちが上や」という自信も戻ってきます。帰りの電車に乗るころには、もう気分がよろしい。楽しい気持ちで、明日を迎えられるわけです。
 私が思うには、甲子園こそすばらしい教育の場です。「今日の負けは、金に負けたようなものや。でも、世の中は金やない」と父親が4つの子供に言い聞かせる時、今どきのカップルが、自分の出したゴミ全部をすすんで持ち帰る時、これ以上の教育がありますか。東京ドームでは、こうはいきません(笑)。
 関西は、昔からお上が嫌い、中央が嫌い、お金が嫌いな土地でした。これはそのままタイガースファンに当てはまります。関西が関西である限り、タイガースファンも健在です。その勢いが、景気回復につながればと思う次第です。本日はありがとうございました。
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