2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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講演会の予定・講演録
「安全・安心・快適生活のための建築士活用法」
コーディネーター:馬場 昌子氏
パネラー:梅本 直康氏(社団法人大阪建築士事務所協会リニューアル部会・あとりえ あ〜き代表)
      佐藤 和子氏(佐藤建築設計事務所)
      飯尾 義方氏(新北野第2コーポ管理組合理事長)
建築のプロの役割とは
馬場─まず、安全・安心・快適な空間を造るプロの役割について、それぞれのご意見を。梅本──建築士として、特にマンションの支援コンサルタント業務を手がけて25年ほどになります。実はマンションというのは、住み手の意見をほとんど聞かずに造られる。当然、いろいろな不具合、不都合があるわけです。それを、住む人自身の住まいにしていくために、われわれプロが情報も含めて支援していく。私自身は、これを非常なやりがいだと感じています。ただ、それがお金になるようになったのは、ここ10年ほどですが。佐藤──馬場先生と共に、「福祉・医療・建築の連携による住居改善研究会」、略して「福医建研究会」のメンバーとして活動してきました。また、このNPOの一級建築士十数人と「快居の会」という実働部隊も結成しています。その経験から思うのは、住居とは住まいと住まい方がセットになったものだということ。高齢になる、障害を持つということは、住まい方が変わるということですから、それに応じた住まいが必要になる。しかも、その内容は、人によって全く違います。プロの技が生きるのは、そういう点だろうと思います。飯尾──大阪・十三にある築35年・約280戸の分譲マンションで、管理組合の理事長をしています。このマンションは、プライバシーを守れるということで人気のあったスキップフロア形式で建てられています。当時は全員若かったので、階段の上下も苦にならなかったのですが、居住者が高齢化した今は、それが大問題になっている。こういう問題を解決するためには、どうしてもプロの技、匠の知恵が必要ですが、実際にどこで何を相談すればいいのかがなかなか見えてこない。今日は、そうした点をしっかり勉強したいと思っています。馬場──住み手のプロとして、飯尾さんの問いかけは大事ですね。この問いかけに答えることから、討議を始めましょう。まず、相談窓口はどこにあるのか、について。
どこに行けば会えるのか
梅本─先ほども申しました通り、マンションの支援コンサルタント業務は、ここ10年ほどでお金になる仕事になりました。それはいいのですが、半面で多数の工務店や建築士がこの分野に殺到するようになった。はっきり言えば玉石混交です。その分、いい業者、いい建築士は以前よりも選びにくくなっているかもしれません。 実は、リフォームというのは新築より難しい。建材や工法の知識も通常以上に必要ですし、個別対応もできなくてはいけない。大阪建築士事務所協会のリニューアル部会では、150社ぐらいが集まってリフォームなどの研鑽を積んでいますが、そうでない業者の中には、甘い仕事をしているところがある。ですから、まず幾つかの業界団体に尋ねてみるのが、いいコンサルタント選びの第一歩かなと思います。絶対確実とは言えませんが。馬場──確かに、そういう団体に所属している、研究会で研鑽を積んでいるというのは、目安になりますね。見ず知らずの建築事務所に飛び込むよりは、ずっとよさそうです。梅本──ただし、コンサルタントさえよければ、ということではありませんよ。建材ひとつとっても、最近の材料の進化は、とても個人の建築士の努力では追いつけない。建材や部材のメーカーとコンサルタントとの連携も、大事なポイントだと思います。馬場──キーワードは「連携」ですね。佐藤──「福医建研究会」あるいは「快居の会」の場合、メンバーはさまざまな障害や病気について、かなり勉強をしている。それでも、知らない病気や症状は当然あるわけで、そういう場合は、セラピスト(療法士)やソーシャルワーカーに聞き、建築士同士でも検討します。高齢者や障害者の住居改善では、こういうバックアップのある人に相談するのがいいでしょう。馬場──高齢者や障害者の場合、住居改善の相談の仕組みはどうなっていますか?佐藤──一般的な入口は、地区ごとの行政の福祉関係窓口ですね。けんもほろろという場合もあり得ますが、粘り強く尋ねると、別の窓口や関連の施設あるいはNPOなどの情報がけっこう出てきたりします。その結果、私たちのNPOにつながると、うれしい(笑)。馬場──ただ残念なのは、自治体の福祉担当者は何年か経つと代わってしまうこと。そのたびに一からやり直しになってしまって、窓口担当者にスキルが蓄積されません・・・。さて、ここでちょっと飯尾さんの意見をうかがいましょう。何か問題が起こった場合、住み手から見て、この社会はどうでしょうか?
カギはやはりコスト=報酬
飯尾─難しいですね。特にマンションは、共用部分と専用部分があって、リフォームのやり方も違ってきます。私たちのマンションの場合、共用部の修繕に費やす予算は年間約4000万円。大規模リフォームの場合は、建築コンサルタントに仕様書をまとめてもらい、設計事務所に監理も含めて依頼します。ただ、その工事のよしあしが分かるのは、工事から7〜8年経ってということが多い。この瑕疵をめぐるトラブルが大変なわけです。 一方、専用部分のリフォームは許可制をとっていますが、これが1か月に約10件もある。大部分は軽微な工事ですが、その質のよしあし、あいまいな重要事項の開示などを巡って、業者とトラブルになることがあります。 結局、いい設計会社をどう選んだらいいのか、それが分からないわけです。修繕工事後の竣工検査をとっても、その設計会社が管理組合側に立ってくれるか、それとも施工業者側に立つのかで、結果はまるで違ってくるわけですから。梅本──姉歯事件以来、われわれ建築士に対する信頼は地に落ちました。はっきり言って、職能を利用した犯罪は、殺人よりも悪い。しかし、あの手の建築士は他にもいるでしょうし、施工業者側に立つ設計会社も珍しくない。その方がお金になるからです。そう考えると、監理やコンサルティングに対する報酬が確立され、クライアントがきちんと支払うことも大切。良心的な設計事務所を育てるには、そういう環境も重要だと思います。馬場──佐藤さんはいかがですか。佐藤──高齢者や障害者の数は、これからますます増えていきます。住居改善にかかるコストを、個人で負担するのも、いずれ限界にくるでしょう。これはもう、社会全体の問題なわけです。とすれば、ここはやはり公的な資金を投入すべきではないでしょうか。その場合、コストに見合うだけの質を求める声は今まで以上に高まるでしょう。私たちも、そういう声に答えられるように日々研鑽を積んでいかなければ、と考えています。馬場──プロとしての自負に基づく、凛とした意見だったと思います。飯尾さん、いかがでしょうか?飯尾──実は先日、マンションの管理規約を改正しました。特定の有志の力に頼ることなく、誰が理事になっても最低限の管理ができるようにするためです。それはまた、組合員が自分の要求だけをいうのではなく、お互いに支え合う、お互いが安心・安全に暮らすために欠かせない条件だと思います。あとは、私たちの志に賛同されて、協力しましょうという設計会社、建築会社の申し出を待つだけです(笑)。皆さん、どうぞお願いいたします。馬場──議論としては、もう少し詰めたい部分もあるのですが、時間が尽きました。皆さん、どうもありがとうございました。
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