2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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講演会の予定・講演録
  「ベトナムの投資環境の動向について」
国際協力銀行 大阪支店 総務課長 奥山裕之氏
ベトナムの国と社会
概況
ベトナムは1976年建国の社会主義国家。共産党主導の集団指導体制で安定しており、政策や法体系、国政セクターの存在という点で中国的要素を持つ。
人口8,000万人はASEAN10カ国で3番目の多さで、タイも上回る市場を持っている。
国民は大半が農村で農業を営む。老人に敬意を払い、貧しいが勉強好き、ベトナム戦争を戦った我慢強さを持つ、そんな国民性だ。今の若者は必ずしも米国を憎んでいるわけではないようである。
GDPは日本の90分の1。同じものがベトナムでは90倍の価値を持つ。1億円の投資はベトナムにとって90億円の価値がある。たとえば新卒の女性ならワーカークラスで月50〜70ドルで雇える。ベトナム人は週6日労働し、休むのは日曜日だけ。
今年で建国30周年を迎える。86年にドイモイ(刷新)路線を打ち出し、90年代前半はドイモイ路線の深化期、後半は経済のグローバル化推進期として、98年にはAPECにも加盟し、今年WTOに加盟する予定だ。
日本はベトナムにとって最大貿易相手国
ベトナムの貿易相手は、ASEAN、米国、中国、日本。対ASEAN・中国では赤字、対米では黒字、対日では輸出入がほぼ均衡している。
貿易品目は、輸出品では原油、水産物、米、木材、コーヒーなどの一次産品が中心。次第に繊維・縫製品、履物といった工業製品も増えてきた。輸入品では石油製品??原油は採れるが精製していない??、機械設備およびその部品、原材料(繊維・縫製品・革、鉄鋼、プラスティックなど)。
日本はベトナムにとって最大の貿易相手国だ。おもな輸出品は水産物、繊維・衣料品、原油、木材・同製品で、これらで対日輸出品の約8割を占める。おもな輸入品は機械・機器部品、鉄鋼、コンピュータ・電子部品、自動車部品。
ベトナムは日本企業の有望企業展開先第4位
投資流入状況?製造業向けが7割
ベトナムへの直接投資流入状況は累積でシンガポールがトップ(19%)、次いで台湾、韓国、日本となっているが近年では台湾、韓国、英領バージン諸島、中国が多い。ベトナムでも中国の華僑にあたる人々が世界に存在、約270万人が年間30億ドルを送金している。
日本からの直接投資は東アジア通貨危機で一時低迷し、01年以降再び増加傾向にあるが、小額案件が多い。製造業向けが7割を超えるのが特徴だ。
国際協力銀行が行なったアンケート「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」の結果をみると、ベトナムは日本にとっての有望事業展開先として04年度第4位にランクインしている。2000年度は8位だったので勢いよく上昇しているのがわかる。有望とされる理由は1位が安いから、2位では他国のリスク分散の受け皿にできる、となっている。
投資環境−中国一極集中のリスクヘッジ
91年から再開した日本の対ベトナムODAでは経済活動の基盤整備を支援しており、累計約1兆1,081億円である。04年の対ベトナムODAは世界全体で約34億ドル、うち日本からが約9億ドルで26.5%を占める。
ベトナムは日本にとってどんな投資環境にあるのか。ベトナムは、「中国+1」として中国一極集中のリスクヘッジの性格が強い。
周辺国と比較して労働コストが相対的に低い、ワーカークラスの作業の質が良い、法人税優遇などのインセンティブがある、日本と社会・宗教的に類似しているなどの強みをもつ。反面、産業の裾野が狭い、インフラが未整備、行政手続きが煩雑、法体系の未整備と執行力の不備などの点が弱みである。投資関連優遇制度として、法人税(「4免7半」など)、輸入関税・付加価値税などの免除がある。
インフラの状況は、工業団地入居のメリットが大きいが、物流インフラ・金融インフラ・駐在員の生活インフラに難がある。
協定には、日本の投資家(企業)保護のための法的裏付けである日越投資協定、日本企業の投資促進のため投資環境改善に関する共同行動計画を掲げた日越共同イニシアティブがある。外国投資法制では外国投資法、各種税法、労働法、土地法がある。
投資・進出形態には合弁、100%外資、事業協力契約があり、外国投資法に基づいて管轄当局の許可を得て投資・進出する。
法人税法で定められている投資優遇制度には、事業所得税の優遇措置、輸入関税・付加価値税などの免除制度がある。また、「工業区」「輸出加工区」「ハイテク区」といった特別誘致地区を設け、事業所得税の優遇措置をとっている。
輸出加工型・100%独資・工業団地内がポイント
進出企業の業績は二極化
日系進出企業をベトナムの地域別にみる。北部(ハノイほか)はホンダ、トヨタ、TOTOなど約150社、中部(ダナン)はロジテム、ゼンテックなど約10社、南部(ホーチミンほか)は富士通、花王、松下電器、ソニー、ロート、東芝など約300社にのぼる。
進出企業業績には二極化の傾向がある。「輸出加工型」は景気の波は受けるが総じて好調、「中国+1」として有力。ロートがその1例で、ベトナムでは目薬のことをロートと呼ぶくらいだ。対して「内販型」は、総じて苦戦を強いられている。購買力の低さや模造品の横行のためだ。
雇用形態−契約は3形態、人件費は日本の100分の1
ベトナムには、期限なし契約、1?3年の期限付き契約、季節労働または1年未満の期限付き契約という3形態の雇用契約がある。解雇は難しく、時間外労働手当は残業50%増、日曜出勤100%増、祝日出勤200%増という高い料率になっている。週休1日制で、法定祝日は年間8日間しかない。人件費は年間1人約9万円(約850ドル)で日本の100分の1である。
物流・インフラ?道路は未舗装多し
物流はトラック4割、海上3割、鉄道1割。道路はまだまだという感じで、舗装されていないところも多く見られ、牛車も通っている。いまだにハノイからホーチミンまで6日かかる。鉄道は南北統一鉄道、単線ディーゼルがあるが修理を必要とする箇所が多い。港湾はサイゴン港、ハイフォン港、ダナン港など8つの主要港がある。国際空港はハノイ、ホーチミン、ダナン。
新規進出-3点セット+リスクヘッジ
まとめると、「輸出加工型(労働集約型)、100%独資、工業団地内」の3点セット+「中国一極集中のリスクヘッジ」が、日系企業新規進出のキーワードといえよう。ポイントは次のように整理できる。@小さく生んで大きく育てる、A機械・設備よりも人(ワーカー)の手と目を有効活用する、B新しいことに挑戦する気概、変化に対するストレス耐性、ベトナム人の思考体系を理解する、C工業団地、輸出加工区へ進出する、先輩日系企業に相談するなど情報収集する、D内販指向の投資は事前に調査する(輸入品・模造品・競合進出企業・国民の低い購買力などがリスクファクター)
外資系企業の設立には、投資ライセンス取得申請手続きが必要(詳細は国際協力銀行「ベトナムの投資環境」(2005年3月)参照)。
奥山裕之氏略歴: 1988年日本輸出入銀行(現国際協力銀行)入行。国際金融第1部第1班(中国向け融資担当)、総務部広報室、ニューヨーク駐在員事務所などを経て2004年11月から大阪支店(西日本担当)総務課長。
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